噛みあわない会話と、ある過去について

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 337
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065118252

作品紹介・あらすじ

どうして「いじめ」てしまうんだろう。あれは「いじめ」だったのだろうか……。いまもっとも注目を集める作家、辻村深月の最新短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 怒りは消えない。それでいい。あのころ言葉にできなかった悔しさを…。

    ・ナベちゃんのヨメ
     大学時代、コーラス部でよく女子とつるんでいた。
     男を感じさせない男友達ナベちゃん。
     卒業して七年、彼が結婚するという。
     部活仲間が集まった席で紹介されたナベちゃんの婚約者は、
     ふるまいも発言も、どこかズレていた。
     戸惑う私達に追い打ちをかけたのは、ナベちゃんと婚約者の
     信じがたい頼み事でーー。

    ・パッとしない子
     美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。
     彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。
     しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――
     ある特別な思い出を除いて。
     今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。
     久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。

    ・ママ・はは

    ・早穂とゆかり


    タイトル通りの噛みあわない会話が描かれている4編の短編集。

    生きていると必ず誰かと関わっている。
    そして言葉を発し話している。
    言葉の難しさ。
    悪気がなく何気なく発した言葉や態度。
    狡猾さや悪意をもって発した言葉や態度。
    言った人と言われたひと。やった人とやられた人。
    それぞれの胸の内、心の中が痛いほど伝わってくる。
    こういう複雑な感情を的確に表現できる辻村さんが凄い!
    人間の嫌な部分や隠したい部分をスルリと描いている。

    早穂とゆかりは既読でしたが、早穂とゆかりと
    パッとしない子は読んでてスカッとしました(*'-'*)エヘヘ
    こんな人に先生をやって欲しくない(*`Д´*)
    しかし、自分の子供時代から今現在まで無自覚や無意識の
    発言や行動で誰かを深く長く傷付けていないか考えさせられました。
    心がザワついた。
    「噛みあわない会話」誰にでも思い当たる事があるのではないかな…。
    考え方や感性は人それぞれで本当に違ってて、
    きっと一生噛みあわないんだろうなぁ…。

  • ★ナベちゃんのヨメ
    男を感じさせない男。ナベちゃん。
    優しくて、いい人で、女の子が都合良く使ってしまう男の子。
    そんな男の子が結婚することに。
    周りから見るとヤバい嫁。痛い嫁。
    しかしナベちゃんはずっと守らせてくれる人を見つけた。

    ★パッとしない子
    松尾美穂の学校に、以前担任していた子のお兄さん、アイドルの佑が撮影の為にやってきた。
    松尾のことを覚えていた佑は、2人で話したいというが、当時のお礼を言われるのかと期待した松尾だったが、佑の口から出てきた言葉は。

    ★ママ・はは
    子供に対してあまりにも支配的だと親の言ってることがどれだけ正しくても感謝するのが難しくなってくる。
    親もただ親だってことに胡座をかいてると、いずれ子どもに復讐される時が来るよ。


    ★早穂とゆかり
    地元マスコミに勤めている湯本早穂は、最近やかテレビや雑誌に取り上げられている塾経営の日比野ゆかりの取材をすることになった。小学校の頃の同級生だったが、当時のゆかりは運動神経が悪く、鈍臭い。着ているものもダサい服が多い。そんな彼女が今ではカリスマ塾の経営者。


    私の苦手な短編集だが、どの話もどっぷりのめり込んでしまう。

    1人目の登場人物目線で語られていた物語が、別の人から語られた時、物語は全く違った姿を現わす。
    違う物語に出会った時、読み手の私は戦慄する。
    相手の立場になる想像力って大事だなぁとぼんやり考えこんでしまう。

    勢いのある、何とも苦い後味の良い作品だった。

  • 読み終わっていつまでも不快な思いが続く、そんな作品でした。

    4つのお話からなる短編集ですが、それぞれ

    <ナベちゃんのヨメ> 人を見下し利用していた側と見下され利用されていた側

    <パッとしない子> 若くて人気があると思っていた教師とパッとしない子と思われていた少年

    <ママ・はは> 絶対的な親の権力を行使する母親とそれに対峙してきた娘

    <早穂とゆかり> いじめていた側といじめられていた側

    というそれぞれの過去が時間の経過により立場が逆転していきます。そして、彼らは再会をする。その時に何が起きるのか、何が起こるのか。4編ともに言えるのは過去の両者の意識において、片やほぼ記憶がないほどに無意識・無自覚である一方で、もう片方は記憶から消せないほどの心の傷となって残っているという現実です。これは、決して小説の中のことだけではなく、我々の日常、毎日いたるところでごく普通に繰り広げられることでもあると思います。人があることをどのように捉えるかは人それぞれであって、感じ方が違えば心から分かり合えることなんてないのかもしれません。でも人間社会がコミュニケーションで成り立っている以上、その瞬間、瞬間でどちらかが折れて、納得したふりをしてその場を繋いでいく、その場を凌いでいくしかありません。その時に折れた側の心にだけその瞬間が深く刻まれていく。この繰り返し。折ったり、折れたり。その時の両者の力関係でどちらの立場も経験するはずです。それがみんな分かっているからこそ、その理不尽さを普段口にすることはありません。大人げないと理由をつけて黙ってしまう。そんな無自覚に見て見ぬふりをしようとする理不尽な人間社会の在り様をこんなにも生々しく描かれるとこれは辛いです。ただただ『噛みあわない会話』が続く世界、でもこれは今日も明日も我々が暮らす日常のごくごく普通の日々の一コマなのだと思います。決して特別なことを描いたわけでもない作品。それが分かるからこそ、作品中に救いを求めて読んでしまいます。でも、結局誰にも感情移入することができずに苦しい読後感が襲ってくるだけ。

    人生とはこんな風に『噛みあわない会話』が噛みあっているかのように振る舞っていくことなのかと思うと、やるせない気分になりました。

    やはり、人と人が分かり合えることはないのでしょうか。

  • 読み終えて、最初に自覚した感情は「恐怖」でした。

    4編の短編集の中心を、表紙のタイトルが貫いているような小説です。
    ひとつの出来事に対して、自分の認識している世界と、相手の認識している世界があまりにも違うことで生まれる恐怖が、えがかれています。
    まさに、話がまったく「噛み合わない」ことで生まれる恐ろしさが、見事に伝わってくる短編集です。

    少し不思議な現象はおりまぜられていますが、目に見える魔法が出てくるわけではないので、どこかで今もこういうことが起きている感じがとても強く、さらに恐怖感を強めます。
    私の過去にも同じような出来事があったんじゃないか、いずれ相手からこんな風にしっぺ返しがくるんじゃないか…そんな不安までジワジワ広がってきます。

    表紙は淡い色合いの、かわいらしい絵なので、カフェでコーヒー片手に読むのに、とても合うなと思いました。
    表紙絵と中身のギャップも、見所のひとつです。

  • 「知らなかった」は許されない4つの短編集。2話目の「パッとしない子」も怖いけれど、何と言っても、最後の「早穂とゆかり」の章。ゆかりの描写ったら。存在感と緊張感。ぞわーっとくる。「噛み合わない」まま進んで言ったら怖い。読んでて過去を振り返りたくなる。大人になってから機会を得てそこで実はこうでこうでしたと後味悪く返すなんて、器が小さいというか大人気ないかなとも思うんだけれど(意見を言いつつも反撃の仕方は色々あるでしょうよ)…それだけ傷を受けた人は深く傷ついているっていうこと。そして、そういったことで終わらせる人も大多数いるということ。みんな当然だけれど不完全ということ。…小説だし、うまく読ませているな。辻村さんの黒い作品集か。

  • 辻村深月さんは女性の奥深くに眠る厭な部分を炙りだしますねーw
    女性ならば誰もが持っているであろう、意識せずにやっている狡さや打算。
    それを目の前にドーン‼︎って置かれた時の抉られ感はハンパないですね。
    相手の為に良かれと思って、が、自分の為にへすり替わってる。
    誰かを傷つけて、忌み嫌われていく事に気が付かずにやってる。
    まさに噛み合わない会話ですね。
    受け取り方は人それぞれだから、噛み合わない事もたくさんでてくる。
    コワイなぁと思いました。
    あー…私もそういうトコあるなぁー……って思って読んでましたもん。
    なので、自分が何かをした訳ではないのに、読み終わった後に「ごめんなさい」を心の中で何度も呟いてしまいましたw
    自分にとっても相手にとっても、無意識の悪意ほどコワイものはないなと思わされる、物凄く面白い本でした‼︎
    面白さ伝わってるかなぁ?笑
    めっちゃオススメなんですよ!

  • 噛み合わない…どこまでも噛み合わない。
    きっと一生噛み合うことはないのだと思う。
    感性が合う合わないと言うのは誰にでもあることで、自分では大したことはないと思っていることでも人からしたら傷ついたり、不快に思ったり。
    繊細すぎると思われる感じ方でも、他人にとっては大事な事だったり。
    ましてや何も深く考えもせず、残酷なまでに純粋に生きていた子供の頃。自分のした行動、人から受けた仕打ちが何だったのかなんて言葉では言い表せない。言い表せない表したくない…のに、そこをなんとも上手くいつも言葉にしてくれる辻村さん。
    上質な短編集でした。

  • なべちゃんの嫁
    友達は人数だけを意識して、薄い友情を作る人、自分のことをどれだけ大切に思ってくれる人がいるかと人数関係無しに友達作りをする人。
    自分の周りにもこのふたパターンは大きく別れる。
    なべちゃんは後者でありながらも、周りからは見て見ぬ振りをされ、いつも一番になれなかった。
    一人でも一番だと考えてくれる人がいるのがどれほど嬉しいことか再び考えさせられる。


    パッとしない子
    人間は索漠とした辛い体験からは自然と距離を置くように作られていて知らぬ間に記憶を捏造することも多くある。
    この話は詭弁であるように見せながらも、実際は先生が記憶を捏造しているということが、所々の行動(娘にたくすと話したこと)などが物語っている。
    記憶を捏造することが日常茶飯事になり、捏造とすら思わない状態へとなっていた。


    まま、はは
    すごく母という存在がどうあるべきか節々で考えさせられたが、最後は急展開が起こりホラーであった。
    伏線を所々で張り、違和感を持たせつつ、最後に急展開とういう場面展開の持っていきかたに感動した。


    早穂とゆかり
    結局いじめた側はどこかで絶対自分も同じことをされるということを主題にしたストーリー。
    あれだけ徹底的な仕打ちをするほどゆかりは苦しみ、悩みあの行動に出たのだと思う。

  • 2020/03/29読了
    #辻村深月作品

    どこにでもあるような言葉足らずや
    一言多い、無意識に発せられる言葉。
    でも相手には刺さったまま風化しない。
    メールやSNSが発達した現在でも
    言葉選びは放棄してはいけないと感じた。

  • 澤村伊智「ひとんち」を読んでからこちらを読みました。
    うっすら同じにおいがして、
    あれ?辻村氏、ホラー書いてるの?って思っちゃったよ(ウソ)。
    こわいよ。

    (絶対的)優位にいた者、虐げられていたと感じていた者の話。
    (幼い頃に金銭的優位で、さらに「持って生まれた」者と、そうでない者)
    (恋人でいて欲しかった者と、そうでなかった・絶対に友達でいたかった者)など。

    それぞれ相容れない立場から見た、それぞれのフィルターでみた「過去」。
    そりゃあ、まったく違う立場から過去を見たら、全然違う過去になりますよねエ。

    そういう軸が違う人は、大人になっても同じ土俵にあがることは少ないと
    私は思いますが
    もし「虐げられていたと感じていた人」が、同じ土俵で優位にたって、
    そのころを恨んでいたら、こういうことになるのかな。こわいわ。
    読んでて「こりゃ、やりすぎじゃ?ただの逆恨み?」と思う話もあったけど
    当事者にとったら正義なんでしょう。

    話は違って自分の意見ですが
    自分の人生を俯瞰・消化・納得・諦観することって大切だと思います。
    それができなかったのが、かわいそうかな。

    「繊細すぎてついていけない。」作中、登場人物のセリフが突き刺さりました。
    (私は少女時代、いわゆるこのタイプだったから。周囲がやさしかったから
     あまり浮かなかったし、虐められなかったけど。ホッ。良かった。)
    この一言につきると思う。

    たとえば「かがみの孤城」だと
    この「繊細すぎる中学生たち」が主人公だったんだろうな。
    辻村氏の、幅広い世界観に脱帽です。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

辻村深月の作品

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