やがて海へと届く (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.43
  • (8)
  • (22)
  • (33)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 400
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065145289

作品紹介・あらすじ

すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが――。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 彩瀬まる『やがて海へと届く』講談社文庫。

    全く内容が入って来ずに、伝わる物が無い震災小説。何を伝えたいのか……

    『桜の下で待っている』が良かっただけに残念。

    震災で友人のすみれを失った真奈の元に、或る日すみれの恋人の遠野温が訪ねて来る。すみれの持ち物を全て処分すると言う遠野に真奈は……

  • ★4.0
    仙台から福島に向かう電車の中で、東日本大震災に遭遇した著者。9年が経った今もなお、行方不明となっている人はたくさんいる。本書では、親友の不在を受け入れられない真奈、どこか分からない場所を彷徨い歩くすみれ、二人の視点から綴られる。どちらのパートも、悲しくて辛くて少し怖い。が、生者が辛ければ死者も辛く、生者が幸せであれば死者も幸せなのでは、と本書を読んで思えた。無理に死者を忘れる必要はないけれど、悼み続けるばかりでは生者は前に進めない。真奈にも遠野くんにも、ちゃんと幸せになってほしい、と願うばかり。

  • 33ページ、2章の冒頭。
    「葡萄色をした夜の紗幕が一枚、また一枚と剥がれ落ち、東の空に輝きが差した。」

    この一文で、あれ、この話って彩瀬まるの作品みたいだな、と思った。
    恥ずかしながら、そこで住野よると間違って買ったことに気付いたのだった。(ちなみに、この本のオビに住野よるさんからのコメントが載せられている、笑)

    ややネタバレ気味なので、気になる人は回避してくださいね。

    震災で行方不明になった友人すみれを偲ぶ真奈の章と、どこかに向けて歩き続けるすみれらしき女性の章が、交互に展開される。
    遺された者と、逝きし者の、どちらの想いも、本当に上手く描かれていて、でも女の子同士の瑞々しさもあって、静かに静かに物語に沈み込んでゆくような気持ちだった。

    どれだけの時間が経っても、忘れられないことは、あるんだと思う。
    自分の胸の中にも、そういう想いは残っている。
    けれど、「忘れてはいけない」「忘れないでくれ」でもないんだと思う。多分。

    「だめだ、死ねない。離れたくない。守られていた、すべてのものから引き剥がされる。やっと少しずつ幸せになれたんだ。ここまで来るのにとても長い時間がかかった。死ねない。死ねない。だって、だってーー。
    だって今、私の心のなかに、私を救ってくれるものがなにもない。神様がいない。納得がない。唐突な死を飲み込むだけの、心の砦がどこにもない。ここで死んだら、まっ黒な恨みに取り残される。どうして誰も教えてくれなかったのだろう。生きることはこんなに脆いことだと、どうして誰も教えてくれなかったのだろう。」

    すみれの、その時の声。
    「納得がない」という言葉に、ハッとした。
    そうなのかもしれない。納得なんて、ないんだ。
    それでも、その時は来るんだ。

    そして、自分から抜け出ていくような彷徨の時間が、私にもやってくるんだろうか、とも思った。

    とにかく愛おしい一冊。
    読めて良かった。

  • 解説にもあるが、本書はノンフィクション『暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出』での著者の経験から紡ぎだされた悲しく、苦しく、そしてそれぞれの希望の物語だ。旅先で津波にのまれたすみれ、親友の喪失を引きずる真奈の、二人の視点で物語は進む。人の一生を山から流れ出す川に喩え、海へと注ぐ河口が此岸と彼岸の境界というのは、象徴として腑に落ちる。東日本大震災関連書籍を今年も読むことができて良かった。

  • 震災で親友が行方不明のまま時間が過ぎて、いなくなったことを受け入れること、忘れていくことにさまざまな葛藤や悲しみ、自分への怒りが見える。その考える時間とたくさんの感情。生と死、そしてこの先のこと。忘れることは悪いことではなくて忘れても確かに過ごした時間は事実でそれは消えないものなんだと思う。その人の存在がなくなってもなくならないものはある。

  • 2020年4月28日BunDokuブックフェアで紹介されました!

  • 幻想パートの私の話を、どう感じればいいのか難しい。
    描写は具体的だけど明らかに現実の出来事ではなく、なにかの暗喩というにはやはり具体的すぎる。現実パートの真奈の友人であり、震災の日から帰ってこなくなったすみれの側を描いた、夢か現かの世界・・・なのだろう。出口を見つけられず、たったひとりでさ迷い歩き続ける私。
    思い出せない、分からないことばかりでただ歩くしかない荒涼としたイメージは、現実パートの真奈が想う「今のすみれ」と通じるものがある。彼女はくらくて寂しいところにいるから、生きている私が覚えていて、思い出し続けなくちゃ・・・と自分に課しているような真奈だが、遠野とのやり取りや職場での変化によって少しずつその考えが溶けてゆく。響きあうように、歩き続ける私にも変化が現れた気がする。何とは言いがたいけど・・・。
    「置いてきたものを思うたび、舌の上がうっすらと甘くなって体の内側に小さな花が咲く。それは・・・奪うことのできない、私だけのものだ。」
    ゆらゆらと漂うようで意味も形も掴みきれていなかった私の輪郭が、はっきりしてくるこのあたりの展開がとてもいい。

  • 決して明るい話ではないのだけれど、それでも読んでいくにつれてだんだん気持ちが軽くなっていくような、前向きに生きようって思えるような本だった。
    久しぶりに、とても時間をかけてゆっくり読んだ本だった。
    読み終わるのに半年くらいかかってしまったが、今思えば、それくらいの時間をかけなければ読み切れなかったと思うし、それくらいの時間をかけてでも読み切りたい話だった。それだけ、中身の濃い、濃密な世界感が広がっていた。

  • 私も主人公と同じで、亡くなった方はずっと同じ場所に留まっているイメージだった。だって地縛霊とか言うし。
    でも遠野くんは「歩いている気がする」と。
    それは彼が言っているように、「卯木すみれ」だからかもしれないけれど、そう考える方が余程いいのかもしれない。

  • 私は東京にいたけど、震災を経て私はどんなふうに変わったんだろう。身近な人の死を経験したら、私はどんなふうに変わっていくのかな。
    この本はいつか、もう一度読みたい。

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で第9回女による女のためのR‐18文学賞読者賞を受賞し、デビュー。16年『やがて海へと届く』(講談社)で、第38回野間文芸新人賞候補。17年『くちなし』(文藝春秋)で第158回直木賞候補、18年同作で第5回高校生直木賞受賞。

「2020年 『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

彩瀬まるの作品

やがて海へと届く (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする