- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065132555
作品紹介・あらすじ
ずっと好きで仕方がない初恋の女の子。僕の告白はいつだって笑ってかわされる。でも、今好きなものを次なんて探せない!(表題作)いいものは分かる、けど作れない。凡人な美大生の私が、天才くんに恋しちゃった!(「ほにゃららサラダ」)僕が生きていることに価値はあるのだろうか。僕は楽しいけど他の人にとっては?(「僕が乗るべき遠くの列車」)思春期のあのころ誰もが直面した壁に、恋のパワーで挑む甘酸っぱすぎる作品集。
感想・レビュー・書評
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○私はあなたの瞳の林檎
バイト先を合わせようとしたり進学先を合わせようとしたり、彼の気持ちはすごくわかりました。同じことはしていないけどそれに類似するところが、いくらか大人になった自分の過去にもあったことを思い出しました。その件については迷惑をかけたなと何度も後悔したし、何度も恥ずかしんだけれども、今更そこを突かれ、耳が少し熱くなりました。
○ほにゃららサラダ
人生で出会った中で1人だけ天才がいます。今でも付き合いはありますが、その天才と一緒にいると自尊心をとことん削られます。自分としてはこれ以上ないというほど考え抜いたものが、そいつによっていとも簡単に否定されるからです。
ヤツと真面目な話をすると、言葉を発するのにも体力を使います。間違いを言ってはならない。説き伏せなければならない。納得させなければならない。そんな条件に当てはまる言葉を編み出すのには時間がかかり、その時間がヤツの態度や語気の強さに更に拍車をかける。結果彼と会った日にはいつも、満身創痍。
男同士なので、この話のように男女の別れのようなことは起きないのですが、やはり一緒にいて真面目な話になった時には、自分の不甲斐なさが浮き彫りになり、苦痛に感じます。もっと努力しろよ、自分に自信を持てよ、と言われているような感覚があるのです。
一方良いこともあります。そんな奴と普段から議論を交わすわけだから、有難いことにいつのまにかその他大勢を上回る力が付いていた、なんて感じることがままあります。
天才じみたヤツと一緒にいると、こいつは僕のことを下に見ているはずなのに、なぜ一緒にいたいと思うのだろう、と考えることがあります。
少なくとも、自分が精神的に前を向けている時にしかヤツとは会いたくない。なのにヤツはそんなことお構いなしに連絡をしてくる。
ヤツは、人一倍努力している人間であり、その努力に裏付けられたスキルと自信をもっています。その姿を見て自分の怠慢さに嫌気がしますし、ヤツもそのことには気がついているはずです。ヤツと僕は互いに、自分とはかけ離れた人種のはず。なのに、なぜ一緒にいたがるのだろうか。僕はそこに答えを見つけられていないから、高槻くんを振った理由は分かっても、高槻くんが泣いた理由が分からなかったです。
「いいものは分かる、けど作れない。」この感覚はものすごく共感できました。頭で先に考えてしまって自由に作れない、本能的に作れないことを、理に落ちていると表現している感覚も、ものすごく身に染み入ります。天才とは、努力を続けられる人間。でもヤツらは努力を努力と思っちゃいない。そこの決定的な違いが僕にはどうしても埋められない。熱中して、気づいたら凄く出来るようになっていた、そんなことが人生全てに当てはまればいいのに。
○僕が乗るべき遠くの列車
難しかったので時間おいてもっかいよみます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
愛に溢れてて気持ち揺さぶられるから舞城王太郎作品好き
私はあなたの瞳の林檎
ほにゃららサラダ
僕が乗るべき遠くの列車 -
著者初読み。
勝手な思い込みで、もっと回りくどくてエグい小説を書く人かと思っていたのだけど、装丁に惹かれて読んでみたらびっくりするほどストレートな文体でストレートな話だった。
2話目が一番好き。
対になると思われる作品の方も読みたい。 -
初読みの作家さん。
『私はあなたの瞳の林檎』『ほにゃららサラダ』『僕が乗るべき遠くの列車』の3編が収録されています。
初出は順に2012年、2010年、書き下ろしとなっていますが、先の2作も古さは感じずイイ感じの甘酸っぱさがありました。
お気に入りは『私はあなたの瞳の林檎』
同級生の鹿野林檎(かの りんご)の事を好きで好きで堪らない戸ヶ崎直紀(とがさき なおき)二人の間のパワーバランスとツンデレ、ドキドキする感じが微笑ましい。
直紀のお母さんの存在も温かくて和まされる。
初恋話はいつだって懐かしさと甘やかな想いが蘇る。 -
私にはKraftwerk・駕籠真太郎・舞城王太郎という生涯追いかけ続られる相手がいて幸せだ。
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昔『煙か土か食い物』に衝撃を受けて、暫く追いかけてたんだけど、『好き好き大好き超愛してる』あたりからあんまり面白いと思わなくなって読まなくなり、もう何年?一時期は芥川賞の候補にもなってたけど、この頃はそういう話も聞かないし、それでいて今も書き続けているってことは何かしら変わったのかもね、と思って読んでみた。
書いてる内容は随分変わったな、という印象。昔はこういう普通の青春小説みたいな設定自体なかったと思う。
しかし独特の捻りは健在で、あからさまでない分上手さが感じられた。
特に美大生の葛藤を描いた「ほにゃららサラダ」が良かった。表題作と三番目も良かったけど、どうしてもさ、こういう話、一定以上のルックスの人たちだから成り立つ設定という気がして。林檎がブスだったら、同じ身の上でも成り立たない話のような気がして。ごめんね、根性悪くて。
でも三番目の主人公の考え方は共感した。こういう風に考える人って少数派だけど必ずいると思う。
ちょっと哲学っぽい話でもあった。
久し振りの舞城王太郎は結構良かった。 -
タイトルといい装幀といい文章といい
甘酸っぱさといい。とてもとても好きでした。
檸檬の方も買う!
舞城王太郎さん、 初めて読んだけど
好きかも。 大好きかも。
ほかのも読みたいかも。
わくわく
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