サブマリン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.92
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本棚登録 : 1051
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065145951

作品紹介・あらすじ

家裁調査官・陣内と武藤が出会う「少年たち」。報道される事件と、実情が違っていることは少なくない。『チルドレン』から、12年。罪と罰をめぐるものがたり。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代とってた少年法の講義を思い出した。すごく重い内容だった。どうしてこうもエンタメとして成立させられるのか。
    現行少年法のジレンマも、加害者被害者の心の機微も、軽視もせず、見ないふりもしないで、こうも「おもしろく」描く。(適切な表現ではないかも。)

    登場人物みんな一癖二癖あり、最後まで笑いながら読了。テンポの良い会話をつくるのが本当に上手いなぁ。
    グッとくるシーンもあって、そのバランスもまた。欲しい言葉を欲しい時にくれるから、陣内さんは好かれるんだろうな。

    • 大野弘紀さん
      思うに、伊坂氏は「エンタメ」が主軸にあるんです。そして、講義や問題としての児童は「社会課題」が主軸にあるんです。前者は娯楽的な要素で、後者は...
      思うに、伊坂氏は「エンタメ」が主軸にあるんです。そして、講義や問題としての児童は「社会課題」が主軸にあるんです。前者は娯楽的な要素で、後者は解決的要素です。この両者を比較するに、前者はあくまでもエッセンスにあるし、解決は求めていないし、そこは着地点にしていないんですね。だから重さから外れた印象を読み手は受けるのではないかと。しかし、現実論は逆で、解決的要素だから、重苦しく、そして悲観的に感じられてしまう。伊坂氏はそういうエッセンスの混ぜ方が絶妙なのだと思います。
      2019/05/02
  • 家庭調査官の陣内と武藤が、罪を犯した少年たちと関わっていく話でした。いろんなところで犯罪が繋がっていて、だから「許されない罪」なのか「許される罪」なのか考えさせられました。

    また、今日自動車の事故のニュースが増えているのもあってすごくタイムリーだなと思いました。車に乗った老人が操作を誤って園児の列に突っ込んでしまったとか、そういう事件が最近多い。老人に悪気があったわけではないけど、決して社会的には許されることではない。

    私がその事件について友人と話していたときに「車が無ければ事故が起きないのに」ということになって、でも車が悪いわけでもなんでもないし、じゃあ誰が悪いのってことになったのを思い出しました。
    この小説の中でも、陣内が「車が発明されなければ良かったよな」と言っているシーンがあったから思い出したのかも。

    とにかく何が正しいのかひたすら謎でした。
    もし未来が分かっていて、事前に殺人犯を殺しても罪にならないという法律があったとしたら自分は殺すだろうか。
    謎です。罪ってなんなんだろう。どこからが罪になるんだろう。

    家庭調査官の武藤に感情移入して読んでいきました。一番読者に近く、武藤が悩むことは私も悩みました。

    最後に、
    参考・引用文献が後ろに載ってるのが面白かったです。
    最後のページめくったら「おっ?」ってなりました。あんまり小説沢山読んだことあるわけじゃないから分からないけど、普通の小説ではあまり見ない気がします。
    小説の内容だけではなく、例えばこの小説の中に出てくるジャズの話とか他の分野にも興味が湧いてきました。


    最後まで謎なことが残ると、感想もまとまらない……(*´﹃`*)

  • あらすじをなぞって「これは、私の大好きで大の苦手の伊坂ワールド全開、グレーゾーンを煮立たせたような作品だ!」とアンテナが反応し、久しぶりに読みたいと思い手に取りました。ただし恥ずかしくも、「チルドレン」という前作があることがきっちりと帯に書いてあったのにも関わらず気付きもせず。まさかの続編から先に読んでしまいました。ちなみに読み終わってみて、前作を読んでいないことで差し支えるものはありませんでした。だから、「とりあえずサブマリンという作品が読んでみたいと思ったんだ!」という人はこちらから読み始めても多分大丈夫です(笑)前作ありきの楽しみが用意されていたのなら、全くもって拾えていないでしょうけれど。また「チルドレン」も読んでみて答え合わせをしてみます。

    さて、本作は家庭裁判所調査官という仕事に就いている人が主役の物語です。あらすじを読んでみてすぐに「読みたい」と思わされたもう一つの大きな理由に「家庭裁判所調査官」という今まで意識したことの無い職業がフィーチャーされていることもありました。成人してもこうも日本社会の構造について知らないなままでいられるものか、と自分の状態に日々がっかりしているので、少しでも知見を広められる良い機会だと思ったのです。
    少年犯罪、特に未成年が人の命を奪ったような事件は、そのようなことが起きたこと自体に対するショッキングな印象が先行しがちで、問題の機微や世間・マスコミからして不都合な部分、それから少年たちが審判を受けるまでのプロセスや処分などの社会システムの在り方には光が当たらないことが多いのではないでしょうか。少年法の中身など知らないまま大人になったのだろうに一張羅に罪を犯した少年たちのことを非難するような人もいるでしょう。現実の街頭インタビューなどでその代表者のような人達を目にすることが出来ます。そのような人がモチーフかしら、という女性が物語の序盤に登場します。詳しく知りもしない少年のことをつらつらと非難する姿には正直読んでいて虫唾が走りました。無知と想像力の欠如と偏見と独善的な正義感と。その問題に対して更に辛辣に批判することも出来るところですが、本作はその点に熱量を注ぎません。騒がしい外野ではなく当事者たちに集中します。おかげで、読者の方も余計な声に気を取られることなく、あまり知ることのない少年たちの置かれる状況や実際に関わる人々の方に集中出来ます。

    人の命を奪う行為は、全人類がシンプルに「アウト」だと判定するはずです。それは「罪」であり「罰」が必要だとして、恐らく全ての社会で法律により罰則を定めているはずです。でも、日本には死刑制度があります。正当防衛は罪に問われません。少年事件の場合の処分は罰則というよりは更生を目的としたものが主です。「ファウルゾーン」の問題を考え出すと頭が痛くて、法律の専門家でもなければ哲学の専門家でもないから、整然と考えるのはとても難しくて、やるせないものです。だからこそ、伊坂さんの物語は貴重です。理路整然とは考えられないけれど、読んでいる間は何か大切なものに触れられている感じがするのです。だから、後味の悪いお話しだと分かっていても、「良薬口に苦し」と、読み進められるのだと思います。本作はそのような物語の中でも、マイルドな方です。温かみがあってとても気に入りました。

  • サブマリン
    それは果たして、
    それだけの深い場所へと潜ろうとしてついた名前なのか

    色んなことがある
    生きていれば
    色んな事件がある
    外に出れば

    誰かが何かに巻き込まれるし
    誰かが傷ついたりいなくなったりする

    悲しみと後悔と罪と罰と救いが
    天秤のように波のように揺れながら
    いったいどうすればいいのだろうと途方に暮れてしまう


    一つ、私は勘違いをしていたのかもしれない
    伊坂氏はものすごく残酷な世界を時として描くけれど


    でも、それって、伊坂氏が悪いわけでなくて
    (彼は絶対に優しい人だと思う)

    社会がそういうものだから、
    伊坂氏がそういうものを受け取っているだけでは?
    と思った

    動物虐待だって人が死ぬのだって
    なんか後味の悪い感じとか悪い奴が出てくるのとか
    そういう理不尽さって、あるじゃん、生きていれば。

    いくらでも。

    そういうものに何か救いってないのかな、と思う時

    伊坂氏の物語は時に救済のように感じられる

    ずるいよなって、いつも思う

    死にたい消えたいもう嫌だ辛い逃げたい
    そう思っていても、
    「この世界って、思ったより悪くないかも」て
    最後は泣きながら思っているんだから

    • まことさん
      私も伊坂さんは、すごく優しい方だと思います。
      だからいくら残酷な話を書かれてもファンをやめません。
      私も伊坂さんは、すごく優しい方だと思います。
      だからいくら残酷な話を書かれてもファンをやめません。
      2019/04/29
  •  家裁調査官と加害少年たちとの交流を通して描かれる魂の救済の物語。

     前作「チルドレン」に続き、家裁調査官の陣内のキャラクターが個性的で物語の味わいに強烈なスパイスを感じました。

     また、最近の巷の事件や事故と妙に関連性のある出来事が物語に起こり、ただの偶然とは思えない、不思議な思いをしました。

     罪を犯しながらも自分と向き合いながら前に進んでいく生き方と救われない生き方、どこで違ってしまうのか、とても考えさせられました。
     
     それでもやはり一歩一歩進んでいくしかないことを改めて思いました。

  • 犯罪を犯した少年と向き合う家裁調査官のお話です。
    テーマは暗めですが、軽快な文章で読みやすいですし、登場人物もクセが強く面白いので、テンポよく読めました。

    前作のチルドレンも5年ほど前に読んだことがあるのですが、内容は全然覚えていません。
    でも、周りを振り回す陣内さんのことは何となく思い出しました(笑)

    家裁調査官って、、、大変なお仕事ですね。
    加害少年それぞれの事情に沿った助言や指導を行い、更生に向かわせる…
    マニュアルがあるわけでもないし、本当に1対1で「人」と向き合う仕事というのは難しいし、悩むことだらけなのだと思いました。


    物語の終盤になるにつれ、今までの小さなエピソードが1つにまとまっていく感じは気持ちがいいですね。
    さすが伊坂さんだなあ〜と思います。

  • チルドレンの陣内が帰って来たー

    家裁の調査官である陣内という男。一見すれば破天荒で無茶苦茶でいい加減な事ばかりを言っているように思えるのだけれど、その行動と発言には愛が隠されている事は前作のチルドレンで証明済み。その愛は偽善や欺瞞などでは決してないのだけれど、かと言って犯罪を犯した少年や少女の力になりたいと陣内自身が真摯に思っている風にも見えず、自然にさらりとやってのけるのが陣内という男なのだ。

    陣内の後輩である武藤と友人の永瀬は、そんな陣内にいつも振り回され、この人はなんなんだ、と呆れながらもそれでも陣内が実はとんでもなく愛に溢れた人だという事に気付いている。

    未成年者による無免許運転の自動車事故を担当する陣内と武藤。自動車の痛ましい事故が多発している昨今、高齢者ドライバー、煽り運転、超過勤務、様々な問題が溢れていてこれからも自動車による事故は増えるだろうと感じる。自動車は便利で現代に於いて必要不可欠なものとなっているけれど、利便性と隣り合わせで私達の誰もがいつでも被害者や加害者になるリスクが潜んでいる。自動車を発明した人達は心を痛めているかもしれない。自分達が発明した自動車という文明の利器が沢山の人達の人生を奪ってしまっているー
    陣内の自動車を発明したのはどうせ平賀源内だろう、という言葉に何故か救われた。

    タイトルがサブマリンなので、陣内の事だから自動車は使わずに潜水艦で移動すれば良い、的な発言をするのかなと想像していたけれど違っていて、サブマリンは加害者達の罪悪感の比喩表現だった。誰かを傷付けた罪の意識はやがて薄れていき忘れてしまったかの様に思えても、それは潜水艦の様に心の奥底で潜んでいて、時々顔を出す。被害者や遺族の悲しみは癒える事はあっても決して消えない。だから忘れるな、許されるな、故意でなかったにせよ、致し方なかったにせよ、誰かを傷付けたという事実を決して忘れるな、目を逸らすな、と。

    私は陣内自身が潜水艦なんだなと感じた。罪を犯した少年や少女の心の中に潜んでいる潜水艦。忘れかけた頃に顔を出し、少年や少女を正しい道へと導いていく。陣内自身にはそんな自覚は無いと思うし、もうそれは天性の素質としか言いようがない。面倒臭い事が大嫌いなのに面倒臭い事に巻き込まれ、そして誰かの救いになる。救ったという自覚も陣内には無い。救いたいとも陣内は思っていないかもしれない。自分がされて嫌な事は他人にしない、ただその信条だけで陣内は生きているけれど、それは自分がされて嬉しい事を他人にする、という事の裏返しなのだと感じる。

    • 大野弘紀さん
      このレビューに、賛辞を。

      小説への愛を感じました。

      これを読んだ私も、少しだけ救われたように思います。
      このレビューに、賛辞を。

      小説への愛を感じました。

      これを読んだ私も、少しだけ救われたように思います。
      2019/05/08
  • さすがとしか言えない伏線回収。
    人と人、事と事がどんどんと繋がっていく。
    それが自然すぎて、驚きよりも納得してしまう。

    それにしても陣内さん。
    ハチャメチャなんだけれど、よくよく読み込んでいくとかなり真っ当な事ばかり言っているんだよなぁ。
    そしてすごく可愛い人。
    電車の中で読んでいて、いつの間にかニヤニヤ笑っている自分に気づく事が何度も。

    帯はシンプルでいいんだけれど、オレンジの文字だけで十分だったかな。

    解説は自分とは全く違う視点で語られていて面白かった。
    内容を追っているのにまったく「ただのあらすじ」になっていない素晴らしい解説。

  • 物語中で明確な答えのようなものを提示しないことで、明確な答えがないことが世の中にはたくさんあることを描いている。

  • 読み始めて5秒でその世界に入っていけた。
    伊坂さんの本の中でも、だいぶ読みやすい!
    言い回しとか、大好き。
    語彙力とか文章力とか比喩力とか素晴らしすぎる。
    あ〜、好き。って読んでる最中何回思ったか。

    話も未成年の交通事故の話が主流で、とても身近で考えさせられる話だった。
    考えても答えは出ないとても難しい話だけど、未成年の子どものピュアというか、無垢な感じが出てるな〜。

    みんなが思ってるけど、表に出さない意見。。。

    全部の伏線と登場人物も繋がって、まぁ、読み終わったあとのスッキリ感。
    若林くんは心配だけど、きっと大丈夫。

    私も運転するので、気をつける。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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