- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065127773
作品紹介・あらすじ
ありえない、そんなはずはない。
10年前、あいつは死んだはずだった――
極寒の氷雪峰に置き去りにされ、
“時”とともに氷漬けになったはずの友。
しかし、対面した遺体は明らかに歳をとっていた……
2016年、ペルーはブランカ山群。山岳カメラマンの真山道弘は単身シウラ・グランデ峰を登っていた。10年前、クレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を迎えにきたのだ。ずいぶん待たせて悪かったな――クレバスの底に降り立ち、樋口を見つけ出した真山だったが、遺体の顔を覆う氷雪を落として驚愕する。極寒のクレバスに閉じ込められた遺体は、歳を取ることなく凍りついてしまうはず。しかし、樋口の顔は明らかに10年前より老いていたのだ。なぜだ、ありえない。まさか、樋口はあの時生還していたのか?ならばなぜ連絡をよこさなかった?そしてなぜ同じ場所で命を落としている?樋口、お前は一体何をしていたんだ?
親友が過ごした、謎に包まれし“歳月”。
真相にたどり着いたとき、あなたはきっと胸を熱くする。
注目の乱歩賞作家が仕掛ける、哀しき罪と罰。
『生還者』につぐ感涙必至の山岳ミステリー!
感想・レビュー・書評
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青臭くて、そして熱い男たちの絆と友情の山岳ミステリー。下村敦史さんの作品を読むのはこれで三作目ですが、『闇に香る嘘』が中国残留孤児、『叛徒』が通訳捜査官と外国人の労働問題。
そしてこの『失踪者』が山岳ものと、作風のバリエーションの幅広さに驚きます。そしてどの作品も確実に芯を突いてくる。その筆力と構成力も本当にスゴい。
十年前の転落事故で親友の樋口を、クレバスに置き去りにしてしまった真山。彼の遺体を回収するため、再びシウラ・グランデ峰に挑み、遺体を発見した真山だったが、樋口の遺体は数年分年を取っていて……
秘密裏に生還し、そして姿を消した樋口を追う現在パートと、真山と樋口の関係性が描かれる過去パートが交互に展開していきます。
現在パートのミステリとしての面白さはもちろんだけど、過去パートで描かれる、真山と樋口の関係性が、先に書いたように青臭くも、熱くそして爽やか。
団体としての和が問われる山岳の競技大会。常人離れした才能と実力を持ちながらも、チームにまったく馴染もうとしない樋口に、別チームに所属していた真山は徐々に興味を持つように。
そして競技大会で受けた恩を返すため、真山は一人、樋口がトレーニングしている山へ挑みます。そこで徐々に見えてくる孤高の天才、樋口の底知れない実力と野望、そして孤独。それに強く惹かれた真山は、樋口の夢に付き合う決心を固め……
何者も寄せ付けなかった樋口が見せる意外な顔と、真山が樋口の才能と登りっぷりにとことん惚れ込む様子が、どんどんと読んでいる自分を引き込んでいきました。
このときの二人は大学4回生だけど、それを感じさせない青さと爽やかさ。青春真っ只中という感じがして、読んでいて爽快感すら感じさせます。
そして、物語の骨組みを支えるのが、登山に関しての知識と、圧巻の登山の場面。いずれの描写や説明も丁寧かつ迫力に溢れていて、山と男たちの物語がより真に迫ってきます。
大学卒業後も二人の絆はますます深まり、ついに樋口の悲願だった標高8000メートルを超えるK2と呼ばれる山脈に挑むことに。しかしそのタイミングで、真山の身辺に思わぬ事態が起こり……
K2へ挑む二人のワクワク感から、二人の決裂。それは一つの時代が終わったような寂しさを、読んでいる自分も感じました。そしてそれぞれの道へ袂を分かった二人を、忘れられぬ山への思いと、絆が再び結びつける。この男臭さも熱さも本当にたまらない!
過去パートが10年前の事件に追いつき、そして描かれる現在パートの真実。消えたはずの樋口と同じ登山スタイルの謎のクライマーの正体。そして、最後に真山がシウラ・グランデ峰で見つけたものと、たどり着いた樋口の想い。
死んでしまった登場人物はもう戻ってはこない。その登場人物が魅力的であればあるほど、物語とは分かっていながらも残念に感じてしまいます。しかしこの『失踪者』のエピローグは、その残念な気持ちを凌駕し、心に何か熱いものを残してくれました。 -
下村敦史『失踪者』講談社文庫。
『生還者』に継ぐ、壮大なスケールで描かれる山岳ミステリー。細部まで巧く考えられたミステリーであり、10年という時間と地理的なスケールの大きさにも驚かされた。気が付けば、早く真相を知りたいと願いながらも、読み終えたくないと願うジレンマに苦しむ自分が居た。
2016年、山岳カメラマンの真山道弘は10年前にクレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を捜しにシウラ・グランデ峰を登る。真山はクレパスの底に変わり果てた姿の樋口の遺体を発見するが、有り得ないことに遺体は明らかに歳を取っていた……
下村敦史の作品には裏切られることがなく、安心して読める。 -
最近のお気に入り、下村さんの本を続けて読了。
山岳ミステリーは「生還者」以来の半年ぶり。登山用具の名前を調べては、あーそうだった、と思い出すw
少し予想できてしまったので大きな驚きはなかった。友情に感動、だけど登山家って自分勝手よね…
結末は「生還者」の方が好きだけど、「失踪者」の方が現実味があると思った。
今回はカンチの名前が一回も出てこなかったけど、敢えてなのかな。 -
個人的には久々に☆5のヒット作品!
面白くて引き込まれて一気に読み終わってしまいました。
途中何度も「えぇ!どういう事?」と休む暇を与えてくれませんでした。笑
主人公と親友樋口が一緒に山を目指すシーンが楽しくってワクワクした。 -
10年前転落事故で死亡した友の遺体を収容しに、主人公は南アンデスのシラウ・グランデ峰に向かう。しかし、その事故現場で見つけたのは、数年分歳を取っていた友の遺体だった。
その理由(わけ)は?
さらに死んだはずの友と同じ登攀スタイルの人物が現れ、オカルト的な謎がさらに深まる。
そして小説は、2016年の現代と事故当時の06年、大学時代の1991年や92年、さらには99年、03年、04年と、目まぐるしく過去と現代を行き来する。
著者の巧みな手法に翻弄されながら、読者は頁を捲らざるを得なくなる。
随所に記される登山シーンは、その場に臨場しなければ描けないほど見事な迫力がある。
しかし、著者に本格的な登山経験は無いという。
作家の想像力、畏るべし。。 -
真山道弘が友人だった樋口友一の遺体を遭難現場で確認した場面から始まる物語だが、過去と現在の事象が交錯しながら謎を明らかにしていく展開が楽しめた.遺体の樋口が年を取っていたことを発見した真山は、彼の生存を確認しその理由を探る.榊智輝や宮崎洋介などクライマーが登場するが、真山の探究に多くのヒントを与えてくれている.謎の人物 谷本勇一の存在を探ることで、樋口の思いを確認した真山.感動的な終結だ.
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山岳ミステリー小説。
10年前にクレバスに滑落した親友をおいて、再度会いに。明らかに遺体は年を取っていて。
登山の描画が細かく冬山、8000m超の山、岩壁にちょっと興味を持った。
山岳小説は新田次郎の「孤高の人」が名作だが、これの現代版と言ってもいいかも。それぞれの立場から資金に悩みながら8000m級の山に登る。スポンサーを募るもの、カメラマンとして同行するもの、代わりに登るもの。それぞれの利害がよく描かれている。最後は友情の証が。
著者プロフィール
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