線は、僕を描く

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 8717
感想 : 804
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065137598

作品紹介・あらすじ

小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

絶賛の声、続々!!!

自分の輪郭を掴む、というのは青春小説の王道たるテーマと言っていい。それを著者は、線が輪郭となり世界を構成する水墨画と見事に重ね合わせてみせた。こんな方法があったのか。
青春小説と芸術小説が最高の形で融合した一冊である。強く推す。
                               ――大矢博子(書評家)

水墨画という非言語の芸術分野を題材にした小説で、架空の登場人物が手にした人生とアートの関係性、時空をも越えたコミュニケーションにまつわる真理を、反発心や違和感など一ミリも感じることなく、深い納得を抱いて受け取ることができた。それって、当たり前のことじゃない。一流の作家だけが成し遂げることのできる、奇跡の感触がここにある。
                               ――吉田大助(ライター)

感想・レビュー・書評

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  • 水墨画はスポーツか音楽のようだ。
    〈抜粋〉
    その動きは決して老人の動きではなかった。……腕や肩や背中の筋肉が小刻みに滑らかに動いて、手先は紙と硯と水を張った容器の間を切るような速度で回転し続けていく。……気がつけば五分もしないうちに、湖畔の景色が真っ白い画面に現れていた。驚いたのはそれだけではない。絵は画面の上で変わっていったのだ。
     墨が紙に定着していくほんの僅かな間に、湖に引かれた墨線がじわじわ滲んで湖面の光の反射を思わせ、柔らかな波を感じさせた。……まるで魔法のような一瞬が、湖山先生の小さな筆の穂先から生まれていた。
    〈抜粋終わり〉

     心ゆくまでじっくりと絵と向き合う油絵や水彩画と異なり、水墨画は瞬間で和紙の上に墨と水で仕上げる技とスピードとセンスと精神が要求される。美術には違いないが、厳しい修行を要する書道や柔道や剣道や華道といった“道”のつくものに似ていると思った。
    水墨画を始めるものは “春欄“や“竹”、“梅”などを何度も何度も練習して、技術とモチーフの見方を鍛える。
    しかし、技術だけが優れればいい訳ではない。“自由な心”がなければ絵にはならない。
    水彩画は自然の森羅万象を描く芸術である。ここで忘れてはならないのは“自然”は“人の心の中”にもあるということだ。
    そして、下記のような文も印象に残った。
    ・水墨画には“減筆”〈描かない〉という用法もある。
    ・水墨画にはその用具や限界ゆえに描けないものも沢山ある。……我々の手は現象を追うには遅すぎる。……現象を追い、描き始めて、物の形を追い、彩を追い、すべてを仕上げても終わったときには、またすべてが変わっている。光は止まることなく動き続けている。

    読んでみて、どうして『線は、僕を描く』なのか分かった。
    厳しい修行ゆえに継承者が殆どいない“水墨画”の道を歩まれている砥上さん自身が水墨画の真髄をこめて書かれたこの小説は、貴重な小説だと思う。
    多くの人に読んで頂き、水墨画という芸術への理解を深めてほしいと思う。

  • 線は、命を描く

    そういうことだよねきっと

    良かったなー
    自分の内側にある宇宙を見つめることが外側にある世界を知ることになる
    自分の内側にある宇宙とは「命」のこと
    のような気がした
    命と向き合うことが生きるということ
    そんな崇高なことを思ったりもしたけれど

    この本を読み終えた自分が真っ先に思ったことはこれから霜介と千瑛はどうなるんだろうという俗なことだったw

    • みんみんさん
      メロリン今晩は〜♪
      このタイトルそそるよね〜!
      まだ二作しか出してないけど次のも良さそうだよ
      要チェック_φ(・_・
      メロリン今晩は〜♪
      このタイトルそそるよね〜!
      まだ二作しか出してないけど次のも良さそうだよ
      要チェック_φ(・_・
      2022/07/24
    • ひまわりめろんさん
      みんみん
      ラジャ!
      みんみん
      ラジャ!
      2022/07/25
  • ブクログのフォロワーさんの評価が高かったので、Amazonでポチった一冊。

    読み始めると、あれ?この物語、何か知ってる??
    そんなわけないのに、既視感??なんだろう、この感じ???

    不思議だなぁと思うも、読み進めてみることに。


    家族を事故で失い、青山霜介は深い悲しみの中に閉じこもっていた。
    大学の友人から紹介されたバイト先は、展示会の装飾の仕事だった。思いの外に重労働だった為、仲間たちが次々と脱落していく中、何とか最後まで手伝いきった青山。
    お弁当を食べて良いからと言われ、一人残っていたところ、そこで面白い老人と出会う。
    その老人はメディアでも有名な水墨画の巨匠・篠田湖山だった。
    湖山と展示を鑑賞すると、なぜか青山は湖山に気に入られる。


    あー、これは映画のCMで見たことがあったんだ。
    だらか知らないのに知っている状態だったのだ(笑)

    この小説は凄いなぁ。文章が優しく、心地よく、流れるようで、温かさを感じた。

    例えば、この本の粗筋を書いたら、数行で終わってしまうだろうけど、この本は粗筋で感じるのではなく、全部読み終わってやっと伝わる本なのだという感じ。

    私の能力ではとても他の方にお伝えできないが、とても良い本だった(^_^*)
    映画も気になるなぁ。。。
    このお話をどうやって映像にするのか??
    そこがとても気になる(^^)

  • 静かに心に響く作品でした。
    二年前に事故で両親を亡くしてから自分の心の部屋の中に閉じこもっていた主人公・青山が、日本を代表する水墨画家・湖山に見出されて水墨と向き合っていくお話。
    湖山は青山の画家としての才能を見出したわけではなく、青山の空っぽの心を見抜いて、水墨を通して心を見つめ直し歩き出すことを教えてくれようとしている。
    湖山の孫娘や弟子たちとも関わり、水墨の厳しさを通して心を開放していく様子が胸に染みました。
    「自分の視野や想像の外側にある場所にたどり着くためには、歩き出して、何度も立ち止まって考えて、進み続けなければならない」
    「この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい。」
    一般的な師弟の関係ではなく、青山に生きる力、意味を取り戻させようとしている湖山、とても温かい関係だと思いました。
    そして自称親友の古前君がとてもいい味を出していて、読者をフフッと笑わせるように青山の気持ちもほっこりさせていて、古前君が登場してくるのが待ち遠しかったりしました。
    文章がとても上品で、全体的に美しい作品でした。

  • フォロワーさん方のレビューを読んで興味を持った作品。読んで良かった。タイトルと表紙絵だけなら手に取らなかったかも知れない。こうした出会いがあるからありがたい。

    高校生の時に両親を交通事故で失って以来、無気力に日々を過ごしてきた大学生の青山霜介。
    大学の友人から頼まれた展示会のパネル搬入アルバイトをきっかけに、水墨画家の巨匠・篠田湖山に何故か気に入られ、弟子入りすることに。更には湖山の孫娘・千瑛と一年後の湖山賞を受賞すべく競うことに…。

    久しぶりに清らかな作品を読んだ。
    まるで主人公の青山のようだ。

    作家の砥上さんは水墨画家というだけあって、水墨画の描写は素晴らしかった。
    墨の濃淡だけ、線の細い太いだけで表現する絵は、余計な色彩や描写がない分、人間の想像力を掻き立ててくれるのかも知れない。
    モノクロームの世界に鮮やかな色彩を見たり、シンプルな絵の中に命の躍動を感じたり、そうした青山の目を通して見える世界が丁寧に描写されていた。

    師匠の湖山先生が飄々としていて如何にもな巨匠キャラクターだったり、青山を学生生活に無理矢理引き込む友人たちが押しが強いのに憎めないキャラクターだったり、ライバルの千瑛は最初はバチバチ、でも徐々に打ち解けていったり、兄弟子もそれぞれ個性があって読みやすかった。

    両親の死を機に、無気力だった青山が水墨画をきっかけに生きる力を得ていくという分かりやすい展開なのだが、一体どうやって力を得ていくのか、どうやって水墨画と向き合うのかが気になって引き込まれた。

    マンガやドラマみたいにいきなり上手くなるわけでもない。技は学べても描くことは自分で見出だすしかない。
    青山のように水墨画を始めたばかりの人間でも挫折はあるが、千瑛や兄弟子たちのように相当な技量を持った者にもそれぞれの悩みや挫折がある。
    それでも湖山先生の一言一言が心に刺さる。兄弟子たち、千瑛の言葉も青山の新しい力に変わる。

    何気に青山の叔父夫婦の苦労や気遣いが良かった。湖山先生の洞察力にも感服。友人たち、兄弟子たち…確かに青山は恵まれている。

  • 墨の香りが漂ってくるような、静かな作品。
    突然家族を失い、孤独の箱の中から抜け出せなくなった青年・霜介の話。

    霜介がアルバイトで関わった水墨画の展示会。
    思わぬ出会いがあり、霜介は墨絵の世界へと いざなわれます。
    霜介の深い孤独と才能を見抜いたのは、水墨画の巨匠・湖山先生。
    筆を持ってみないかと勧められ「僕にできると思えません」と答える霜介。
    湖山先生が彼にかける言葉にしびれます。
    「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
    そして、ほかにも素敵な言葉がけが。
    「力を抜きなさい。真面目というのは悪くないけど自然じゃない」
    そうやって先生は霜介の心を解き放っていきます。

    さらに、色のない世界に華やかに登場する 湖山先生の美しい孫娘・千瑛。
    霜介と切磋琢磨し合って水墨画の世界を高めていきます。
    彼女が、霜介の大学サークルで 部員にかける言葉にもハッとさせられます。
    「画面の上ではどんどん失敗していきましょう。
    水墨画でそういう思い切りを身につけていけば、
    実生活でも思い切った行動をする時の練習になります」

    『揮毫(きごう)会』という水墨画の実演会があるというのも初めて知りました。
    それを作者は「美しいものが生まれる瞬間から最後の瞬間までを経験する場」
    と表現していて、水墨画に対する強い想いが感じられます。

    この小説が原作の映画が、10月に公開されるようです。
    霜介・横浜流星、千瑛・清原果耶。
    イメージに近い素敵なキャスティング。
    ただ、映像は別物になることが多いので、ちょっと身構えるかな…。
    でも、やっぱり楽しみです。

  • ブクログされてる方の感想とあらすじを読んで
    『これ読みたい!』と興味がわき手に取った
    水墨画の小説。

    主人公の青山霜介は高校生の時に突然の事故で両親を亡くしたことで、心の中にできてしまった真っ白なガラスの部屋で孤独と無気力に囲まれ生きている。

    大学生になり青山君はバイト先で運命的に出会った水墨画の先生、篠田湖山から水墨画の指導を受けるようになり、またその兄弟弟子に学ぶ中で、水墨画の心、本質に近づいて行く。

    最終章で湖山先生が青山君に初めて出会った日から本当に伝えたかった大切な事が明らかになる場面では涙が止まらない。

    美容室で最終章を読んでいたのだけど
    涙が止まらなくて美容師さんに
    『すみません、ティッシュ1枚ください…。』と
    お願いしてしまった。
    恥ずかしい…‼︎

    登場人物も作者もみんな愛おしくて抱きしめたくなるような作品でした(^^)

    読後、作者の水墨画をYouTubeで見たのですが本当に素敵です!
    今年のやる事リストに"水墨画を見に行く!"が増えました♪

    • ひろさん
      お疲れさま~*ˊᵕˋ)੭
      こっちはみぞれです❄️️
      自分の大好きな小説を読んでくれて、こんな素敵な感想まで…もう感激です
      ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )...
      お疲れさま~*ˊᵕˋ)੭
      こっちはみぞれです❄️️
      自分の大好きな小説を読んでくれて、こんな素敵な感想まで…もう感激です
      ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )♡こっちがありがとうだよ~
      まつのおすすめ本も必ず読むからね!!
      2022/02/11
    • 松子さん
      ひろ、おはよー(^^)
      好きな本を好きな時に。無理なくね
      いつか読んでみよ〜で大丈夫だからね
      三連休♪うれし〜♪
      ひろ、おはよー(^^)
      好きな本を好きな時に。無理なくね
      いつか読んでみよ〜で大丈夫だからね
      三連休♪うれし〜♪
      2022/02/11
    • ひろさん
      まつ、おはよー!
      うん、ありがと~♪
      三連休、楽しんでね~( *ˊᵕˋ)ノ♡
      まつ、おはよー!
      うん、ありがと~♪
      三連休、楽しんでね~( *ˊᵕˋ)ノ♡
      2022/02/11
  • 吉田修一の「国宝」は歌舞伎、大島真寿美の「渦」は人形浄瑠璃の世界へと誘ってくれた。ほんのほんの入り口ではあるけれど、読書によって伝統芸能、芸術の世界を垣間見ることができた
    そして、また、この本は水墨画の静謐な世界へと読者を引き込んでくれた

    事故で両親を亡くし、外界から心を閉ざし小さな狭いガラスの部屋で記憶だけを眺めていた青山霜介。水墨画の大家篠田湖山に見出され、水墨画と向き合うことにより、自分の心の内側を解き放ち、生きる意味とこの世界の本当に素晴らしいものに気づいていく

    ☆ 水墨というのは、森羅万象を描く絵画
    森羅万象とは、宇宙。宇宙とは世界のありのままの現実であると同時に自分の心の内側にもある
    心の内側を解き放ち、外の世界へと繋ぐ術が水墨

    ☆ 何も知らないことが水墨にとって大きな力になる。何もかもがありのままに映る
    水墨画は、孤独な絵画ではない
    水墨を描くということは、自然との繋がりを見つめ、学び、繋がりと一緒になって絵を描くこと

    ☆ 墨で絵を描くことが水墨画ではない。水墨画を水墨画たらしめる要素は、描くこと以外方法で描き方を見出さなければならない

    まるで哲学書か禅問答かとと思えるような難解な文章、水墨画家の著者ならではの細かな描写、自分の持てるだけの想像力と語彙力と読解力を駆使して読み進めた

    湖山賞を受賞した千瑛の牡丹の絵、審査員特別賞の翠山賞を受賞した霜介の菊の絵が見てみたい


  • 両親を事故で亡くした悲しみから、ずっと心の内側に感情を閉じ込め、現実感のない小さく狭いガラスの部屋から抜け出すことができずにいた大学生の青山霜介くん。
    そんな彼が水墨画と出会い、水墨画に命をかける人たちの心に触れるうちに、自らの「生きる意味」を見いだしていくことになります。

    著者の砥上裕將さんは水墨画家さんなのですね。
    作中にも水墨画を描くシーンが幾度も出てきますが、文章表現が非常に繊細で、筆の重みや動き、濃淡のある線が描かれていく様子や画仙紙のこすれる音などがまるで間近にあるかのように錯覚してしまいます。

    自分が生きているこの瞬間、その輝きや喜びを描く。水墨画にかける熱い想いが伝わる素敵な小説でした。

  • 両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、
    アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
    なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
    それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
    水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
    描くのは「命」。
    はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、
    線を描くことで次第に恢復していく…。

    表紙のイラストから若者向けなのかと、少し躊躇っていましたが、
    とても評判になっている本なので読んでみました。
    沢山の賞を受賞されているそうです。

    両親を事故でなくして、しばらくの間は明るく振る舞う事に務めていた。
    1ヶ月を過ぎ3ヶ月を過ぎ半年が過ぎた頃には
    世界の何にも対応が出来ない人間になっていた。
    心の中に真っ白な部屋があり、その中でいる…。
    そんな変化がとてもリアルに感じられ。
    あまりにもの孤独…絶望的な孤独に圧倒され胸が痛かった…。
    そんな霜介がひょんなことから水墨画の大先生に出会い内弟子にスカウトされる。
    水墨画に向き合い先生の言葉を噛みしめ、少しずつ動き出した
    霜介の世界と心が良かった。
    水墨画って聞いた事はあったけど、実物をしっかりと見た事もないし、
    描き方など詳しい事は全く知らなかった。
    水墨画を描く事、墨のすり方や筆の動き、気配までとても素晴らしい描写でした。
    言葉では表し辛いだろうに見事に表現していて、
    目の前にその絵が見えている様でした。
    墨の香りが漂っているように感じました。
    どうして…?と思っていたら作者自身が水墨画の画家だったのですね。
    霜介と一緒に水墨画を学んでいるような感覚になりました。

    師匠となった湖山先生の言葉は、厳しいしけれどとても優しくて
    その言葉の数々を胸に刻みたいと思った。
    この物語のもつ世界観に引き込まれました。

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著者プロフィール

1984年生まれ。水墨画家。『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。同作は、2019年ブランチBOOK大賞受賞。2020年度本屋大賞第三位に選出された。

「2021年 『7.5グラムの奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

砥上裕將の作品

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