襲来 下

著者 :
  • 講談社
3.57
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本棚登録 : 62
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065123386

作品紹介・あらすじ

日蓮が唱えた「立正安国論」の中にある「他国侵逼」とは、大国が日本に攻め寄せるということを意味した。即ち、大陸の蒙古による九州への侵攻である。その予言を確かめ、蒙古の様子を探るために、日蓮の身の回りの世話をしていた見助が、朝鮮半島に最も近い島、対馬まではるばる遣わされたのだ。長旅を終えて対馬に到着した見助は、島民に温かく迎えられる。古くから島に住み着いている阿比留一族との交流を深め、蒙古の情報を見助は次々に入手していく。他方、日蓮はこの間、幕府からの弾圧や浄土宗による法難に遭うが、対馬と東国の間で二人の手紙のやりとりは続いた。そして見助が対馬に入って十余年、ついに蒙古が動いたとの情報が……。

感想・レビュー・書評

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  • 63史実を再現するだけでなく、師匠と弟子との魂の繋がりを強く感じさせる下巻でした。最後くらい会わせてあげて!と思うのは凡夫だからでしょう。立正安国論執筆の月にふさわしいお話しでした。

  • 3.5

  • 元寇を描く歴史時代小説の下巻。

    架空の主人公の視点ではあるものの、対馬での実況がリアリティを感じさせます。
    主人公は日蓮の手足耳目と自覚し、煩悩を押し殺し戦場記者のように記録をする様は孤高で壮絶です。
    この手法、構成のため主人公が得られない歴史背景を、周りのものから伝えられる形でうまく説明されていると思います。
    前作の「守教」もうそうですが、歴史に埋もれる無辜の民を描くのは作者の真骨頂だと思いました。
    日蓮宗の信徒ではないですが、歴史に残る宗教の教祖の至高さも感じられました。
    自分としては群像劇的なものが好きなので、鎌倉幕府の内情も描いてほしかったですが、作品としてはこれで完成されていると思います。

  • 元寇は、幸運にも2度とも神風により撤退したと思ってたが、この史実を基にした小説では、特に2度目において人智に及ぶ防禦により守ったことがうかがえる。日蓮の耳目となり活躍した見助の見た一連の事件の顛末が詳しく描かれている。ひと時も忘れぬ日蓮に遭う為に見助は戻ってくるが。描かれた日蓮が幕府、他宗教に偏見を持ち、自分のみが救世主であるがごとくの立ち位置が引っかかった。2018.11.29

  • 下巻は元寇とそれに至るまでの過程が対馬の見助を通して丁寧に描かれています。それはそれで面白い。面白いんですが、どうしてもそもそもの設定、元寇を予測した日蓮が見助を対馬に送って見張らせたっていう設定が、読み進めていくほどにどんどん無理を感じずにはいられなくなりました。文章は面白いんですけどねぇ。。

  • [上下巻込みの感想]
    『国銅』以降、歴史長編に力を入れ始め、『水神』『天に星 地に花』『守教』と北九州の無名の庶民を題材にした見事な歴史小説を執筆している帚木さん。今度は元寇を背景にした、一人の庶民・見助の数奇な人生を描いた長編小説です。
    安房国の港町・片海で若き日蓮に出会い深く帰依した見助は、他国からの侵略を予言する日蓮に乞われ、対馬に赴き20年にわたって蒙古の様子を探り続けます。
    一言でいえば愚直です。実直で律儀、そして常に周りに感謝の念を忘れない。それ故に、日蓮の布教に付き従った鎌倉で、鎌倉から博多に至る長い道中で、そして目的地である対馬で出会った人々から愛され、様々な助けを得ます。そんな姿が淡々と丁寧に描かれ、帚木さんらしく悪人はあまり出てきません。ただ見助は余りに微力であり、自らの工夫することも少なく、例えば苦難の末に渇水対策の大堰を築き上げた五人の庄屋を描いた『水神』のような感動は有りませんでした。
    また、上巻では多くのページが自然災害をも他宗が原因と鋭く攻撃し、現世利益をもたらす預言者としての日蓮に割かれています。私はどうもその宗教感についていけませんでした。

  • 図書館で借りた本。下巻になり見助は対馬で地元民と穏やかな日々を過ごしていた。日蓮は佐渡へ島流しにされたが浄土宗や真言宗、禅の仏僧らと法論を挑み論破しながら信徒を増やしていた。数年後、日蓮の予言通り対馬に蒙古襲来。島民は山奥に逃げのびた者もいるが女子らは手に穴を開けられ拉致された。壱岐は全滅。蒙古対策の石築地を建設し再びの襲来に備えた。その後の話は日本史でも有名な神風が吹き、蒙古撤退に。日蓮は身延山に。日蓮没のあと見助め死去。蒙古は本当に怖かったと思う。下手したら日本人全滅になっていたはずの出来事だった。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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