- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065135181
作品紹介・あらすじ
聖人の遺体や遺骨・遺灰、聖人が身にまとったものや触れたものは「宝石や黄金より価値がある」とされ、芳香や光を放ち、腐敗しないと信じられた。死人を蘇らせ、病気や怪我を治し、現世の罪を清めて天国に導く力を持つとされた聖遺物。教会はその聖性と効験を、聖堂の装飾、祭壇画や黄金のシュライン(聖遺物容器)などさまざまな造形で民衆に訴えかける。救済と奇跡を求めたキリスト教社会の熱狂と芸術への昇華の過程を辿る。
感想・レビュー・書評
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難しい題名が付いているが、内容はむちゃくちゃ面白かったです。
教会とか大聖堂の好きな人はきっと楽しめるし、そうでない人にもおすすめできます。
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冒頭からパンチの強い本。
【目次】
はじめに
第1章 聖遺物の力
神の力のメディア/キリストの聖遺物/奇跡による現世利益/救済の担保/聖遺物崇敬の源流/殉教者信仰/コンスタンティノポリスとローマ/ローマにおける郊外から市内への聖遺物の奉遷/遺体に宿るウィルトゥス/聖遺物と造形との関わり
第2章 トランスラティオ(聖遺物奉遷)と教会構造
祭壇への聖遺物の埋納/いかにして聖遺物を入手するか/アインハルトの奉遷記/トランスラティオの原則/ブローカーと高位聖職者/アインハルトによる教会造営/奉遷のもたらすもの
第3章 黄金のシュライン──聖遺物を納める容器
地下から地上へ移る棺/ケルンで「創出」された三王の聖遺物/三王のシュライン/シュラインに期待される奇跡/聖性を帯びるシュライン/シュラインの絢爛たる装飾/聖遺物容器の正当化/シュライン制作の契約書/寄進者と銘文
第4章 聖遺物容器のさまざまな形態
バーゼル大聖堂主祭壇上のディスプレイ/「しゃべる」聖遺物容器/肖像型聖遺物容器/コンクの聖フォワ崇敬/容器と聖人の融合/容器の外見に関する見解/ビザンチン伝来の聖遺物と容器/「エグベルトのシュライン」/斬られた首を抱えたタイプ/作り直された東方様式の容器/群像表現型容器/物語の次元と現実世界を繫ぐもの/殉教する聖人がおのれの聖遺物を呈示している聖遺物容器/聖遺物容器のための聖遺物容器/聖遺物化する聖遺物容器/イメージによる聖人の再現
第5章 聖なる見世物──聖遺物/聖遺物容器の人々への呈示
聖遺物をみることのできる機会/聖遺物展観と贖宥/アーヘンの聖遺物展観/帝国宝物/帝国宝物展観の歴史/ニュルンベルク市に移管される宝物/木造櫓での展観/展観の式次第/帝国宝物展観を訪れた人々/聖遺物と同義の帝国宝物/ニュルンベルク市民にとっての帝国宝物
第6章 聖なるカタログ
エウロギア/巡礼記念バッジ/記念印刷物/聖遺物版画/聖遺物書/フリードリヒ賢明公の聖遺物コレクション/領民の魂救済と美術愛好/ヴィッテンベルク聖遺物書/芸術家の作品としての聖遺物書/デューラーの『一万人の殉教』/ルターの登場とヴィッテンベルクの聖遺物コレクションの行く末
終章 聖性の転移
聖遺物と造形の相関性/実物の力/聖人から芸術家へ/聖遺物化する造形芸術
学術文庫版あとがき
注
参考文献
図版典拠一覧 -
こちらもボリュームとしてはやや物足ない感があった。
反面、内容はユニークで、特に聖遺物が不動産から動産化して移行は面白い。今で言う展覧会みたいなイベントが開催されたり、土産物のグッズ作って売ったりと、なかなか俗っぽいエピソードには笑ってしまう。人間って今も昔も変わんねぇな……。 -
聖遺物のキリスト教における位置づけの変遷、産業、美術に与えた影響、そして熱狂の終焉とその後についてコンパクトにまとまっている。聖遺物にも様々なものがあるが、より価値の高いものは聖人そのもの、はっきり言ってしまえば殉教者の遺体である。それらを巡って宗教関係者や王侯貴族、民衆が熱狂し、ひと目見ようと押し寄せていたのである。遺体を見に押し寄せるというと一見奇妙な行為に思えるが、日本においては現在も即身仏を祀り拝むことが続いていることを思い出せばそれほど奇妙とは思えなくなる。また、洋の東西を問わず聖人の遺体を崇敬するという行為が行われてきたということは興味深い。宗教、文化は違えど信仰の根本にあるものは同じものであるのだと感じた。
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選書版で既読。
著者プロフィール
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