噛みあわない会話と、ある過去について

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 755
レビュー : 99
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065118252

作品紹介・あらすじ

どうして「いじめ」てしまうんだろう。あれは「いじめ」だったのだろうか……。いまもっとも注目を集める作家、辻村深月の最新短編集!

感想・レビュー・書評

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  • これは復讐。あの頃言えなかった言葉を悔しさを吐き出して行く!
    今、彼らの噛み合わない会話が始まる。

    辻村深月さんのこんな作品は初めてでまだドキドキしている。
    これは心臓をギュッと掴まれたように胸が苦しくなる読後感。
    昔の知り合いに会うのがちょっと怖くなる。

    1番怖かったのは『ママ・はは』
    毒親を持った子供の不思議な話。
    「成長した子どもが、大人になってから親の子育てを肯定できるかどうか」
    許す、許さない、感謝する、感謝しない…
    私は大丈夫だと思いながらも…こ、怖い。

    『ナベちゃんのヨメ』いい人止まりの男友達が結婚、ヨメはどんな人?

    『パッとしない子』国民的アイドルのたすくんが学校訪問。元教え子との再会にときめくが…

    『早穂とゆかり』地味な子と人気者、同級生の再会。この人たちどうして反省しないのだろう?後ろめたい気持ちが胸の奥に苦く残っていただろうに。

  • 怒りは消えない。それでいい。あのころ言葉にできなかった悔しさを…。

    ・ナベちゃんのヨメ
     大学時代、コーラス部でよく女子とつるんでいた。
     男を感じさせない男友達ナベちゃん。
     卒業して七年、彼が結婚するという。
     部活仲間が集まった席で紹介されたナベちゃんの婚約者は、
     ふるまいも発言も、どこかズレていた。
     戸惑う私達に追い打ちをかけたのは、ナベちゃんと婚約者の
     信じがたい頼み事でーー。

    ・パッとしない子
     美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。
     彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。
     しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――
     ある特別な思い出を除いて。
     今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。
     久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。

    ・ママ・はは

    ・早穂とゆかり


    タイトル通りの噛みあわない会話が描かれている4編の短編集。

    生きていると必ず誰かと関わっている。
    そして言葉を発し話している。
    言葉の難しさ。
    悪気がなく何気なく発した言葉や態度。
    狡猾さや悪意をもって発した言葉や態度。
    言った人と言われたひと。やった人とやられた人。
    それぞれの胸の内、心の中が痛いほど伝わってくる。
    こういう複雑な感情を的確に表現できる辻村さんが凄い!
    人間の嫌な部分や隠したい部分をスルリと描いている。

    早穂とゆかりは既読でしたが、早穂とゆかりと
    パッとしない子は読んでてスカッとしました(*'-'*)エヘヘ
    こんな人に先生をやって欲しくない(*`Д´*)
    しかし、自分の子供時代から今現在まで無自覚や無意識の
    発言や行動で誰かを深く長く傷付けていないか考えさせられました。
    心がザワついた。
    「噛みあわない会話」誰にでも思い当たる事があるのではないかな…。
    考え方や感性は人それぞれで本当に違ってて、
    きっと一生噛みあわないんだろうなぁ…。

  • 辻村深月さんの最新刊。短編が4つ。
    サスペンスでもミステリーでもホラーでもないのですが、どれも読んでいてぞわぞわと肌が粟立ちました。
    隠していたものを暴かれる感覚。「何者」とか「伊藤くんAtoE」とかに近いかもしれない。自覚なく悪意なく振りかざしてきたエゴイズムを、予期せぬ相手からこうも正面切って指摘されるのは、とても恐ろしい。
    人のふり見て我がふり直せというか、類似の心当たりが私にもありすぎるので、こんな風に横っ面を張られる前に治しておきたいなという所存です。

    「ナベちゃんの嫁」
    女子グループに溶け込める男子っていますよね。オトメンって言うのかな。
    性欲も下心もあるふつうの男子なのに、それを感じてもいるのに、見ないフリして都合よく仲良くするのは卑怯かもしれない。だって友達だもん!という主張ももっともだが、あまりにもナベちゃんが不憫すぎる。
    メンヘラの嫁に束縛されてようが、なにをいう権利もないよなぁ。だって彼は女子のおもちゃじゃないんだから。

    「パッとしない子」
    人気アイドルグループとして活躍しているかつての教え子が、テレビの企画で母校を訪れてくることに。自分のことを覚えているだろうかと楽しみにしていた女教師は、そこで彼の口から思いもしなかった恨み言を聞かされる。
    強烈なカウンターを食らったようだった。私まで冷や水をかぶったかと思った。
    まぁ彼の気持ちは分かるけれど……小学校教師って大変な仕事だ。生徒ひとりひとりの記憶に必ず残ってしまうんだから。一挙一動に気を抜けない。しかしどのように振る舞ったところで、一体何が生徒の地雷になるのかも分からないし。

    「ママ・はは」
    これは少しホラーテイスト。
    真面目で抑圧的な母親の記憶。成人式の振袖をきっかけに、どんどん望んだとおりに改変されていく。

    「早穂とゆかり」
    小学校の同級生だったゆかりは、いまや有名塾講師として名を馳せている。早穂はライターとして彼女にインタビューへ赴く。かつては霊感少女の痛いキャラで疎外されていたゆかりと、常にクラスの中心で人気者だった早穂。インタビューを受ける前にあなたに尋ねたいことがあると問われ……。
    パッとしない子、と構成は似ていました。
    いじめた方はいじめと思っていなかったけど、いじめられた方はずっといじめとして根に持っているという見本のような応酬。
    「あなたの名前を聞いて、私が嫌がると思うくらいの、その、自分への価値の払い方はなんなの?」というゆかりの小馬鹿にした発言が切れ味鋭すぎる。ようやく私と対等の立場になったわねとでも言いたいの?という。
    辻村深月さんが以前エッセイで語られていた直木賞受賞のときのエピソードを思い出した。有名になった途端、疎遠だった同級生からつぎつぎ連絡がくるという。こんなこと言っちゃ性格悪いけど私だったら見返したようで痛快かも。

    それにしてもこの短編集のタイトルが秀逸ですよね。
    ある過去について、お互いの認識が根本からずれてるんだから、そらぁ噛みあわないわな。

  • 「知らなかった」は許されない4つの短編集。2話目の「パッとしない子」も怖いけれど、何と言っても、最後の「早穂とゆかり」の章。ゆかりの描写ったら。存在感と緊張感。ぞわーっとくる。「噛み合わない」まま進んで言ったら怖い。読んでて過去を振り返りたくなる。大人になってから機会を得てそこで実はこうでこうでしたと後味悪く返すなんて、器が小さいというか大人気ないかなとも思うんだけれど(意見を言いつつも反撃の仕方は色々あるでしょうよ)…それだけ傷を受けた人は深く傷ついているっていうこと。そして、そういったことで終わらせる人も大多数いるということ。みんな当然だけれど不完全ということ。…小説だし、うまく読ませているな。辻村さんの黒い作品集か。

  • 辻村深月さんは女性の奥深くに眠る厭な部分を炙りだしますねーw
    女性ならば誰もが持っているであろう、意識せずにやっている狡さや打算。
    それを目の前にドーン‼︎って置かれた時の抉られ感はハンパないですね。
    相手の為に良かれと思って、が、自分の為にへすり替わってる。
    誰かを傷つけて、忌み嫌われていく事に気が付かずにやってる。
    まさに噛み合わない会話ですね。
    受け取り方は人それぞれだから、噛み合わない事もたくさんでてくる。
    コワイなぁと思いました。
    あー…私もそういうトコあるなぁー……って思って読んでましたもん。
    なので、自分が何かをした訳ではないのに、読み終わった後に「ごめんなさい」を心の中で何度も呟いてしまいましたw
    自分にとっても相手にとっても、無意識の悪意ほどコワイものはないなと思わされる、物凄く面白い本でした‼︎
    面白さ伝わってるかなぁ?笑
    めっちゃオススメなんですよ!

  • 噛み合わない…どこまでも噛み合わない。
    きっと一生噛み合うことはないのだと思う。
    感性が合う合わないと言うのは誰にでもあることで、自分では大したことはないと思っていることでも人からしたら傷ついたり、不快に思ったり。
    繊細すぎると思われる感じ方でも、他人にとっては大事な事だったり。
    ましてや何も深く考えもせず、残酷なまでに純粋に生きていた子供の頃。自分のした行動、人から受けた仕打ちが何だったのかなんて言葉では言い表せない。言い表せない表したくない…のに、そこをなんとも上手くいつも言葉にしてくれる辻村さん。
    上質な短編集でした。

  • 既読の「パッとしない子」「ナベちゃんのヨメ」が含まれた短編集。
    「早穂とゆかり」は「パッとしない子」と対になる作品。
    昔の人間関係を二人で振り返りながら、相手に嫌味を言われるという枠組みは共通しているが、こちらは読者の客観的な視点で見ても、主人公に非はなさそうなのに、逆転した社会的立場を利用してこてんぱんにやっつけられる話で、わりきれなさは一層高まっている。
    人生訓的には、主人公がはじめゆかりを避けていたように、こうした相手は避け続けるのが正解なのだろうし、ゆかりの立場からすれば、子どもの頃のトラウマは機会を見つけて昇華することで人は人生を先に進めていけるということなのだろう。
    こういう「固着→昇華」という図式はフロイトが理論化したものだが、私たちは彼の描いた人間観を文化的な図式としてなぞっているのか、それが人間の自然な本性なのか、そのあたりはもうわからなくなっている。フロイト以前の文学を読めばわかるのだろうが。

    いずれにしても、どの短編もいろいろ考えさせられる内容だった。

  • 過去の出来事は、自分の都合のいいものに解釈されて記憶に残る。それが、その人にとっての"真実"なのだ。受けた側に立ってみると、また別の"真実"が見えてくる。
    だから、当然"噛み合わない"。
    「パッとしないこ」はKindleで読んだことがあり、感想も書いている。「早穂とゆかり」も同じような話。「パッとしないこ」の主人公にやり込められる先生には同情の余地は無い。きっと、この先生はこの先も自分の行動を反省することなく、"私、何か悪いことした?"と被害者ぶるのであろう。
    「早穂とゆかり」は後味悪い。女子のいやらしさ、"純真"な子供の"悪意"を描かせるとピカイチですね。

  • いじめられている子の気持ちを
    生々しく描いた小説は度々読んで来たけれど
    いじめた側の立場で読む小説はそうそうないと思う。
    いじめた側といじめられた側、
    生まれつき運動神経が良いとか、着ている服が可愛いとか
    本人の努力とは何の関係もないところで出来上がったカースト制は、
    成長後いとも簡単に覆される。
    いじめられた方は決して忘れていないどころか
    思い出すたびに補強されてきたとしか思えないような恨みつらみが恐ろしいし、
    いじめた側の『そんなつもりはなかった』『軽い気持ちだった』という言い訳にもならない言い訳は
    「自分は大丈夫だったかしら?!」と思わず読む者に過去を振り返らせる。
    げに恐ろしい短編集なのである。

  • めちゃめちゃ面白かった。
    短編集なんだけど、それぞれがきちんと「嚙みあわない会話」と「ある過去」で繋がっていた。

    ある事象があったときに、それを与えた側と受けた側では感じ方が全く違うんだということを再確認した。

    最終編は流れも掴めてきて、こういう展開になるのかぁというザワザワがあった
    そしてそれを数段に上回る嫌な展開で話が進んで行った。

    話的には暗めのものが多かったけど、謎にスカッとする。
    おもしろかった!

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。
千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞をそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第15回本屋大賞の大賞を受賞した。
他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。
昔からファンだった作品の映画シリーズ、2019年3月1日公開予定の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』で映画初脚本を担当する。

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