日本の国益 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065131268

作品紹介・あらすじ

主権や国益が優先する時代に突入し、自由貿易や法の支配といったリベラルな国際秩序が悲鳴を上げている。

 アメリカのトランプ大統領は「自国民最優先」の政策に大きく舵を切った。そして、アメリカが後退した空白を埋めるかのように、中国が「大国外交」と「核心利益」を掲げて自己主張を強め、ロシアとともに力による現状変更に動いている。欧州でもナショナリズムが高まり、国益の復権がEUのつながりを脅かしている。

 しかし、世界の激動の中で、国家をかくも駆り立てる「国益」とはそもそも何なのか?

 「国益を誤れば国家は滅びる」。戦前の日本がそうであった。しかし、それほど重大なテーマにもかかわらず、私達は国益について真剣に考えているだろうか?

 世界で国益が声高に叫ばれる今日において、改めて「国益とは何か」を考えることで、日本の行方を中長期的に思考するための外交入門。

<本書の構成>

序章  今、なぜ国益を考えるのか?
第1章 「国益」とは何か
第2章 「国益」の歴史的変遷
第3章 国益とパワーをめぐる大国の攻防
第4章 日本の国益を揺るがす三つの脅威
終章 日本の「開かれた国益」外交

感想・レビュー・書評

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  • 小原先生のゼミに入っていて教科書代わりだったので。なんとも言い難いですが、実務家が政治学の古典理論を引用するものの、それとはあまり関係のない実務経験によって結論を導き出すといった感じで、我々学生にとっては、結局ゼミの目的が外務省・防衛省官僚育成のケーススタディ・図上演習的なものなのか、それともミネルヴァの梟的なアナリスト的視点を獲得することなのか、いまいち判然とせず、判然とせぬまま卒論を書いて卒業してしまい消化不良感がある。前者に傾斜すれば「床屋政談をするな」「外務省OBコメンテーターの誰々は先輩だが、ああいうのはダメだ」となり、後者に寄せれば「実際の現場で役に立つか」となる。政治家でも学者でもない、官僚という立場の難しさということなのだろうかと首を捻った思い出。

  • 外交官による新書。とてもよく整理されている。(類書にたまにあるような)公式パンフレットのような内容ではなくてよかった。



    【目次】
    はじめに [003-005]
    目次 [006-010]

    序章 今、なぜ国益を考えるのか? 011

    第一章 「国益」とは何か 019
    1 「国益」という概念 020
    2 国益と絡み合うパワーと道義 028
    3 国内政治と国際政治における国益の立ち位置 035

    第二章 「国益」の歴史的変遷 043
    1 トゥキディデスの『戦史(ペロポネソス戦争史)』が語ること 044
    2 マキャベリズムと「国家理性」 050
    3 国家主権とホッブズの無秩序世界 054
    4 ウィーン体制と勢力均衡 058
    5 パワーと国益が支配した二つの世界大戦 066
    6 冷戦期の「戦争と平和」 074
    7 キューバ危機と世界益・人類益 080
    8 冷戦終結と九・一一の衝撃 085
    9 国益最優先の時代 090
    10 リベラルな国際秩序の瓦解 094

    第三章 国益とパワーをめぐる大国の攻防 103
    1 「大復興」する中国の国益と戦略 104
     (1) 国益優先の外交へ
     (2) 「強国・強軍」を目指す「中国の夢」
    2 香港の「一国二制度」から台湾の統一へ 127
    3 「一帯一路」と中国の目指す国際秩序 132
    4 習近平時代の中国の行方 135
    5 米中「新冷戦」と東アジア秩序 139
     (1) パワー・シフト:「中国はアメリカを追い抜くか?」
     (2) 米中衝突
     (3) 米国に求められる戦略

    第四章 日本の国益を揺るがす三つの脅威 157
    1 北朝鮮の核・ミサイルの脅威 160
     (1) 急展開する朝鮮半島情勢
     (2) 北朝鮮の意図と論理
     (3) 核・ミサイルに代わる「体制保証」とは何か?
     (4) 「朝鮮半島の非核化」の意味と進め方
     (5) 朝鮮半島の非核化と日本の国益
     (6) 米朝対話の行方
     (7) 非核化は実現できるか?
    2 東シナ海の対立と海の守り 196
     (1) 日中が攻守対峙する「新常態」
     (2) 尖閣諸島をめぐる対立
     (3) 尖閣諸島問題の本質
     (4) 尖閣諸島と日本の国益
    3 南シナ海問題と「法の支配」 226
     (1) 領有権をめぐる周辺諸国の争い
     (2) 中国の「サラミ戦術」とアメリカの「航行の自由作戦」
     (3) 南シナ海問題と日本の国益

    終章 日本の「開かれた国益」外交 257
    1 日米同盟と「境界国家」論 258
    2 日本外交の選択肢 264
    3 「日米同盟+α」 269
    4 「日中関係のマネージメント」の難度と重要性 273
    5 「開かれた国益」を目指して 277

    あとがき(二〇一八年八月 小原雅博) [284-286]
    参考文献 [287-289]

  • 著者が本書を著した目的は明確だ。米国をはじめとする自国ファーストの世界的潮流の中で、日本が実現すべき「国益」を明らかにすることである。その答えは序章で早々と明らかにされている。すなわち、国益を追求する現実主義と国際益・世界益の理想主義を両輪とする「開かれた国益」こそがそれである。中江兆民『三酔人経綸問答』で言えば南海先生のような立場か。その上で、第一章・第二章では一般的な国益概念とその歴史的変遷をたどり、第三章ではその現代的展開例として主に中国の外交政策と米中関係について論じる。長らく第一線で対中外交に関わってこられた著者の面目躍如。そして第四章では日本の国益に大きな影響を与える三つの脅威、①北朝鮮の核ミサイル開発、②尖閣諸島への中国進出、③南シナ海での「法の支配」への挑戦について現状を整理し、最終章では改めて「開かれた国益」を実現するための具体策を提示している。恐らく東大での現代日本外交の講義はこのような内容なのだろうなと思われ、その後激化した日韓関係、香港問題は読者がアップデートすれば足りるだろう。

  • 2019年、2冊目です。

    最近、安倍首相が「自由で開かれたインド、太平洋戦略」と唱えています。

  • 序章 今、なぜ国益を考えるのか?
    第1章 「国益」とは何か
    第2章 「国益」の歴史的変遷
    第3章 国益とパワーをめぐる大国の攻防
    第4章 日本の国益を揺るがす三つの脅威
    終章 日本の「開かれた国益」外交

    著者:小原雅博(1955-、徳島県那賀町、外交官)

  • 前半は世界史の中で「国益とは?」大変勉強になった
    後半、現代世界における国益問題は、米国・中国の二大超大国問題に集約され
    ダイナミックな拡がりに欠けた点は残念 ロシア・EU・新興国
    よく勉強されていることへは敬意を表したい

    中国はアヘン戦争以来の国辱を晴らすべく、着々と準備を進めてきた
    米ソ冷戦の間に、米国の反ソゆえの支援、日本のODA協力、ECとの親密化
    ここへ来て、習近平の「世界大国宣言」は中華思想の再興そのもの
    トランプ大統領の反応は想定内だと思う 90年代の日本のようにはいかない

  • 国益とは何か、国益概念の歴史的変遷、日本の国益に関わる問題として、朝鮮半島、東シナ海、南シナ海を取り上げた上で、我が国の国益とそのために取るべき進路を論じる。

  • 日本のとるべき道についての詳細な議論を展開している。こういった本を読むと、日本に残された道はほとんど選択肢がないように思えてくる。

  • 法経開架 B1/2/2494/K

  • 東2法経図・6F開架 B1/2/2494/K

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著者プロフィール

小原雅博(こはら・まさひろ):博士(国際関係学)。東京大学卒、UCバークレーにて修士号取得。1980 年に外務省に入り、アジア大洋州局審議官、在シドニー総領事、在上海総領事を歴任後、2015年に東京大学大学院法学政治学研究科教授に就任。2021年東京大学を定年退職。現在東京大学名誉教授の他、名城大学など複数の大学で特任教授や客員教授を務め、海外では復旦大学(上海)客員教授も務める。10MTVで「大人のための教養講座」を担当するほか、企業のアドバイザーも務める。著書に、『国益と外交』『東アジア共同体』(共に日本経済新聞社)、『境界国家論』(時事通信社)、『日本の国益』(講談社)、『大学4年間の国際政治学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)、『コロナの衝撃-感染爆発で世界はどうなる?』『東大白熱ゼミー国際政治の授業』『チャイナジレンマ』(ディスカヴァー携書)、『日本走向何方』(中信出版社)、『日本的選択』(上海人民出版社)他多数。

「2022年 『戦争と平和の国際政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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