瑕疵借り (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065117347

作品紹介・あらすじ

謎の事業者「瑕疵借り」は、瑕疵物件を抱えた物件オーナーや不動産業者が最後に頼る頼みの綱。その部屋には何があったのか、男は類い希なる嗅覚で驚愕の真相を突き止める。松岡圭祐ファン待望の本格現代サスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 訳あり物件に意図的に住む人→瑕疵借りをテーマにした短編連作。
    ホラーや嫌がらせ系の話と思いきや、想定と違って胸打つ物語でした。

    ■土曜日のアパート
    福島の除染作業員が亡くなった物件
    そこに残されていたものとは?

    ■保証人のスネップ
    名義貸しして賃貸の保証人になった男に家賃の催促
    借りていた女性の正体は?
    そして彼女が残したモノとは?
    これ、一歩踏み出す気持ちがもらえます

    ■百尺竿頭にあり
    音信不通の長男がアパートで自殺
    人付き合いが苦手でブラック企業に勤めていた理由
    そして、自殺の真相
    そこにあった想いが哀しい

    ■転機のテンキー
    パティシエになりたかった娘。その母親が突然死。
    母親と父親が娘に隠していた秘密
    これは悲しい

    真相を明らかにするのが、瑕疵借りを本職とする藤崎。
    そしてその藤崎によって、残された人たちが癒されることになります。
    不思議な設定の物語ですが、とても良いです。
    シリーズ化されないかしら..

  • 不動産系のお話に興味があったので手に取ってみた。松岡圭祐さんの書籍を読むのはこれが初めて。そうか、あの「ミッキーマウスの憂鬱」の著者なのか。知名度のある作家だと分かり、俄然興味が強まった。

    本書の構成は短編集。毎回主人公は違うのだけど、1人の人物が共通して登場する。いわゆる連作短編集というジャンルになるかと思う。

    その毎度登場するキャラクターが「瑕疵借り」。つまり瑕疵物件に住み、不動産屋の味方をする人間。

    しかし本作が面白いのは、瑕疵借りの真意。彼はその職務(?)にプロ意識を持っている。

    瑕疵の真相を探り、不審死の原因まで突き止めてみせる。それはある意味ではダークヒーロー的。王道ではないのだけど、仕事小説的な面白さを感じさせた。

    瑕疵借り的な仕事(?)が現実的にあるのかどうか分からないけど、こんな瑕疵借りがいても良いよね。面白いよねと。創作として非常に楽しめた。

    惜しむらくは、瑕疵借りが謎の人物のまま終わってしまったこと。連作を通じて少しずつ過去が明らかになっていく、とかならもっと楽しめたかもしれない。やや物足りないような読後感。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/06/01/%E3%80%90%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E3%80%91%E7%91%95%E7%96%B5%E5%80%9F%E3%82%8A_-_%E6%9D%BE%E5%B2%A1%E5%9C%AD

  • 訳アリ物件に住むことを生業とする藤崎という人物を主人公にした連作4篇。
    心理的瑕疵を取り除くための瑕疵借りに焦点を当てた類のなさに、新しい社会派小説をみる。
    主人公は藤崎であるが、視点は各編異なる人物で描かれている。
    学費捻出のためコンビニで働く女店員、小遣い稼ぎのために保証人になった無職の男、息子に自殺された会社員、パチィシエに憧れる娘。
    藤崎が係わることによって、彼らがそれぞれのことに気づかされ、救いが生まれる。各編とも胸打たれる佳作となっている。
    なかでも、『保証人のスネップ』での遥香の動画には、涙腺を刺激されざるを得なかった。
    特異なキャラクターの主人公で、シリーズ化も期待されるのではないだろうか。

  • 賃貸ミステリー。ホラー小説ではない。瑕疵借り屋藤崎。事故物件の関係者は、藤崎と共に、死者の残した真実に辿り着く。

  • 瑕疵物件にまつわる4作の短編集。

    瑕疵物件になった理由は決して明るくはないけれど、読み進めていくのが苦じゃない。どんどん闇にハマっていくようなテーマなのに、そうではない。

    変わった男、「藤崎」が関わった人たちは、前後で表情が変わってるのが目に浮かぶ。

    こんなテーマで本が書けるなんて、そしてこれほど読ませるなんて、本当にすごいと思う。

  • いやー読み応えあったし、よく出来てる。
    シリーズ化してほしいくらい。
    最後の話だけちょっと捻り無いというかベタすぎた気がするけどそれ以外の3篇全部好き。

  • ホラーかと思いきや、、、。
    あえて事故物件に住む、瑕疵借りの藤崎。原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死の瑕疵を洗い流す。事故物件サイトの炎マークのひとつ。名もなきひとりの死の原因だったり、その人の本当の気持ちだったり、藤崎を通して周りの人に死後伝わる。
    どんな人でもひとりの死は、軽いものではない。

  • 死にも色々な理由があってそれをサラッと気づかせてくれる不思議な探偵(?)譚
    いつもの松岡流を求めちゃうとちょっと違うかなと

  • 何かを始めることは怖いことじゃありません。怖いのは何も始めないことです。
    (『保証人のスネップ』より)

    心理的瑕疵=怖い話だと勝手に思い込んでいた。
    なんだか怖い話が読みたい気分だったし。
    内容を確認せずタイトルだけを見て選び、いつまでたってもお化けが出てこないので変だ変だと思いながら読み続け、だけどそんなこともうどうでもいいっていうくらいよかった。4つの短編の中でわたしが一番悲しくて泣いてしまったのは『土曜日のアパート』の手紙のところで、でも他の3つ話もすごく切ない話だった。

    心理的瑕疵の意味をちゃんと調べたら「借り手が強い心理的抵抗を感じやすい条件があることを指す不動産用語」だそうだ。幽霊が出る物件という意味じゃないのね。
    だけど、ここに出てくる「瑕疵」とは部屋自体のことだけではないんじゃないかな。
    その部屋に住んでいた、今は亡き賃借人の残された家族や関わった人たちの心にしこりのように残るわだかまりや、逝ってしまった人に対する怒りや戸惑いが付けた傷のことも指してるような気がする。
    瑕疵借りの仕事は、その原因を探ったり解決したりすることではない。
    この藤崎という男も、最初の話ではそういうつもりはないように思えた。だけど結果的に、何かを抱えてその部屋のドアを叩く人たちを助け、支えになっている。
    一体、藤崎という男はどういう過去を持ち、そしてなぜこの仕事をするようになったのだろう。

    シリーズ化を期待します!
    でも版元の「感動の賃貸ミステリ」っていうのはちょっと。。。賃貸ミステリって何?ってなった。

  • ホラーかな、と思っていたら、ミステリーだった。
    確かに人は亡くなるけれど、ハートフル、なんて言い方ができるものではないけれど、琴線に触れるものがある作品だった。

    本書は四編が収められている。
    除染作業で、保証人の名義貸しで、息子の自殺で、病死で、遺された人々が「事故物件」と向き合う。

    誰にでも死は等しく訪れる。
    自分が死ねば、今まで住んでいた部屋が、「事故物件」となる。
    私の親族も自宅で亡くなった。
    そしてしばらく発見されなかった。
    だから、葬儀では顔を見ることは叶わず、骨とだけ、対面した。
    その死は一般的には不気味なものであるだろうし、もし他人だったとしたら、親族が住んでいた部屋に住もうなどとは考えられないかもしれない。
    ひょっとしたら、面白おかしく怪談話にだってされてしまうかもしれない。
    しかし、死とは嘲笑され、消費されるものだろうか?
    そんなものであっていいはずがない。

    本文に戻ろう。
    訳あり物件に住む藤崎と言う男は「瑕疵かり」と呼ばれる。
    瑕疵ある物件に住み、その度合いを軽減させる役割を担う。
    そう聞くとゴロツキの類だと思うだろうが、藤崎はそんな男ではなかった。
    この部屋に住んでいた人が亡くなった訳、それを解明することが彼の本当の「仕事」だ。

    「なにかを始めるのは怖いことじゃありません。怖いのはなにも始めないことです」(163頁)
    私には、何かを残すことなどできるのか。
    いや、死して名を残すことを考えるより、生きている今、なにができるかを考えるべきであろう。
    本書の死を通じて、生きることを考えた。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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