エムエス 継続捜査ゼミ2

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 313
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065134313

作品紹介・あらすじ

正義の暴走から、逃げ切れるのか。

容疑者は教官・小早川?
警察の「横暴」に美しきゼミ生たちが奮闘する。

未解決事件を取り上げるため「継続捜査ゼミ」と呼ばれる小早川ゼミの5人の女子大生は、冤罪をテーマにしようとする。小早川は、授業で学内ミスコン反対のビラを配る女子学生高樹晶に会うが、高樹は小早川と話をした直後、何者かに襲われ救急車で運ばれた。その後、高樹に対する傷害容疑で小早川が任意同行されることに――警察に疑われ続ける教授に代わり、ゼミ生たちが協力して事件の真相を明らかにしていく。

感想・レビュー・書評

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  • 継続ゼミシリーズ第二弾。前作につづきゼミ生に対する小早川の丁寧な指導で読み手までもが、刑事政策や捜査のイロハに対する理解を深めることができる点がよいですね。

    今回は「冤罪」をテーマにゼミの教材となる事案を選定、上告を争っている傷害事件に的を絞り関係者からのインタビューを試みることに。一方、大学内では文化祭におけるミスコン反対運動が繰り広げられており、その中心人物に対する襲撃事件が発生。あろうことか小早川が容疑者として警察から追われる立場になってしまう。

    主客転倒、事件を追う立場から一転、追われる立場になることで物語の視点もかわり、ちょっとしたハラハラドキドキを味わえる内容に仕上がっていたと思います。また警察の強引なやりくちも普段の今野作品ではお約束、読み手も警察視点で読み進めていますから「イケイケどんどん」的な気分で読んでいたはずですが、小早川目線で読み進めてみると「いい加減にしてくれ」という、普段とは真逆の気持ちでいっぱいになりますし、本当に犯罪者にされてしまうのではないか、という絶望にも似た想いがあふれてきます。立場変わればこうまで見え方がかわってしまうのか、という発見はとても興味深いものでした。

    ゼミで取り扱うことになった傷害事件のほうはといえば、上告が却下され被告は無罪を勝ち取ることになり、被告、弁護士、担当刑事にそれぞれインタビューを試みますが、こちらは小早川のほうとは異なり、冤罪と思われたものが実は、そうではなかった、被告が意図的に相手に怪我を負わせていたことがわかります。

    この2つの”冤罪”の対比は対照的といえるでしょう。小早川の件は典型的な冤罪、もう一方の傷害事件のほうは偽冤罪とでもいえばよいのでしょうか。ゼミ生が言っていたとおり「いろいろ考えさせれらる」事件であったといえます。

    本シリーズは取り扱う事件の真相を解くおもしろさに加え、ゼミで取り上げるテーマについての理解も深めることができる、新しい警察小説の”かたち”であると思いました。

  • 続編、前編よりシンプルな展開でした

    らしさを感じる部分もありますが、同じ台詞を繰り返しがちでぼやき気味、主人公も作者も年を感じさせます
    まぁ、自身も老いを感じる年に近づいているので、実感させられもします

    しかし、つくづく人を裁くのは難しいですよね

  • 大学のゼミという角度からの切り口は斬新。今回は実際の犯罪捜査に寄りがちだったので、よくある素人探偵ものに成り下がってしまわないかが心配。とか言ってる時点で次回作に期待しているわけだが。

  • 途中、強行犯係の大滝に凄まじい嫌悪感を抱いた。
    その大滝を後悔させるような流れになると良かったのだが、、、それほどお咎めもなく、全くスッキリせず。。


    その上、犯人が高樹の病院に行った大学の事務員だって言うのは、その時点で分かったはずなので、驚きも何もなく、、、クライマックスがショボすぎて、辛かった。。

  • 面白かった
    つか今野敏さんは本当に読みやすいなあ
    だいたいね、伏線なんか2つもあれば十分なんですよ
    途中で犯人わかっちゃうくらいでちょうどいいんですよ
    そこじゃないですから今野敏さんは

    今回はゼミ生たち5人のキャラがさらに深みが出てきて小早川教授との絆もどんどん深くなっていきそうな感じ
    次回以降も楽しみ

  • <面>
    僕は他にも読みたい本があるので,この本はここらへんで一旦閉じて,と区切りの良いところまでだけ読むつもりがどんどんと読んで行ってしまう。それほどに面白い本です。
    僕としては,いつも何冊かを並行して読んでいるので,こういう現象になるのはそれこそ本当に珍しいのです。今野敏覧作品あっぱれです。
    そして誰もが期待するのは次回作。ところが今作を連載していた小説現代は一旦お休みなって,その後復活はしたものの全く違った様相になっていた。うーむ,これでは難しいかも。ああ,残念。
    で,今回は一言だけ本の中身に触れさせてください。これくらいはネタバレにはならないと思います。『楓さん最高!』ああ,すまなかった。

  • 「継続捜査ゼミ」シリーズ、2作目。

    今作では元警察官の小早川教授があらぬ疑いをかけられ、傷害事件の容疑者として警察の尋問を受けることに。

    正直なところ、小早川に容疑を掛ける警察側の無能さがあり得なさ過ぎて、引いてしまう。と言いつつも、実際に犯人女性の顔と似ていたせいで誤認逮捕された女子大生の冤罪事件の例があるので、全くもって荒唐無稽とは言えないのが辛いところかもしれない。ネチネチと、自身が描いた絵の通りに自白を強要する様の描写は、リアルで秀逸。対して、警察尋問の裏側を知り尽くしている小早川だからこそ、冤罪回避、警察対抗が出来たわけで、警察の執拗さにハラハラしつつも、ある意味安心して読めたのは、小早川の人物設定が上手くハマっていたからだと思います。
    本作では冤罪事件がもう一つあり、第一審で有罪だったのが控訴審で一転無罪になる事件なのですが、こちらの方が冤罪事件らしい事件、冤罪に対する一般的な見方を180度変えてしまうモノになっていました。最後は上手く予定調和で収まりましたが、法律の名のもとにグレーゾーンが存在することをあらためて考えさせられた次第です。

    2つの対照的な冤罪事件によって、どちらか一方ではなく、両方の側面を見ることが出来たように思います。
    素人女子大生が本物の捜査に加わることはあり得ないとは思いますが、学術的に警察捜査を論じ合うのは面白いと思いました。シリーズとして、続きがあると嬉しいですが、事件の構造設定自体はもう少し練ってほしいと思います。

  • シリーズ第二弾。

    前作が唐突な展開やキャラ紹介に四苦八苦していたような感じがして、いまいちミステリーに乗り込めなかったのですが、本作も女子大生キャラ分けがよくわからないところもありますが、ミステリーとしては納得できる出来でした。
    特に冤罪に焦点を当ててる点や思い込みの危険性についてなど、重いテーマであることも軽すぎなくて良かったです。
    続編があれば読むと思います。

  • +++
    未解決事件を取り上げるため「継続捜査ゼミ」と呼ばれる小早川ゼミの5人の女子大生は、冤罪をテーマにしようとする。小早川は、授業で学内ミスコン反対のビラを配る女子学生高樹晶に会うが、高樹は小早川と話をした直後、何者かに襲われ救急車で運ばれた。その後、高樹に対する傷害容疑で小早川が任意同行されることに――警察に疑われ続ける教授に代わり、ゼミ生たちが協力して事件の真相を明らかにしていく。
    +++

    登場人物のキャラクタもしっかり定着して、それぞれが生き生きしている本作である。そして今回は、ゼミでは冤罪事件を取り上げるのだが、小早川自身が冤罪の被害者にされかけるという、なんとも言えないタイミングの良さ(悪さかもしれないが)で、冤罪ということについて様々な角度から考えさせられる。立場が違うと見え方がこうも違うものかと思わされることもあり、ひとつ歯車を掛け違うと、どこまでも修正が効かなくなってエスカレートしていく怖さも味わった。なにより、小早川ゼミの結束力が強まった物語であったと思う。次の活躍が愉しみなシリーズである。

  • 1作目と印象はさほど変わらないが、元警察官が冤罪に巻き込まれる設定は面白い。が、もう1件の冤罪逆転無罪が本当は有罪だったのは予定調和的で幻滅。まあ女子大のゼミ舞台なのでエンタメ小説としては勿論水準以上。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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