叙述トリック短編集

著者 :
  • 講談社
3.12
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本棚登録 : 945
感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065131398

作品紹介・あらすじ

*注意! この短編集はすべての短編に叙述トリックが含まれています。騙されないよう、気をつけてお読みください。

本格ミステリ界の旗手が仕掛ける前代未聞の読者への挑戦状!

よく「叙述トリックはアンフェアだ」と言われてしまいます。これが叙述トリックというものの泣きどころです。
では、アンフェアにならずに叙述トリックを書く方法はないのでしょうか?
答えはノーです。最初に「この短編集はすべての話に叙述トリックが入っています」と断る。そうすれば皆、注意して読みますし、後出しではなくなります。
問題は「それで本当に読者を騙せるのか?」という点です。最初に「叙述トリックが入っています」と断ってしまったら、それ自体がすでに大胆なネタバレであり、読者は簡単に真相を見抜いてしまうのではないでしょうか?
そこに挑戦したのが本書です。果たして、この挑戦は無謀なのでしょうか? そうでもないのでしょうか?その答えは、皆様が本書の事件を解き明かせるかどうか、で決まります。(「読者への挑戦状」より一部抜粋)

感想・レビュー・書評

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  •  ミステリファンの方なら、叙述トリックを使ったミステリの名作と言われれば国内・海外問わず何作か思い浮かぶことと思うが、犯人がというより寧ろ「作者が読者に対して仕掛けるトリック」であるというその性質上、叙述トリックはどうしてもアンフェアだと言われがちである。そこで、アンフェアにならずに叙述トリックを書くという興味深い試みに挑戦したのが本短編集である。つまり、予め「この短編集にはすべて叙述トリックが使われていますよ」と断った上で「読者に挑戦する」というものである。
     挑戦されちゃあ仕方がないということで、気合を入れて、幾つかのトリックは見破ったのだが、恐らく作者が一番引っかかって欲しいであろうトリックにはまんまと騙された。詳しくは書かないが、叙述トリックを使ってますよと宣言し「開き直って」いるこの本らしいトリックで、こういうある意味子供じみたものはかなり好みである。少しネタバレすると、巻頭の読者への挑戦状では、何とも親切なことに!各話のヒントが書いてくれているのだが、これが最初に読んで思う以上にヒントだったりする。最後から二番目の話も、単発名探偵ものの短編集という形式を活かしたトリックで、思わずうーんと唸ってしまった。
     似鳥鶏さんは今回初めて著作を手に取った作家だったのだが、ユーモラスで明るい雰囲気の語りが楽しく、これからも読みたいと思えた。

  • 面白かったー。
    全て叙述トリックであると明言された短編集。
    気づいたものもあれば全く気づかなかったものもあり、どちらも楽しめた。
    書くのも楽しむぞ、読者も楽しませるぞ、という気持ちがびんびん伝わってきて、にこにこしてしまった。いいなぁ。
    その中にさらっと社会的な意見も織り込むところがまた好き。

  • 初読みの作家さん。
    1冊前に読み終えた別の作家さんと違って、せっかく前書きにあたる「読者への挑戦状」には好感が持てたのだが、結局1冊前の作家さんと同じように本書の作家さんにも間違った記述箇所が有ったので残念だ。

    どうしてご自分で構築した場面なのに、トリックや叙述云々の部分にばかりこだわって、他の部分で間違える作家さんがいらっしゃるのだろう。
    本書(私が読んだのは第1刷発行)では、「だから、そこにいる松本さん。……お前の友達の。高校時代から仲良しだったっていう」というセリフ。
    まだこの時点では「そこにいる」(斜向かい)ではなく「ここにいる」(隣)と言わなくてはおかしい。
    普通は、自分の隣にいる人のことを「そこにいる」とは言わない。
    ましてや発言者は、斜向かいの人物の隣(正面ではない)にいる妹に向かって答えているわけだし。
    つまり登場人物がまだ勘違いしている場面では言わないはずの言葉を、著者が書いてしまっている。

    その上、叙述トリック云々の前に、とにかくストーリーがつまらない。
    4話目に至っては、読みにくいし全くストーリーに入り込む気になれず、ここからは読み飛ばした。
    ただ、ここまでの数々の違和感から、「読者への挑戦状」太字の、本書全体に渡っての叙述トリックはなんとなく気づいていた。

  • 似鳥鶏さんの他の作品で、気持ちよく騙されたので今作を購入。
    ネタバレになるので詳しくは言えませんが、短編集となっていますが初っ端から最後までまるっと騙されてました。
    どうしても普通にミステリーを読んでいる感覚でいるので、不意にそう言えば叙述トリックなんでした、と騙された後に気付かされる。

    「なんとなく買った本の結末」
    一番騙されにくかった話でしたが、一番好きな話。
    「閉じられた三人と二人」
    いきなりぶっ飛んだ展開かと思いきや…

    と中身は言えませんが、ネタバレ後の再読も楽しめそうです。

  • 「全ての話に叙述トリックが入っています」と冒頭から作者が言い放つ短編集。確かにいろんなパターンの叙述トリックが使われていて、傑作も珍作もあり、総合的にはバカミスと紙一重だったが楽しく読めた。
    叙述トリックを使いつつ犯人当てにもなっていた『貧乏荘の怪事件』がマイベスト。気を抜いていた訳では無いがあのトリックには盲点を突かれたな(^O^)。似鳥さんって結構技巧派だったんだね。

  • わかりやすいものから騙された!なものまで叙述トリック満載でした。
    個人的にはキュンキュンする話があって良かった。叙述トリックと知っているので、上手くいなかいオチなんじゃないかとヒヤヒヤしたけれど、上手くいって本当に良かった。
    読者への挑戦状を読んでからしばらく間をあけて読んでしまったので、最後はもう「あー、そんなこと言ってたな……」ってなっちゃったので一気読み推奨(笑)

  • あまり話にのめり込めず。
    初めのお話は全体がわかって面白かったですが。

  • 最初から叙述トリックってわかってると、全て疑って読んでしまう分、たしかに書く人にとっては難しいんだろうなー。
    「背中合わせの恋人」はなかなか。
    「ちゃんと流す神様」はネタが分かってからもう一度読むと、思ってたイメージとだいぶ変わって面白かった。

  • ここまで正々堂々とタイトルで表してしまっていいものか、と思えるほど潔く手口が公開された(笑)連作ミステリ。だけど分かってても騙されちゃうんだよねえ。ものすごーくわかりやすいヒントも差し出されたうえでの勝率は半分くらいでしょうか。ま、騙されるのが楽しいんですけどね。
    お気に入りは「なんとなく買った本の結末」。ミステリとしてのトリックは「なーんだ」って思ってしまう部分もあるけれど。本好きはこれを読んで、ますます本に対する愛着が湧くのではないでしょうか。そうだよね、本って素晴らしいよね!

  • 全編叙述トリックを使ってます、と宣言してから始まる短編集。
    すぐわかるトリックもあるけれど、おもしろい試みでたのしめた。
    探偵役がマニアで、うんちくをやたら語るのも、たのしい。
    筆者のスタイルなのかもしれないが、読点が極めて少ないのは、読みにくかった。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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