人間に向いてない

著者 :
  • 講談社
3.54
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本棚登録 : 530
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065117583

作品紹介・あらすじ

ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」。政府はこの病に罹患した者を法的に死亡したものとして扱い、人権の一切を適用外とすることを決めた。十代から二十代の若者、なかでも社会的に弱い立場の人たちばかりに発症する病が蔓延する日本で、異形の「虫」に変わり果てた息子を持つ一人の母親がいた。あなたの子どもが虫になったら。それでも子どもを愛せますか? メフィスト賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 帯を読んだとき、息子が虫になる話しなんて、カフカのようで気持ちが悪いと思いましたが、未来屋小説大賞の第1位に選ばれたと書いてあったのを見て、気持ち悪いかもしれないけど読んでみようと思いました。

    途中、読み進めていっても、この大賞1位というのが無かったら、読むのをやめていたかもしれません。

    この本はとても深いお話しで、姿形が変わっても、息子を愛し抜くこの女性の気持ちには涙が出そうになりました。

    親は愛してるが故に、子どものためと思って勉強や習い事なども押し付けてしまっているのかもしれないのは、当てはまるかもしれないとも思いました。
    よく見て、向き合っていくということ、肝に。

  • 面白かったです。ぐいぐい読みました。
    ニートや引きこもりの若者が発症し、異形となる「異形性変異症候群」。異形も、動物、虫、植物
    、魚類と様々でした。
    カフカの「変身」を、変身された家族の側から描いてるような作品でした。カフカの方はグレーゴルだけだったかもしれないですが、こちらの世界では社会現象でした。変身すると死亡届を出さないといけないし。
    ひとり息子の優一が突然虫になってしまった美晴を主人公としているのですが、夫の勲夫がもう…無理でした。自分の思い通りに生きられない息子はもう邪魔扱いすることとか。読んでいくとこれは美晴にも当てはまるところがあって…でも美晴はそれに気付けて、考えと接し方を改められたので、優一は快復出来たのだろうと思いました。
    優一の葛藤がすごくわかったのは、わたしの親も似てるからかなぁと思ったり。憎んでも恨んでも、結局許してしまうのでしょう…一握りの優しさで。
    津森さんの考えは当たっていると思いました。異形となる本人ではなく、その家族に問題があるのではないか。
    そして、途中で美晴が見た夢。異形になってしまう人とは多分ここに分かれ目があるのだろうな。
    優一が快復し、勲夫が異形になってしまうラストは皮肉ですが、好きです。
    許さなくてもいいのかな。
    正しくなくても、生きていける。
    この物語では分かりやすく異形の形をとっているけど、色々なものに置き換えて読めるなと思いました。家族が、動けなかったりコミュニケーションが取れなくなったら、自分はどうするのか。。

    各章の終わりにある、異形となった子どもとその家族のエピソードがとてもつらかったです。
    第一章の異形が読んでいてキツかったのですが、これ山崎さんのエピソードなんだろうな…と思うと悲しくなりました。
    春町さんの過去もなかなかつらいです。

  • ある日突然自分の子供が人間ではない異形のものに代わってしまう。
    すごく突飛な設定ですが、扱っているテーマは奥が深い親と子の関係性や人間性の承認といったものです。
    最初のうちは、怖いもの見たさという感じで読んでいましたが、途中から自分と子供の関係や他人との関係に思いを馳せながら読んでいました。
    章の終わりのストーリーが怖すぎ。
    本を読んで、人間の性とは何だろうと考えさせられました。
    子供を持つ親、特に子供との関係がうまくいっていないかもしれないと思っている人々に特にお勧めなのかもしれません。きっと思い当たる節は多いと思います。

  • かなりえぐい本です。子どもが人間はでは無いものに変化してしまう病が発症し始めた日本で、自分の子供が芋虫というかムカデというかという気持ち悪い虫に変わってしまう話です。読んでいて文面に手が触れるのをためらってしまう位緻密に書かれているので、鳥肌立つ瞬間が沢山ありました。嫌悪感バリバリ湧きます。
    しかし、その気持ち悪い風貌になったニートの息子を諦める事が出来ずに、何とか受け入れようと努力を続けます。
    法律では変異した人間は死亡したと見なされ一切の権利を失い、処分する事は全く咎められません。そんな中で夫の反対を背に息子とむき合う母親の姿が健気です。
    しかし次第にこの虫息子、大人しいし無害だしでだんだん嫌悪感は薄れていきます。でも虫ですからね、とても抱けないし触りたくないです。
    自分に当てはめて読む本って沢山有りますが、これはちょっと当て嵌めたくないなあと思いながら読みました。

  • 生きていく希望も未来もない。
    けれど死ぬ勇気もない。
    その思いが人を異形にする。

    一生懸命育てても思うようにならない子供。
    この子が普通ならこんな悩みはなかった。
    この子さえいなければ。
    子供を殺すことはできないけれど
    異形になったモノなら法律の後ろ盾もあり
    罪悪感なく殺すことができる。

    『普通』という型にはまれないことの悲しみ。

    カフカの変身と通じる。
    生きていくのは辛いけれど、死ぬ勇気もない。
    虫になれば周りも本人も人間の『普通』に苦しまなくていい。殺すことに罪悪感もない。殺されてもしかたない。

    いかにこの世が生き辛いかという話ではないか。

  • 発売当初、書店にでかでかと貼られたポスターを見てカフカの変身だと思った。

    20歳前後の、所謂社会に適合できなかった若者が異形になる奇病と、異形の我が子をめぐる家族の話。

    正直最近よくあるタイトルにパワーワードを置く作品は嫌いだ。
    タイトルに中身が負ける、タイトルの勢いのままラストまで走りきれない作品が多いからである。

    この作品に関しては、個人的に最後まで苦しい感情や期待を抱え続けてページをめくり続けられたと思っている。

    この奇病は社会や家族との繋がりが希薄な若者ほど発症する傾向にあると書いてあり、ゾッとした。
    他人事ではなかった。そしてこの世界での神様は、
    私のような社会不適合者を不要だと判断したのである。

    人間は憲法なり法律なり保護者なりに守られて、
    長く自然淘汰というシステムから遠ざかっていた。
    それが急に我が身に降りかかってきたのである。
    生産性のない人間は"虫"にされる。
    この世界のバグだという烙印を押されるかの如くである。

    また、異形になる子供は親の想定を大きく外れ
    理解できない存在になってしまったことへの
    オマージュなのではないのかとも思った。
    そういう意味では両親にとって私は虫なのかもしれない。

    治療法のないこの奇病は、発症したら最後人の形に
    戻る見込みもないので戸籍上死亡とされることになる。

    そんな中、法律に則り可及的速やかにかねてより
    疎ましく感じていた息子を処分したい父親と、
    戸惑いながらも息子を息子として扱う母親が悲しい。

    本作の主人公はこの息子のために奔走する母親であり、
    不出来な子供を持った母親の苦悩や葛藤を読んでいると
    何度拒絶しても関わろうとすることをやめない自分の
    母親の姿を重ねてしまいとても苦しくなってしまった。

    主人公はやがて異形化した子供を持つ保護者の会に入り、
    そこで各家庭の葛藤や混乱、顛末を目の当たりにする。

    それぞれの家庭にそれぞれのやるせなさ、愛情があり、
    肉親だからこそどうにもならない思いが切なかった。

    印象に残ったシーンがある。
    物語終盤少し前、視点が子供達に変わるところ。

    それまでとは全く異なる文体にのせて、
    言っても仕方がない、言ってはいけない、言えない、
    (だから言わない)子供達の感情がただひたすら
    垂れ流されていくだけの章がある。

    自分の中のどうしようもない気持ちや、
    家族や世間に対する後ろめたさ、申し訳なさ、
    やるせなさ、ぶつけどころのない感情に
    共感しすぎてしまいとても辛くなった。

    当時は押し寄せる感情と好奇心で
    次々と思うがままに読んでしまったけれど、
    もう一度じっくり沢山のことを考えながら読みたい。

  • 『異類婚姻譚』+『ぎょらん』+『トラウマ返し』+『コンビニ人間』の成分を少々…といった雰囲気。他にも含まれているものが多くってぎゅうぎゅうな感じだったけど先が気になってしまい、一日でがぁ~っと読んでしまった。面白かった。
    第二の子育て。育て直し。見直し。目に見える変形が巻き起こすペアレントトレーニング。気づき。ところどころホラー枠のような…気もした。家族ってやっぱり一番大変だよな。。。すごくよくわかる。近すぎて見えにくいけど、親しき仲には礼儀はないといけない。血がつながっていて近い関係であればなおさら互いを尊重しないといけないんだけど、近すぎて見えにくいのが家族だったりする。

  •  虫は……むりだよ……

     第57回メフィスト賞受賞作。タイトルと筋を読んだときから読みたかったもの。ミステリとかホラーじゃなくてサスペンス寄りかもしれない。設定とか飛ばして筋だけをみればぶっちゃけよくあるヒューマンドラマなんだよね。親子関係の。子どもが引きこもりニートになっちゃった親とその子どもの。子どもだけでなく、親もまた自分が至らなかったんだ、と考える過程とか、これまた正直にいわせてもらえればとてもありふれた筋だし、作品だな、と。
     で、何がよかったかってと、その設定な。引きこもりニート、要するに家族から疎まれている対象、自分は要らないんだと思っている人間が異形に変化するっていう。異形っていっても虫だったり鳥だったり人面犬だったり植物だったり魚だったり化け物だったり。いろいろあるんだけどね。
     そのおぞましさがすばらしい。そりゃそんなもんと面と向かって付き合おうとはしねぇよ。捨てるならまだいい、殺すよ。殺しちゃうよ。食うのはさすがにどうかと思うけどまあ、魚なら食えそうだな。
     作中のさらっと書かれてる政府の対応がちょっと後手に回りすぎかなって気もするし、政府とか出してくるなら日本限定なのこれ、世界はどうなのって疑問は出てくるんだけど。
     筋というか、根っこで語られている部分はありふれたものではあったんだけど、最後、人間に戻った息子が母を殺そうとするシーンはそうくるか、と思ったし、ラストのオチも秀逸でした。主人公、義母に連絡とって押し付けてやれよそれ、って思ったね。
     結局どうしてその人間が異形になっちゃうのかはよく分からんままだけどな。親から子への感情でなるのかなって思ったんだけど、そうすると中年以降の異形化が増えてきた実情がうまくかみ合わないかなぁ。赤の他人からの感情でも異形化が進むのだとしたら、作中で語られてる比ではないほど罹患者がいるはずで、だったら「家族」からの感情かしらって思うんだけど、夫婦っていうても書類だけの話で赤の他人じゃん。どこを以て家族とするのかあいまいだなぁって。
     まあでも生まれ変われて良かったな。
     抜粋。


     私たちの周りに溢れている正常な人々は、充実した人々は、一体どのようにして日々を生きているのだろうと思います。


     異形化してしまった側の気持ちが連ねてあるパートが一番好きです。

  • 面白いが赤ん坊の世話をしながら読む内容じゃないw
    家族会の中でのゴタゴタが生々しい。

  • はじめのインパクトが強すぎた分、中盤で飽きが来てしまうかもしれない。ただ、後半は親子の関係生について深く考えさせられる内容だった。まだ、子を授けかってない身としてはその辺にある子供の育て方教本よりもよっぽど為になる内容が書かれていると思う。一番、印象に残った場面としては生きることに疲れた若者の心情を数ページに渡って羅列されているところだ。この本の中でこの部分だけでも読む価値はあると思う。単純に物語関係なくすごいと思ってしまった。

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著者プロフィール

福岡県出身。本作で第57回メフィスト賞受賞。

「2020年 『人間に向いてない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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