海賊の日本史 (講談社現代新書)

著者 :
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感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065119617

作品紹介・あらすじ

海に囲まれた日本には、古来「海賊」と呼ばれる存在がありました。海を縄張りとし、その海域を通過する船から「みかじめ料」を徴収するのがその基本的な在り方でした。古代の海賊で有名なのは平将門と共に古代国家を震撼させた藤原純友です。しかし最近の研究では、じつは純友は当初、瀬戸内の海賊を追討する立場にあったことが明らかになりました。それが複雑な権力闘争の結果として、自からが海賊となったのです。中世はまさに海賊の黄金時代で、様々な海域で様々な海賊が活発な活動を繰り広げました。南北朝時代には南朝方の熊野海賊の大船団が、北朝方の薩摩氏の攻撃に紀伊半島から鹿児島まで出撃したことが知られています。また西九州では松浦党と呼ばれる「海の武士団」が形成され、その中からは倭寇として朝鮮、中国にまで進出するような者まであったと考えられています。一方瀬戸内海はまさに海賊の本場とも言えるような地域で、有名な村上水軍を始めとする諸集団が活発に活動していました。
戦国時代になると彼らの存在は「水軍」として戦国大名に注目され、スカウトされる者も出て来ます。毛利氏に付き、本願寺戦争の木津川の戦いで織田信長の水軍を大敗させた村上水軍の働きは有名ですが、それ以外にも武田氏、北条氏、今川氏、徳川氏といった東国の、もともと水軍力を持たなかった諸大名が、伊勢、志摩、紀伊などから海賊たちを呼び寄せて自らの麾下に置きました。しかし彼らの活動も、秀吉の「海賊停止令」によって終止符を打たれます。勝手に「みかじめ料」を徴収するような行為は権力から、決して見逃すべきではないものとみなされるようになったのです。中央集権的な近世には、本来が中世的存在である海賊は、もはや存在の余地はありませんでした。ある者は取りつぶされ、ある者は大大名の家臣として生き残り、またある者は小身の大名として海を捨て、海とは全く関係のない、山間の領地でその後を過ごすことになりました。
それでも、海に囲まれた列島で、海賊が残した遺伝子は決して消えることはありませんでした。捕鯨や、遠洋漁業を始めとする漁業は言うまでもなく、造船業、回船業といった近代日本を支えた産業の中にも海賊の後裔たちの貢献の姿を見ることができます。海賊という日本史上のユニークな存在を通して日本の歴史を通覧することによって、日本の意外な一面が明らかにされて行きます。

感想・レビュー・書評

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  • そろそろ海で頑張ろうかなぁ、、、

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    藤原純友、松浦党、倭寇、村上水軍。海に囲まれた日本列島は、古来、「海賊」と呼ばれる人びとの活動の舞台だった。様々な地域で活躍した様々な「海賊」たちの存在を通して日本の歴史を読み直す、ユニークな日本史の試み。
    海に囲まれた日本には、古来「海賊」と呼ばれる存在がありました。海を縄張りとし、その海域を通過する船から「みかじめ料」を徴収するのがその基本的な在り方でした。古代の海賊で有名なのは平将門と共に古代国家を震撼させた藤原純友です。しかし最近の研究では、じつは純友は当初、瀬戸内の海賊を追討する立場にあったことが明らかになりました。それが複雑な権力闘争の結果として、自からが海賊となったのです。中世はまさに海賊の黄金時代で、様々な海域で様々な海賊が活発な活動を繰り広げました。南北朝時代には南朝方の熊野海賊の大船団が、北朝方の薩摩氏の攻撃に紀伊半島から鹿児島まで出撃したことが知られています。また西九州では松浦党と呼ばれる「海の武士団」が形成され、その中からは倭寇として朝鮮、中国にまで進出するような者まであったと考えられています。一方瀬戸内海はまさに海賊の本場とも言えるような地域で、有名な村上水軍を始めとする諸集団が活発に活動していました。
    戦国時代になると彼らの存在は「水軍」として戦国大名に注目され、スカウトされる者も出て来ます。毛利氏に付き、本願寺戦争の木津川の戦いで織田信長の水軍を大敗させた村上水軍の働きは有名ですが、それ以外にも武田氏、北条氏、今川氏、徳川氏といった東国の、もともと水軍力を持たなかった諸大名が、伊勢、志摩、紀伊などから海賊たちを呼び寄せて自らの麾下に置きました。しかし彼らの活動も、秀吉の「海賊停止令」によって終止符を打たれます。勝手に「みかじめ料」を徴収するような行為は権力から、決して見逃すべきではないものとみなされるようになったのです。中央集権的な近世には、本来が中世的存在である海賊は、もはや存在の余地はありませんでした。ある者は取りつぶされ、ある者は大大名の家臣として生き残り、またある者は小身の大名として海を捨て、海とは全く関係のない、山間の領地でその後を過ごすことになりました。
    それでも、海に囲まれた列島で、海賊が残した遺伝子は決して消えることはありませんでした。捕鯨や、遠洋漁業を始めとする漁業は言うまでもなく、造船業、回船業といった近代日本を支えた産業の中にも海賊の後裔たちの貢献の姿を見ることができます。海賊という日本史上のユニークな存在を通して日本の歴史を通覧することによって、日本の意外な一面が明らかにされて行きます。
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000309993

  • <目次>
    序章   海賊との遭遇
    第1章  藤原純友の実像
    第2章  松浦党と倭寇
    第3章  熊野海賊と南朝の海上ネットワーク
    第4章  戦国大名と海賊~西国と東国
    終章   海賊の時代

    <内容>
    タイトルに偽りアリだね。著者は、「日本には海賊はいない」と言い続けている。物取りとは違う。海の軍隊であり、警備・防衛部隊なのだ。瀬戸内海では、無事に安全に航行するために(関所などで多額の金品を取られないことも含めて)、彼らが機能していたようだ。五島列島にいたのは、対中国、朝鮮なので、若干毛色は違う。関東~伊豆のものは、完全に海軍だ。でも熊野あたりからスカウトされてきたようだ。そうなると、東国には海軍力はなかったことになる。

  • 藤原純友の乱の時代から、倭寇を経て、戦国、江戸、近世まで。海賊というキーワードで縦横無尽に歴史を切り取った本。
    承平天慶の乱とはもう言わないこと(承平年間に乱は起きていないから)、純友が藤原氏の有力者に連なるものだったこと、この辺りは新知見だった。なぜ、彼が乱を起こしたのかというところまでは踏み込みきれていないが、そこは今後の研究の成果が待たれる部分だと思われる。

    通行税を徴収するということが、初穂料として、宗教的な意味をもつということも納得だった。陸上の関と考えを同じにするというのも頷ける。
    戦国時代以降の東西の海賊のもつ、賊のニュアンスの違いなどもおもしろいところ。

    個人的には江戸期の海運商と海賊の関連、繋がりという辺りがもうすこし知りたかった。

  • 序章 海賊との遭遇
    第1章 藤原純友の実像
    第2章 松浦党と倭寇
    第3章 熊野海賊と南朝の海上ネットワーク
    第4章 戦国大名と海賊―西国と東国
    終章 海賊の時代

    著者:山内譲(1948-、愛媛県、日本史)

  • 最近、実家のある島に帰ってみると、横断幕などの表記が、『村上海賊』になってて違和感。
    とある小説に便乗したのか、はたまたワ○ピースなのか…?
    『水軍』として、これまでは戦国武将と絡めたり、水先案内人みたいなイメージが強めで、本著にもあるようにどちらかというとクリーンなイメージを持たせていただけに、違和感。
    単語ひとつにしても、大切だと思うんですがね。

  • 日本の海賊の通史。
    藤原純友や松浦党、熊野海賊、東国と西国の戦国期の海賊がメインのトピック。

  • 海賊と呼ばれて通航料を徴収する勢力がいた平安時代から、水軍の活躍した戦国時代までを眺める。武士は「一所懸命」、陸の存在として扱われ、日本列島の歴史は陸の視点から考えられるけれど、実は海と水運の国であったことをあらためて認識し、統一権力の樹立が地域の多様性を失わせたことを再確認。あらゆる河や港に独自の勢力が活動していた生き生きとした時代こそが本来の日本の姿であったのか。多様な人たちの姿に思いをはせる。

  • 本館開架(新書) [海賊 -- 歴史] [日本 -- 歴史 -- 古代] [日本 -- 歴史 -- 中世] [水軍]
    http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB26293211

  • 東2法経図・6F開架 B1/2/2483/K

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著者プロフィール

山内 譲(やまうち ゆずる)
1948年愛媛県生まれ。京都大学文学部卒。愛媛県内の高校教員等を経て、松山大学法学部教授。2017年退職。専門は日本中世史。博士(文学)

主な著書
『中世瀬戸内海地域史の研究』(法政大学出版局、1998年)
『瀬戸内の海賊-村上武吉の戦い-〈増補改訂版〉』(新潮社、2015年)
『豊臣水軍興亡史』(吉川弘文館、2016年)
『海賊の日本史』(講談社、2018年)
『伊予の中世を生きた人々-鎌倉~南北朝時代』(愛媛文化双書刊行会、2021年)

「2022年 『海の領主忽那氏の中世』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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