- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065133002
作品紹介・あらすじ
敗戦後の昭和20年代、そして高度経済成長と新左翼運動の昭和40年代。
世を根底から疑い、これに背を向け、あるいは反逆しようとする「デカダン文学」なるものが、とりわけこの二つの時代を中心に現れ出た。
頽廃、厭世、反倫理、アナーキー、およびそこからの反転。
昭和期のラディカルな文学的実践十三編を照射し、その背後に秘められた思想的格闘を巨視的に読みなおす。
〈収録作品〉
葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」
宮嶋資夫「安全弁」
坂口安吾「勉強記」「禅僧」
太宰治「花火」「父」
田中英光「離魂」
織田作之助「影絵」「郷愁」
島尾敏雄「家の中」
三島由紀夫「憂国」
野坂昭如「骨餓身峠死人葛」
中上健次「十九歳の地図」
(計13篇)
感想・レビュー・書評
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タイトル通り昭和期のデカダン小説を集めたアンソロジー。無頼派の太宰、安吾、織田作は勿論のこと、太宰を師と仰いだ田中英光、プロレタリアートの葉山嘉樹、一見するところデカダン小説とは結びつかない三島由紀夫や野坂昭如、中上健次の作品を収録。葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」は高校生の時、国語の授業で初めて触れたが、今読んでもその生々しい印象は変わらない。三島由紀夫の「憂国」はこれまで何度も繰り返して読んでいるが、研ぎ澄まされ、完璧に構築された壮絶なまでの死と官能の物語は素晴らしい。中上健次の「十九歳の地図」は初めて読んだが、読んでいて生きている世界が揺らいで崩壊していくような心地を覚えた。本書の白眉は野坂昭如の「骨餓身峠死人葛」。死者の養分を啜って妖しく咲く美しい白い花に魅入られたようになった妹とその兄の禁忌の交わり、やがて村全体が狂気に呑み込まれ、地獄の様を呈していく有様は戦慄を覚えつつも、頁を捲る手が止まらなかった。とにかく凄まじい作品。解説もたっぷりで読み応えあり。
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憂国は言うまでもなく、骨餓身峠死人葛もとても良かった。十九歳の地図も良かったかな。
他のはまあまあ。 -
『デカダン』をテーマにしたアンソロジー。
面白いことに、『デカダン』という言葉のイメージと、直接的に結びつく収録作は少ない。しかしこれらの作品の共通点を突き詰めて行くと、『デカダン』しか無いのかなぁ、とも思う。個々の作品の面白さもさることながら、半ば強引とも言える共通点を見つけ出したという意味でも面白かった。
著者プロフィール
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