対岸の家事

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065122006

感想・レビュー・書評

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  • 子育て世代の描き方がとっってもリアルだった。
    リアルすぎてちょっとしんどいくらい笑

    ワーママは専業主婦って暇で良いよねって思う。
    死ぬほど忙しくて、子どもとの時間も、やりたい家事も、十分に出来なくて羨ましいのもある。
    しかも子育てと仕事を両立しようとする女性に、まだまだ社会は厳しい。また熱?て言われる。
    おまけにキャリア云々を差し置いても、旦那の給料だけではやっていけず、必死でフルタイムを続ける人も多い。

    だけど専業主婦は専業主婦で、大人と全く喋れない状況で、子どもと2人っきり。ワンオペで自分1人で伸び伸び動ける時間がなく、話し相手もいない。
    もちろん保育園にも預けられない。
    そして一家を支えられるだけの稼ぎがある旦那は大体激務で家族揃っての時間はあまりなし。
    家族の時間が多少あり、家事も対等に旦那に頼め、園に預けてる間、自分の時間があるように見える共働きが羨ましい。

    両者には深ーい溝がある。お互い余裕がないから。
    ない物ねだりしちゃう。

    だけど、結局1人で抱えられるキャパなんて大したことない。互いに支え合えたら良いなと心から思った。
    しかも今はコロナ禍で児童センターにも行きづらく、孤独な子育てを強いられている。節約のために贅沢も出来ず、子どもに栄養のあるご飯を食べさせないと、と毎日ご飯を作り、子どもには丁寧に関わろうと出来るだけ全力で向き合う。そして誰も話し相手がいない。
    でも、誰かの助けを求めて良いんだなぁと思った。この時世、すごく難しいけど、きっと絶対1人ではない。
    助けを求めるのも勇気がいるけど、いろんな人を頼りながら子育てしていきたい。そして困った時は、いろんな人を頼って生きていけば良いんだよって子どもにも教えてあげたい。

  • 今の自分にとても刺さる作品だった。
    あの時言って欲しかった言葉や、言葉にできない気持ちが、嫌味や裏のない素直な言葉で言い表されていて、救われた。
    この本を読んで、私は今の自分が嫌いなんだと改めて自覚した。現状を嘆きながら、環境を変えようとも自分が変わろうともしない。求めるばかりで与えない。
    でも、ゆっくりでいいから変わろうと思えた。
    この本はいつかまた苦しくなった時に読みたい。

  • けっこう好きな小説です。
    ゆっくり、ゆっくりひとつずつ落ち着いて家事をこなそうとする主人公に、生き急いでいるのがはっとさせられる。多分お隣の部屋のキャリアウーマンみたいに時間に追われて戦うみたいに生きてるとき自分にもあるなぁ、と。
    後半のミステリー要素はどうかと思いながらも、導入と設定が好きな小説。

  • ワーママだったら、一度は専業主婦いいなって思ったことはあるはず。私が仕事をしている間、ずっと子供と一緒にいて、家事もやって、大変なんだろうけど羨ましいよね。突然のお迎えもできる、夫とどちらが休むかで揉めることはない、子供の病気をあまつさえ疎ましく思ったりもしないだろうと。

    でもそういう所属で人をカテゴライズするのは無意味っていうのをこの小説で感じる。とにかくどんな人も大変。助けられる人が助けられる時に助ければいいじゃないってシンプルに考えたい。

  •  育児も含めた家事をテーマにした作品。7話とプロローグおよびエピローグからなる。

         * * * * *

     家事をテーマにした作品はとても多いけれど、そのほとんどは特定の人物や状況にスポットを当てた作品です。

     ところが本作は、専業主婦や共働きの女性、育休男性にシングルマザーと、家事に関わるいろいろな境遇の人々の実情を、端的に描いています。

     さらに、彼らの前に共通して横たわる問題の本質が「孤独」であることまで、きちんと描かれているのもよかったと思いました。


     タイトルや文庫版の表紙絵から、軽い作品だと思って手に取ったのですが、読んでみると現代の、社会や家庭が抱える問題を浮き彫りにしている秀作であることがわかって、いたく感じ入りました。

     朱野さんの作品をもっと読んでみたいと思えるほどの作品でした。

  • 私も同時進行とか出来ないタイプなので、家事と仕事の両立は出来ない。専業主婦になりたかった。子供も産みたかった。女性同士の妬みとか、どっちが幸せとか、女の人同士ってこうだよね〜と思う作品。笑
    また改めて見たいと思った。

  • 家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ
    詩穂。娘とたった二人だけで繰り返される毎日に、
    自分の選択が正しかったのか迷う。そんな彼女の
    まわりには、性別や立場が違っても、同じく
    現実に苦しむ人たちがいて…。

  • 専業主婦の詩穂、ワーママで2児の子育て中の礼子、育休パパの中谷、小児科に嫁いだ元保育士の晶子、子育てを終えた老婦の坂上さんの5組の家庭が、それぞれ抱える悩みや苦労を乗り越え、家事・仕事・子育て・夫婦・家族の目指す先を模索する話。

    「専業主婦は絶滅危惧種」「女性を家事に専念させる贅沢をする余裕はこの国はない」という攻撃的な言葉で、礼子にも中谷にも徹底的に蔑まれる詩穂。自ら選んだ専業主婦に自信が持てなくなってしまう。
    でも、子どもが交代で熱を出して仕事を休まないといけなくなった礼子、実は子どもと2人きりの生活に息苦しさを感じていた中谷、患者からの行き過ぎたプライベートの干渉に悩む晶子、痴呆の症状が出てきた坂上さんとその娘の力になれたことで詩穂は自分に出来ることを知り、自信を取り戻す。
    不器用で2つのことが同時にできない、と言いながらも、専業主婦としてのプライドをかけて、悩みながら前向きに頑張る姿に励まされた。

    本当なら礼子同様、仕事と2人のワンオペ子育てでノイローゼ気味になっていただろうに、育休が延びに延びてもはや専業主婦化してる自分にとって、詩穂の気持ちも礼子の気持ちも痛いほどわかった。

    専業主婦は社会のお荷物なのか、家事や育児はそんなに軽視される仕事なのか。
    専業主婦は立派な仕事だと思う。いくら家事が機械化してきていても、掃除する箇所、洗濯する物は無限にあり完璧にやろうとすれば1日休む暇など無い。名もなき家事だって挙げればキリがない。子育ては遊び相手に食事、寝かしつけともっとキツイ。
    ただ、管理する人間がいないので手抜きができて、テレビを見ながらおやつを食べる時間だって作れることは確かだ。だからといって世の中の専業主婦をひとまとめにし、楽な仕事扱いするのはやめてほしい。

    そして、ワーママ、育休パパなど、家庭にはそれぞれの事情や大切にしたいこと、守りたいものがあり、それを社会・組織・他人は尊重しなければいけないし、多種多様な家庭の有り様を認めなければいけないとつくづく思った。

  • まさに真っ只中なので、自分に引き寄せてしまったところも多く、冷静に読めていないと思う。
    でも、家の外で仕事をしている/いない、既婚/未婚、子どもがいる/いないで分断されずやっていこうよ、という作者の心からの呼びかけはよく伝わったし、そこには私も心から同意する。
    昔の主婦の井戸端会議が重要な情報収集の場だったと母になって気づいたというのには深く頷いた…主婦のランチ!って失笑的に取り上げられたりするけど、大概必要な外交なんですよ…特に子どもに関して…。

  • 最初は読んでて苦しかったけど(主婦、ワーママ、育休パパ、立場が違うと分かり合えないんだな〜と感じてしまって・・・)、読み進めるにつれて救いがあった。
    今はいろんな選択肢があるから、自分を正当化したいがために他の立場の人を悪く言ったり、優位に立ちたくてマウンティングしたりとかが現実として起こるけどさ、結局は人と人の関係だよね。
    隣から見たら自分の庭は青く見えるかもしれないし、優位に立ちたい人は案外自信がないのかも。
    他の立場の人を批判したりせずに、ゆったり構えて、目の前の人たち(もちろん家族や友人が一番だけど、関わる人すべて)を大事に生きていきたいなぁと思った。

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著者プロフィール

東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、『マタタビ潔子の猫魂』(「ゴボウ潔子の猫魂」を改題)でメディアファクトリーが主催する第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。13年、『駅物語』が大ヒットに。15年、『海に降る』が連続ドラマ化された。現代の働く女性、子育て中の女性たちの支持をうける。主な作品に『賢者の石、売ります』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『真壁家の相続』『わたし、定時で帰ります。』など。

「2022年 『くらやみガールズトーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱野帰子の作品

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