学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065124970

作品紹介・あらすじ

広中平祐氏の自伝的数学啓蒙書です。「学問とは何か」「学ぶとはどういうことか」「数学とは何か」など、数学や科学するときの最も大切な基本姿勢を教えてくれる1冊。広中平祐氏が特異点解消問題を解決して、1970年にフィールズ賞を受賞した経緯にも触れられていています。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;広中氏は、数学者でハーバード大学名誉教授。幼少の頃、分からない事は何でも質問する好奇心の強い子で、母親から❝なぜなぜ坊や❞と呼ばれていたそうです。母は質問に答えられないと医者や神主の所へ連れて行き、尋ねてくれたと言います。代数幾何学の研究が認められ、1970年に日本で二人目となるフィールズ賞受賞(受賞条件は、40歳以下、4年に1度など)。日本人の受賞は3人だけで、1990年以降いません。
    2.本書;広中氏の人生かつ学問論。1982年に初版。2018年にブルーバックスで復刊。氏は「この本の中で、自分の人生を赤裸々に語った」と言っています。さらに「学問の愉しさ、自分という人間をより深く認識理解する喜びを語った。創造ある生き方こそ最高の人生。創造する為には、まず学ばなければならない」とも四章構成で、第一章;生きること学ぶこと~第四章;自己の発見。学ぶという事について、自身のこれまでの人生を振返り、存分に語っています。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『第一章;生きること学ぶこと』より、「私もまた、書物を介して天才、偉人の人生を垣間見て、少なからず学ぶ所があった。だが私はそれよりも、過去51年、日常生活の中で出会った様々な無名の人間から、生きる姿勢といったものを、より多く学んだように思う。私の❝人生の師❞は、身近な人間である事が多かったように思う」
    ●感想⇒私は、他のレビューで❝読書や身近な人から学ぶ❞事の大切さ書いてきました。先ず❝読書❞。読書する姿勢が重要です。普段からの勉強を欠かさず、自分としての考え方や生き方を形成する事。物事の良し悪しを判断するモノサシを磨く(現地現物で見る眼を養う)。巷には、売れればよいという本や、他人の受け売り本が溢れています。その中で、人生の拠り所になる良書を見つけたいものです。私が心から真に共鳴出来た書物は、数える程しかありません。本の良し悪し判断は人によって違います。正解は無いでしょう。次に❝身近な人に学ぶ❞です。氏が言うように、これは読書よりも重要で、思い起こせば、私も多くの人からものの考え方のヒントを貰いました。友人・恩師・上司・祖母・・・。実際に経験してきた人の言葉には重みと説得力があります。テレビで原稿を読んでいるだけの評論家諸氏等の言葉は薄っぺらで魅力に欠けます。耳を背けたくなる事もしばしば・・・。
    (2)『第二章;創造への旅』より、「学問をする上でも、非常に大切な事に❝目標❞を定めるという事がある。なぜ大切なのかというと、人は目標を定めないと、前に突き進んでいく精神エネルギーが生まれにくいという事があるからだ。・・・大学に合格した途端、目標が無くなってしまう受験の勉強の仕方より、実社会に出ても色褪せない目標があるべきだと言いたい」
    ●感想⇒「人は目標を定めないと、前に突き進んでいく精神エネルギーが生まれにくい。実社会に出ても色褪せない目標があるべきだ」に共感します。私も❝目標❞をあった方が良いと考えます。心の拠り所があれば、気力を鼓舞出来ると思うからです。自分らしく、こうありたいとイメージし、結果もさる事ながら、それに向かっての努力過程が貴重なのです。そして、その目標が❝世の為、人の為❞に繋がるといいですね。目標達成には、先ず職業選択が重要です。私は、学生時代に思い描いた目標とは異なる道に進みました。職をやや安易に考えたのです。人生の目標を思案中の人は本当にやりたい職種を選ぶと良いと思います。衷心から望む仕事を得る事です。例えば、企業選択にしても、知名度や規模に惑わされない事。「好きこそ物の上手なれ」と言いますからね。
    (3)『第三章;チャレンジする精神』より、「世の中で成功した人は、大抵、逆境を自分の人生にプラスに取り組んでいく能力を備えているように私には見える」「大学、大学院の7年間三畳一間の小さな部屋に下宿し、机代わりにミカン箱を使い、その下に本を置いていた事、布団は敷くものも掛けるものも布地のついていない薄い綿だけだった」「学者もまた、何かに飢えていなければ、創造し続ける事は出来ない」
    ●感想⇒人はどのような環境で生まれたかで、その後の人生に少なからず影響があると思います。裕福な家庭かそうでないかの違いは大きいでしょう。しかし、それを嘆いても仕方ありません。与えられた条件の中で頑張るしかないのです。「逆境を自分の人生にプラスに取り組んでいく能力」というものがあるのかどうか分かりません。しかし、私の経験では、挫折を味わった人は、そうでない人に比べると、精神面で強さがあると感じました。困った状況に直面した際、狼狽えそうな状況でも、冷静に問題を分析し、行動するのです。どこにこんな強さが有るのだろうかと感心したものです。人は信条が違うので、それぞれと思いますが、❝若い時の苦労は買うてもせよ❞は至言かもしれませんね。不遇でも、自分なりに努力すれば、きっと光明を見出せると思うのです。
    4.まとめ;本書は広中氏が❝学ぶ事の大切さ❞を語った学問論です。私事です。私は小学生の頃から数字に関する事が好きでした。高校時代は、数学の難問を解くのが楽しくて、自分なりに勉強しました。とりわけ❝チャート式参考書❞と明け暮れたものです。理科系に進みたかったのですが、個人的な事情で文科系に進学しました。悔しい思いをしました。しかし、その後に、人生の師とも言える人達に出会い、結果としては良かったと思っています。❝学問❞に対する憧れもあり、「学問の創造(福井謙一)」や「学問の探検(江上波夫)」・・・を読み漁りました。学ぶ気持ちだけは持ち続けたいと考えます。

  • フィールズ賞数学者である著者が、自身の数学への取り組みを基に学究の意義を綴った1冊。個人的に印象に残ったのは、どのような領域であれ、何かを創造すること以上に楽しいことはない(意訳)との一節。やっぱりヒトの原動力はモノづくりへの欲求なのだなあと。あと遊び。

  • COURRIER JAPON
    著名人の本棚
    石倉洋子さんの推薦図書より

  • sleep with problem

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50110521

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB26471750

  • めっちゃ面白かった!創造への手がかりを掴んだ気がする。彼が自分のことを凡人と捉えているところも心強い!

  • 広中先生が数学を本気でやり始めたきっかけは、大学院生のときに、小学生の女の子から「おじさ~ん!」と呼ばれたことにショックを受けてのことだったとか。めちゃめちゃ面白かったです。
    ただ、数学者の考える「創造性」と、我々一般人の生を充実させるための「創造性」が、どのようにリンクするのか、どうにも掴み所がない感じです。
    小林秀雄と哲学者との対談で、"数学者がモノを考えているなんてウソだ。彼らはただシンボルを操作しているだけにすぎない" とあったので、それに対する回答を数学者の側から欲しかったのだけれど...。

  • 289-H
    閲覧新書

  • 著者は数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞の受賞者。失敗や酷評にもくじけず粘り強く研究を続けた日々が語られています。大学での学びの意義と学びの先にある発見と創造の愉しさが静かに伝わってきます。

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