歪んだ波紋

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 498
レビュー : 96
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065123515

作品紹介・あらすじ

記者は取材中に一度は未知の扉を開けるものだ。

「黒い依頼」 ――誤報と虚報
「共犯者」  ――誤報と時効
「ゼロの影」 ――誤報と沈黙
「Dの微笑」 ――誤報と娯楽
「歪んだ波紋」――誤報と権力

「面白かったからや。ギラギラして、貪欲にネタを欲しがる様がたくましく思えてな。最近おらんやろ。新聞社にそんな人間」

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディア――情報のプリズムは、武器にもなり、人間を狂わす。
そして、「革命」を企む、“わるいやつら”が、いる。

ベストセラー『罪の声』の“社会派”塩田武士が挑む、5つのリアルフィクション。

誤報の後に、真実がある。

感想・レビュー・書評

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  • "誤報"をテーマに、元新聞記者という経験を活かし、各作品ともディテールまで非常にリアルに描き込まれている。
    私自身、読んでいて背筋が凍り付いたその後に、思わずスッと伸びてしまうようなことも。

    連作として、全体のプロットは練り込まれたものだとは思うが、設定その他、細部の地に足着いた現実感に比べ、肝心の展開が典型的なご都合主義で、浮世離れしているのが少し残念。
    1つ1つのエピソードを短編の紙幅に収めなければいけない事情もあったんだろうが、そう簡単に証拠物件や証人の言質などが次々出てくるわけがない。
    特にあれだけの流れで自局の取材映像を他者に渡すテレビ局員がもしいたとすれば、あるいは誤報そのものよりも由々しき問題だ。
    表題作の終末に明かされる一味の陰謀もどうも実感を伴わないし。
    ちょっと技巧に走り過ぎたかな?

  • 「誤報」をテーマにした連作短編集。
    昨今、いろいろな情報が溢れている時代。
    フェイクニュースなど、当たり前に耳にするし、情報のスピードだけを重視し、誤字だらけのネットニュース、同じ内容を1日に何度も放送するテレビ…
    その情報、それほど重要なの?
    その情報、ニュースにするほどの内容?
    と、常々疑問に思っていたことが描かれていた作品。
    作品の中に出て来る出来事は、特定はしていないが、この事件を扱っているんだろうな、と思うものがほとんど。
    本来、ちゃんとした報道番組であろう番組でも、「視聴者提供」が多く、緻密な裏取りなどしていないのであろうなぁ、と思うこの頃。
    「新聞記者」などの矜持はどこに行ってしまったのだろう?
    これだけ情報が溢れているのに、本当に知りたいことを知ることが出来ない世の中。こんな世の中だからこそ、こういう本をいろんな人に読んで欲しい。

  • 「歪んだ波紋」
    SS席なのに二階席だったらちょっとショック。


    世の中には誤報も虚報もたくさんある。まともな情報って一体何割だろう。ニュースのネット配信が当たり前となった今、配信の早さが第一とされるニュースにはどうやってミスするの?ていう誤字脱字が並んでるモノやこれは専門家だったら間違えないだろうというレベルのミスがある。とにかく早く記事を出して、後に訂正するのが多く見受けられる(だが、訂正しましたという文言は無し。しれっと記事を更新しているパターンだ)。しかし、誤報とは情報を発信する上で発生し得るモノで、間違えはすぐさま訂正することで影響を最小限に留めることが出来る。


    一方で、誤報を訂正しないケースも存在する。その誤報には「なんとか誤魔化せないか」という発信者の卑しさがあり「これは誤報ではない」という開き直りや思い込みがあると考えられる。


    それに対して虚報は誤報と違い訂正することが出来ない。そもそも意図的に偽りの情報を発信する為、訂正する行為が存在しない。自浄作用がない。


    本書では、新聞・雑誌・テレビのレガシーメディアで発生する誤報を主題とした連作短編である。そして、誤報に隠れた虚報も扱っており、非常にスリリングでメッセージが強い。


    「黒い依頼」では誤報と虚報、「共犯者」では誤報と時効をテーマとしている。「ゼロの影」では、誤報と沈黙を「Dの微笑」は誤報と娯楽、最後の「歪んだ波紋」は誤報と権力を扱っている。どの短編でも、主人公は新聞記者、又は元新聞記者である。新聞社というレガシーメディアの内部を描きながら正しい情報の発信やヤラセ報道を正す責務や誤報の時効がないこと、誤報は人の弱さに起因すること、そしてレガシーメディアの信用低下を狙う権利の存在などがメッセージとして伝わってくる。


    レガシーメディア(雑誌、TV、新聞)はネットに対して早さでは敵わないからこそ、発信する情報の深さと信用性で戦わないといけないと思っている。果たしてこの2点は十分な質に達しているのか。簡単に誤報を流していないか。意図的な虚報が流されていないか。それらを改めて考えさせられる。当然誤報と虚報の力と怖さも感じる。


    因みに、本書のプロットは、ある公務員がゲームの世界大会で優勝して記者会見をした。それをメディアが報道したところ、ネット検証結果により、全くの嘘だと判明した。という出来事がきっかけであるとのこと。確かにこのケースだと流石に嘘ついてるとは思わないですよね。

  • 複数のジャーナリストの視点から、現代の報道のあり方について問う連作短編集。

    誤報や捏造記事、紙の新聞とネットニュースなどの問題に焦点を当てた各編は、地味ながらも現場での息づかいが伝わってくる。文章は、もう少し取っつきやすさがほしいところだが。
    ネットの速報に押されて従来の新聞が右肩下がりで勢いをなくしていく今、ジャーナリズムは今後どうなっていくのだろう。それぞれの真相もさることながら、根本的な解決を見ないままの報道の行方が気になった。

  • 新聞記者とその誤報や捏造を描いた短編連作。
    新聞というメディアがネットに押され、またネットに記事を安く買ってもらう(Yahooニュースの運営がこんな仕組みだったとは!)ことなど、新聞社としての収入が減り続け、当然取材費も減少。そんななかセンセーショナルな記事を狙い、結果として誤報や更には捏造が出てくる。
    この事に直面した記者の葛藤などを描いている。
    「罪の声」がとても良かったので、期待していたが、そこまでではなかった、残念。

  • 新聞社を主軸に、誤報、捏造、フェイクニュース等をオムニバス形式で綴った中編連作。
    裏取りをしないまま報道した内容が作り出す報道されない被害と、それを後悔するも訂正記事が打てないマスコミの姿。
    まあ、それはいいのだが、ラストは既存のマスメディアを破壊するための謎の結社みたいな動きが出てきたのはどうなのか。母の怪我(当然、謎の結社の仕込み)でフィクサーのインタビューに参加できなかった三田園だったが、無理を押して韓国までついていったら即バレるだろ。
    全体的に浅い感じがして残念。

  • 新聞には真実が載っているという前提がひっくり返ったお話

    誤報にもいろいろあるのだなぁと

  • ジャーナリズムのあり方を問う連作社会派小説。

    「黒い依頼」
    「共犯者」
    「ゼロの影」
    「Dの微笑」
    「歪んだ波紋」
    の5編収録。
    各話が主人公である新聞記者or元新聞記者の視点でマスコミの問題を描く手法にて、報道について深く考えさせられた。
    新聞の虚報に始まり、TVのやらせ、週刊誌の捏造、ネットのフェイクニュースと取り上げていて、読後は報道が信じられなくなります。
    特に書下ろしの最終話でそれまでの物語や登場人物が深く関わりあい、ジャーナリストの矜持が試される展開になります。
    作者はポスト松本清張、山崎豊子を目指していると思われ、確かに骨太で手応えのある硬派な社会派小説であり、今後の作品も期待したいです。

  • Yahoo!ニュースの隠語なんてあるのかぁ。

  • 報道は正しくあるべきもの。当たり前の社会常識だが、それは人間のやっていることだ。時に誤報だってある。問題は、誤報を発信した側のリアクションだ。隠すのか、気づかぬふりをするのか、謝罪するのか。そんな決断を迫られた報道人たちの苦悩を描いた連作短編集。

    今のネット時代、紙やテレビ媒体での報道について、一般視聴者からの訂正や批判が即座に拡がってしまう。報道人はそのスピードに圧倒されるが、その対応に遅れ、適切な処理ができなければ、さらなる批判を受けて「炎上」してしまう。

    著者はそんな現在からさらに進んだ時代を本作で提示している。それは誤報、炎上さえも武器にして、社会を変革しようとする新しいマスコミの姿。

    エンタメ小説としても、様々なタイプの報道人、報道による被害者と加害者が入り交じる短編が最終話で一気に収束される展開も見事。

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著者プロフィール

塩田武士(しおた たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社勤務中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。2016年『罪の声』にて、第7回山田風太郎賞受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門で第1位となる。2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』『騙し絵の牙』がある。『罪の声』の映画化が2020年公開決定し、小栗旬・星野源の共演が決まっている。

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