- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065122907
作品紹介・あらすじ
講談社創業100周年記年企画として刊行され、高い評価を得たシリーズの学術文庫版、第8巻。本巻では、昭和天皇とその時代を「戦争」との関わりを中心に描く。文庫化にあたり、「補章」として「象徴天皇の昭和・平成」ほか、約70ページを加筆した。
20世紀初頭の1901年に誕生した迪宮裕仁は、生涯に三度、焦土に立つ運命にあった。最初は、皇太子として訪れたヨーロッパの、第一次世界大戦の激戦地。二度目は摂政として視察した関東大震災の被災地。そして三度目は、天皇として体験した東京大空襲で焦土と化した東京である。こうした体験は、天皇の「戦争と平和」をめぐる観念に何を及ぼしたのか。激動する国際情勢のなかで、総力戦の意味を知る天皇はどのように戦争に関わり、歴史の「動力」となっていったのか。87年の生涯を通じて、苛酷な戦争と戦後の繁栄を経験した天皇が生きた「近代」という時代と、敗戦後の「退位論」浮上の背景を究明する。新たに加筆した「補章」では、近年、公開が進む「昭和天皇実録」をはじめとする新資料を通して、「昭和の戦争」が平成の天皇に残したものを検証し、「新憲法」「平和」「アメリカ」「沖縄」などの視点から、「戦後の天皇が象徴するものは何か」を考察する。
[原本:『天皇の歴史08巻 昭和天皇と戦争の世紀』講談社 2011年刊]
感想・レビュー・書評
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大正天皇の皇太子、摂政として活躍した時代から第2次世界大戦までの昭和天皇を中心に描く歴史だが、思ったより天皇が出る幕はなかった、普通の日本史という印象である。著者はむしろ立憲民主主義の象徴天皇に近い存在として、一貫してその歩みを捉えているように感じた。蒋介石も毛沢東も、昭和天皇を戦争に導いた軍に対する国民の側と考えて、戦争責任を問う考えは無かったという説明は納得がいく。1921年6月22日にはフランスのヴェルダン戦跡を訪問し、「戦争とは実に酷いものだ」と呟いたとの記述があるとのこと。天皇自身が決断する場面は少なかったとは良く言われるが、2・26事件の投降を促された村中孝次の質問に対して、山下奉文が「お前の考えて居ることは、敗戦の時分に陛下の御命であるとすると、陛下に御責任が及ぶと云う風に考えて居るのではないか。日本軍に敗戦と云う事があるか、必勝の信念のない奴だ」と答えたと山下が述べているとのこと。1936年の時点で敗戦の天皇責任に関するやり取りがあったとは実に興味深い話だと思う。そして「大本営政府連絡会議」なる機関を立ち上げ、天皇は臨席するが一切発言しないという仕組みを作っていたとのこと。これは敗戦後の天皇の無答責任を証明する上で有効だったとは、当時の政治家の見識を表しているように感じた。
大杉栄については高松宮が「彼の随筆は好きで読んだ。親しみが感じられる人だった」との日記があるとのこと、実に興味深い。美濃部達吉が機関説批判に対して貴族院での答弁に際して古事記の崇神天皇の言葉を引用していた!これも面白い発見である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
21028読了。戦前の政治家、陸軍の暴走っていうと理も非もなくただ組織の権勢の拡大のため突っ走っていったのかなってイメージだったけど、都合のいいようであったとはいえ、条文の解釈がどうのこうってことにひたすらこだわったり。社会の一員として機能せんとする人はやはり理と書かれたことにこだわるんだなという印象。いつの時代も。
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序章 昭和天皇とその時代
第1章 大正期の政治と宮中の活性化
第2章 昭和の船出と激動する世界
第3章 内なる戦い
第4章 大陸と太平洋を敵として
終章 戦いすんで
補章 象徴天皇の昭和・平成
著者:加藤陽子(1960-、さいたま市、日本史)
著者プロフィール
加藤陽子の作品






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