純とかおる(1) (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 48
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065148754

作品紹介・あらすじ

同じ高校、同じクラス、家が隣同士の男女、純とかおる。幼馴染みの2人には、あるヒミツがあった。深夜0時になると毎日、2人の性別が入れ替わるのだ──。純が男の日は、かおるは女、純が女の日は、かおるは男。一組で二度かわいい! 男女入れ替わり青春ラブコメ!


同じ高校、同じクラス、家が隣同士の男女、純とかおる。幼馴染みの2人には、あるヒミツがあった。深夜0時になると毎日、2人の性別が入れ替わるのだ──。純が男の日は、かおるは女、純が女の日は、かおるは男。一組で二度かわいい! 男女入れ替わり青春ラブコメ!

感想・レビュー・書評

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  • 「男」と「女」の距離感は、夜を挟んで入れ替わる。

    性転換を取り扱ったフィクションのジャンル「TSF」の中で「入れ替わり」は細分化される中でも「変身」、「憑依」と並んでメジャー格に挙げられる手法らしいです。

    なので「入れ替わり」と聞いただけで大林宣彦監督の『転校生』みたいなものと思い浮かべる方はそれなりにいらっしゃるかもしれません。
    まぁ表紙などでわかりやすく書いててくれるので勘違いはそうそうないと思いますが。

    実はこの作品、お互いの体が入れ替わるといっても実は「変身」タイプの作品です。
    午前零時を境にして男から女へ、女から男へ性別が変わるという、相当変わった演出を採用しています。
    性別が「変身」するふたりをセットにして、お互い身体は自前なのに結果傍から見たら「男」と「女」の立場が入れ替わっているようにも見えるという不思議です。

    複数人セット、タイミングの一致とズレ、そして後述の要素によって、一巻発刊時点にして同ジャンルでも新境地を開いた作品のひとつかもしれない、と私自身評する次第。

    なんで隣同士に住んでいるこのふたりが、日毎に性別が変わる体質なのか?
    なぜ自然と周囲のクラスメートに受け入れられているのか? その辺の説明は見事なまでにすっ飛ばされていて、今後描かれるかどうかもわからないという思い切った作風になっているのもポイントです。

    キーになっているのは表紙にもなっている主人公ふたり「純」と「かおる」の距離関係。
    徹底的にふたりに焦点を当てて、外野はあくまで外野と割り切っていると考えれば悪くないです。
    隣接した家の二階の部屋の窓を通して、物をやり取りしてなんなら行き来だってできる、「青春」真っただ中な場面ですが、これを創作上最初に考えた人は天才に違いない。

    その辺は青春という時間を動かすための王道のガジェットだとしても、年頃の男女が一対一で付き合っているわけでもない幼なじみっぽい関係を維持し続けてるのに、性別入れ替わりが関わっているのが上手い。
    男女のそれを攻守と言い換えるのはいささか陳腐で好きではないのですが、小康状態を保っているのは暗黙の裡に微妙な駆け引きをお互い心の中でやってるんだなーって思わせるところとか好きです。

    ところで純とかおるのふたりは、たぶん物心ついた頃から高校生、思春期真っただ中な今に至るまでふたつの性別を行き来して生きてきたと思われます。
    思春期に当たって相方を見て一日ごとに置き換わる性差を意識しつつ、自分自身としては本当に、どっちがどっちの性別に軸を置いてきたって感が見受けられません。

    女の子の姿で男の仕草、その逆もあるし、女の子の姿で女の子をしている瞬間もあったり、見逃せないコマがたくさんなのですよ。
    反面、ストーリーの進行が乏しくて徹底的にシチュエーション重視という風情も感じますが。

    よって、初見はものすごくさらっと読めて物足りなさもあるのですが、何度も読み返してみればて胸焼けのするほどの男と女、女と男の香りを感じられます。

    漫画で酔うことってあるんだなって、飲酒が可能になってからそれなりに立った私でも相当珍しい感覚でしたよ。「女」の自分が肌を通した服を「男」の自分が「女」の君に受け渡す、逆も然り。
    強烈過ぎるフェチシズムと背徳感にくらくらと酔わされてしまうのです。

    ふたりでひとりという距離感で、ものすごく自然に馴染んでるんで意外とどっちが「純」でどっちが「かおる」だったか迷うこともあります。
    ただ、別にキャラが立ってなくて描き分けが出来てなくてってなど、そういう技術的な問題ではありません。

    「男女」であり「共犯」であり、なんだったら「姉妹」にも見えるって多面的でくっつき気味な関係性が、別人でありながら一体にも見せている。
    そういった自然体こそが、この漫画の、少なくとも一巻部分の本質ではないかと思うのです。

    微妙に気だるげな純と、ツンケンとしたかおる。
    ここからは夏の空気にふたりは溶け込んでいくのかもしれませんが、さて何が起こるやら?
    もっとも、何も起こらないように見えてもそれはそれで楽しいのかもしれませんが。

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