小説の神様 あなたを読む物語(下) (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065131411

作品紹介・あらすじ

小説が、好きです。
どうして物語を書くのか、どうして物語を読むのか。その答えが、きっとここにある――。

あなたのせいで、もう書けない。親友から小説の価値を否定されてしまった成瀬。書店を経営する両親や、学校の友人とも衝突を繰り返す彼女は、物語が人の心を動かすのは錯覚だと思い知る。一方、続刊の意義を問う小余綾とすれ違う一也は、ある選択を迫られていた。小説はどうして、なんのために紡がれるのだろう。私たちはなぜ物語を求めるのか。あなたがいるから生まれた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2020/08/02*読了

    改めて小説が好きになった小説です。
    登場人物の一挙手一投足に一喜一憂しては、残りのページ数が少なくなるにつれ、もっともっと続きが読みたいって思いました。
    早く続編を出してください!

  • 相沢先生の本ということで偶然手に取った小説。普段ミステリーではない小説ではまることはあまりないのですが、非常に揺さぶられました。
    読書の仕方について考えさせられる一冊です。

  • 「これは、わたしのために書かれた物語かもしれない!」(P.304)
    という台詞(?)があるが、私がこの作品に対して思ったことでもある。

    小説を読む私。そして小説を書く私。
    どちらが欠けても物語を織りなすことはできないし、物語を紡ぐ一端を担っていることが幸せだと思う。そのことに気づかされて泣きそうになった。

    また、現実に打ちのめされて物語を読んだり書いたりすることが嫌いになったとき。この本を思い出して読み返したい。勇気をもらって、きっとまた歩き出せるようになる、という気がする。

  • 後輩の成瀬は真中との仲を取り戻す為、小説を書く。一方、一也と小余綾は小説の神様を見つけ一歩踏み出す。

  • なんだかんだで、九ノ里の一言が一番効く。なぜ書くのか?至極単純で当たり前の理由だけれど、千谷や小余綾のように意外とそれに気づけないのなのかもしれない。
    作中で秋乃たちが帆舞こまにの本のことを語っているのに、作者の名前を出さずに「変な名前」の作家と呼んでいるのが結構好き。

  • 物語を書く人、読む人
    ライトノベルでもコミックでも
    作り手の苦悩がぐるぐるしていて苦しかった
    でも
    作者を育てるのは読者
    今の時代の問題をいろいろ提起している
    うーん

    ≪ 好きだから いつも傍には 小説が ≫

  • 小説書いてる人に刺さる物語。

  • ようやく下巻を読めた。
    書き手と、読み手と、それぞれが出す答えが気になっていたんだけど
    確かに受け取ることができた。

    自由になるお金は増えたけど
    一冊の本にかける時間は減ってしまい
    読み終わった本を何度も読み返すことはもうなくなってしまったから
    その一度の読書でしっかり物語を噛み締めたくて
    どうしても遅読になってしまう。
    そうして読み終わった本でさえ、次々と捲っていく違う物語に押されて
    すぐ、詳細の説明ができないほどになってしまう。

    それでも、何かの拍子に再び触れれば
    その時の読書体験も、印象に残った内容も蘇ってきて
    ああ、ちゃんと染み込んでいたんだな、と安心する。
    いつまでも覚えていられる人を羨ましく思ったり
    きっかけがなければ忘れたままの自分を薄情に思ったり
    でも別にそんなこと気にしなくてもいいんだな
    自分を形造る深い海の底に沈んで養分になってるんだから、きっと。

    若気の至りで乱暴な感想を書き落としたこともあった。
    昨今のSNSを通じて、声が思いもよらずダイレクトに届くことを知ってしまってからは
    その声が作者や他の読者を傷つけて、もしかしたら続刊の可能性を摘んだ一因になったかも知れないと恐怖し
    同じく一向に続きが出ない作品を待つ資格が自分にはないだろうと思えた。
    このブクログで、自分が昔付けた辛口の感想にイイネが押されて
    たどってみたらその人は「クソ本」という棚にその本を入れていて
    そんな想いで書いたわけじゃなかったと、吐き気がするのを感じた。でも強弱あれど同じことだ。
    発した言葉には責任があった。受け取り手にとってはクソさを擁護する文だった。ただそれだけだ。

    合わない作品だって確かにあるけれど
    どんな作品からも、何かを読み解ける人間でありたい。きっとどの作品だって、鼻ほじりながら片手間で書かれたりなんかしてないだろう。
    振り絞るように綴られたんだろう。
    その行ないに報いる言葉が、辛辣である必要は全くないと思う。

    どうせ吐くなら作者に負けじとめいいっぱい美しい言葉を。
    それが、物語への恩返しだなと思った。

  • 多分、筆者は本当に小説が好きなのだろうと思う。
    そして、小説が本当に好きな人には、頷けることが多い物語だと思う。
    それこそ、この本は私の為の本だ!と思ったことがある人にはとても向いている。

    図書館で本を借りるとき、オビは取り外され
    ブッカーのせいでカバーの下や裏側が見えなくて
    邪魔だと思うことが時々があるので、
    綺麗だからという理由で中古とは言え販売する本を
    わざわざオビを外してブッカーをかけるのは止めて欲しいし
    この担当教諭とはつくづく気が合わないなと思う。

    読んだ本を手放す気持ちは私もわからない。

    推薦図書はラノベはダメ。
    漫画みたいなキャラがエッチな格好してるから
    クレームがくるから。
    先生も先輩も、あまりに視野が狭い。

    ただ、ラノベしか読んでないのはどうかと思う。
    とは言え、ちゃんとした小説ってなんだ、というのは
    好きなラノベをけなされた小説好きはみんな
    ぶつかる壁な気がする。

    メディア化が小説が劣ってるみたい
    というのもわかる観点だ。
    本当の意味での小説は、小説であることに
    誇りを持てるものじゃないとならない。
    たとえば叙述トリックが優れているような、
    小説ならではの素晴らしさに出会えると最高だし
    漫画やアニメ化しないと小説が読まれないのは
    とても悔しい。

    言い訳でも前に進むためのものなら良いというのは
    そのとおりだと思う。
    個人的には、どちらの小説も両方書けばいいのに
    断ってしまうなんて勿体ないと思ったし
    なぜ喧嘩になってしまうのか、とは思った。

    ネット小説について、作者に文句や偉そうなアドバイスがつくというのは
    小説に限らずありがちだ。
    ただ、アニメの出来にふざけんなと思うことはある。
    死ねとかもてないとかただの悪口は駄目だが、
    失望したくらいの感想は吐き出させて欲しいとも思う。

    育って来た環境ではなくて『文化が違う』という言い方が
    面白いと思った。

    「物語に宿った神様を見つけられる人は、
    もしかしたら少ないのかもしれない。
    でも、そういう読み方をする人たちが
    まるきりいないわけじゃないでしょう。
    だから、詩凪さんみたいに必死になって
    神様を宿そうとする作家がいるのなら、
    ヒナはそれを見つけられる読者でありたいって思う」
    このヒナちゃんの気持ち、とてもよくわかる。
    小説に限らず、本物を見つけられる本物で自分もありたい。

    人に本を勧める難しさも共感する。
    心の処方箋という言い方も好きだった。
    もし心にピッタリ合う物語がなかったら自分で書く。
    だから、物語はこの世に生まれる。

    「続きを読みたいって気持ちって、原動力だよね」
    は、『オタク』ならみんな共感するのでは。
    小説だけに限らない。

    物語を読み解くことは、人を読み解くことに繋がっている
    というのも同意だ。
    逆に言えば、本を読んでいない人はとても浅くて
    人のことを理解していない、行間が読めないのだな
    と感じることは残念ながら屡々ある。

    「俺の言葉は、俺だけのものじゃない。
    きっと、俺を作り出した多くの物語から生まれたんだ。
    大勢の作家たちが、多くの物語を綴って、
    俺という人間を支えてくれている。」
    これも小説に限らないと思うが
    自分を形作ってくれている、自分が大好きなものだち。

    やっぱり、物語はとても素敵なものだと改めて思う。

  • 物語は願いだ、だからこんなにも心に寄り添って救ってくれる。
    作者から読者が諦められてしまうと、救ってくれる物語の続きが読めないかもしれない。
    誰かにとっては苛立つような主人公が、
    誰かの心にはそっと寄り添っている主人公かもしれない。
    誰かが嫌いと言い捨てる小説が
    誰かが生きていくのに必要な小説かもしれない。
    言葉には責任がある。
    それは作者だけじゃなくて読者にも発生する。
    何冊もの本に救われてきたからこそ、これからも本の世界に浸っていきたいと思う。

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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