線は、僕を描く

著者 :
  • 講談社
4.13
  • (424)
  • (398)
  • (208)
  • (25)
  • (9)
本棚登録 : 5462
レビュー : 443
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065137598

作品紹介・あらすじ

小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

絶賛の声、続々!!!

自分の輪郭を掴む、というのは青春小説の王道たるテーマと言っていい。それを著者は、線が輪郭となり世界を構成する水墨画と見事に重ね合わせてみせた。こんな方法があったのか。
青春小説と芸術小説が最高の形で融合した一冊である。強く推す。
                               ――大矢博子(書評家)

水墨画という非言語の芸術分野を題材にした小説で、架空の登場人物が手にした人生とアートの関係性、時空をも越えたコミュニケーションにまつわる真理を、反発心や違和感など一ミリも感じることなく、深い納得を抱いて受け取ることができた。それって、当たり前のことじゃない。一流の作家だけが成し遂げることのできる、奇跡の感触がここにある。
                               ――吉田大助(ライター)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • フォロワーさん方のレビューを読んで興味を持った作品。読んで良かった。タイトルと表紙絵だけなら手に取らなかったかも知れない。こうした出会いがあるからありがたい。

    高校生の時に両親を交通事故で失って以来、無気力に日々を過ごしてきた大学生の青山霜介。
    大学の友人から頼まれた展示会のパネル搬入アルバイトをきっかけに、水墨画家の巨匠・篠田湖山に何故か気に入られ、弟子入りすることに。更には湖山の孫娘・千瑛と一年後の湖山賞を受賞すべく競うことに…。

    久しぶりに清らかな作品を読んだ。
    まるで主人公の青山のようだ。

    作家の砥上さんは水墨画家というだけあって、水墨画の描写は素晴らしかった。
    墨の濃淡だけ、線の細い太いだけで表現する絵は、余計な色彩や描写がない分、人間の想像力を掻き立ててくれるのかも知れない。
    モノクロームの世界に鮮やかな色彩を見たり、シンプルな絵の中に命の躍動を感じたり、そうした青山の目を通して見える世界が丁寧に描写されていた。

    師匠の湖山先生が飄々としていて如何にもな巨匠キャラクターだったり、青山を学生生活に無理矢理引き込む友人たちが押しが強いのに憎めないキャラクターだったり、ライバルの千瑛は最初はバチバチ、でも徐々に打ち解けていったり、兄弟子もそれぞれ個性があって読みやすかった。

    両親の死を機に、無気力だった青山が水墨画をきっかけに生きる力を得ていくという分かりやすい展開なのだが、一体どうやって力を得ていくのか、どうやって水墨画と向き合うのかが気になって引き込まれた。

    マンガやドラマみたいにいきなり上手くなるわけでもない。技は学べても描くことは自分で見出だすしかない。
    青山のように水墨画を始めたばかりの人間でも挫折はあるが、千瑛や兄弟子たちのように相当な技量を持った者にもそれぞれの悩みや挫折がある。
    それでも湖山先生の一言一言が心に刺さる。兄弟子たち、千瑛の言葉も青山の新しい力に変わる。

    何気に青山の叔父夫婦の苦労や気遣いが良かった。湖山先生の洞察力にも感服。友人たち、兄弟子たち…確かに青山は恵まれている。

  • 吉田修一の「国宝」は歌舞伎、大島真寿美の「渦」は人形浄瑠璃の世界へと誘ってくれた。ほんのほんの入り口ではあるけれど、読書によって伝統芸能、芸術の世界を垣間見ることができた
    そして、また、この本は水墨画の静謐な世界へと読者を引き込んでくれた

    事故で両親を亡くし、外界から心を閉ざし小さな狭いガラスの部屋で記憶だけを眺めていた青山霜介。水墨画の大家篠田湖山に見出され、水墨画と向き合うことにより、自分の心の内側を解き放ち、生きる意味とこの世界の本当に素晴らしいものに気づいていく

    ☆ 水墨というのは、森羅万象を描く絵画
    森羅万象とは、宇宙。宇宙とは世界のありのままの現実であると同時に自分の心の内側にもある
    心の内側を解き放ち、外の世界へと繋ぐ術が水墨

    ☆ 何も知らないことが水墨にとって大きな力になる。何もかもがありのままに映る
    水墨画は、孤独な絵画ではない
    水墨を描くということは、自然との繋がりを見つめ、学び、繋がりと一緒になって絵を描くこと

    ☆ 墨で絵を描くことが水墨画ではない。水墨画を水墨画たらしめる要素は、描くこと以外方法で描き方を見出さなければならない

    まるで哲学書か禅問答かとと思えるような難解な文章、水墨画家の著者ならではの細かな描写、自分の持てるだけの想像力と語彙力と読解力を駆使して読み進めた

    湖山賞を受賞した千瑛の牡丹の絵、審査員特別賞の翠山賞を受賞した霜介の菊の絵が見てみたい


  • 静かに心に響く作品でした。
    二年前に事故で両親を亡くしてから自分の心の部屋の中に閉じこもっていた主人公・青山が、日本を代表する水墨画家・湖山に見出されて水墨と向き合っていくお話。
    湖山は青山の画家としての才能を見出したわけではなく、青山の空っぽの心を見抜いて、水墨を通して心を見つめ直し歩き出すことを教えてくれようとしている。
    湖山の孫娘や弟子たちとも関わり、水墨の厳しさを通して心を開放していく様子が胸に染みました。
    「自分の視野や想像の外側にある場所にたどり着くためには、歩き出して、何度も立ち止まって考えて、進み続けなければならない」
    「この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい。」
    一般的な師弟の関係ではなく、青山に生きる力、意味を取り戻させようとしている湖山、とても温かい関係だと思いました。
    そして自称親友の古前君がとてもいい味を出していて、読者をフフッと笑わせるように青山の気持ちもほっこりさせていて、古前君が登場してくるのが待ち遠しかったりしました。
    文章がとても上品で、全体的に美しい作品でした。

  • 両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、
    アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
    なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
    それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
    水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
    描くのは「命」。
    はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、
    線を描くことで次第に恢復していく…。

    表紙のイラストから若者向けなのかと、少し躊躇っていましたが、
    とても評判になっている本なので読んでみました。
    沢山の賞を受賞されているそうです。

    両親を事故でなくして、しばらくの間は明るく振る舞う事に務めていた。
    1ヶ月を過ぎ3ヶ月を過ぎ半年が過ぎた頃には
    世界の何にも対応が出来ない人間になっていた。
    心の中に真っ白な部屋があり、その中でいる…。
    そんな変化がとてもリアルに感じられ。
    あまりにもの孤独…絶望的な孤独に圧倒され胸が痛かった…。
    そんな霜介がひょんなことから水墨画の大先生に出会い内弟子にスカウトされる。
    水墨画に向き合い先生の言葉を噛みしめ、少しずつ動き出した
    霜介の世界と心が良かった。
    水墨画って聞いた事はあったけど、実物をしっかりと見た事もないし、
    描き方など詳しい事は全く知らなかった。
    水墨画を描く事、墨のすり方や筆の動き、気配までとても素晴らしい描写でした。
    言葉では表し辛いだろうに見事に表現していて、
    目の前にその絵が見えている様でした。
    墨の香りが漂っているように感じました。
    どうして…?と思っていたら作者自身が水墨画の画家だったのですね。
    霜介と一緒に水墨画を学んでいるような感覚になりました。

    師匠となった湖山先生の言葉は、厳しいしけれどとても優しくて
    その言葉の数々を胸に刻みたいと思った。
    この物語のもつ世界観に引き込まれました。

  • 2019年メフィスト賞受賞作。
    読みやすい。水墨画は僕にとって未知の世界だけど、絵の見方とか描き方とかがよく理解ができた。

    両親を事故で亡くし深い悲しみの中にいる青山霜介は、ひょんなことから水墨画の巨匠・篠田湖山に見込まれ、内弟子にされてしまう。
    霜介は水墨画を描くこと、湖山の孫の千瑛(ちあき)や画家の西濱や斉藤とのふれあいを通じて人生を取り戻していく物語。

    対象物(=世界)の美しさをより深く気づけること。
    自分の心を素直に表現する手段を得られること。
    …などの効能があるので、絵を描くことは、心の傷を癒すセラピーとして、非常に有効なのだと思った。

    タイトルは、その人が描く線の本質は、生まれ持ったもの、という意味。

  • 評判通りの実に素晴らしい作品でした。

    水墨画というものの存在こそ知ってはいたものの、じっくり鑑賞したことがないまま本作に突入しました。水彩画や油彩画のように自ら色彩を加えられないからこそ、白黒の濃淡だけで表現し、観る者に色彩や空気、香りまで感じさせてしまうという。しかも余白の使い方こそ真髄だというのが凄いなと思いましたね。表現方法が抑制されればされるほど、観る者の想像力を駆り立て、人間の脳を活性化し、心の内の中にあるものと目の前の絵が同化してくる、、なるほどなぁと思いました。きっと原画を目の前で鑑賞すると、その凄さがもっと実感できるのだと思います。是非とも機会をみつけて美術館を訪れようと思いました

    その水墨画と出会う一人の青年。絶望的な孤独から心を閉ざしてしまい、ガラスの小部屋の中に自分を幽閉してしまった姿はなんとも心が痛い。そんな彼が水墨画の第一人者の湖山先生に出会い、水墨画を通じて固く閉ざしていた心の檻からゆっくり解放されていく様が、実に繊細な文章により丁寧に描かれています。最初はぼやけていた絵だったのに、最後にははっきりとした生の力を感じる線になり、彼の人生が再び強く描かれだしていることが分かります。まるで水墨画の神髄を極めるプロセスと、彼の完全に閉ざした心が再生されていくプロセスがシンクロしているように感じました。きっと彼の非常に辛かった経験は、彼自身の心にありながらも水墨画の余白のような存在となっていくことと思います。水墨画と青年の心の再生、非常に繊細で感性豊かな小説でした。

  • 真っ白な紙に一本の枝垂れた葉が生まれる。
    無造作に見える、ただの一本の線。
    けれどそのたった一本の線には、絵師の経験や技が隠されている。
    息継ぎの間、筆を運ぶ速度、墨を含む量、肩や腕の位置、指の構え、手首の硬さ。
    その全てが絵師により計算され尽くし洗練されたもの。

    水墨画の奥深さにため息がもれる。
    水墨画家でもある作者の描く描写一つ一つが、リアルに目の前に広がり墨の薫りが漂ってくる。
    墨のグラデーション。
    それは黒一色でできる単調なものではない。
    目には見えなくとも、様々な色彩と光を肌で感じさせ、墨の持つダイナミックさと繊細さに圧倒されるのだ。

    心に内に存在するガラスの部屋の中に閉じ籠っていた彼も、水墨画によって外の世界へ解き放たれる。
    「つねに問い、立ち止まり、顧みて、また描く。その連続だよ」
    恩師の言葉は彼のみならず、読み手の心にもゆっくり染み渡る。
    「人は描くことで生命に触れることができる」
    水墨画という芸術を通して、人が生きる意味について教えられた。
    集中して何かを生み出すことは心のデトックスにも繋がるのだ、としみじみ思う。
    私もデトックスに繋がる何かを創りたくなった。

  • 表面的には大学生をしながらも、両親の死から立ち直れず、心の中にひきこもっていた、青山霜介。
    なぜか水墨画の巨匠に気に入られ、内弟子として水墨画を始めることになる。

    2020年本屋大賞ノミネート作品。

    瑞々しく、繊細。
    孤独と、あたたかさ。
    独特の雰囲気があって、引きこまれる物語。

    飄々としていたり。
    わかりやすい下心に満ちつつも、憎めなかったり。
    深く受け入れてくれたり。
    登場人物がみな魅力的。

    筆者は水墨画家だそうで、ご自身の春蘭の水墨画も掲載。
    専門家の表現に走らず、水墨画の世界が自然に描かれていた。
    どの作品も見てみたくなる。

    読後感も、さわやかであたたか。

    第59回メフィスト賞受賞作『黒白の花蕾』の改題。

  • 水墨画という、自分にとっては墨の香りしか想像できない未知の世界が教え導く物語。

    心地良く耳に流れるような数々の言葉には静かさを感じながらも力強さを感じ、後半は躍動感と共に心に迫ってくるものがあった。

    全ての心を筆に注ぎ、その瞬間を感じた心、生の瞬間を一瞬の筆致に変えて表現し仕上げられていく一枚の画。その過程と、水墨画によって自分というものをうつしとられ道を見出していく主人公の心の機微との溶け合いに魅了された。

    ラスト数ページ、誰もの言葉が心が、自分の心に響く。

    読後はこのタイトルの意味に思わず涙。

    線は今もこの瞬間も、続く。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      この本先週新刊コーナーで見たよ。
      タイトルがとても不思議でインパクトがあって気になったよ。
      でも、知らな...
      こんばんは(^-^)/

      この本先週新刊コーナーで見たよ。
      タイトルがとても不思議でインパクトがあって気になったよ。
      でも、知らない作家さんだったから誰か読む人いるといいな、なんて失礼なことを思ってしまったよ(/ω\)キャー
      さすがくるたんだわ!
      絵の話ならきっと私も心惹かれるはずなのに。
      2019/08/21
    • くるたんさん
      こんばんは3♪

      そうだったのね♪♪
      これ、けいたん好きだと思うよ♪
      文章で水墨画を表現してるのが素晴らしいよ♪
      大学生の青年も好青年、周り...
      こんばんは3♪

      そうだったのね♪♪
      これ、けいたん好きだと思うよ♪
      文章で水墨画を表現してるのが素晴らしいよ♪
      大学生の青年も好青年、周りの人も良い人だった♡
      youtubeでこの作品の水墨画が見られるのよ♪

      すごい評判いいみたい♪前半はイマイチだったけど、後半からグッときたー。ラストがまたいいのよ(≧∇≦)私ももうちょいじっくり読みたかった作品だよ♡

      機会があったらぜひぜひ♪
      2019/08/21
  • 『線は、僕を描く』。『僕は、線を描く』ではなく、『線は、僕を描く』だ。このタイトルがまたいい。

    さて、私には全く興味のない題材である。水墨画。面白く読めるかな?と不安になりながらも読み始めると、あっという間にその水墨画の世界に入り込んでしまった。

    僕こと青山霜介は大学一年生。事故で両親を亡くし、自分の殻に閉じこもって生きてきた。そんな霜介は大学の友人に頼まれ、展覧会の会場設営をしていたところ、水墨画の名人に誘われ、水墨画の世界に入ることに。
    老人は篠田湖山といい、孫娘の千瑛と来年の湖山賞をめぐり、水墨画で勝負することになった。
    果たして、筆も持ったことのないど素人の霜介が、千瑛に勝つことができるのか。

    いやぁ、素晴らしかった。霜介の周りの人たちもいいし、霜介が徐々に水墨画の世界に没頭していく様も良かった。何より、この物語が持つ世界観が素晴らしかった。
    筆洗に筆を浸ける音『ポチャン』。まるでその音が聴こえてくるようだった。水墨画に興味を持たせてくれた本書に感謝したい。

    • やまさん
      ひとしさん
      こんにちは。
      1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト3を載せています。
      きょうから始めています。
      やま
      ひとしさん
      こんにちは。
      1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト3を載せています。
      きょうから始めています。
      やま
      2020/02/23
    • やまさん
      各位
      こんにちは。
      1月最後に読んだ本は、「新・浪人若さま 新見左近【四】-桜田の悪 (双葉文庫) 」です。
      見つけ方は、私のページの...
      各位
      こんにちは。
      1月最後に読んだ本は、「新・浪人若さま 新見左近【四】-桜田の悪 (双葉文庫) 」です。
      見つけ方は、私のページの「読書グラフ」の2020.01をクリックして、1月、本、27(冊)をクリックして、一番最後までもって行くと最後に読んだ本の所に行き当たります。
      やま
      2020/02/23
全443件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

砥上裕將(とがみ ひろまさ)
1984年、福岡県生まれの水墨画家。大学時代に小説を書いていたが、水墨画を始めた後は画家として活躍を続けてきた。30歳を過ぎて再び小説を書き始める。メフィスト賞3度目の投稿となった水墨画を題材にした青春小説『線は、僕を描く』で、第59回メフィスト賞を受賞。2019年6月27日に『線は、僕を描く』をデビュー作として刊行、その作品力は広く評価され、『週刊少年マガジン』に漫画化も決まったことも話題となる。

砥上裕將の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
有川 ひろ
辻村 深月
知念実希人
今村 昌弘
有効な右矢印 無効な右矢印

線は、僕を描くを本棚に登録しているひと

ツイートする
×