- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065107690
作品紹介・あらすじ
祝・クトゥルー神話誕生100周年。ラヴクラフト作品を中心に海にまつわる物語8編を完全新訳。クトゥルー神話入門に最適の一冊!
感想・レビュー・書評
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今世紀に入ってから、海外作品の新訳がぞろぞろと出ている。これはひとつに、昔の訳では文章などが今の読者には噛み砕きにくい、というような事があるんじゃないかと思う。
本作も、いささか難解な創元推理文庫版のクトゥルーに比べると、非常にわかりやすいし、言葉も現代我々が使い慣れている言葉に置き換えられているな、と感じる。
しかし、本作の価値はもっと違うところにある。
まず、舞台となる場所の地図が添付されていること。
キーワードとなる言葉や地名、人命について、各作品ごとに末尾に註釈が加えられており、しかもそれが巻末のインデックスから引けるので、まるごと一種の用語事典として使えるのだ。
これは貴重!
日本人には馴染みのないアメリカの地方の地名なども、地図があるため、だいたいどのへんに位置しているのかなどがとてもわかりやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
サブカル界隈ではすっかりメジャーとなった「クトゥルー神話」。本書は「クトゥルー神話100周年記念(らしい)」として新訳された。
(私が知る限りでは、)国書刊行会「真ク・リトル・リトル神話大系」や、創元社「ラヴクラフト全集」(ラヴクラフト著作のみ)の古い和訳(1970~80年代?)しかこれまで無かったので、新訳が出るのは嬉しい限り。前述の訳本はとにかく読みづらかったので、読みやすくなっているものと期待していたのだが・・・あまり印象は変わらなかった。
訳者による解説や注釈が充実しているので、その点で理解度は上がったが、本文はそこまで読みやすくなった感じはしなかった。予感はあったのだが・・・これは原文自体が読みづらい文章なのか。。。
生前のラヴクラフトが、自身の作品を出版社に持ち込んでも採用されなかったというエピソードをよく聞くが、なんとなく頷けてしまう。発想力は良いのだが、アウトプットする力が足りていなかったように思われる。「クトゥルー神話」自体、ラヴクラフトの手によって体系化されたわけではなく、彼のアイディアに触発されたダーレスらフォロワーによって為されていることからもそれが窺える。
本書に収録されているのは、以下の8篇。
『ダゴン』
『神殿』
『マーティン・ビーチの恐怖』
『クトゥルーの呼び声』
『墳丘』
『インスマスを覆う影』
『永劫より出でて』
『挫傷』
やはり『インスマスを覆う影』は完成度が高い。臨場感のある作品なので読み進めやすく、クトゥルー、ラヴクラフト初心者の方にはまず読んでもらいたい作品。 -
令和4年9月の特集「がっつり読書!」
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・「クトゥルー」という言葉を知ったのは、もう30年以上前。中学生になる前のこと(その時は「クトゥルフ」だったけど)。で、ようやくちゃんと読んだ。
・正直、苦手。
・強いて言えば、「インスマスを覆う影」は面白かったけど、たぶん一番、物語としての作りが分かりやすいからだと思う。
・たぶん、僕は本作の楽しみ方が理解できてないんだと思う。正しい角度で入ったら意外とハマりそうな感じはした。 -
作家のH.P.ラヴクラフトが短編小説『ダゴン』を上梓してから、つまり、クトゥルフ神話が産声を上げてから百年目を迎えた2017年。クトゥルー神話研究家の森瀬繚が百周年を記念し、新たに翻訳本を刊行。
日本のサブカルチャーにも多大な影響を与えたコズミック・ホラー・ワールドの、原点となるラヴクラフトの著作品をテーマごとに選出し、初心者向けに読みやすく翻訳。今、あなたの正気度が試される。
1集は神話の代表格であるクトゥルーと、ラヴクラフトの恐怖の源である「海」がテーマ。創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』に未掲載だった『墳丘(The Mound)』を求めて購入。確かに読みやすいが、それゆえに原典特有のおどろおどろしさが薄まっている感がある。だが好みの問題だろう。地図や訳注、年表など、付録が充実しているのも初心者に嬉しい。
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『ダゴン』
船乗りのわたしは運悪くドイツ軍に拿捕された後、すきを見て逃げ出す。漂流の後に小島に漂着したわたしは、丘の頂上を目指すことにしたのだが――。
(「窓に!窓に!」で有名な、クトゥルフ神話の原型とも指摘されている短編。)
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『神殿』
時は1917年、第一次世界大戦の最中。独軍の潜水艦が英国の船を沈める。乗員の一人が船に絡んでいた死体を投棄する際、死体から象牙細工をくすねたのだが――。
(最期まで正気を保ったままの艦長の冷静な言動が、起きている異常を更に際立たせている。展開が似ている『ビロウ』という映画を思い出した。)
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『マーティンズ・ビーチの恐怖』
船乗りたちが未知の巨大生物を殺害し、その死骸をマーティンズ・ビーチに運び込んできた。船長のオーンはこれで金儲けを企むのだったが――。
(クライマックスの恐怖と絶望感は背筋がゾクゾクとした。底知れぬ海に対する恐怖は原初的なものか。)
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『クトゥルーの呼び声』
亡くなった大伯父の遺品を整理していたわたしは、不気味な存在が描かれた粘土板とカルト教団に関する資料を見つける。追跡調査をする内に、ある海難事件の記事を目にし――。
(TRPG手引書の題名に選ばれる程のラヴクラフトの代表作。短編ながらも物語と世界観は濃密。そのため、のめり込み過ぎてロールに失敗すれば、正気度を減らされること必至だろう。)
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『墳丘』
オクラホマにあるインディアン由来とされる墳丘は、幽霊の目撃談や探索者の失踪や発狂、異常死など、怪奇譚に事欠かない。それゆえに好奇心から墳丘を訪れた新たな探索者――私は、墳丘の土中から奇妙な金属筒を発掘する。中に入っていたのは、十五世紀に同じように墳丘を訪れたスペイン人による、墳丘の内部に広がる異世界と、そこでの生活を綴った自伝だった――。
(地下世界に棲んでいたのは、来る者拒まずだが去ること許さず、文化的ながらも保守的で、超能力でいろいろできるヤベー種族だったという、設定が盛り沢山なダーク・ファンタジー(?)。ゴーストやゾンビといった、TRPGでもステータスがあるクリーチャーの設定にも使えそうで、シナリオ創作者の人にもおすすめしたい。)
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『インスマスを覆う影』
好奇心から怪奇な伝承が伝わる街を訪れてみたわたしは、そこで恐ろしい話を聞かされて――。
(終盤で回収される伏線とメリーバッドなエンドに、普通のホラーにはない哀愁を感じた。異形を単なる敵やモンスターとして描写しない点がラヴクラフトらしさ。)
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『永劫より出でて』
不審死を遂げたボストンの博物館館長が遺した手記。そこには、博物館に持ち込まれたミイラと、その後に起きた変死事件の真相が綴られていた。一体、博物館の中で何が起こったのか――。
(神話としてはオーソドックスだが、恐ろしく悍ましい神話生物を主軸とした物語。)
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『挫傷』
シャワーを浴びている最中に頭を強く打ったことで幻聴が聞こえるようになったメレディス。生々しい幻聴の原因を医者とともに調べる内に、メレディスはかつてあった大陸で起きたことを夢で見るようになる――。
(前世もの。設定だけなら現代でも通用しそうだ。) -
墳丘まで読了。
作者が合わないのか訳の問題か、面白いとは思えない。
修飾の言葉が多すぎて何について言ってるのかもよくわからん。
言葉が多すぎて不気味さもあまり感じない。
うん、きっとやつらは混沌としてるんだな。 -
ラヴクラフト氏の中で創られた世界に触れてみて、やはり天才なのだなと感じた
とても怖くて面白かった -
初ラヴクラフトです。
読書会で、インスマスを覆う影を紹介いただき。大学のゼミなどでも取り上げられているそうです。クトゥルー神話は20世紀前半の怪奇小説家ラヴクラフトを中心とする一群の作家たちが、自分たちが想像した太古の神々や魔道書など互いに、共有ふることで意図せず作り上げてきた架空の神話体系だそうな。いや、水に入った奴。引き込まれました。魚のいやな臭いが立ち込めてくるようで苦しくなりました。あいつら、何者。
著者プロフィール
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