日本列島の下では何が起きているのか 列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで (ブルーバックス)
- 講談社 (2018年10月17日発売)


- 本 ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065135211
作品紹介・あらすじ
日本列島はつねに火山と地震の活動に見舞われてきた。私たちが地表で観察する数々の地学現象は、地球深部で起こる「何か」に由来する。地球科学者はその「何か」を特定すべく努力を続けてきた。列島の地学現象のすべてが、「水」によって結びつくことが明らかにされつつある。日本のトップランナーが、現代地球科学の基礎となるプレートテクトニクスから、最新の成果である地球内部の水の動きまでを徹底的に解説する。
地震学界のトップランナーが、現代地球科学の基礎となるプレートテクトニクス、日本列島の成り立ち、地球内部の水が関わる沈み込み帯の地震・火山活動のメカニズムを徹底的に解説する!
・おもな内容
プロローグ 沈み込み帯に生まれて――変動し続ける日本列島
第1章 プレートテクトニクス入門――地球を理解するための第一歩
第2章 地球内部を視る方法――地球の大構造とプレートの運動
第3章 日本列島ができるまで
第4章 日本列島の下には何があるか?
第5章 プレートの沈み込みと水
第6章 プレート収束境界で何が起こっているか?
第7章 沈み込むプレート内で何が起こっているか?
第8章 火山の下で何が起こっているか?
第9章 内陸地殻で何が起こっているか?
第10章 関東地方の地下で何が起こっているか?
・日本列島を特徴づける「沈み込み」
日本列島は海のプレートが陸のプレートの下に沈み込む場所、「沈み込み帯」に位置している。プレートの沈み込みという現象が、長い時間をかけて日本列島を形成したからだ。2つの海のプレート(太平洋プレートとフィリピン海プレート)は、現在もその上の日本列島に変動を引き起こしている。
もちろん、地震と火山の活動もプレートの沈み込みと関係する。私たちが目にする地表の変化の原因は、地球の深部(プレートとプレートの境界、沈み込んだプレートの内部、あるいは陸のプレートと海のプレートに挟まれたマントル)にある。
・沈み込み帯を理解するためのカギ――水
地球科学者たちは、沈み込み帯の変動の統一的な理解に挑んでいる。近年、地球内部に存在する「水」が、あらゆる地震と火山活動に関わっていることがわかってきた。
そもそも、なぜ地球内部に水があるのだろうか? 水はどのようにして地震と火山を引き起こすのか? 本書では、水をキーワードにして、沈み込み帯全体の「からくり」を解説する。
・関東地方の下では……
関東地方は東北や西南日本と違って、2つの海洋プレートが重なりながら沈み込んでいる。このような沈み込み帯は世界でも珍しく、謎が多い。最新の研究成果(水とスロースリップの関係)もまじえて、明らかになってきた関東地方下の現象を解説する。
感想・レビュー・書評
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中島淳一(1976年~)氏は、東北大学大学院理学研究科博士課程修了、東北大学地震・噴火予知研究観測センター准教授などを経て、現在、東京工業大学理学院地球惑星科学系教授。専門は地震学。
本書は、プレートテクトニクス理論にはじまり、日本列島がどのようにして生まれ、日本列島の下が現在どのようになっており、それを原因としてどのような地震や火山活動が起こるのか等を、解説したものである。
具体的な章立ては、プロローグ:沈み込み帯に生まれて、第1章:プレートテクトニクス入門、第2章:地球内部を視る方法、第3章:日本列島ができるまで、第4章:日本列島の下には何があるか?、第5章:プレートの沈み込みと水、第6章:プレート収束境界で何が起こっているか?、第7章:沈み込むプレート内で何が起こっているか?、第8章:火山の下で何が起こっているか?、第9章:内陸地殻で何が起こっているか?、第10章:関東地方の地下で何が起こっているか? となっている。
私は、先般小松左京のベストセラー『日本沈没』(1973年出版)を読んで、同作のメインテーマである「地殻変動に伴う日本の沈没」について、そのアイデアの根拠となった仕組みと、理論的にそのようなことが起こりうるのかを知りたくて、本書を手に取った。(また、子供の頃に聞いた、アフリカの西海岸と南米の東海岸の海岸線が酷似していることに気付いて、プレートテクトニクス理論を考えついた学者(ウェゲナー)のエピソードが大好きで、プレートテクトニクス理論についての本が読みたいとも思っていた。)
私は、本分野について特段の専門知識は持たないが、読了してまず感じたのは、地球内部のことが、ここまで解明されているのかという率直な驚きだった。そして、大きく二つのことが得られたように思う。ひとつは、地球史的な尺度で見た場合の地球の表面(大陸と海洋)の過去→現在→未来に亘る変化、その結果(或いは原因)として表出している現在の地形や地下の状況、更に、その変化の過程で不可避に発生する地震や火山活動が、全て繋がっていることが理論的に認識できたことである。もうひとつは、地震や火山活動のような災害につながる現象が、どのような場所に、どのようなメカニズムで、どのような規模で発生し得るのかが理解でき(地震についての説明はかなり詳しく、消化不良なところもあったが)、予測とまではいかないものの、根拠を持って自分なりの心身の準備ができるようになると思われたことである。首都圏に住んでいる私にとっては、特に、第10章で説明されている、関東地方の地下の構造が世界に類を見ない複雑なものであるという事実は有益かつ衝撃だった。(なお、『日本沈没』の原因とされた現象については触れられていなかった。残念。)
「相模トラフ沿いにおいて、マグニチュード7程度の地震が、今後30年以内に起こる確率は70%程度」と公式に推定されている今、そうした現象がなぜ起こり得るのかを知るためにも、一読の価値がある一冊と思う。
(2021年1月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地震学を専門とする筆者による包括的な解説書。
プレートテクトニクス、列島近傍の複雑なプレート構造、火山とマグマ溜り、地震発生機構など、かなり詳細、体系的に解説されている。
最新の知見も含まれているのか、詳細はかなりの部分が仮説となっていて断定的な書き方はされていない。
本書の肝の1つである水の関与も、合理的説得力はあるものの仮説にとどまっており、全貌の解明には課題が多そうだ。
地震発生機構も同様に未確定の仮説であり、それに基づく数値の推定も十年単位のぶれは普通にあるので、数年幅の予測など現実的ではないように思われる。
本書発行依頼やや時間がたっているので、状況に変化あるのかもしれないが。 -
文章と図だけで地震やプレートの話を分かりやすく書いてある本は初めてだった。索引があるので、これどういう意味だっけ?となっても戻れるし、素人にも分かりやすかったと思う。とはいえ人に話せるほどの理解すらできてない。ネットでも検索しながら読んだのでとても楽しかったが読むのに時間かかっちゃった。水とか結晶とかあたりの話はほぼ理解できず歯ぎしり。また読みたい。
再読。
前回理解が難しかった9章をじっくりがんばって読んだらなんとなくわかった…と思う。そしておもしろかった!
やはりこの本は好きだ。
追記。
中島先生の「オールカラー図解 日本列島の未来」も一緒に読むと、文字だけで理解しにくい部分が補完されて、よい。 -
プレートテクトニクス理論から日本列島の成り立ちや構造、それを踏まえて地震発生の仕組みを解説した書。
素人にはついていけない部分もあったが、それでも日本で地震がどのように発生するのか、そのからくりがおぼろげに理解できた。
それにしても日本列島はなんて特異で危険な場所に位置していることか。また、また地球の長い歴史を鑑みれば、ほんの短い期間の知見や今わかっていることの延長で解釈するのがいかに危険なことか。改めて恐ろしさがつのる。 -
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これは面白い!、興味深い!、日本に住むなら一度は読むべき、よくぞこのページ数におさめたな!など、多くの人から面白い、詳しいと高評価
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☆よくまとめられている。
(参考)絵でわかる地震の科学 けあしろ、絵でわかる日本列島の誕生 けあしろ、絵でわかるプレートテクトニクス けあしろ、絵でわかる日本列島の地震・噴火・異常気象 けあし、日本海の拡大と伊豆弧の衝突 -
日本列島の下にあるプレートを中心に、プレートが動くことによって起きる現象を説明した本です。「日本列島」とタイトルにあるけど、実質的にはプレートの沈み込みについての解説ですね。とはいえ、日本列島の近くにしかない3つの海溝がぶつかるポイントなど、日本列島を見るだけでプレートの沈み込みはほぼ説明できる、というのがポイントです。
地上の、火山や断層の多い場所、少ない場所にも、プレートが関わってるというのはなんとなくイメージしてましたが、この本の解説は判りやすかったです。 -
プレートテクトニクスについては、ブルーバックスなどの入門書を何冊か読んできたが、本書は出色の出来だと思う。本書から読み始めるのはちょっと大変かもしれないが、基本的な部分もさらっと触れていて、それでいて、著者の専門である地震については、スラブ内地震のような他の入門書ではあまり触れられていないものについて詳しく解説されていたり、日本特有のプレート構造について分かりやすい説明があったりしていて、大変面白い。日本列島における火山についても、他書にない切り口から詳しい説明がされている。
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日本の地震や火山のメカニズムを少し深く知りたくて読んだ。その意味では目的を果たした。難しいのでじっくりとは読まずにざっと内容を理解して、後でポイント毎に見返すという読み方にした。ざっと読んだだけでもイメージはついた。
著者プロフィール
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