昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065123393

作品紹介・あらすじ

昭和史研究者の第一人者が、はじめて石原莞爾論をまとめた。東條英機、瀬島龍三、吉田茂など本人や側近から「昭和の闇」を再検証する

感想・レビュー・書評

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  • 面白いけど、昭和史の基礎知識が必須です。
    私は勉強不足だったので、携帯で調べつつ読みました。
    あの時代、あの事件の生き証人からインタビューしているので迫力がある。

  • 東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂といった昭和史の著名人を手際よくまとめた労作です。
    特に、戦中最も日本の舵取りが重視された局面で、最もつけてはいけない人物がトップに配置されてしまった、それが東條英機です。当時イケイケドンドンの陸軍を代表する東條が任命されたのは、強硬派の東條によって軍内を統制させるという「毒をもって毒を制す」意図があったからだが、器の小さい東條は自分に反発する有能な人材をことごとく左遷させ、彼の周りにはイエスマンしか残さなかった。彼は精神論にとり憑かれ、妥協や譲歩は敗北、従って理論的思考よりも前進あるのみという亡国思想の権化だった。彼の迷言「戦争は負けたと思った時が負け」で多くの命が無駄に失われた。
    東條英機と犬猿の仲だったのが、東條より4年後輩の石原莞爾。石原は理論派でかつ直言居士なので、東條が最も嫌悪した人物です。歴史にイフはありませんが、せめて石原が東條より先に生まれてくれていれば、東條の様な人物が軍内で重用されることはなかったのではと思われます。
    続く、五・一五事件で殺された犬養毅と二・二六事件で殺された渡辺錠太郎の娘渡辺和子の章は必読です。軍人テロで文字通り命懸けだった政治家の毅然とした態度は感動的ですらあります。
    一方で、国益よりも我が利権を優先する今の政治家の体たらくぶりが余計に悪目立ちします。

  • 最近長らく船戸与一の「満州国演義」シリーズを読んでいて、そこに出てくる人物の実像にも触れられそうだと読んでみた。論じているのは、東条英機、石原莞爾、犬養毅(犬養道子)、渡辺錠太郎(渡辺和子)、瀬島龍三、吉田茂といった面々。
    一番面白かったのは石原莞爾(とそれを追い落とそうとする東条英機)。この人のことはもっと知ってみたい。この人が東条英機を凌いでいたら昭和12年あたり以降の日本はどうなっていただろうと思わされる。石原と吉田茂が対していたらどうなっていただろうかとか、なかった日本史を思ってしまう。
    また、目からうろこが落ちるような話としては、二・二六事件のとき目の前で父を殺され、後年シスターになった渡辺和子が、著者が「お父上の命を奪った人間が悪いのではない。もっと大きな構図があり、その中で事件が起こったということでしょうか。そのような考えに達しているということになるのでしょうか」と問うたのに対し、「二・二六事件は、私にとって赦しの対象からは外れています」とこたえたこと(p.175)。赦しきれないことを渡辺もずっと抱えて生きてきたのだろう。あまりなことはしてはいけないなと感じたしだい。

  • 読了。
    七つの謎なのに主な登場人物は六名(笑)。そして何故この六名を怪物としてピックアップしたのか、その基準は良く分からない。
    実際、怪物?といえるのは石原莞爾と瀬島隆三、登場場面は少ないが牛島辰熊くらいだろう。
    だが、昭和を語るうえで重要だと思われる人物の評伝を通して、戦前~戦後を俯瞰する、という試みは成功しているように思える。
    但し、特段新たな発見は無い。

  • 瀬島龍三の事が書いてあるので買ったが、今まで詳しく知らないままになっていた石原莞爾についても知ることが出来て良かった。他にも犬養毅の孫娘、二・二六事件で銃殺された渡辺錠太郎の末娘にスポットを当てて、歴史を紐解いている。犬養毅は話せばわかるなんて言ってなかったんだ、、、興味深いエピソードも多数ありとても面白い。

  • このところ多忙につき、読感を書いている時間がない。
    とりあえず、読みましたということで、読了日と評価のみ記載。

    1218/12/4

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729301

  • 最近昭和史を改めて勉強しており、何冊か読んだ上で保阪氏の著書にトライ。結果、難しいところも多々ありつつも理解出来、非常に面白いと感じた。(逆にいうと初見でこの本は厳しいかも…)

    東条英機、石原莞爾、犬養毅など、興味深いものばかりだったが、
    ニ・ニ六事件で父を惨殺された渡辺和子さんの「ニ・ニ六事件は私の赦しの対象から外れている」という言葉が衝撃的だった。
    もちろん良い意味での衝撃なのだが、いやそうだよなと。そう思うからこそあの生き方が出来たんだろうなと、ひしひし感じました。

    そして無知ゆえ、犬養毅の息子・犬養健さんがゾルゲ事件に巻き込まれていたことを初めて知った。その首謀者の尾崎からソ連切手を託されていたっていう、もう昭和史の中枢にいないと出来ない体験をしている道子氏の、「世間とはこういうもの」(お母様の発言なのだが)という言葉が突き刺さる。いつの時代も一緒。なんでテロの被害者側が傷つかないといけないのかね。

    なんだろうな、昭和史って正直すごくセンシティブというか、扱いにくいし難しいからこそ、学校や世の中できちんと教えていかなあかんと私はずっと思っておるのです。人の考え方や、その人で構成される組織がここまでおかしくなると、ここまで国は変わっていくということが、もう滲み出て実感出来るのが昭和史というか。ニ・ニ六事件や五・一五事件なんて今の視点から見たら恐ろしすぎる事件だけど、これが起きて当たり前の世界が日本にあったという、それはきちんと教えないといけないんじゃないかなぁと、私はつくづく思っております。(ただの呟き)

  • 石原完爾を知りたくて、手に取りましたが、あまりにもマニアックな内容で、途中から断念しました!瀬島龍三のスパイ説も始めて知りました、

  • 面白かった。石原莞爾の印象が変わった。瀬島隆三という人を初めて知った。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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