希望の糸

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065148945

作品紹介・あらすじ

2019年7月5日刊行!「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー。
「しつこいけれど 絆の話です 好きなので」(東野圭吾)

ー彼は再生を願い、彼女は未来を信じたー

閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された
捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 『死んだ人のことなんか知らない。あたしは誰かのかわりに生まれてきたんじゃない。』

    震災によって子ども二人を失った夫婦が
    家族を再生させたいという願いのもと
    もう一度子どもを作るため
    不妊治療にあたるところから物語がスタートします。

    自由が丘で喫茶店を経営する女性が殺され、
    老舗旅館を営む女将が登場し、
    殺害された女性の元夫も登場、
    加賀恭一郎の従兄である松宮の出生が暴かれ。。
    いきなり自白しだす者まで。
    今回も情報量多めの大忙しです。

    加賀恭一郎シリーズですが今回は主に松宮が登場します。
    若かった松宮は38歳に。敏腕刑事になっていました。


    今回の物語では『子宝』という巡りあいが軸になっています。

    受精というものがいかに神秘的で奇跡的で素晴らしいのか。
    しかし望まない妊娠をする人もいる、
    切に望んでもそこに巡り会えない人もいる。
    同じ女性としてとても感慨深くそして切なくなりました。
    悲しくも望まない妊娠をしてしまった場合、産まない選択肢もあるんだと物語中で伝えてもいます。
    産むことや素晴らしさだけに焦点を置かないのも東野圭吾さんの温かさを感じました。。

    ある登場人物が高校生のころ望まない妊娠が発覚、それに気づき寄り添い病院に付いていく祖母、そして自分の為にも堕ろしなさい体を弄ぶその男と関わるなと一言。
    辛い時には寄り添い、そして世の中の厳しさと正しい感覚を教えてくれる祖母。
    悲しい堕胎ですが祖母の優しさと強さを感じました。
    子どもにはこんな大人が必要だと思うのです。

    改めて子どもという存在の大きさを認識させられます。
    久しぶりに涙涙の作品でした。。。涙
    毎度、東野圭吾さんには脱帽ですね。

    ちなみに、日本は世界最大の不妊治療大国なんだとか。
    6組に1組のカップルが不妊治療をしており
    2019年の出生児の7%に当たる14.3人に1人が
    生殖医療補助によって誕生しているのだそうです。

    この本は性教育途中にある中学生や高校生にも是非読んで欲しいです。

  • 東野圭吾さん(1958~)の作品、ブクログ登録は28冊目になります。

    本作は、加賀恭一郎シリーズの1作品になります。
    その加賀恭一郎シリーズは、次のようになります。

    ・卒業(1986年)
    ・眠りの森(1989年)
    ・どちらかが彼女を殺した(1996年)
    ・悪意(1996年)
    ・私が彼を殺した(1999年)
    ・嘘をもうひとつだけ(2000年)
    ・赤い指(2006年)
    ・新参者(2009年)
    ・麒麟の翼(2011年)
    ・祈りの幕が下りる時(2013年)
    ・希望の糸(2019年)
    ・あなたが誰かを殺した(2023年)

    この中で、まだ読んでいないのは、

    ・悪意(1996年)
    ・私が彼を殺した(1999年)
    ・あなたが誰かを殺した(2023年)

    になりますか。


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    「死んだ人のことなんか知らない。
    あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
    ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。
    どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。

    閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
    捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
    災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
    容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。

    ---引用終了


    p167を見ると、加賀恭一郎は、警視庁捜査一課の警部補になっていることがわかります。
    ただ、本作で活躍している刑事は、加賀恭一郎の従弟・松宮脩平です。
    で、その松宮脩平の出生の秘密が、本作では明かされており、その辺も興味深い作品です

  • 加賀恭一郎シリーズ11作目。
    ただし今回は主に、従弟の松宮修平が事件を担当します。

    住宅街で喫茶店を営む女性が殺された。
    評判はとても良く、恨みを買ったようには思えないのですが…
    元夫や常連客の男性が捜査対象になりましたが、恋愛関係は否定。
    51歳で独身の女性だったが、ジムやエステに通い始めていたという。

    常連客の男性・汐見はかって震災で我が子を喪い、後に妻も亡くす悲運にあっていた。
    現在は娘との二人暮らし。
    元夫のほうには、一緒に暮らしている女性がいます。

    一方、松宮修平には思わぬ連絡が来て、遺産相続の件で見知らぬ女性に会うこととなります。
    その女性の父親が修平を息子だと書いているというのだ。
    母に問いただすが、答えてもらえない修平は?

    様々な人生の糸が絡み合い、思いもよらないつながりを見せていきます。
    その時々、人は皆、一生懸命に生きている…
    ひどい目にあったことも、間違えてしまったこともあるかもしれないけれど。
    取り返しがつかないことばかりではない、のでしょう。
    誤解から起きた悲劇は痛ましいばかりですが。
    その後にまた、つながる糸もある。

    かっては母のことで苦しみ、父を恨んでいた加賀恭一郎が事情を知った今はかなり乗り越え、さらに円熟した刑事になり、松宮にアドバイスする立場に。
    若かった松宮も38歳だそうで、成長ぶりがうかがえます。
    心温まる読後感でした。

  • 【感想】
    日経新聞の広告で見かけた、東野圭吾の新作。
    その新聞広告には、東野圭吾の直筆で、「しつこいけれど、絆の話です。好きなので」と記載してあった。
    文字通り本作は、この小説に出てくる色んな登場人物の、色んな「糸」で結ばれた絆の話だった。
    そして、僕も、なんだかんだでこういった「家族の絆」に関する話は大好きなんだなと気づけた(笑)

    読んでいて途中で気付いたが、まさかの加賀恭一郎シリーズ!!加賀恭一郎の大ファンなので、そりゃテンションが上がりましたよ!!!
    ただ、今までのシリーズと違ってスピンオフ形式なので、加賀恭一郎の魅力が映えまくるシーンは少ないかも。。。

    生きている人間は皆、それぞれ人に言えない色んな事情や秘密を抱えながら暮らしている。
    絶対に言わなくてはいけないと思いながらも、タイミングが分からなかったり、その人の為を思ってつい隠し続けてしまう為、「誤解」が生じてしまうのは多々あることだ。
    今回の殺人事件は、そうした「誤解」の1つ1つが悪い具合に重なってしまって生じた事件だというところが特に悲しい。
    (ただ、あんなにも性格のイイ被害者が、誤解を解くことなく呆気なく殺害されてしまったというのは、些か現実的ではないような気もしたが・・・)

    また、小説全体から溢れ出る各々のキャラクター同士の「絆」、愛情の深さに、読んでいて何度も涙が出ました。
    加賀と松宮、松宮と両親、被害者や容疑者とその関係者たち、そして冒頭に出てくる行伸たち家族の、それぞれ絆。
    物語の終盤で、登場人物の各々の秘密が伝えるべき人達に届けられていき、掛け違えたボタンの1つ1つがきちんと正確なポケットに収まっていく心地よさ。
    もちろん殺害された被害者は戻らないにせよ、いいカタチでそれぞれの物語は終結できたのではなかろうか。
    そう考えると、読んでいてとても優しい気持ちになれた。

    個人的な話だが、もうすぐ子どもが生まれ親になるので、家族同士の絆は本当に大切にしようと思った。
    生まれてくる子や愛する妻、そしてお互いの親や兄弟に対して、愛や感謝の言葉は、照れ臭いけどしっかりと伝えなくちゃいけないなと。
    そんなことばかり考えているからか、こういう家族がベースのハートウォーミングな物語には、最近ノックアウトされちゃうことが多いね。

    最後に・・・
    やらしい話ですが、これは間違いなく映像化しそうな作品ですね。笑
    絶対にヒットするよ


    【あらすじ】
    東野圭吾の最新長編書き下ろしは、「家族」の物語。

    「死んだ人のことなんか知らない。
    あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
    ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。
    どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。

    閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
    捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
    災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
    容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。


    【引用】
    1.これから自分たちは何を生き甲斐にすればいいのだろう、と行伸は思った。
    実際、それ以後の生活は、空虚で味気ないものとなった。
    玲子は仕事をしなくなった。自宅に閉じこもり、子供たちの写真や、彼らが書き残した学校のノートなどを眺めて過ごした。
    「なぁ玲子、やり直さないか?」
    「何を?どうやって?」
    「子育てだ。子供を作って、育てる」
    「このままだと俺たち、だめになるよ。何とかして立ち直らなきゃいけない。ただ、そのためには生き甲斐が必要だ。俺たちにとってそれは子供しかない。そうは思わないか?」

    2.「なぜだ?抗議しなきゃいかんだろ?」
    「そんなことしたって意味ないでしょ」
    「どうして?俺たちの子供が他人の子供にされたんだぞ」
    「それはそうだけど、もし取り違えがなかったら、その子は生まれてなかった。いったでしょ、処分される予定の受精卵だったって。そういう意味で、その子が生まれたっていうのは奇跡だと思うの」

    3.彼女の言葉を聞き、綿貫ははっとした。
    それまでは、頭の中に霞がかかっていたような状態で、思考が今ひとつうまく働いていなかったが、突然何もかもがはっきりし、自分の立っている場所が見えたような気分だった。

    自分は誰かの父親なのだ、という至極単純なことに気づいた。

    「大丈夫、抜け駆けなんてしない。私が会う時には、必ず声をかけるから」
    わかった、と綿貫は呟いた。それから改めて、約10年前までは妻だった女性の顔を見つめた。
    「妙な気持ちだ。俺たちの間に子供がいるなんて」
    「私は夢のような話だと思ってる」
    「夢か。たしかにそうかもしれないな」

    4.「他人の秘密を暴くことが常に正義なんだろうかって。親子関係に関わることなら尚更だ。警察に、そんな権利があるんだろうか。たとえ事件の真相を明かすためであろうとも」
    「お前、いい刑事になったな」
    予想外の言葉に当惑した。「皮肉かよ」
    違う、と加賀は真顔で答えた。
    「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。取調室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出されるべき真実というものもある。その見極めに頭を悩ませるのが、いい刑事だ」

    5.「色々と嫌な思いをさせてしまったけれど、萌奈のためにどうするのが一番いいのか、お父さんなりに考えた末のことなんだ。絶対に傷つけたくなかった。何としてでも萌奈には幸せになってほしいんだ。どうしてかっていうと・・・」
    少し考えてから続けた。「萌奈のことが大好きだからだ」

    「お父さんの話、長すぎ。難しいっていうか、くどい。受精卵とか、はっきりいってどうでもいい。それって、そんなに大事なこと?」
    意表をつく言葉に、行伸は当惑した。まるで予期しない反応だった。
    それより、と彼女は続けた。「最後に行ってくれた言葉だけでいい。とりあえず、今は」
    「萌奈、それが聞きたかったから」
    行伸は自分が発した言葉を振り返り、はっとした。娘が何を求めていたのか、ようやくわかった瞬間だった。



    【読書メモ】
    p11
    地震発生から3日後、自宅の近くにある斎場で葬儀を行なった。これから自分たちは何を生き甲斐にすればいいのだろう、と行伸は思った。
    実際、それ以後の生活は、空虚で味気ないものとなった。
    玲子は仕事をしなくなった。自宅に閉じこもり、子供たちの写真や、彼らが書き残した学校のノートなどを眺めて過ごした。

    「おなかなんてちっともすかないし、一人で御飯を食べてると、一体何のために食べてるんだろうと思っちゃうの」


    p13
    「なぁ玲子、やり直さないか?」
    「何を?どうやって?」
    「子育てだ。子供を作って、育てる」
    「このままだと俺たち、だめになるよ。何とかして立ち直らなきゃいけない。ただ、そのためには生き甲斐が必要だ。俺たちにとってそれは子供しかない。そうは思わないか?」


    p125
    「うちはふつうじゃないよっ。あたしは生まれた時から身代わりだった。二人の子供が死んで、パパとママが自分たちの悲しみを紛らわせるために作った子供。そうでしょ?小さい時からずっといわれてきた。萌奈には、あの世に行ったお姉ちゃんやお兄ちゃん二人の分も合わせて生きて欲しい、幸せになってほしいって言われ続けてきた」

    「そんなの知らないよ。もううんざりなんだ。はっきりいって、あたしにとっては関係のない人たちだもん」

    「あたしはあたし。誰かの代わりに生まれてきたなんて思いたくない。死んだ人間の分まで生きろとかいわれたくないっ」


    p196
    綿貫は唇を何度か舐めると、探るような目を松宮に向けてきた。
    「あのう、もしかして多由子は、弥生と私がよりを戻そうとしていると思って、それで殺したとか言ってるんですか?」
    「そうなんですね?私のことを取り返されると思ったから、弥生のところへ直談判に行って、それで衝動的に殺してしまった。そういうことですね?」
    綿貫は目を閉じた。なんてことだ、と小さく呟き、両手で頭を抱えた。


    p268
    「なぜだ?抗議しなきゃいかんだろ?」
    「そんなことしたって意味ないでしょ」
    「どうして?俺たちの子供が他人の子供にされたんだぞ」
    「それはそうだけど、もし取り違えがなかったら、その子は生まれてなかった。いったでしょ、処分される予定の受精卵だったって。そういう意味で、その子が生まれたっていうのは奇跡だと思うの」


    p271
    彼女の言葉を聞き、綿貫ははっとした。それまでは、頭の中に霞がかかっていたような状態で、思考が今ひとつうまく働いていなかったが、突然何もかもがはっきりし、自分の立っている場所が見えたような気分だった。

    自分は誰かの父親なのだ、という至極単純なことに気づいた。

    「大丈夫、抜け駆けなんてしない。私が会う時には、必ず声をかけるから」
    わかった、と綿貫は呟いた。それから改めて、約10年前までは妻だった女性の顔を見つめた。
    「妙な気持ちだ。俺たちの間に子供がいるなんて」
    「私は夢のような話だと思ってる」
    「夢か。たしかにそうかもしれないな」


    p274
    刑事と話しているうちに、多由子は、綿貫を弥生に奪われると思って刺した、とだけ語っているのではと気づいた。刑事は受精卵の取り違えについては一切触れないからだ。
    多由子は子供の存在を知らず、殺人の動機に子供は関わっていないのか。知っているが黙っているのか。どちらか分からず綿貫は迷った。
    警察に話すべきだろうか?
    それはだめだ、と即座に判断した。大ごとになって仮に報道でもされようものなら、少女の人生が壊れてしまうかもしれない。顔も知らない娘の人生が・・・


    p284
    「だから思うんだ、他人の秘密を暴くことが常に正義なんだろうかって。親子関係に関わることなら尚更だ。警察に、そんな権利があるんだろうか。たとえ事件の真相を明かすためであろうとも」

    「お前、いい刑事になったな」
    予想外の言葉に当惑した。「皮肉かよ」
    違う、と加賀は真顔で答えた。
    「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。取調室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出されるべき真実というものもある。その見極めに頭を悩ませるのが、いい刑事だ」


    p330
    そういえば、と克子が続けた。「この糸は離さないっていってたな」
    「糸?」
    「たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸は離さない」


    p335
    「ママが死んだ後、どうするのが萌奈のためになるのか、ずっと考えてきた。悩んだ末、やっぱり本当のことを教えるべきだと思った。それで準備を進めていたら、思いがけない事件が起きてしまったんだ」
    萌奈の生物学上の母親が殺されたことで、真実を話すべきかどうか迷いが生じてしまったのだ、と行伸は告白した。

    「色々と嫌な思いをさせてしまったけれど、萌奈のためにどうするのが一番いいのか、お父さんなりに考えた末のことなんだ。絶対に傷つけたくなかった。何としてでも萌奈には幸せになってほしいんだ。どうしてかっていうと・・・」
    少し考えてから続けた。「萌奈のことが大好きだからだ」


    p336
    「お父さんの話、長すぎ。難しいっていうか、くどい。受精卵とか、はっきりいってどうでもいい。それって、そんなに大事なこと?」
    意表をつく言葉に、行伸は当惑した。まるで予期しない反応だった。
    それより、と彼女は続けた。「最後に行ってくれた言葉だけでいい。とりあえず、今は」
    「萌奈、それが聞きたかったから」
    行伸は自分が発した言葉を振り返り、はっとした。娘が何を求めていたのか、ようやくわかった瞬間だった。

  • 喫茶店を経営する51歳の独身女性が、殺された。
    彼女の周囲には、最近、数年ぶりに会ったらしい、離婚した元夫。
    独身で一人娘のいる常連客らがいた。
    被害者女性の弥生には、浮いた話はなかったが、最近、ジムやエステに通い始めた様子は男性を意識していたようにしかみえない。
    常連客の汐見には、中学生の娘、萌奈との間に家族間のとある確執があった。
    又、加賀恭一郎とコンビを組む従兄弟でもある松宮脩平には、異母姉らしき人物がみつかる。

    そして、物語中程で、犯人が自白してしまいます。
    後半には、この物語の中心となるとある重大な秘密が判明します。
    作者の東野さんは、またよくこんな不思議なストーリーを思いついたものだと感心しました。
    物語の中ではあるけれど、ドラマチックな人生を送っている人がたくさんいるのだなあと思いました。
    ただ、被害者である弥生の口ぐせである「巡り会い」ということばが、被害者はポジティブな意味で言ったのに、殺人の動機となってしまったのは悲劇だと思います。
    ほかは、皆、それぞれいろいろなものを抱えていたけれど、いい話だったと思います。皆、希望の糸がみえたのではないでしょうか。

    • やまさん
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      希望の糸のレビューをよく見ます。
      やま
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      希望の糸のレビューをよく見ます。
      やま
      2019/11/22
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      東野圭吾さんはもう、国民的人気作家さんですよね♪
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      東野圭吾さんはもう、国民的人気作家さんですよね♪
      2019/11/22
  • 東野さんで唯一追いかけている加賀恭一郎シリーズ。とはいえ、今作の主役は従弟の松宮だった。脇役とは言え加賀の鋭さは相変わらず。でも引くところは引くし、松宮に刑事として良いアドバイスを送っている。
    そして今作は松宮自身の重大な問題とも向き合うことになるのだが、そこにも加賀は良い距離感で見守っている。

    事件はおしゃれな喫茶店の女性店主が刺殺されたもの。被害者は誰に聞いても『良い人』という印象で、殺されるようなトラブルはなし。金銭目的でもない。
    しかし最近、被害者は十年以上前に離婚した元夫に連絡を取っていた。そして加賀は松宮に、ある常連客を調べるように指示する。

    事件としては中盤過ぎに一応の解決を見せる。一応というのは、ここからが東野さんの真骨頂で、その奥にある様々なドラマを掘り起こしていく。
    よくぞこんな上手いこと繋がったドラマを作ったな、という感じ。

    ただ、個人的には登場人物たちにあまり共感出来なかった。

    ~ここからちょっとネタバレ~
    地震で二人の子供を一瞬にして失った夫婦が立ち直るためにやったことが間違いとは言わない。しかしその後はどうもモヤモヤしてしまった。勿論夫婦だけのせいではないのだが。
    被害者の『良い人』振りも、『良い人』というよりは『自信に満ち溢れている人』のように見えてしまった。
    逆に犯人は自己肯定感が低くて、こんなささやかな言葉が希望になるほど辛い人生を送ってきたのかと切なくなった。
    事件の動機はこんなこと?というあっけないものかも知れないが、その根底にあるのは実に苦しいものだった。
    ~ちょっとネタバレ終わり~

    また松宮の問題の方だが、松宮の母親が頑なに話すのを拒むほど不穏な話ではなかったような。しかしこれは松宮が話を聞かされるという受け身ではなく、本当に向き合いたいのか或いは知りたいのかという松宮自身の選択に母親が託したのだと思いたい。

    改めて様々な人同士の関係というものを見せられた。親子、夫婦、恋人、兄弟。
    最近よく聞く多様性、ここにもあった。
    大人たちが、警察の松宮も含めて、一人の少女を大事に考えていたことは救い。だけどなんだかモヤモヤしたものも残る。あの人やあの人はどうなるのだろう。

  • ★4.5


    「死んだ人のことなんか知らない。
    あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
    ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。
    どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。

    閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
    捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
    災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
    容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。


    いつもの如く、事前情報は全く何もいれず読み始めたこの本。
    新潟の地震でたまたま祖父母の元に子供二人だけでいっていた、
    汐見夫婦の子供達が亡くなった。
    深い深い絶望の淵に落ち込んでいる様子。
    とても暗い気持ちで読み始めました。
    それから次々と場所も視点となる人物も移ってゆき、
    何処に向かっているのかと思っていた所。
    Cafeで女性店主が刺殺体で発見される。
    きゃーーーっ、なんて事なのでしょう

    • アールグレイさん
      こんばんは、先ほどは、沢山のいいねを頂きありがとうございました。「希望の糸」読んでみたいと思っています。数年前に読んだ「カッコウの卵はだれの...
      こんばんは、先ほどは、沢山のいいねを頂きありがとうございました。「希望の糸」読んでみたいと思っています。数年前に読んだ「カッコウの卵はだれのもの」あれは夢中になりました!今は、「ツナグ・・・想い人・・・」を読んでいます。再読です。また、コメントさせて頂いてもいいですか?
      \(^_^)/
      2021/04/12
  • さすがの東野圭吾先生。
    音楽で表現するなら実にキャッチー!

    数ページで引き込まれるこのエンターテイメント性!
    抜群のストーリー テラー。

    面白いんですよ。ほんと、東野先生の作品は何を読んでも面白い!

    とりあえず間違いが無い(*^▽^*)


    閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
    捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
    災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
    容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。


    今回は二転三転してこないのだけど、やっぱり面白いなぁ。。。
    あっという間に読めてしまう。


    もう、子供の話はダメですね。
    涙腺がダダ漏れ(ToT)

    今ちょうど娘が2ヶ月ほど離れて暮らしているけど、もし娘の顔を見たらまた人魚の時のように号泣だったと思う(ToT)

    何ヶ所か、耐えきれずに涙が流れ出てしまった。。。

    あー、本当に東野作品はガッツリ引き込まれる!!毎回こんな作品が書けるなんて本当に素晴らしい!!!

  • ある女性刺殺事件から浮かび上がる容疑者。
    その容疑者を軸に絡む容疑者と被害者との意外な繋がり。
    結局犯人は別の者だったのだがそれだけでは終わらず。
    親と子の繋がり。そこで見出した希望の糸。
    冒頭のショッキングな出来事から結末まで。
    とても深く、楽しく読みました。
    結局事件は哀しい誤解という印象で。
    予備知識なく読みましたが、新たな加賀恭一郎シリーズでしたね。
    でもスポットは甥で若き刑事松宮の方ですが。

  • カフェの女店主殺人事件、取り調べの過程で見えてきた二人の男性
    元夫綿貫とカフェの常連汐見。愛憎のもつれか怨恨か?
    しかし、捜査が進むにつれ、事件は思わぬ方向へと進む

    汐見の一人娘萌奈の出生の秘密と松宮刑事の出生の秘密を絡ませ
    最後まで読者をぐいぐい引っぱっていく
    親子の絆や血縁の意味を読者に突きつけ、考えさせる

    さすが東野圭吾、うまいなあ、お見事です

    加賀恭一郎シリーズでは、加賀刑事の後ろから付いて回っているイメージだった松宮脩平が38歳になり、一回り大きい刑事に成長した姿を見ることができた

    「事件の真相を明かすためとはいえ、他人の秘密を暴くことが常に正義なのか?警察にそんな権利があるのだろうか。こんなふうに迷う俺は、刑事失格かな」と悩み、反問する松宮

    「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。取り調べ室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出される真実というものがある。その見極めに頭を悩ませるのがいい刑事にだ。場合によっては、真実は闇のままということもあり得ると加賀刑事

    「おまえ、いい刑事になったな」と加賀刑事に言わせた松宮刑事の成長ぶり、刑事である前に人間 であろうとする松宮脩平の誠実さを感じた

    TVの「新参者」の放映以来、いつも阿部寛と溝端淳平をイメージして読んでいたが、松宮刑事、38歳ともなれば、私の中で、別の俳優をキャスティングしなければ・・・

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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