人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 288
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065135945

作品紹介・あらすじ

生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するため、武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 愛の話じゃなですか。
    愛というか・・・恋??

    Wシリーズ最終作にして、森博嗣先生の視線が「人間」に回帰している。
    Wシリーズって、「こんな未来、すごいな。森先生の考える未来、すごい」って、
    その未来思考の広がりに、
    「おお」って感じだったのですが、
    最終話、いい意味で、
    「人間」にスポットが当たっています。

    今まで、ウォーカロンや、トランスファの世界で、
    戦いも、ウォーカロン間や、仮想現実上での戦いだったのが、
    今回、「こんなところが舞台になるだなんて!」って驚かされます。

    森博嗣、永遠のヒロインも出てくるし、
    なんといっても、あの二人の、今までのもやもやした関係に・・・。

    ただ月を見上げる。
    そんなことが、こんなにも美しいとは。

    やはりそれを美しいと「感じる」、本質があるのでしょう。
    人間がいるから、「美」があるのでしょう。

    私は、誰も登れない場所にある高山植物も、そこに「美しさ」はある、
    と思う人間ですが、
    森博嗣先生は、「美を感じる主体=人間がいなければ、美も存在しない」と考えているように感じられます。

    そうして今回、先生の描いた光景は美しかった。
    それは「月」ではなく、ある感情が伴ったからでしょう。

    人間は泣きます。
    それが人間だから。
    そして涙は、悲しい時のためだけにあるのじゃない。

    本作はかなりずっとバイオレンスシーンの続く1作ではありますが、
    美しい1作でもありました。

  • 『こちらは、要約すると「よろしく」になる。だいたい、社会の会話の半分はこれだし、日本の書類の半分は、要約するとこれになる。』

    「それはね…、うーん、人間が抱いている自由幻想みたいなもののせいだね」
    「自由幻想?」
    「なにかに縛られる、監視され、管理されることを生理的に嫌っているんだ。おそらく、長い歴史の間に遺伝子に刻まれたトラウマみたいなものだね」

    「若いときは、自分自身が未知だし、可能性も広がっている。年齢を重ねると、たとえ、寿命が延びたとしても、過去の自分を背負っているわけで、だんだんそれが重くなる。動きにくくなるんだ。新しいことを始めれば良いだけなのに、そうすると、過去の自分を無駄にしてしまうような気分になる。なるべく、これまでの経験、過去の自分を生かしたい、と考えてしまうんだ」

    「マガタ博士はきっと、ずっと遊んでいるだけなんだよ。もう、若いときに仕事はやり尽くしてしまったから。ただ、周囲はそうは見ない。マガタ博士が遊んでいても、きっとあれはなにか意図があるはずだ、博士は次は何をするつもりだろう、と憶測しようとする。これまでの博士を見てきたから、そう考えてしまう。でも、そこが天才ではない凡人の思考というものだ。もともと天才は、遊び半分で、興味本位で、偉業を成し遂げるものだ。本人には、偉大な仕事をしようとなんて気は最初からない。遊んでいるにすぎない。子供のときからの延長で、ただ興味の向くまま、好きなことをしているだけなんだ」

    「種族が違えば、血が混ざらない。いつまでもお互いに相容れないような感情も生まれるだろうけれど、知性があれば、それを解決していける。それが法律というか、モラルというものだと思う」

    「今でも、人間は個人の感情に支配されている。好きか嫌いかで味方か敵かを決めてしまう。そういった未熟さというか愚かさというのは、長く続いていた宗教による争いにも発端がある。文化が違う、生まれた環境が違う、受けた教育が違う、というようなことで相手を区別し、排除しようとしたんだ。今でも、その血が残っていると思う。とりあえずの平和が実現して、大勢が一時的に黙っているだけで、なにか突発的なことが起こった場合、一気に不満が高まって、暴力的な噴出があるかもしれない。それは、これまでの歴史を知っていると、絶対に否定できない。人間というのは、基本的に戦うことで活路を見つけてきた。勝つこと、生き残ることで、自分たちを確かめてきたんだ」

    「わかるような気がします。銃で相手を排除したときに、不思議な高揚感があります。これは、教えられたものではなくて、人の血というのか、遺伝子に組み込まれたものではないかと、ときどき思います」
    「そう、本能だね。しかし、だからといって、諦めて受け入れてしまうのはまずい。理性や知性で、それらを修正していくことこそが、人間らしい能力なのだから」
    「諦めてはいけないんですね」

    「弱気にならないで下さい。私たちは、任務を遂行します」
    「なんとか、対話する機会はないのだろうか…。お互いに話し合って、解決できないだようか、ということ」
    「それが可能なら、こうはなっていません」
    「今からでも、遅くはない。話し合おうというメッセージを送らないかな」
    「いちおう、伝えておきます ー でも、先生が一人で出ていくことは、私は許容できません。私は、どこまでもついていきます」
    「ありがとう。君が近くにいるだけで安心できる」

    「一流の料理人は、どの料理がどれくらいの時間で冷めるのかを計算して、また、客がどんな順で料理を食べるのかにも気を遣っているものです ー けれど、厨房から料理を出してしまったら… ー もうできることはありません。予想をしても無駄。考えて心配しても無駄。しばらくあとになって、返ってきた器を見ることがせいぜい。では…、そんな彼にできることは、何でしょうか?」

    「あの、失礼を覚悟でおききしますが、博士は、人間でしょうか?」
    「はい ー それは、失礼な質問ではありません。誰に対しても、また、自分に対しても、いつでもそれを問うことが、人間というもの」

  • いつもの感じであっさりと終わったので、まるで完結という感じがしない。この後も別シリーズ出してくれたら嬉しい。

    • riddleyさん
      おっ、この巻がシリーズ最終ですか。

      しかし、完結感がないのは困りものですね。読むのが怖くなってきました(汗)
      おっ、この巻がシリーズ最終ですか。

      しかし、完結感がないのは困りものですね。読むのが怖くなってきました(汗)
      2018/10/31
    • unismさん
      このあっさり感が森先生らしいとも感じますね。私は結構好きです。
      このあっさり感が森先生らしいとも感じますね。私は結構好きです。
      2018/11/05
  • シリーズ最新作。
    この作中世界がどういう結末を迎えるのか? というのが物凄く気になる。何冊で完結するんだっけ……HPに公開されてたかな?

  • キョートで行われる人工知能の国際会議の実行委員となったハギリ.自身が司会を務めるセッションでは,大手ウォーカロン製造メーカ・ホワイトが,失われた人間の生殖機能に関する重大な発表を行うらしい.
    そんな中,情報局局長の̪シモダは,ホワイトの発表を阻止し,研究グループを拉致作成が進行中であることを伝えに来た.ハギリは拉致には関与せず,手出しをしないことを約束するが,予想外のことが起こる.

    ハギリとウグイの会話が存分に楽しめる,Wシリーズ最終巻.

  • 終わってしまい少し淋しい。
    そして、本のタイトルの意味がわかりました。

    ウグイがかわいいわ~

  • これで完結。続いてもいい気がするし完結といわれればそうですかと言ってしまえる感じ。
    マガタシキのいない世界は描かれないのか。

  • *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50113421

  • 京都の国際会議からのハギリとウグイの拘束。そして脱出と逃走が主題かな。

    デボラが全然接触してこない。

    「トランスファや人工知能から見て、人間なんて上手く騙せてコントロールできる。」
    逃走中の会話にはいろいろ考えさせられた。デボラは信頼できる相手ではなかったんだろうか。人間と人工知能の未来について、考えるように書かれていると思う。
    森作品の面白さって、ただ物語を受容するだけでなく、思考を刺激される処だと思う。

    凄い結論がドカンと出てくる訳じゃないんだけど、Wシリーズ中にあった様々な疑問を思い起こしながら、でも間賀田四季が何かのゴールに導こうとしている訳じゃないことに納得して、読み終えた。

    エピローグは、何というか、想像しづらいなあ。でも、やはりこうなるのかな。

    森先生はかつての引退宣言は撤回されているんだろうか。新シリーズを期待したい。

  • おもしろかった。
    終わり方がとても好き。
    また新しいシリーズが始まるのかな。

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著者プロフィール

森 博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。作家、元研究者。名古屋大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程修了を経て、三重大学工学部助手、名古屋大学助教授。名古屋大学で工学博士を取得し、2005年退職。学会で数々の受賞歴がある。
作家として、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、同作で作家デビュー。S&Mシリーズとして代表作の一つに。『スカイ・クロラ』シリーズは本人も認める代表作で、2008年アニメ映画化された。その他にも非常に多くの著作がある。

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