捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)
- 講談社 (2019年2月13日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065149072
作品紹介・あらすじ
2019年4月から20年間続いた金融のルールが本格的に変わり始める。
その変革は、森信親金融庁前長官が退任し、ほっと一息ついている地方銀行をはじめとする金融業界に衝撃を与えることになるだろう。
15万部のベストセラー『捨てられる銀行』で、著者はいち早く森改革路線の本当の狙いを明らかにした。
「予告の書」発売から3年、ついに金融界の「憲法改正」が本格的に始まる。
遠藤新長官の狙いは何なのか? それは森路線を覆すものなのか? 継承なのか? 金融業界に籍を置くならば、経営者から新入社員まで、この変化に乗り遅れることは「捨てられる」ことを意味する。
金融業界の大変革の全貌を見通し、その背景にあるビジネスモデルの世界的な大転換を明らかにする。
過去の計測できる数字に安住するものは、金融界では生き残れない。「計測できない世界」を制する者が未来の勝者となる。
金融マンは、どう未来を切り開けばよいのか? 答えは本書から導くしかない。
感想・レビュー・書評
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捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む
2019/2/13 著:橋本 卓典
「捨てられる銀行」は、見えない未来に向き合わない。人工知能(AI)やフィンテックは、もはや人の簡易な仕事の大部分を代替できるまでに進化を遂げようとしているし、10~20代の「Z世代」の価値観がまもなく世の中を席捲し、銀行の店舗、カウンター、人員の意味を根底から変えようとしていることを理解しようとしない。
「捨てられる銀行」は、過去続けてきた数値とノルマと地位と報酬による人間の管理、会計とコストだけで組織や人心までもコントロールできるという古代の信仰を捨てない。いあわば、目で見える、「計測できる世界」しか、見ようとしていない。
本書は、「計測できる世界」の出来事や言葉に右往左往するのではなく、「計測できない世界」で何を意味し、何が起きているのかを洞察し、そして我々に何ができるのかを考えている。構成は以下の5章から成る。
①金融革命とポスト森金融行政
②20年の金融ルールが変わる
③「共感」と金融
④さよなら銀行
⑤「計測できない世界」にどう対処するのか
捨てられたくない。拾われたいし、選ばれたい。しかし、捨てるも捨てないも選ぶのはお客様。いくら自分たちは頑張っているんですと言っても「計測できない世界」においては、今までの常識は通用せず、既存の概念を超えた競合が現れ、お客様にとってより良いサービスが提供されれば、一気にその勢力図も変わることが予想される。
しかし、目を背けず、「守る」ということと並行して、「攻める」ためには、自分たちしか出来ないサービス・価値の創造や提供を考えながら進むことが必要となる。
「計測できない」と現実から目を背け、どれが正解かわからないと傍観していれば、一気に世の中から取り残されてしまう。
考えることは多く、やることも多く、何から手を付ければいいのか迷うこともあるが、その中でも自分本位ではなく、しっかりとお客様・地域の方を向きながらがむしゃらに一生懸命に行動する仲間が自分の近くにはたくさんいる。
計測できないかもしれないが、確実に近い将来やってくるその世界に対して、立ち向かっていくのは間違いなく私たち世代の宿命。難しい顔ばかりせず、笑顔と情熱を持って楽しみながら挑み続けたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とりあえず巨大な銀行、メガバンクになっても旧態依然としていれば
淘汰されるということ。 -
金融機関の問題点について過去3作で十分に書いたからだろうけど、ちょっとポエム要素が多めに感じた。著者の主張は、終章にまとまっているので、終章をしっかり読めば十分かも知れない。金融機関と顧客の関係性について、SIerとかコンサルも同じだなと思うので、参考になる面もあったが、著者が議論の下敷きにした文献の多くは既に読んでいたので、新しく何か得られた感は少なかった。熱量高めの共感を持っていろんな人物が描かれるが、冷静に読むと、実家太めの人が多い印象を持った。逆転の成功劇だけではなく、もっとたくさんあるだろう埋もれてしまった悲劇も知りたい。その悲劇にこそ、勉強すべきことがあると思うので。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729352 -
捨てられる銀行シリーズ第3弾。地方銀行が地域を回すために、予測不能な未来に目を向けて、顧客本位で融資することの大切さを説く。
シリーズの中では、個人的には最も読後感はよくなかった。特に後半部分は銀行の話というより、筆者の考える組織論の話が中心で、トーンもネガティブ。取材量の豊富さを加味して3点とした。 -
金融機関に勤めていて、確かにそうだと感じる部分は多かった。
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計測できない世界がテーマ
遠藤俊英新金融庁長官の現場主義
①生産性向上支援チーム
現場で支援する金融庁と財務の混成チーム
②ネットプロモータースコア
顧客間の口コミと推奨
③計測可能なKPIを廃止
森前長官の改革とは
①地域金融改革 事業性評価という価値観
②資産運用改革 フィデューシャリーデューティ
セゾン投信の中野社長を元に投信残高上位20銘柄のコストリターン、リスクリターンを公表
行かない革命
Z世代はインターネットで済ます
トランザクションとリレーションバンキング
再編では解決にならない。
リレーションバンキング、菱形営業で
検査マニュアルとは
①経営管理 ②金融円滑化 ③リスク管理
リスク管理にかなり膨大な量を
↓
マニュアル廃止、別表と引き当て廃止
そして予想信用損失モデル導入 -
否めないネタ切れ感。銀行じゃなくても同じことが言えるのでは
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金融庁の森信親長官の金融検査マニュアル廃止宣言をきっかけに、旧態依然の銀行が変化してきている実態をレポートした面白い著書だ.ユーザー志向の考え方は銀行以外の業界では当たり前だったにもかかわらず、自分たちのノルマだけを達成して、利用者のことは無視してきた.利益の上がるはずのない投資信託を小金を持った高齢者に勧めて、暴利をむさぼる.このような銀行が存在価値はない.改善の様子が示されているのにほっとした感じだ.
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未来の金融―捨てられる銀行3― 橋本卓典
捨てられる銀行、非産運用、未来の金融とジャーナリスト橋本氏による金融庁の改革ルポタージュ。部門が銀行系であることや、自分自身が金融庁の管轄下の保険会社にいることもあり、非常に勉強になる。個人的に、入社前に読んだ時より、アクチュアリティをもって読むことが出来た。
主に、20年程前の不良債権問題の対応策として金融庁が策定した金融庁マニュアルの功罪を解き、現在生じている金融排除や、反対に銀行があるべき姿にフォーカスしている。引当金等を厳格に定めた金融庁マニュアルは不良債権問題で破綻寸前の金融機関に対しての緊急策であり、20年間使う代物であるとは当時の策定者も考えていなかった。融資先の格付けにより、融資額を決める画一的な方法論により、志はあれど信用のない事業者が融資を受けられない「金融排除」という事態は、明らかにマニュアル主義の終着地点であり、まさしく捨てられていく銀行の態勢に他ならない。信用のない事業者に融資することは、マニュアル的にはリスクを背負う悪の行為であり、現状では実績こそないが未来の成功を見極める目利きを持った人は少なくなっているという。本来的に、金融機関は金融機能を通じて経済全体の活性化と国民の富の増大にこそレゾンデートルがある。機械的な格付けによる融資枠の決定という外部への潔癖性と、回転販売という内部からの腐敗に筆者は警鐘を鳴らし、あるべき金融機関の姿をリレーションバンキングに見出す。
本来、お金を貸すだけならだれでも良いが、その中で、選ばれるためには、銀行が持つ関係性とお金回りの知識による事業者の全体的なバックアップが必要である。金融機関として、点と点をつなぐという付加価値提供の在り方は、保険会社に勤める自分も頷ける。商品性や保険周辺の知識はさることながら、当社が持つ多くの関係先をむずびつけることは、付加価値提供の一つの在り方であると思う。ワンピース考察で結末予想というものが良くあるが、ルフィがレッドラインを沈め、東西南北の海を統一することで、世界が一つになるという考え方は面白い。社会は、あらゆるもので分け隔てられている。それが悪いことではないが、リレーションバンキングでビジネス界のワンピースを作るくらいの夢を持っても良いかもしれないと、粛々と考えた。
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