罪の声 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065148259

感想・レビュー・書評

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  • グリコ・森永事件を題材にしたフィクション小説なのですが、本事件のアナザーストーリーのような内容でした。

    子供の声、キツネ目の男、そこから予想される犯人像など、グリコ事件で明らかになっている数々の事実から、作者が立てた仮説がこの「罪の声」となっています。
    これから読まれる方は、グリコ事件を一度復習してから読むと、よりリアルに感じられて面白いのではないでしょうか。

    事件の背景や内容は、実在する大事件だからこそ納得感のある描写になっている印象を受けました。面白いけど無理のあるミステリーも世の中にたくさんあるけれど、これはどちらかというとドキュメンタリーのような書きぶり。

    本来は未解決事件なので、終盤の心理描写に納得感がないところが残念な気もするが、本書の魅力を「グリコ事件の新たな仮説」とするとあまり気にならないのではないでしょうか。

  • これが真相だったのでは、と思わせる程のストーリーです。作者のこの本を書くために作家になったと言う記事を読みましたが、納得しました。

  • 当時、私が小学生だった頃の例の事件を、どう解釈しているのかが気になり、購入しました。

    序盤は、次々と変わっていく展開に、ミステリー小説を読んでいるような興奮を覚えましたが、後半の展開により、被害者の立場や気持ちを考えている私がいました。

    事件によって、悲しく、やりきれないことが起こるということを、この小説での解釈により実感し、感動を覚えました。

    また、曽根と阿久津、それぞれの心境が、事件と向き合っていくうちに、少しずつ変わっていくところも静かな感動を覚えました。事件を知らなくても、楽しめると思います。

  • あの時代をリアルタイムで生きていた者にとっては、程度の差こそあれ、ほぼ全員が記憶に残っているであろう昭和の大事件、グリコ森永事件。

    あの未解決事件を、子供を巻き込んだ卑劣な犯罪、と史実に極力忠実にフィクショナイズするという意欲的な作品。

    改めて、とんでもない事件やったんやなあ、という感慨。

    これを、2時間程度の尺に収めて映像化するという、いつもながら映画関係者の無謀とも思える感覚が、ちょっと理解できへん。

  • 未解決の「グリコ・森永事件」をモチーフとしたミステリーの力作。本書の「ギン萬事件」の経緯は、ほぼ史実通りという。

    自宅の電話台の引き出しから出てきた黒革のノートとカセットテープ。録音されていた自分の子供の頃の音声は、「ギン萬事件」の犯行に使われた音声メッセージだった。世間を騒がせたあの大事件が、自分の身内による犯行だったのか? 仕立て屋の曽根俊也は、心の葛藤を抱えつつ30年以上前の事件の真相を追う。同時に、大日新聞記者の阿久津英士も、昭和の未解決事件を追う年末企画の取材に駆り出され、ギン萬事件の取材に奔走する。

    風化しつつある真相解明の糸口を徐々に手繰り寄せる俊也と阿久津。判明した事件の真相(フィクション)は、「蓋を開けて見れば随分とちっぽけ」なものだったが、違和感はなく、実際こんなことが起こってたのかなあ、と思わせるリアリティーが感じられた。

    阿久津が英国で犯人にたどり着いた時の独白「真実は時に刃になる。それが周囲の人間を傷つけてしまうこともある。しかし、それでも伝えなければならない。突き詰めれば「いい人」で終われる仕事などない」、同じく阿久津が俊也に語りかけた「この事件は決して個人的なものではなく、社会に与えた影響は極めて大きい。我々が事実を報道する限り、もはや秘して幸せになる人はいません。私は『ギン萬事件』は未解決にしてはいけない事件だと思っています」という言葉、なかなか重い。本当にワイドショー的興味本位の取材でないと言えるのか、この辺に境目はないだろうから。

    無慈悲で貪欲でご都合主義的なマスコミの負の面が全く描かれない、綺麗な終わり方には癒された。一方で、実際こんな綺麗事では済まされないよなあという気もして、何とも複雑な読後感が残った。

    犯人達に翻弄される当時の警察、踊らされるマスコミ。警察の杜撰な捜査にも時代が感じられる。読み応えたっぷりのミステリーだった。

  • 京都でテーラーを営む曽根 俊也。
    ある日、亡き父の遺品を整理してした際、不審なカセットテープと黒い手帳を発見する。

    そのテープの中の声は、まだ幼い自分の声。
    そして、それは、30年前、日本中を震撼させた劇場型犯罪『ギンガ・満堂事件』で、脅迫に使われた子供の声であった...
    果たして、亡き父は、犯人グループの一員なのか?

    そして、『ギンガ・満堂事件』を追う大日新聞の記者・阿久津 英士。

    犯人逮捕に至らず、未解決となった忌わしい事件。
    なかなか見えない謎に、2人の男が挑む。
    細い蜘蛛のような糸を手繰り、少しずつ見えて来る真実。そして、全く別に動く2人の話が、一つに繋がる。

    やがて明らかとなる真実に、関係者の不運が明らかとなり、つい涙が出て来ます。

    最後に、聡一郎と老いた母との再会は、涙無しでは読めません。
    来週(10/30)から、小栗旬×星野源のダブル主演で、本作の映画も公開されるようで、とても楽しみです。

    ・『罪の声』、公式サイト
    https://tsuminokoe.jp/sp/index.html

  • 読んでみたいと、思いました。

    • りまのさん
      今日は、買いそびれました。こんど、ブックオフ、行きます。
      今日は、買いそびれました。こんど、ブックオフ、行きます。
      2020/08/30
    • りまのさん
      九月1日、 昨日、書店で購入しました。りまの
      九月1日、 昨日、書店で購入しました。りまの
      2020/09/01
  • ふぁ〜と、感嘆の声が出た。達成感と虚脱感。

    【キツネ目の男】は記憶にある。
    今からは40年近く前の未解決事件【グリコ森永事件】をモチーフに描かれた本書。

    「発生日時、場所、犯人グループの脅迫・挑戦状の内容、その後の事件報道について、極力史実通りに再現した」とあとがきから。

    史実とフィクションが相まって、これが真実⁈と感じてしまうほど胸に迫る内容だった。
    子どもを巻き込んだ事件だったことなど、社会問題なんぞに興味がなった頃の私は知っていることが殆どなかった。

    取材力とリアリティに圧倒された。凄かった。

  • 今年中にどうしても読みたかった、初の塩田 武士作品。昭和最大の未解決事件を扱った、傑作長編ミステリー。

    500ページを超える大作ですが、非常に重苦しい内容でありながら、早く真相を知りたいという気持ちに急かされて、気が付けば夢中になって読み終えてしまった作品でした❗

    この作品をどのように締めるのか?と少し不安な気持ちで読み進めましたが、そんなことは杞憂に終わってしまう、読後感の良い作品となっています♫間違えなく、今年読んだ本の中でベスト10に入る、とてもオススメのミステリーです❗

  • 作中の「ギンガ萬堂事件」、固有名詞をいくつか変えてる以外はほとんど実際の「グリコ森永事件」を正確になぞっているらしい。だからこそなのか、恐ろしいまでのリアリティ。
    自分が生まれる前の事件で正直名前しか知らなかったけど、こんな凄まじい事件が本当にあったんだ。まずその事実に身震いした。この本のおかげで元の事件にも興味が湧いた。

    犯行に子どもの声が使われていたこと。大人の身勝手な都合で子どもを巻き込み、その人生を狂わせた、その理不尽さに対する大きな怒りと悲しみ。作者はこれを事件の犯人に伝えたかったのかもしれない。
    同時に、報道記者の取材魂に対する畏敬の念も強く感じた。

  • スポットライトを当てる方向を変えると、悲しむ、苦しむ人がこんなにいたのか…と。

    センセーショナルな部分に注目されがちだけど、悲しい事件だなと、感じました。

  • 戦後最大の未解決事件の真相に迫る
    事件に巻き込まれた家族は30年の呪縛から解き放たれるのか?
    犯行に使われた子供の声
    その子供達の人生はいかなるものか
    真相を追う記者と自分の声が犯行に使われていた男が家族の関与を確かめるため僅かな手掛かりを辿って行き着く先にあったのは、まだ終わっていないそれぞれの人生だった

  • 実家に帰ってた時に、家事や子供の相手をほっぽりだして合間に読みました。
    ハラハラとかはないんですが、先が気になるもんで夢中で読みました。
    最後までしっかり面白かった。

  • 本屋大賞の受賞や映画化されて話題になったので、読んでみた。
    けれど、私には合わなかったみたい。。。
    ひたすら長く、ダラダラとしてる感が否めずに挫折してしまった。

  • いや面白かったです。
    ストーリーの面白さはもちろんですが、素材となったグリコ・森永事件の枯れ具合がちょうど良いんですね。事件の記憶が薄れてきて生々し過ぎず、でも、現実の事件としての認識もあり、作品と共に記憶を呼び覚ましているような感覚がありました。
    実際の事件が発生した際の年齢が大きく影響するかと思います。以前、三億円事件を題材とした作品が多数ありましたが、自分にとって三億円事件は昔話の中の出来事、あまり興味は持てませんでした。
    グリコ・森永事件以降の世代(平成生まれ?)の方々の感想も知りたくなりますね。

  • 表紙に惹かれて買いました。
    史実を元にした小説です。扱われた事件はひどいもので、実際に起きたことが信じられなく、少し怖くなりました。

  • グリコ森永事件にはあまり興味がなかったが、なぜか買った一冊。

    事件の真相を探る話。

    最初の方は話しが進まないのと、あまり興味がない事件の話だったので、ちょっと退屈だった。

    でも、事件の事がちょっとづつわかって行くにつれてだんだんおもしろさがわかってきた。

    事件の真相だけでなく、事件に関係した人物のその後まで書かれていたのは良かった。

    事件は大きい事件だったが、それに負けない位悲惨な物語があった小説でした。

  • 髙村薫の「レディジョーカー」も同じ題材だった。犯罪を企だてる人達の動機は様々であり、きっかけは意外とあっけなく訪れるのかもしれない。自分の中でクライマックスと言えるのは、イギリスでの曽根達雄の告白シーン。また、犯人の一味である元マル暴警官親子の悲劇はとても切ないもの。エピローグの母と息子の再会がせめてもの救い。

    映画を後から観ましたが、端折りが多い。まぁ仕方ないですね。

  • 久しぶりにストーリーに没入できた。一定世代より上だったらほとんどの人が知っている有名事件をモチーフに、真相にかなり迫っているのではと思わせるできになっている。

    やはり小説なので、うまくいきすぎと思うところもあるが、 人物造形も良く出来ている。

    そもそもなんで俊也がの謎解きの所が少し気に入らないので、星4つにするが、傑作だと思う。

  • グリコ森永事件を題材にした小説
    この小説を読んで、あたかもその事件の結末がこうだったのかという錯覚すら覚えたのは、やはり作品としての出来が良かったからだと思う。

    物語の中盤の時点では「長いな…」感があったのだが、終盤の真相に近づくにつれそれも一掃。
    小栗旬主演で映像化されているのでそちらも観てみようと思う。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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