- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065147641
作品紹介・あらすじ
東京、ハワイ、オレゴンと、ジニは学校からたらい回しにされてきた。ホームステイ先で彼女は、五年前の出来事を語りはじめる。在日韓国人として生まれた、朝鮮語がわからないまま、過ごした朝鮮学校での日々。居場所を見つけられず、二つの言語の間で必死に生きるなか、あの日、テポドンが発射される。第59回群像新人文学賞受賞作。第155回芥川賞候補作。
感想・レビュー・書評
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インパクトの強い作品でした。在日3世の少女が
見えない敵と闘う革命の作品です。歴史観の違いや
見えない差別との闘い、経験した人だけが、感じる想いなども読んでて伝わってきたし、自分に何ができるのかと、あらためて勉強になった作品でした。
著者も在日3世の方で、とてもリアリティがあって
ノンフィクションかと思わせるほど、生々しさが読んでいくうちに、胸に刺さりました。テポドンの章では、少し読むのが辛くなりましたけど、実際にこんな状況に近いことが、起きてるんだなと、実感しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
決して私には分かり得ない世界で踠いている主人公だけれど、何故だかその踠きの原点にある葛藤には見覚えがあって、不意に心に留まる言葉が現れたりする。「宇宙のゴミがそれだけ輝くことが出来るのならば、社会のゴミである私にも輝くチャンスがあるのかなって」は何とも言えない表現で痺れた。
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今自分が対面している世界に疑問を持つ事を私に教えてくれた、ナイスなコメントです。すぐに人の意見に流されてるって?それは否定しない。ただ私は意...今自分が対面している世界に疑問を持つ事を私に教えてくれた、ナイスなコメントです。すぐに人の意見に流されてるって?それは否定しない。ただ私は意見の取捨選択を大切に生きて今まできて、後悔したことは無い。2020/05/25
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空が落ちてきたら、どうするか。
ジニの怒りと焦り。爆発寸前のパワーを感じた。そしてそれが爆発できないことも。
オレゴンの学校で退学を宣言されるジニ。絵本作家のステファニーとの時間。東京での日々。日本学校では在日韓国人であり、朝鮮学校では朝鮮語がわからない。ジニは探す、自分の居場所は――。
朝鮮学校がどういうところなのか。誰がどのように感じているのか。簡単な解決方法なんてなく、ジニに寄り添うこともできそうにない。落ちてくる空を受け入れるしかない。それはどこかに着地することでもあるのでは。葛藤のない人、「居場所がない」と感じたことがない人はいないだろう。皆、自分ではわからなくても、いつか「空を受け入れる」と決めた日があるのではないか。 -
過去を受け入れる。自分の人生史よりも前の過去も受け入れる...。抗い、怒り、苦悩、葛藤...思春期のアイデンティティの確立を描く。理不尽な他者からの干渉、介入、差別。前半は単調で後半は唐突で飛ばし過ぎている感はあるものの、多文化・異文化理解のキモは率直に綴られている。次作に期待。
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ぼくは友部正人が歌い続けている「空が落ちてくる」が、40年にわたって聞き続けている好きな歌だが、十二歳の少女の上に落ちてきたらつらいだろう。読みながら、そんなことを考えていた。
こういういい方をしていいのかどうか、「在日文学」といういい方があると思うが、この作品を読んで、在日文学が新しい場所を見つけ、新しい風が吹き始めたと思った。
小説としては素朴、稚拙で単純といっていいかもしれない。だが、読後感は「さわやか」だ。
ぼくはこの作家が、次にどんな作品を書くのか、かなり期待している。 -
日本の小学校、朝鮮の中学校、アメリカの高校といった異色の経歴を持つジニ。
僕自身在日韓国人で、中学まで朝鮮学校に通って高校から日本学校に通った。
だから、ジニの心情なり肖像画の違和感がとてつもなく共感できた。
ただジニの感受性の豊かさは僕より全然豊かで、「確かに言われてみれば、あれっておかしかったよな?」って思うことが多々あった。
視点が鋭いだけでなく、非常に批判的見方である。
確かに僕の周りにも一定数、そういう子がいた。
しかし僕みたいな学生が大半であり、みんな「韓国人なのに、なぜ朝鮮学校に通っていたのか?」と聞かれると答えれなかったし、親が通わせたからという質問しかできなかった。
そのくらい、在日社会は伝統を重視していて、外者を排除する傾向が強いと思う。
一方でその分団結力も凄いし、それは今までの歴史をみればわかるし、現に僕らが未だ朝鮮学校に通えてることがそれを証明している。
また1990年代当時はまだまだ在日韓国人に対する、ヘイトがたくさんあった時代だった。
しかし、反骨精神丸出しの主人公はそれに屈することなく、大人や社会に立ち向かった。
それも中学生にしてだ。
どの国に行っても、在○外国人は存在していて、そこでその人達が、現地人から差別や不平等を被る。
しかし、その中で闘っていかないと、皆が結束して社会において地位、権利を得ないとその国における外国人のコミュニティはなくなるのだ。
そして、現に2023年の在日同胞社会は崩落寸前とも言われていて、生徒数も激減している。
だからこそ、どうにかしないといけないし、僕が通っていたからこそなくなってほしくない。
在日同胞社会の闘いはまだまだ続く。 -
ジニという在日朝鮮人が日本の朝鮮学校で、金政権に対する理不尽さと違和感から、革命を起こし、さらに自分を追い詰めることになる。
北朝鮮への嫌みだけではなく、日本人の朝鮮人への無意識な差別へも述べている。
声明文を学校中にばら撒き、金正日の肖像画を投げ捨て革命を起こそうとするが、、、
革命後は、檻の中?精神病棟の中?にいるのかな
金政権への反発は、いかなる合理性や正義でさえも勝てないのでしょう
サラッと読めるけど、もう少し表現を工夫してもいいのかなぁと上から目線に言ってみる。
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主人公ジニは在日韓国人。日本の小学校に通い、中学からはチマチョゴリを着て朝鮮学校に通うことになるが、ある出来事から学校を追われてオレゴンへ。そこでも居場所をなくして、という波乱の半生。
日本の学校でも朝鮮学校の中にも「大人になるか暴れるか」どちらかになるしか居場所がないと感じていたジニ。
さらに北朝鮮のテポドン発射によって、理不尽な仕打ちを受けるくだりは読んでいて辛い。
ただ、朝鮮学校で上級生とトラブルになったとき、庇ってくれたジェファンや示唆に富んだ言葉をくれるホームステイ先のステファニーなど、ジニの周りには温かな人もいて、また、ジニもそれを素直に受け止めていることに救われる。
正直、在日韓国人の女学生の背負うものの重さについて、知らなさすぎて、理解できなさすぎて、どう感想を述べてもきれい事になりそうで難しい。ただ率直に言ってストレートに共感できるとはいい難い。このような無理解、無関心こそが、ジニが受けた理不尽な暴力の根っこなのかもしれない、という反省も込めて。