線は、僕を描く

著者 :
  • 講談社
4.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065137598

作品紹介・あらすじ

小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

絶賛の声、続々!!!

自分の輪郭を掴む、というのは青春小説の王道たるテーマと言っていい。それを著者は、線が輪郭となり世界を構成する水墨画と見事に重ね合わせてみせた。こんな方法があったのか。
青春小説と芸術小説が最高の形で融合した一冊である。強く推す。
                               ――大矢博子(書評家)

水墨画という非言語の芸術分野を題材にした小説で、架空の登場人物が手にした人生とアートの関係性、時空をも越えたコミュニケーションにまつわる真理を、反発心や違和感など一ミリも感じることなく、深い納得を抱いて受け取ることができた。それって、当たり前のことじゃない。一流の作家だけが成し遂げることのできる、奇跡の感触がここにある。
                               ――吉田大助(ライター)

感想・レビュー・書評

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  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.感想 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    これは、ずるい、王道だな(笑)
    すごいよかったな…
    登場人物たちも魅力満載でした。
    ブクログの皆さんの感想から手に取った作品です。

    いろいろ感じることありましたね。
    なんだろうな…また泣けました。

    不幸が招いた幸せがあるように、幸せが招いた不幸もあるわけで、そう、世の中は何でもありなわけで、今と、どう向き合っていくかが問われているんですよね。

    きちんと生きた人だけが見える世界…
    その世界に目を向けられるように、また、新たな一歩を踏み出したい。そう考えることができるようになる作品でした。

    とてもよかったです。


    ■言葉
    物語に登場する湖山先生(おじいちゃん)の言葉がいいんですよね。
    「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ。」
    そう、私も常にそう思っています。ただ、やってみるとは、深くはいりこむことであり、全力を注がないといけないんですよね。そこが私のできていないところ。
    もっと、深く、目に見えないに目を向けるように。

    ■失敗
    「こんなにも何度も失敗を黙々と繰り返したことは、僕にはない」…主人公の 霜介が水墨画を始めるときの一言です。
    私は自分が見えていない。最近、失敗してないと感じたのか、あるとき、「失敗がないということは、チャレンジしていないことだ!」と思いついて、「今年は3回失敗することを目標にしよう!」と、年始に計画したことがありました。が…しかし…半年を待たずして、3回失敗した私。ハーフマラソン申し込んだつもりが、フルマラソンだったとか、そんなんです…(笑)まぁ、チャレンジはしてるんだろうなとは思います。
    この本の冒頭で、やっぱり、失敗を楽しまないとダメだなと、感じました。来年は50回ぐらいを目標にします(笑)

    ■自然
    水墨画は自然に心を重ねていく絵画だ。
    ぼっ〜としてるようで、気づくと周りを見ていない私。
    美しい景色をカメラにおさめるxx枚、というのを年間目標にいれたおり、それで、かろうじて、景色に目を向けることを保っています。自然は好きなんですよね。自然に心を重ねていくなんて、素敵だと思いました。

    ■絵空事
    「絵は絵空事だよ」という湖山先生の言葉。絵空事とは、物事を実際よりも誇張したり、うそを加えたりすること。面白い。水墨画の世界に吸い込まれました。

    ■先へ
    そう、もっと厳しい世界で、もっと自分にある力を使い切りたい。そして、それが誰かしらに繋がっている。そんなところに向かっていきたいんですよね。かる〜く生きてきたから、年老いた今頃になって、必死になりたくなっているんですよね。
    今いる場所から、想像もつかない場所にたどり着くためには、とにかく歩き出さなければいけない。その一歩は何歳になっても踏み出せる。

    ■その他
    序盤から物語に吸い込まれて、本を読むのに夢中になってしまいました。先日、ツルネというアニメを全部一気に見たんですが、面白かったです。そのサントラ聴きながら読んだら、マッチして、さらによかったです(^^)


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.あらすじ 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    両親を失い、1人、動き出せずに日々を送っている大学生の霜介。あるとき、友人古前のお願いで会場設営のバイトをすることになった。
    そこで、運命的に軽い感じのお兄ちゃん西濱と、水墨画界の巨匠湖山に出会い、その才能を見出される。
    そして、踏み出せずにいた新たな一歩を、霜介は踏み出して行きます。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    青山霜介 そうすけ、大学生
    古前 グラサン、霜介友達
    川岸 賢い、女性、霜介同学年

    篠田千瑛 ちあき、湖山孫、美人
    篠田湖山 こざん、おじいちゃん、巨匠
    西濱湖峰 こほう、湖山弟子
    斉藤湖栖 こせい、湖山弟子

    藤堂翠山 長身細身、老人、すいざん、巨匠
    藤堂茜 翠山孫


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    4.水墨画について
    ━━━━━━━━━━━━◆
    ■道具
    ・下敷きは白いもの
    ・梅皿 パレットのようなもの
    ・筆洗 ひっせん、水を張った容器
    ・硯 すずり
    ・筆
    ・墨

    ■四君子 しくんし
    基本の形式
    ・春蘭
    ・竹
    ・梅
    ・菊

    ■画賛
    絵をほめる言葉や絵の制作の詳細を示す





    • 土瓶さん
      Manideさん、こんばんは~^^

      自分にチャレンジを促すために、失敗することを目標にする。

      なかなかできることではありません。...
      Manideさん、こんばんは~^^

      自分にチャレンジを促すために、失敗することを目標にする。

      なかなかできることではありません。

      尊敬します(´-`).。oOスゴイナー
      2023/10/08
    • Manideさん
      土瓶さん、コメントありがとうございます。

      師匠と呼ばれる人に、尊敬なんて言葉をあただけるとウレシイです(^-^)

      昔はプライドが高くて、...
      土瓶さん、コメントありがとうございます。

      師匠と呼ばれる人に、尊敬なんて言葉をあただけるとウレシイです(^-^)

      昔はプライドが高くて、いつもカッコつけてましたが、失敗ばかりして、イマイチなヤツでいる方が自分らしいようです(笑)
      失敗して、成長することを、生涯続けられるようにします(*´꒳`*)
      2023/10/08
    • shukawabestさん
      「EDNE」でのコメントありがとうございます。本作、『線は、僕を描く』もとてもいい作品ですね。これから先、何度か読み返すと思います。
      僕はチ...
      「EDNE」でのコメントありがとうございます。本作、『線は、僕を描く』もとてもいい作品ですね。これから先、何度か読み返すと思います。
      僕はチャレンジに「ウズウズ」するような前向きな人間ではありませんが、Manideさんやブクログのフォロワーさんたちと知り合った「縁」を、みなさんのレビューを読むなかで、自分の中に取り入れて行かなければもったいないと感じています。
      僕自身はぐうたらで、遅々として歩みはゆっくりですが、今後も懲りずによろしくお願いします。
      この私のコメントの返答は無理されませんように。それより、11月5日の晩、心地良い眠り、夢をManideiさんが見られることを願っています。
      夜分遅くに失礼しました。おやすみなさい。
      コメントの
      2023/10/15
  • 主人公、天涯孤独となった霜介が水墨画を通して自分を再生させていく物語。水墨画というジャンルが小説になってること自体驚きでした。
    ですのでネットで水墨画の作品を見ながら読み進めていきました。
    水墨画に目覚め、寝ても覚めても練習に打ち込む姿に共感しました。部屋が画仙紙にうまっていくほどの練習量でした。
    私も朝起きてから寝るまで勉強に没頭した時期があり、それが思い起こされました。また、通信で習字を始めたときも、お手本1つにつき100枚書こうと決めて6千枚くらい書きました。
    そうやって何かに打ち込むことは嫌いではないです。(もう一回やれと言われたらいさすがにやですが)
    そうして、水墨画に打ち込むなかで霜介の中に人や様々な生命が息づいていく、再生していく描写がとてもよかったです。水墨画の魅力、奥深さもとてもわかりやすく、描かれています。
    ただ、水墨画の極意的なことになると言葉としてはわかっても、どういう状態なのかまでは深すぎて読み取れませんでした。こればかりはやってみないとわからないのかなと思いました。
    新しい世界の扉を開いてくれたと言う点で読書の醍醐味を味わわせてもらいました。

    かいさんのすてきなレビューで知ることができました。ありがとうございました!


    • かいさん
      ちゃたさんこそ、すてきな感想をありがとうございます。自分の読んだ小説を読んでもらって、感想をもらえるのって、楽しいですね。
      ちゃたさんこそ、すてきな感想をありがとうございます。自分の読んだ小説を読んでもらって、感想をもらえるのって、楽しいですね。
      2023/06/20
  • 水墨画はスポーツか音楽のようだ。
    〈抜粋〉
    その動きは決して老人の動きではなかった。……腕や肩や背中の筋肉が小刻みに滑らかに動いて、手先は紙と硯と水を張った容器の間を切るような速度で回転し続けていく。……気がつけば五分もしないうちに、湖畔の景色が真っ白い画面に現れていた。驚いたのはそれだけではない。絵は画面の上で変わっていったのだ。
     墨が紙に定着していくほんの僅かな間に、湖に引かれた墨線がじわじわ滲んで湖面の光の反射を思わせ、柔らかな波を感じさせた。……まるで魔法のような一瞬が、湖山先生の小さな筆の穂先から生まれていた。
    〈抜粋終わり〉

     心ゆくまでじっくりと絵と向き合う油絵や水彩画と異なり、水墨画は瞬間で和紙の上に墨と水で仕上げる技とスピードとセンスと精神が要求される。美術には違いないが、厳しい修行を要する書道や柔道や剣道や華道といった“道”のつくものに似ていると思った。
    水墨画を始めるものは “春欄“や“竹”、“梅”などを何度も何度も練習して、技術とモチーフの見方を鍛える。
    しかし、技術だけが優れればいい訳ではない。“自由な心”がなければ絵にはならない。
    水彩画は自然の森羅万象を描く芸術である。ここで忘れてはならないのは“自然”は“人の心の中”にもあるということだ。
    そして、下記のような文も印象に残った。
    ・水墨画には“減筆”〈描かない〉という用法もある。
    ・水墨画にはその用具や限界ゆえに描けないものも沢山ある。……我々の手は現象を追うには遅すぎる。……現象を追い、描き始めて、物の形を追い、彩を追い、すべてを仕上げても終わったときには、またすべてが変わっている。光は止まることなく動き続けている。

    読んでみて、どうして『線は、僕を描く』なのか分かった。
    厳しい修行ゆえに継承者が殆どいない“水墨画”の道を歩まれている砥上さん自身が水墨画の真髄をこめて書かれたこの小説は、貴重な小説だと思う。
    多くの人に読んで頂き、水墨画という芸術への理解を深めてほしいと思う。

  • 水墨画と生き方、内なる世界の豊かさ、向き合うこと、新たな見方を感じた。

  • TVで映画の宣伝をしていたので気になった本。横浜流星さんと清原伽耶さんの主演だそうだが、本を読んだ印象からは二人の印象とは全く違う感じ。
    作者の砥上さんは水墨画家でもあるので、絵の文章表現が非常に美しい。映像で現物が見たいと思ってしまう。
    全くの素人が半年で賞を貰うまで書けるというのが本当なら、天才なんだろうと思う。巨匠に見出され、その孫娘と賞を目指して闘うという設定もドキドキ感を煽って来る。ライバルがいつからか恋心に変わるのも定番だが、安心の読み味。最後に感動が待ち受けて、思わず涙を誘うところも良い。

  • 素敵な本…!

    自分の思っていること、考えていること、自分とは何か…そういった自分の内面、内側のことって、自分でも分からない部分が多いですよね。

    過去につらい経験をした青山霜介は、水墨画を通して自分の内側と向き合って、表現することができた。まさに、線に自分を描いてもらえた。
    そのことに、読んでいて一緒に幸せを感じられる物語でした。

    あとは、水墨画のことなんてこれっぽっちも知らなかったけれど、読んでいるうちにファンにさせられてしまうような…著者さんの水墨画愛を感じます♡

    • Manideさん
      ねこがすきさん、こんにちは〜

      この作品は良かったですね、、

      すごい水墨画の世界に惹かれますよね、、
      とても共感です♪

      影響受けやすいの...
      ねこがすきさん、こんにちは〜

      この作品は良かったですね、、

      すごい水墨画の世界に惹かれますよね、、
      とても共感です♪

      影響受けやすいので、なんか、花に語りかけそうで、やばい人になりそうです(笑)
      2023/10/08
    • ねこがすきさん
      Manideさん
      コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)
      花に語りかける!分かります〜!笑
      そのくらい引き込まれる世界観のある作品...
      Manideさん
      コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)
      花に語りかける!分かります〜!笑
      そのくらい引き込まれる世界観のある作品でしたよね!
      私も、花に語りかけている人を見かけたら、
      「この人はこの花をどうやって表現するのかな…?」と想像しちゃいそうです♪笑
      2023/10/11
    • Manideさん
      ねこがすきさん、こんばんは。

      こちらこそ、返信ありがとうございます。

      いいですね、その考え方がすごいいいですね(^^)
      花に話しかけてる...
      ねこがすきさん、こんばんは。

      こちらこそ、返信ありがとうございます。

      いいですね、その考え方がすごいいいですね(^^)
      花に話しかけてる人見たら「へんなやつ…」となってしまうのが、ほとんどだと思いますが、「どう見てるのかな」と考えられることは、それだけで、その人は幸せな感じがします。

      なんか、いいですね。一人で納得してます(笑)
      2023/10/12
  • ブクログのフォロワーさんの評価が高かったので、Amazonでポチった一冊。

    読み始めると、あれ?この物語、何か知ってる??
    そんなわけないのに、既視感??なんだろう、この感じ???

    不思議だなぁと思うも、読み進めてみることに。


    家族を事故で失い、青山霜介は深い悲しみの中に閉じこもっていた。
    大学の友人から紹介されたバイト先は、展示会の装飾の仕事だった。思いの外に重労働だった為、仲間たちが次々と脱落していく中、何とか最後まで手伝いきった青山。
    お弁当を食べて良いからと言われ、一人残っていたところ、そこで面白い老人と出会う。
    その老人はメディアでも有名な水墨画の巨匠・篠田湖山だった。
    湖山と展示を鑑賞すると、なぜか青山は湖山に気に入られる。


    あー、これは映画のCMで見たことがあったんだ。
    だらか知らないのに知っている状態だったのだ(笑)

    この小説は凄いなぁ。文章が優しく、心地よく、流れるようで、温かさを感じた。

    例えば、この本の粗筋を書いたら、数行で終わってしまうだろうけど、この本は粗筋で感じるのではなく、全部読み終わってやっと伝わる本なのだという感じ。

    私の能力ではとても他の方にお伝えできないが、とても良い本だった(^_^*)
    映画も気になるなぁ。。。
    このお話をどうやって映像にするのか??
    そこがとても気になる(^^)

  • 線は、命を描く

    そういうことだよねきっと

    良かったなー
    自分の内側にある宇宙を見つめることが外側にある世界を知ることになる
    自分の内側にある宇宙とは「命」のこと
    のような気がした
    命と向き合うことが生きるということ
    そんな崇高なことを思ったりもしたけれど

    この本を読み終えた自分が真っ先に思ったことはこれから霜介と千瑛はどうなるんだろうという俗なことだったw

    • みんみんさん
      メロリン今晩は〜♪
      このタイトルそそるよね〜!
      まだ二作しか出してないけど次のも良さそうだよ
      要チェック_φ(・_・
      メロリン今晩は〜♪
      このタイトルそそるよね〜!
      まだ二作しか出してないけど次のも良さそうだよ
      要チェック_φ(・_・
      2022/07/24
    • ひまわりめろんさん
      みんみん
      ラジャ!
      みんみん
      ラジャ!
      2022/07/25
  • 静かに心に響く作品でした。
    二年前に事故で両親を亡くしてから自分の心の部屋の中に閉じこもっていた主人公・青山が、日本を代表する水墨画家・湖山に見出されて水墨と向き合っていくお話。
    湖山は青山の画家としての才能を見出したわけではなく、青山の空っぽの心を見抜いて、水墨を通して心を見つめ直し歩き出すことを教えてくれようとしている。
    湖山の孫娘や弟子たちとも関わり、水墨の厳しさを通して心を開放していく様子が胸に染みました。
    「自分の視野や想像の外側にある場所にたどり着くためには、歩き出して、何度も立ち止まって考えて、進み続けなければならない」
    「この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい。」
    一般的な師弟の関係ではなく、青山に生きる力、意味を取り戻させようとしている湖山、とても温かい関係だと思いました。
    そして自称親友の古前君がとてもいい味を出していて、読者をフフッと笑わせるように青山の気持ちもほっこりさせていて、古前君が登場してくるのが待ち遠しかったりしました。
    文章がとても上品で、全体的に美しい作品でした。

  • 墨の香りが漂ってくるような、静かな作品。
    突然家族を失い、孤独の箱の中から抜け出せなくなった青年・霜介の話。

    霜介がアルバイトで関わった水墨画の展示会。
    思わぬ出会いがあり、霜介は墨絵の世界へと いざなわれます。
    霜介の深い孤独と才能を見抜いたのは、水墨画の巨匠・湖山先生。
    筆を持ってみないかと勧められ「僕にできると思えません」と答える霜介。
    湖山先生が彼にかける言葉にしびれます。
    「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
    そして、ほかにも素敵な言葉がけが。
    「力を抜きなさい。真面目というのは悪くないけど自然じゃない」
    そうやって先生は霜介の心を解き放っていきます。

    さらに、色のない世界に華やかに登場する 湖山先生の美しい孫娘・千瑛。
    霜介と切磋琢磨し合って水墨画の世界を高めていきます。
    彼女が、霜介の大学サークルで 部員にかける言葉にもハッとさせられます。
    「画面の上ではどんどん失敗していきましょう。
    水墨画でそういう思い切りを身につけていけば、
    実生活でも思い切った行動をする時の練習になります」

    『揮毫(きごう)会』という水墨画の実演会があるというのも初めて知りました。
    それを作者は「美しいものが生まれる瞬間から最後の瞬間までを経験する場」
    と表現していて、水墨画に対する強い想いが感じられます。

    この小説が原作の映画が、10月に公開されるようです。
    霜介・横浜流星、千瑛・清原果耶。
    イメージに近い素敵なキャスティング。
    ただ、映像は別物になることが多いので、ちょっと身構えるかな…。
    でも、やっぱり楽しみです。

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著者プロフィール

1984年生まれ。水墨画家。『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。同作は、2019年ブランチBOOK大賞受賞。2020年度本屋大賞第三位に選出された。

「2021年 『7.5グラムの奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

砥上裕將の作品

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