自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065135884

作品紹介・あらすじ

陸上自衛隊が海外に拠点を設け、身分を偽装させた自衛官にスパイ活動をさせている秘密情報部隊の実態に迫った、スクープレポート

感想・レビュー・書評

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  • 2024シーズンのTBSドラマは『不適切にもほどがある』で盛り上がってるけど、ここはやっぱり『VIVANT』!
    と、ドラマ好きが集まる宴会にむけて読破。(動機!)

    これはネタ元の一つだわ!と疑いようのない内容でお腹いっぱいになった。前半がルポ、中盤からは取材ドキュメンタリーという周回構成。どのくらい真相に迫っているかは確かめようもないが、ミステリーのようにベールが解かれていく様はハラハラする。思わず二度読み。

    真偽はともかく、考えるべき点が2つ用意されている。

    1.別班はシビリアンコントロールから外れとるよ
    2.別班は人権侵害しとるよ

    ジャーナリスト視点なので批判的なスタンス(名古屋弁ではない)。折しも第二次安倍内閣による秘密保護法の採決が迫るなかで本書はリリースされたが、法案は可決。残念ながらその思いは国民(の代表)まで届かなかったことになる。

    知る権利と国防とは常に緊張状態。手綱を緩めれば諜報機関の独走→集団的自衛権の容認→いつか来た道(侵略戦争の可能性)だと、さるすべりのような議論でいつも脅される。つい懐疑的になってしまうのは私が無傷だからか。はたまた平和を信じすぎなのか。

    あるいは別班に選抜されてしまった隊員の人生は、ドラマの堺雅人よろしくプライベートも一切許されない幽霊にされる危険性がある。万が一の時には凄惨な死すら待っている。

    とはいえSPY×FAMILYはみんな好きよ。
    遠い異国の人ならいいの?という迷いを、日本に生まれたからには常に抱え続けなければならない。一人称の平和安定。もしも別班がそこに貢献しているとして、感謝する手立てもない。せめて感謝させてよ。


    本書内には以下の表現もあった。
    ──別班のメンバーは精神が壊れるか、その世界にどっぷりハマるか(要約)
    どっちも怖いんだけど、後者フォージャーさんのパターンが危ない。その力が盾として適切に使われるよう、政府のしくみを考えなくてはいけない、んだろうけど。

    明日トントンと肩を叩かれて、「キミ、明後日から仙台に転勤ね」という勢いで別班行きを命じられないことを祈る。(不適切か)

  • TVドラマで初めて知った別班の存在。どうも架空の組織ではないらしい、と言う事を早くから疑念に思っていた著者のスクープ記事。
    別班の輪郭、別班の掟、最高幹部経験者の告白、自衛隊制服組の独走、と4章でなる。が、ほとんどリアル中心には近付いてないと思う。何故なら誰も何も知らないと言うスタンスだから。記者としての苦労が前面に出ていた。

  • 自衛隊の秘密組織「別班」について当時の取材をもとにまとめた一冊。多少複雑で、興味が惹かれるのは難しいかと。

  • 別班:陸幕の情報部に設けられた対外情報活動班 をレポートしたのが本書です。

    実際にあるのかどうかはわかりませんが、海外邦人の保護、脱出、敵地潜入、攻撃対象の特定など、安全保障上の組織存在のニーズはあると思います。ただ法的に保障されていないだけ、シビリアンコントロールの支配下にはないことが本書の骨子です。
    筆者の執拗な取材の中から、浮かび上がっていく不気味な組織といった印象をうけました。

    その対象は、ロシア、中国、朝鮮(含む韓国)であり、海外に拠点を設けている。
    シビリアンコントロールの外にあり、防衛相、首相にもレポートされていない。
    血税を使われているにもかかわらず、入手した情報については、非合法であるために、日本の政策に反映されていない。

    別班の長は、中野学校などの流れを汲み、小平学校心理戦防護課程出身者の幹部で占められている。
    海外での邦人救出などを意図する特殊作戦群という精鋭部隊を海外で展開するために情報収集するために、別班を一体運用しようと検討されていた。

    著者の石井氏、および、所属していた共同通信が、この”事実”を発表する前に、防衛庁に4日前に事前通知をしていたことには驚きました。
    その意図は海外の別班のメンバーを国内へ保護する時間を確保するため。
    このことが逆に、別班の存在を示唆しているようにも感じられました。

    別班のメンバーは、情報のプロとして、各省庁のメンバーとして派遣されていて、何かあった場合のために、公務員としての身分保障がされている。

    陸だけなく、海にも、空にも同様の組織はあるとのこと、そしてそれらは、米軍の施設内にあって米軍とは緊密な関係という。

    ひょっとして、米軍の下部組織としても、活動しているため、日本の国策には組み入れられず、独自の動きをしているのではと、疑ってしまいます。

    ・別班は三島由紀夫の「盾の会」と通じていた
    ・ムサシ機関=小金井機関、背後に日米軍事情報特別訓練の協定等、米軍とも密接な関係がある
    ・小平学校の校長ですら入れない部屋が小平にはある。
    ・防諜の対象が、ロシア、中国、朝鮮に集中していて、CISに向けられている
    ・統合幕僚長や、情報本部長にはレポートされていたが、副幕僚長や、情報課長にはレポートされていない。なぜなら、公表されたときに組織全体を崩壊を防ぐため、サブが生き残れるようにしている。
    ・三矢研究:朝鮮有事の際のシミュレーションの現代版が、特殊作戦群との一体運用。PKO派遣などでの最悪のシナリオを自衛隊としては用意する必要があった

    目次は以下です。

    はじめに
    第1章 別班の輪郭
    第2章 別班の掟
    第3章 最高幹部経験者の告白
    第4章 自衛隊制服組の独走
    おわりに

  • 日本人って自衛隊が好きだよね。
    災害が起こったときには、自衛隊が派遣される。そのことにビックリするほど感謝する。
    もちろん、プロフェッショナルな方々への感謝は大事だ。でも、他のエッセンシャルワーカーらへの感謝と比べて、自衛隊へのそれは大きすぎないか?と感じることはよくある。

    自衛隊という名称のせいで誤解しがちだけど、自衛隊は立派な戦力だ。
    もしコントロールが効かなくなれば、先の大戦時のように、軍部の暴走という結果につながってしまう。
    だけど、そのことを真剣に考えている国民はいったいどれくらいいるのだろうか…と思う。

    本書は、そんな自衛隊に対して深くメスを切り込む。
    取り扱うテーマは自衛隊の「別班」について。
    ほとんどの政治家や自衛隊関係者はその存在を知らない。ごく一部の上層部のみが知る、自衛隊の別働隊。
    国会の場では「別班などは存在しない」と防衛大臣に否定されてきた。
    だけど、実際には存在する。日本版のCIAといった組織。
    予算は青天井。訓練内容はスパイそのもの。まるでフィクションのような話だ。

    横田空域を知った時のような衝撃。
    このような部隊が日本に存在していたのか、と大変驚いた。
    いやむしろ、海外に諜報機関があるのだから、それが日本に無いほうがおかしい。
    ただ、それが自衛隊にあるということが衝撃だった。

    災害救助などで見られるのは、自衛隊の表の顔。
    こんな裏の顔があったのかと、大変学びの多い一冊だった。
    別班の存在を知らずして、自衛隊については語れない。

  • 本書は、身分を偽装した自衛官に海外でスパイ活動をさせている、陸上自衛隊の非公然秘密情報部隊「別班」の実体に迫ったものである。
    「別班」は、ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社をつくり、民間人として送り込んだ「別班員」に、ヒューミントつまり情報工作活動を展開させている。
    日本国内でも、在日朝鮮人を抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせる一方、在日本朝鮮人総聯合会にも協力者をつくり、内部で工作活動をさせている。
    たしかに、アメリカのDIA(国防情報局)のように、海外にもヒューミントを行う軍事組織は存在する。
    しかし、いずれも文民統制(シビリアンコントロール)、あるいは政治のコントロールが効いており、首相や防衛相がその存在さえ知らされていない「別班」とは明確に異なる。
    張作霖爆殺事件や柳条湖事件を独断で実行した旧関東軍の謀略を持ち出すまでもなく、政治のコントロールを受けずに、組織の指揮命令系統から外れた「別班」のような部隊の独走は、国家の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危ういといえるのだ。
    「別班」はいわば帝国陸軍の“負の遺伝子”を受け継いだ“現代の特務機関”であり、災害派遣に象徴される自衛隊の“陽”の部分とは正反対の“陰”の部分といえる。
    帝国陸軍から自衛隊に引き継がれた“負の遺伝子”とは?
    日本が保持する「戦力」の最大タブーとは?
    ――身分を偽装した自衛官が国内外でスパイ活動を行う、陸上自衛隊の非公然秘密情報部隊「別班」に迫った日本で唯一の書!
    別班と三島由紀夫の接点、別班と米軍の関係、海外の展開先、偽装工作の手法、別班員になるための試験問題……災害派遣に象徴される自衛隊の“陽”とは正反対の“陰”の実体!

    ドラマ「VIVANT」で話題となった自衛隊の秘密情報部隊「別班」。
    その由来は、旧日本陸軍の秘密情報部隊「中野学校」で、「別班」のメンバーを訓練する陸上自衛隊小平駐屯地での「心理戦防護課程」が「中野学校」の流れを汲む調査学校と業務学校が合併したもので、調査学校の校長や教官が中野学校出身者が務めていること、「心理戦防護課程」の教育内容は中野学校での訓練内容と同じ。
    「別班」の海外展開は、冷戦時代に始まり主に旧ソ連や中国や北朝鮮に関する情報収集と工作を目的に常時3箇所程度を維持して活動し、最近ではロシアや韓国やポーランドなどで活動中。
    非公然組織だった「別班」が公に知られるきっかけは、1973年8月8日に起こった金大中事件でKCIAが金大中拉致を実行する前に金大中の張り込みを「別班」がしていたことが判明し、1975年2月に共産党による自衛隊や「別班」内部からの告発が「別班」についてあり「別班」含む「青桐グループ」の詳細が知られるようになって、2013年に共同通信が「別班」について報道し、ドラマ「VIVANT」の脚本を執筆した福澤克雄がドラマ「VIVANT」のストーリーを思いついたきっかけの報道だった。
    ドラマ「VIVANT」の参考図書とだけでなく、世界の裏の歴史を知る入り口にあるルポルタージュ。

  • ドラマなどで別班を知った人は、どういう組織で、どんな人が、どんなことをしてるのか?が知りたい。取材の苦労話やある無し論に終始しており、著者の自伝って感じで残念。

  • 2018年に発行された本書が、ドラマVIVANTの放送で話題になったらしい。ドラマは見ていないが、図書館で借りてみた。

    「陸上自衛隊の秘密情報部隊「情報部別班」が、首相や防衛相に知らせずに、独断で海外で情報活動(いわゆる諜報活動)をさせてきた、文民統制を逸脱しており、自衛官は身分を偽装」という記事が2013年11月に共同通信から発信された。そこに至る5年余りの取材活動が記されている。当然、自衛隊などから行動をマークされるだけでなく、命を狙われる可能性もあったという。この本で取材内容などを公表するのは、そういった勢力から見を守る意味もあるらしい。

    文民統制の逸脱は、軍部が暴走して戦争に突き進んだ過去を繰り返す懸念、身分の逸脱は、現地での違法行為につながるだけでなく、不測の事態が起きたときに、当人が「トカゲの尻尾切り」となる危険もあると指摘する。情報部の教育は、心理戦防護過程で行われており、旧陸軍の中野学校で行われたスパイ養成の流れを組んでいるという。過酷な教育により、洗脳される、何も感じなくなる、壊れる、など精神をやられる人も多いらしい。

    海外での情報活動そのものが悪ではなく、例えば邦人の安全を守るために情報を収集するなど、必要な活動もあると述べられる。しかし、他の国では、基本的には公表された機関により、政治が活動をコントロールして行われているという。諜報活動は対象に身分を偽ってかかわることが多いのではと思うが、別班の場合は、自衛隊のデータベースからも情報が消され、内部でも存在が隠されることが問題だという。

  • VIVANT放送からはちょっと時間が過ぎたけど、別班の存在を探ったもの。
    大臣、陸上幕僚長が「存在しない」とうたう別班こと陸上幕僚監部運用支援・情報部別班について、5年半のべ50人以上の関係者(OB含む)に取材して記事にした内容。
    たとえ存在するとしても、国家の安全のためになるのか、外交や安全保障を脅かすものか、特殊精鋭かはたまた組織の盲腸か。
    存在するとしても一度否定したことに対して、明るみに出てこないだろうな。
    あれはドラマとして面白かったということにしよう。
    297冊目読了。

  • 気になる所だけ掻い摘んで読めばGood!!

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著者プロフィール

石井 暁(いしい ぎょう)1961年8月15日生まれ。慶應義塾大文学部卒業。1985年共同通信社入社。現在、編集局編集委員。1994年から防衛庁(防衛省)を担当。安全保障問題を中心に、自衛隊のルワンダ難民救援活動、環太平洋合同演習(リムパック)、北朝鮮不審船事件、イージス艦情報流出事件、元防衛事務次官汚職事件、尖閣諸島領有権問題、北朝鮮ミサイル発射・核実験、南スーダンPKO日報問題などを取材。月刊誌『世界』(岩波書店)に「日中軍事衝突をどう回避するか」(2013年6月号)、「陸自『別班』危険な暴走」(2014年3月号)、「台頭する自衛隊制服組」(2015年5月号)などを寄稿。

「2018年 『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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