地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065135150

作品紹介・あらすじ

46億年に及ぶ地球史の中で、その気候は激しく変動してきた。誕生直後は隕石が絶えず降り注ぎ、マグマの海だった地球も、誕生から4億年も経つと冷却化が進み、海水をたたえたるようになる。そして30~35億年前頃になると、光合成生物が生まれたことで、大気に占める酸素濃度は急上昇し、現在のような酸素レベルにいたる。その後、全球が氷結するスノボールアースの時代や全氷床が融解する温室化地球など、地球の気候は激しい振幅を繰り返してきた。一見すると無秩序に激しく変化しているように見えるが、実は、その変化には一定のリズムや規則性があることがわかってきた。鍵を握るのが「炭素」のやり取りだ。表層地球にある炭素と地球マントル内部にある炭素のやり取りで、気候は劇的に変化してきた。また、過去10万年に限って言えば、大気、陸地、海洋の間で炭素をやり取りすることで、氷期と間氷期のリズムを刻んできた。つまり炭素循環こそが地球の気候変動を生み出す駆動力となってきたのである。そして炭素循環に注目すれば、今後の気候変動がどのような軌跡をたどるのかも見えてくる。はたして地球は温暖化に進むのか、それとも冷却化に転じるのか・・・・

感想・レビュー・書評

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  • 地球誕生以来何度も寒冷化と温暖化を繰り返している。その原因が海と地殻とマントル間の炭素の移動、循環にあるという。大陸移動がそこに大きく関係しているとは!それなりに面白く読めたが、緻密に緒論を説明してくれることがかえって私のような素人には冗長で難しく感じた。

  • 「雨水採取のためにダンスガードが使用したビール瓶(コペンハーゲン大学)」

  • 最新の研究結果が丁寧に説明されている。特に、新世代の気候変動のメカニズムが詳細にわかってきたと感じた。

    大気中の酸素量は、25~20億年前の大酸化イベント(GOE)、7~5億年前の原生代後期酸化イベント(NOE)で急上昇した。25億年前までには本格的なプレートテクトニクスが始まっており、相当大きな大陸地殻が形成されていたが、鉄やマグネシウム、還元態硫黄を多く含む苦鉄質岩(玄武岩)でできていたため、大気中の酸素濃度は上昇しなかった。25億年前に大規模なプレートの沈み込みによってマントルに大量の水が供給され、玄武岩質のマグマがケイ長質岩に置き換わったため、酸素が消費されなくなり、大気中の酸素濃度が増加した。23億年前には、紫外線によって起きる硫化鉱物に刻まれたMIFの痕跡が消えていることから、オゾン層が形成されるほど潤沢な酸素が存在していた。GOE後に酸素濃度は現在の1%となり、生物のエネルギー経路が発酵から酸素呼吸へと変わる転換点であり、真核生物の生存限界であるパスツールポイントに達した。

    GOE終了後の10億年間は、大気中の二酸化炭素が少なかったために光合成の量や酸素濃度の上昇が妨げられた。プレートテクトニクスの進行によって陸地の周りに水深の浅い海域が広がり、光合成生物によってつくられた有機物が堆積し、それが酸化されることで二酸化炭素の供給能力が高まり、酸素の生成が向上してNOEとなった。

    植物化石の気孔の密度等から推測される白亜紀の二酸化炭素濃度は1000~2400ppmで、平均気温は24~29℃だった。パプアニューギニア東方のオントンジャワ海台やカリブ海台、ケルゲレン海台、ヒクランギ海台、マニヒキ海台などは白亜紀に形成されたもので、白亜紀中期は地球史においてもまれにみるほどに火山活動が活発な時期だった。また、白亜紀の火山分布から海洋プレートの沈み込み帯が現在の2倍広がっており、海面水準が50m以上高く、浅い海や広大な低地にサンゴ礁が広がっていたため、炭酸カルシウムが大量に蓄積され、これが大量の二酸化炭素を生成していた可能性がある。

    地表に雨が降り注ぐと二酸化炭素は水に溶け込み炭酸となる。弱酸性の水には岩石から陽イオンが溶け出し、河川を通じて海に流れ込む(風化)。海には、大気から二酸化炭素が溶け込んだ重炭酸イオンや炭酸イオンが存在している。海の炭酸イオンと河川から流れ込んだ陽イオンが結合して、炭酸塩鉱物が沈殿することにより、大気中の二酸化炭素が除去される。インド亜大陸とユーラシア大陸が衝突したことによって隆起したヒマラヤ・チベット山脈が、この風化作用を起こしたため地球が寒冷化した。ヒマラヤ・チベット山脈の形成に先立って二酸化炭素が減少しているのは、海洋地殻での造山活動によって形成されたカルシウムやマグネシウムに富んだオフィオライトの岩石帯をアフリカ大陸やインド亜大陸が隆起させて風化されたため(8000万年前と5000万年前)。

    3400万年前に南極大陸に氷床が形成されたことについては様々な仮説があるが、オーシャン・ゲートウェイ仮説が有名。オーストラリアと南極大陸の間にタスマン海が形成されると、周南極海流(ACC)が形成され、それまで東オーストラリアを流れていた熱帯からの海流が南極大陸に届かなくなったため、南極の寒冷化を促進させた。南極大陸に氷床が形成されたことにより、海面水準は70m以上低下した。

    炭素が深海に運ばれるメカニズムは3つある。大気の二酸化炭素は海水に溶けて炭酸などに変わり、海流によって深い海に運ばれる(溶解ポンプ)。植物プランクトンが光合成によって固定した二酸化炭素は、食物連鎖によって大型の生物に取り込まれた後、排泄物として沈降する。これはバクテリアによって分解されて無機炭素として放出されるが、深層海流によって平均1000年以上隔離される(有機物ポンプ)。二酸化炭素が海水に溶けた炭酸は、貝類やクリオネによって炭酸カルシウムの殻として取り込まれる(炭酸塩ポンプ)。

    過去数十万年間の気候変動は、溶解ポンプだけでは説明できないため、有機物ポンプや炭酸塩ポンプの変化があったと考えられる。氷期の氷床コアの中に、気温に反比例する量の鉄分が含まれており、現在の大陸棚が陸地だった時に河川や風によって運ばれていたと考えられる(鉄仮説)。海面の低下によって大陸棚が陸地になったため、サンゴが死滅して二酸化炭素の排出量が減り、その結果として海の二酸化炭素の取り込み能力が高まった(サンゴ礁仮説)。激しい風によって陸地から削り取られた土砂が海域に飛来し、ケイ酸が補われたことによって植物プランクトンの光合成が活発になった(ケイ酸リーク仮説)。氷期の二酸化炭素の濃度の低下は、どの仮説も単独では説明できないため、複数のメカニズムが作用することで起こったと考えられるが、詳細なメカニズムについてはコンセンサスが得られていない。

    アンドレ・ベルジェらのコンピューターシミュレーションでは、大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを超えている現在の状況では、今後5万年間は間氷期が続くと予想されている。

  • 地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来。横山祐典先生の著書。世界中の名門大学で学ばれて世界中の研究所で研究員として気候変動についての研究生活をされてきた横山祐典博士のお話だからすごく説得力がある。温暖化が進めば自分が住む場所が水没するというシミュレーションを見ればびっくりする人も多いはず。気候変動や温暖化というキーワードに少しでも興味がある人が気候変動の第一人者である横山祐典博士から気候変動や温暖化を一から学べる良書。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB26993224

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    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00547240

  • キースリングカーブ
    1957年以降の大気中の二酸化炭素濃度の正確なデータ。1957年に310ppmだった濃度が現在は400ppmに達している。


    ウォーカーフィードバック
    地球表層の気候(気温)を安定させる機構。二酸化炭素濃度を一定の範囲に抑える仕組みとして、正(大気中の二酸化炭素濃度を上げる)と負(下げる)のフィードバックが働く。例えば火山ガスとして供給されることで二酸化炭素濃度は増加していき、温室効果によって気温も上昇する。この温暖化を打ち消す負のフィードバックをもたらすのが、岩石の「風化」作用。プレートテクトニクスなどによって地表に表れた岩石が、温暖化による海水蒸発と結果としてもたらされる降水が、それに含まれる炭酸によって、主たる造岩鉱物ケイ酸塩鉱物が風化を起こす。その過程で大気中の二酸化炭素は取り除かれ、生成された陽イオンや重炭酸イオンが最終的に炭酸イオンとして沈殿することで二酸化炭素が海洋に固定される。大気中の二酸化炭素が低下すれば、気温も下がる。そうすると降水も減り風化作用も抑えられる。ケイ酸塩風化が減少し、今度は大気中の二酸化炭素濃度は上昇する。この二酸化炭素のやり取りによる気候安定化メカニズムが働いているのだ。


    外的システムと内的システム
    外的システムは短い時間スケールで影響する大気海洋雪氷圏。1000万年を超える超長期スケールで気候の形成をバックグランドで担う固体地球(核、マントル、地殻など)を内的システムがある。どちらも並んで作用している。現象のタイムスケールが違うだけだ。


    地球酸化イベント
    地球大気中の酸素濃度は20%、二酸化炭素は0.4%(例えば、火星・金星は95%以上が二酸化炭素、酸素は限りなくゼロに近い)。地球原初には火星・金星と同じく酸素がほとんど含まれていなかった。20〜25億年前の大酸化イベント(GOE、1/10万から1/100へ)、5〜7億年前の原生代後期酸化イベント(NOE)と呼ばれる酸素濃度の急上昇によって、現在と同レベルまでになった。宇宙ではありふれた元素である酸素は、二酸化炭素や酸化鉱物として地表あるいは地中に閉じ込められていた。

    最初に誕生した「生物」。最初に酸素を合成する能力を獲得したシアノバクテリアによって、大気中に大量の酸素が供給されはじめた。酸素を原料にしてオゾン層が作られると、紫外線による同位体分別が起こらなくなり、還元的な鉱床による環境が消え、酸素が酸化に使われることなく大気中にとどまることができるようになった。シアノバクテリアによる供給と、表層岩石による消費。キープレーヤーは「プレートテクトニクス」。25億年より以前に始まっていた、表層地殻とマントルの水平移動と大陸縁での沈み込みの現象。すでにあった大陸地殻が苦鉄質岩(還元的、酸化によって酸素を取り除く)のものから、マントル由来のケイ長質岩のものに置き換わっていくことで、大気中の酸素の取り込みが抑えられ、酸素濃度が急激に増えていった(GOE)。バクテリア、植物は二酸化炭素を原材料にした光合成によって酸素を供給する。炭素を保管する炭素レザボア(有機物、岩石、海洋、大気)がプレートテクトニクスによって地表に次々と作られていった。十分な炭素貯蔵庫ができあがることで、大気中への二酸化炭素供給量が増大し、光合成のボトルネックが取り払われることによって、酸素濃度も急激に上昇した(NOE)。


    カンブリア爆発
    NOE後、生物進化速度が一気に加速し、約5億4千年前、1万以上の生物が誕生した。中生代三畳紀(約2億5千〜約2億年前)には地球史上最大の恐竜が誕生する。中生代の平均気温は22℃(現在は15℃)。恐竜全盛期の白亜紀では24〜29℃で、南北両半球のどちらにも氷床が存在しない「グリーンハウス・アース」(温室地球)。当時の温室効果ガスである二酸化炭素濃度は1000〜2400ppm。現在400ppmの6倍だ。プレートテクトニクスによって地球内部から大気へと供給される二酸化炭素の量が増大したことが要因。



    スーパープルーム

    白亜紀に活発化した火山活動は、地球内部の熱を逃がすための対流活動の中で、1億〜2億年に1度ほどの現象として起こる。地底2900kmというマントルの深部からわき上がった直径数千kmの火の玉「スーパープルーム」により巨大噴火が起き、地表で大量の溶岩が噴出することで巨大海台(巨大火成岩区LIPs)が形成された。


    地球寒冷化
    新生代、3400万年前ごろには南極に氷河が形成され、「氷室地球」(アイスハウス)への大転換が起こる。2億年前、ゴンドワナ大陸から分裂したインド亜大陸は5cm/年のスピードで北上し、5千万〜4千万年前にユーラシア大陸に衝突、地殻の隆起が延々と続き、ついにはエベレストを含むヒマラヤーチベット山脈が形成される。急激な造山活動に伴う風化作用(二酸化炭素→炭酸→岩石からの陽イオンが海に流れ込む→海には大気から二酸化炭素が溶け込み(重)炭酸イオンとなる→陽イオンと炭酸イオンが結合し炭酸塩鉱物が沈殿する)こそが地球を寒冷化に導いた要因だと考えられた。最新の知見では、アフリカ大陸とインド亜大陸がオフィオライト(超苦鉄質岩、Ca、Mgに富んだ超塩基性岩)でできた海洋地殻を持ち上げ陸上に露出させたこと、そのタイミングが熱帯の降水帯を通過するのに重なったことが急激な寒冷化を引き起こしたという考えが有力となっている。


    南極大陸の氷床形成メカニズム
    ゴンドワナ大陸の離合集散によって南極大陸は局地に動き、3400万年前に巨大な永続的な氷床が形成された。この巨大氷床は、海水を常時冷やしている超大型の巨大フリーザーであり、現在の気候変動にも多大な影響を与え続けている。
    冷たい氷が存在する南極では、周りの海にも冷たい風が(カタバ風)が吹き、冷やされた海水は表面に海氷を形成する。氷は真水なので、その直下には氷結する際に放出された高塩分の水(ブライン水)が作られる。これは周りの水より密度が大きく、海中をどんどんと沈み込んでいく。これが海洋をかき混ぜるために重要な深層水となり、世界的な海洋循環を形成することで、地球全体の気候をバランスさせている。
    地球に降り注ぐ太陽光熱は、低緯度では入射が大きく、高緯度では放射が多い。この収支バランスを取るように熱容量の大きな水の流れが低緯度から高緯度へと海流(暖流)となって、「熱の運搬役」の働きを担っている。オーストラリア大陸と南極が切り離されその間にタスマン海が広がるようになると、地球の自転の影響によって南極を取り囲む周南極海流(ACC)が生まれる。ACCは流幅40km以上、150kmの蛇行幅を持ち、しかも厚さが3000m以上、流量およそ毎秒1億トンという巨大海流で暖流をまったく寄せ付けない。それまで繋がっていた暖流による熱の運搬が遮断され、孤立した南極大陸は急速に寒冷化に向かったと考えられている。


    ミランコビッチサイクル
    地球の自転軸は公転面に対して23.4度傾いている。これは、地球の回転軸を月や太陽の引力が引っ張り起こそうとする現象で、コマの軸がゆっくりと、首をぐるっと回すように、およそ2万6千年の周期で一周するこの動きを歳差運動という。

    オーストリア・ハンガリーに生まれたミランコビッチは、専攻を土木工学から応用数学に転向し、基礎化学、そして気候研究に進んでいく。天文学的な要因(公転軌道要素として、自転軸の傾斜角、離心率、歳差)を基にした気候区分毎の日射量計算を行い、その変化が長期の気候変動に影響を及ぼしていることを見出していく。

    公転面に対する傾斜角は季節性の強さに変化を及ぼす。高緯度では傾きが大きいと夏に氷は融け、小さいと成長する。傾斜角は約4万年周期で22.0〜24.5度の間で変化している。離心率は公転の楕円軌道が真円に近づくかどうかで、1800万km以上もの距離の変化があり、地球が太陽から受け取る日射総量も変化する。太陽を中心としながら、影響を及ぼす各惑星からの引力によって、公転軌道が変化し、楕円の扁平率が変わる。この周期がおよそ10万年。最後が歳差。南北方向に少しつぶれたみかんのような地球は、高速回転しているコマのように回転軸もゆっくりと円を描く。太陽から離れるときは太陽に倒れかかるように。この周期は約2万6千年。この3要素の影響が重なり合って、気候変動の畝りのようなサイクルを生み出している。巨大氷床ができあがるのも、海抜が100m以上も下がるような変化もこのサイクルによって表れてくる。

    1976年に出された論文において、天文学的要素の変化による日射量変動という「ペースメーカー」は、地球の気候システムの中にある「大気-海洋圏」「雪氷圏」「陸域」などのサブシステムに様々な影響を及ぼす。こうした影響が、二酸化炭素濃度の変化や海洋循環の変動などのさらなる変化をもたらし、シグナルが増幅したり変調したりして、結果として、氷床量が変化しているという研究結果が出され、ミランコビッチサイクルと実際の現象の整合が示されたが、一方でいまだに現象を説明できない未解明な謎が引き続き残されている。


    消えた巨大氷床
    「ペースメーカー」の存在は見つかったが、2、4、10万年という地球の公転軌道の変化がなぜ、間氷期と氷期を切り替えるスイッチとなるのか、そのからくりはまだ分からなかった。解かなければならなかったのは「氷床」だった。

    海水準の痕跡が残る造礁サンゴ(海面近くに棲息しサンゴ礁を作る)を調べることで、最終氷期最盛期の最低海水準が130m(およそ2万年前)と分かった。これに相当する氷床は、すべてが氷雪に覆われていたカナダ全体、スカンジナビア半島とバルト海に存在した北欧氷床、そして南極大陸にあった。南極大陸では、水深が500m以上もある大陸棚の海底にまで拡大して巨大氷床ができあがっていた。


    炭素ハイウェイ
    少なくとも280万年にわたって、氷期と間氷期が交互に繰り返すミランコビッチサイクルは続いてきた。北半球高緯度の夏の日射量が決定的な働きをするサイクルは「北半球主導」である。自転軸の傾きによって南北半球は逆位相となり季節も反転するが、気候変化における位相はつねに同じ(南半球が氷期なら、北半球も氷期、間氷期でも同じ)だった。これは温室効果ガス、二酸化炭素によるものだ。気体である温室効果ガスは時間差はありながらも、全球に広がり一様に分布する。地球全体を包む温室効果ガスによって、全体が暖められ、気候の偏りを均していたのだ。

    大気中の二酸化炭素濃度は、氷期に180〜200ppm、間氷期には280ppmとほぼ一定で繰り返していた。この定められたような100ppm前後の変化のリズムは、気温データの変化のリズムと驚くほどに一致を見せる。

    このシステムのような二酸化炭素濃度の変化は、地表70%を占める海、炭素を貯蔵する巨大貯蔵庫としての海の働きによってもたらされている。100万年を超える超長期では、大気とマントルの間の炭素のやり取りが重要だったのと比して、10万年スケールでは固体地球との炭素のやり取りの変動は小さく、表層での循環、海と大気との間での二酸化炭素のやり取りが主要な要因になる。炭素貯蔵容量は大気のサイズを1としたときに、土壌が2.5倍、それと比べて、海は45倍以上もある。海の状態が大きく気候に影響を及ぼす。特に容量が大きい海洋中深層へ炭素を運ぶ(隔離する)のに3つのポンプが働く。水に溶けやすい二酸化炭素が炭酸に変わり海流によって深い部分に運ばれる「溶解ポンプ」。海洋表層に棲息する植物プランクトンが光合成によって二酸化炭素を有機物という固体に変化させ

    る。植物プランクトンは動物プランクトン、小型・大型の魚類へと食物連鎖によって受け渡されていき、最後の出される排泄物として、数ミリから数センチほどの大きさとなって、深海へと沈降していく。これらの有機物は熱塩循環(海水温と塩分の違いによって生じる地球規模の海水循環)に乗せられて遠くに運ばれていくことで、大気との接触を平均で1000年以上断たれることになる。これが「有機物ポンプ」。もう一つの生物活動に関わるものが「炭酸塩(アルカリ)ポンプ」。炭酸カルシウムでできた貝類、造礁サンゴ、動物プランクトンが炭酸イオンの供給源となり、二酸化炭素が海に溶け込むのを助けている。

    海洋の循環は、低緯度、中緯度で暖められた表層流が、海水温の低い高緯度帯に向かっていく。途中の蒸発や陸域への降水によって、塩分濃度が高まり、極域(北大西洋グリーンランド沖、南極大陸大陸棚周辺)でさらに冷却され、冷たく高塩分の重たい水が深海へと沈み込む。ひとたび沈み込んだ深層流は1cm/秒ときわめてゆっくりで海底を這うように移動する。約1000年かけて世界の海洋を循環する。海水は水深400mを境に表層(表層が最も高く温度が下がっていく)と深層(およそ4℃で海底まで一定)で分かれ、それぞれは混ざりにくい。この2つの層を攪拌し混ぜ合わせるのが、風の働きである。風によって表層の水が移動すると、それを補うために下層から水が湧き上がってくる。表層海流の沈み込みが起こっているのがグリーンランド沖ラブラドル海と南極海の2カ所だけだ。循環はベルトコンベアのように、北大西洋からスタートし、深海に到達し南下した後に太平洋に移動する。乱流(渦)によって徐々に表層に上がってきながら、インドネシアの狭い海峡を抜け、インド洋を渡って、大西洋に戻る。


    ダンスガード-オシュガーサイクル
    ミランコビッチサイクルよりもはるかに短い(1万〜11万年前にかけて25回)、数年から数十年単位で10℃近く気温が変化する超短期の気候変動がある。
    地球気候全体に動的平衡をもたらす熱塩循環の機能低下による平衡崩れ、弱まりによって、北半球では寒冷化が進み、南半球では温暖化が進むという結果(例えば、ヤンガードライアイス期と呼ばれる寒冷イベント)をもたらした。北半球と南半球の逆位相の特徴が強く表れるようになってしまったということだ。

    ハインリッヒイベント
    同じように超短期の寒冷化を捉えたのがハインリッヒイベント。超短期寒冷化の発生を示すものとして、巨大氷床の流出による氷山由来岩屑の発見によって確認された。寒冷化が進み地殻上の氷床が大きく成長すると、地球内部からもたらされる熱が大気に放熱されず、地殻に面する氷床底部を溶かし、水の層を作る。これによって巨大氷床が海洋に流出した。北米大陸にあったローレンタイド氷床の一部が北大西洋に流出し、カナダ側から大量の淡水がアイスランド沖に供給されたことによって、海水の塩分濃度が急激に低下し、熱塩循環が弱まってしまったと考えられている。


    巨大氷床の崩壊のような突発的なイベントによって、熱塩循環のような安定したシステムに乱れが生じる。南北半球にシーソーのように逆位相で表れる気候変動がごく短期間に引き起こされることがわかってきた。

  • 開発目標13:気候変動に具体的な対策を
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50120049

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00587756

    テーマ13 気候変動に具体的な対策を

    地球46億年気候大変動の謎に迫る・地球を「生命の星」に変えた大酸化イベントはなぜ起きたのか? ・温室効果ガスは現在のなんと6倍! 白亜紀の超温暖化を引き起こした犯人は? ・1000年以上大気から二酸化炭素を隔離する驚異の熱塩循環とは? ・最短で数年で10℃以上の寒冷化が起きた「意外な理由」 ・「温暖化が進めば、海面が10~60m上昇」最新シミュレーションの中身


    最先端研究でわかった気候変動を支配する「地球のからくり」
    隕石が絶え間なく降り注ぐマグマオーシャンの時代から
    全球凍結したスノボールアース、恐竜が繁栄した超温暖化時代、
    そして氷期、間氷期を繰り返す、直近の260万年にいたるまで
    地球の気候は激しく変動してきた。
    一見すると無秩序に激しく変動しているように見えるが、
    その変化には一定のリズムや規則性があることがわかってきた。
    鍵を握るのが、地球の公転軌道の変化がもたらす「ペースメーカー」と
    地球の表層における「炭素循環」だった!(出版社HPより)

  • 内容が難しすぎて初心者には追い付かないレベル。
    専攻の学生、あるいはマニア向け。

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著者プロフィール

熊本市生まれ。東京大学大気海洋研究所教授。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、海洋研究開発機構招聘上席研究員を兼任。オーストラリア国立大地球科学研究所にて博士取得(PhD)後、アメリカに渡り、カリフォルニア大学バークレー校宇宙科学研究所、アメリカエネルギー省ローレンスリバモア国立研究所研究員を歴任し、2002年より東京大学にて教鞭をとる。American Geological Societyフェロー、文部科学大臣表彰若手科学者賞、アメリカテネシー州名誉市民など受賞。おもな研究分野は、古気候学・同位体地球化学、地球表層システム科学。趣味は、読書、スポーツ(ハンドボールは日本および豪州で国体出場)。

「2018年 『地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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