聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1388
感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065119433

作品紹介・あらすじ

「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位
今、最も読むべきミステリ!!

聖女伝説が伝わる里で行われた婚礼の場で、同じ盃を回し飲みした出席者のうち、毒死した者と何事もなく助かった者が交互に出る「飛び石殺人」が発生。
不可解な毒殺は祟り神として祀られた聖女による奇蹟なのか?
探偵・上苙丞(うえおろじょう)は人の手による犯行可能性を数多の推理と論理で否定し、「奇蹟の実在」証明に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/12/05読了
    #このミス作品72冊目

    杯を回し飲みした8人が飛び石で
    毒死するという奇怪な事件を解く。
    あらゆる"可能性"を潰していく探偵。
    シリーズ2作目とのことで相関図が
    いまいち不明でしたが楽しめました。
    前作もそのうち読んでみます。

  • 前作『その可能性はすでに考えた』での究極とも言える未曾有の推理思考劇にどっぷりしっかりがっつりハマり、続編『聖女の毒杯』を満を持して手に取りました。

    読み終えての率直な感想としては「それでも私は、もっとウエオロ(本作の主人公)の活躍を読みたかったんじゃー!」というわがまま。
    本作は三部構成の物語であるが、全体のおよそ4割を占める第一部のメインを張るのはウエオロの弟子にして小学生探偵の〈八ツ星聯(やつほし・れん)〉である。
    小学生探偵というキャラ特性を存分に活かしたイジりやちょっと歳上の美少女中学生〈山崎双葉〉との間に流れる甘酸っぱい恋の気配など、殺伐としたストーリーに一服の安らぎを添えてくれる。

    だが一方で、その抜け感が本作の空気を不安定なものにしてしまっているとも言える。地方のある集落に伝わる民話伝承に根差した仄湿った雰囲気に、拗れた人間関係に恨み辛み。舞台設定としては極上なのだが前半部のノリがどうにも軽くていけない。
    実際、第二部からは唐突な程の方向転換により急激に張り詰める緊張感とスリリングと本格推理合戦が始まる訳で、ある意味ここからが本番というか第一部全体が異物のようにもたれてしまっている。
    ウエオロの知的ながらも飄々としたスタイルをフーリンが引き締めるという匙加減が心地良かったのであって、八ツ星パートにおいてもそのバランスは保って欲しかったところ。というか容疑者家族の〈俵屋家〉の面々がみんなゆるすぎて犯罪が出来そうに見えないのが致命的。また、それが目眩しとしても機能していない。

    連打のようなトリック開陳や雨霰のような伏線の回収の流れはしっかり『その可能性はすでに考えた』であるので、例によっての荒唐無稽ビックリドッキリ謎解き部分が大袈裟で楽しいのは間違いない。
    ‘その他人物’のキャラ造形というか輪郭がもう少ししっかり示されていたら序盤からグッと引き込まれたのではと思う。聯と双葉のその後も気になるところ。


    5刷
    2023.12.10

  • 何度も何度も、出てくる推理や事実に振り回される。
    これが真実だと確信しても、少し後には新たな推理と事実によって、その似非推理は却下される。
    今度こそは真実か、と思っても。
    推理の大合戦のようでした。

  • 犯人ありきで成り立つミステリーとは真逆で、奇跡による事件に着地すべく、数多の可能性を否定し尽くすので、とっても理屈っぽく感じる。
    でも登場人物やシチュエーションがなんだかマンガの様な軽い感じで、理屈ぽさも嫌な感じではなかった。聯とウエオロがあらゆる可能性を何とか否定しようと躍起になってるのも面白かった。
    結局、事件の真相は分かってしまうのだけど。
    奇跡による事件ってあるのかなぁ?

  • 個人的にはこれの1つ前の作品「その可能性はすでに考えた」よりも断然好きな作品だった
    途中少し面白い展開やイラッとする場面があり抑揚がある所が特に自分に刺さった
    私情ではあるが風邪の時スマホを見ないようにと思って買ってあったこの本を読ませて頂いたがその日は気づけば読む手が止まらず有言実行できてしまった
    話は難解な部分もあるけれど、予想しえない様なミステリー小説が読みたい!という人には強くおすすめ致します!

  • 「その可能性はすでに考えた」の続編ということで、今回はフーリンが聖女伝説のとある里を訪ねる。そこで行われた婚礼の場で、同じ盃を回し飲みした出席者が飛び石で毒殺される事件が発生。この飛び石殺人は祟神でもある聖女による奇蹟なのかー 

    今回もあらゆる可能性を登場人物らが次々に繰り出し、探偵はそれらの矛盾を論理的に突いていく。前半は「元弟子」の八ツ星が頑張り、後半で上苙がようやく登場し、お決まりのセリフ「その可能性はすでに考えた」で奇蹟の証明に挑む。

    事件のインパクトは前作のほうが勝っていたように思うが、相変わらずのキャラの濃さと推理合戦、二転三転する展開は楽しめた。ただ今作では時系列の整理と登場人物の多さ、仮説の検証はより複雑になった印象で、随所に図解や表の補足がなければついていけなかった。
    一つの事件でこれだけのトリックや推理があるのに、あらゆる可能性を否定した先の奇蹟の証明なんて本当に途方もないことだと改めて思わせる。この上苙の挑戦はまだ続くのか気になる。

  • 同じ盃を回し飲みして、飛び石番目の人だけ死んだという事件。

    登場人物の多さや仮説の多さから、すごい頭を使うが読み応えのある話だった。

    1作目と同様、キャラクターに個性があって好き。

    2022年9月10日

  • 同じ杯を回し飲みしたのに飛び石で人が死んだ謎、魅力的な主人公の女性、の突如の犯人宣言。ここまではすごく面白かった!全然トリックがわからなかったし、展開も読めなくてワクワクして読み進めた。で、次の章から見事に失速。仮説だらけなのはまあいいんだが、そもそもその仮説が推測を前提に進めるから肯定されても否定されてもイマイチ説得力がない。結局結末もうーんな感じだった。
    第二作目とは知らずに読んだんだが、一作目はまあ読まなくてもいいかなと思う。

  • 前作では「本格ミステリにこんなことができたのか!」と「奇蹟を追い求める探偵」というキャラクターや、それだけでも一つの作品が書けそうな現実離れしたトリック、そしてそれを凌駕する見事な反論に驚かされた。

    そして2作目である本作では、その驚きはさらにパワーアップしている。
    まず注目すべきポイントは「仮説の多さ」だ。

    奇数番殺害説(アミカ単独犯説)
    時間差殺害説(翠生、紀紗子共犯説)
    一人前犯行説(アミカ、花嫁、キヌア複数犯説)
    犬故意乱入説(双葉、花嫁、共犯説)
    全員共犯説
    ピザ毒混入説(花嫁がアミカのピザに毒を混ぜる)
    砒素耐性説(花婿母と妹二人、又は花嫁も砒素耐性)
    屋根裏の暗殺者説(家政婦が屋根裏から管で毒混入)
    酒器仕掛け説(酒器を三層に分け、後半のみに毒)

    ざっと9個もの仮説が出てきており、そしてそれら全てに対して、"濡れたサンダル"や"高級な着物"などの伏線を回収しながら、見事な反論がされている。
    前作同様、前提を覆す、仮説とは比べものにならないほどのシンプルな真相も良かった。

    箇条書きにしたり、表にしたりしてまとめてくれる優しさもありがたい。

    書くのは大変だろうが、三作目にも期待したい。

  • 1つ1つの可能性の間違いを指摘していく様は面白いのだが、前作同様段々とお腹いっぱいになってしまう。

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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