神の島のこどもたち

著者 :
  • 講談社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065142554

作品紹介・あらすじ

『神に守られた島』で描かれた終戦から7年。神戸に行ったマチジョーを想いながら暮らしていたカミは、復帰運動という、島の新たな「戦い」に参加することになる。島の歴史や文化を織り交ぜながら語られる、カミとマチジョー、そしてこどもたちの「その後」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 前作「神に守られた島」の続編。
    前作よりこの作品の方が面白かった!

    前作の主人公マチジョーの幼馴染みカミが主役で、あれから7年後の高校生になった姿を描いている。カミを始めとする島のこども達の成長している姿がとても興味深く、読み進めるに連れて、ページをめくるのも速くなり、すらっと読むことができました。
    最後は、すごくほんわかしました。
    是非、前作とセットで読んでみてほしい作品です。

  • 戦争の記憶と、家族と、本土復帰と、初恋。

  • 以前読んだ『世界の果てのこどもたち』が、満州から引き揚げてきた子どもたちの話であったのに対して、これは沖永良部島(奄美諸島)で日本から切り離されて、アメリカ統治下で暮らす子どもたちの話。
    不勉強ではずかしいのですが、沖永良部島が沖縄ではなく、奄美の島であることをこの本で知りました。

    作中で登場人物たちがびっくりするのですが、私も思っていたのは、アメリカの統治下なのだから、復興中の日本よりよほどいい暮らしができていたのではないかということ。
    軍の払い下げ品などをもらい、アメリカの食べ物を食べ、音楽を聴き、明るくポップな生活。

    しかし実際には、食べる物と言えば蘇鉄のでんぷんと芋。
    毎日の水汲みは女の子たちの重要な仕事。
    布だけは払い下げの服から切り出すことは可能だが、糸がないので、洋服から慎重に抜き取って再利用。
    学校はあっても教科書はないので、密航して本土から持って来るか知り合いがいれば本土から密輸する。
    それを手で書き写したものを、進級するたびに下の学年の子に渡す。(紙も貴重なので)
    島の仕事では稼げないので、野心のある子は沖縄に出稼ぎに行くか、本土に密航する。
    それで命を落とす人もまた、多数。

    最初から最後まで方言で書かれているので、最初はひどく読みにくかった。
    主人公のカミは17歳なので、7年前に終わった戦争のことをまだ覚えている。
    昔から変わらない生活を大切にしているが、日本に復帰できればもっと幸せな暮らしができるかもしれない、とも思っている。
    幼なじみのユキ(男子)は、大学進学をするために、島の日本復帰を強く望んでいる。
    多くの子どもたちは中学を卒業すると働いて家族の生活を支えている。
    カミは、高校卒業後の自分の進路を決めかねていた。

    奄美諸島の復帰が決まったが、沖永良部島はアメリカ統治下に残されることになった。
    本土の人には奄美も沖縄も大きな違いはない。
    けれど、取り残されるか救い上げられるかの瀬戸際で、島の人たちは奄美全島の復帰を要求する。
    沖縄は米軍基地があるからしょうがない。
    だけど奄美は日本だ、と。

    カミは、しょうがないという言葉で戦争を受け入れ父や兄を喪うことになり、今またしょうがないという言葉で、何か大切なものを切り捨てようとしているのではないかと危惧する。


    ”本当のことを学んで、教えられる先生になりたい。それでも自分の考えを絶対だって押しつけるんじゃなくて、子どもたちと一緒に考えられるような先生になりたい。
     こどもたちが、もう二度と、だれにも騙されることのないように。そして、だれも騙すことのないように。”

    再び奄美に戻ってくるために、カミが出航するところで小説は終わる。
    本土に行ってショックを受けることも多々あると思うけれども、きっと彼女は誠実な大人として、一人の教師として、奄美に帰ってくることを予感して巻を置いた。

  • 沖永良部島のこと、何も知らなかった。
    戦争が奪い尽くしたもの。
    みんなと一緒に考えれる先生、ちゃんとした事を教えてあげれる先生になりたいと思えたカミ。
    ちゃんと勉強せなあかん。それは、誰にも騙されないため。きちんと真実を見つめるため。
    色んな事を学ばないとあかんと、改めて考えさせられた本。

  • 終戦から7年。
    高校生になったカミは、未だアメリカの統治下にある沖永良部島で高校生になっていた。

    沖縄返還については歴史の知識として知っていましたが、奄美群島の返還についての知識がなく、改めて今回学ぶことになりました。
    同じ日本なのに、本国に渡るには密航となってしまうこと、貧しい島のため、出稼ぎに行く沖縄の往復で亡くなる命が沢山あったことなど、複雑な気持ちで読みました。

    ユキの恋心、ヤンバルの事故、カミジョーとの再会など、語りが高校生のカミのため、前回作より身近な話に感じたように思います。

    先生となって島に戻るカミにまた会いたいです。

  • 「神に守られた島」の続編。

    戦後の沖永良部島、アメリカの統治下におかれ、自由に海を渡ることも出来なかった時代。

    返還運動、戻らなかった人たち、戻って来た人、戻ってくるために旅立つ人。
    高校2年になったカミの視点で書かれてます。

    時代とともにか、前作よりも島言葉が緩やかで寂しくもあり、読みやすくもあり。

    島の歴史は全く知らなかった、、、一度訪れてみたいと前作に続いて感じました。

    • hikaruさん
      私の育った島なんです。
      そんなに昔ではないのに、知らないことばかりでした。海と星、きれいな島です。
      感想を見て嬉しくなりコメントさせて頂...
      私の育った島なんです。
      そんなに昔ではないのに、知らないことばかりでした。海と星、きれいな島です。
      感想を見て嬉しくなりコメントさせて頂きました^_^
      2019/05/29
    • norainuさん
      hikaruさん、コメントありがとうございます。
      遠い島ですね、行き方を調べて実感しました。
      美しい故郷、ステキですね(^^)
      hikaruさん、コメントありがとうございます。
      遠い島ですね、行き方を調べて実感しました。
      美しい故郷、ステキですね(^^)
      2019/06/01
  • 『神に守られた島』の続編にあたる。
    終戦から七年。
    アメリカ軍の占領下に置かれた沖永良部島は、本土に行くには密航をするほかなく、物資も教育も足りず苦しい生活を送っている。
    女子高生になったカミは、本土復帰運動が高まる島の中で、本当のことは何か、を模索する。

    作中で、本土の人間は沖縄や奄美諸島の実情を何も知らない、というくだりが出てくるのだけれど、実際に自分も、沖縄が長くアメリカ軍の領土となっていたことは史実として知っていても、その生活が貧しく厳しく、衣服を作るための布もないので払い下げの軍用品の衣類をほどいて自身の衣料品を作っていた、という話などはまるで知らなかった。

    知らないことは、なかったことになる。
    それでいいのか、とカミは考える。

    誰かが大きな声で号令をかければ、みな、深く考えずその方向をむく。騙されたとしても「仕方ない」と諦め、過去を振り返って謝罪することも、考え直すこともしない。

    カミがぼんやりと感じる違和感は、現代の社会に通じるものもあって、ふと考えさせられる。

  • 沖縄の言葉。
    馴染みがなくて読みにくい

  • 終戦の日が近づくこの時期に偶然かなんの因果か、この本を手に取り、読了することができてよかったと思う。戦後間もない時代、沖永良部島の本土復帰運動が行われていた時代の作品。中脇さんはこの時代を生きていた人ではないはずなのに、実際にこの景色を目の前で見てきたかのような筆致。日本に住む身でありながら、こんな史実があったということを今まで知らずにいた自分を恥じたい。そして、本の情報を見て知ったのですが、続編なんですね。単品でも十分楽しめたけど、『神に守られた島』も読もうと思います。

  • 20210512読了
    #島
    #鹿児島県

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著者プロフィール

徳島県に生まれ高知県で育つ。高校在学中に坊っちゃん文学賞を受賞。筑波大学で民俗学を学ぶ。創作、昔話を再話し語る。昔話集に『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』『ちゃあちゃんのむかしばなし』(産経児童出版文化賞JR賞)、絵本に「女の子の昔話えほん」シリーズ、『つるかめつるかめ』など。小説に『きみはいい子』(坪田譲治文学賞)『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』『神の島のこどもたち』などがある。

「2023年 『世界の女の子の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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