還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065149874

作品紹介・あらすじ

還暦後の人生を充実させる考え方

第一章 社会とどう向き合うか
・「何歳まで働くのか」を考えても意味がない
・高齢者が生かされる歴史的・生物学的意味
・「敬老の日」を廃止せよ
・「年齢フリー」の世の中に
・グーグル・アマゾンを生み出せない日本の教育
・「飯・風呂・寝る」の生活から脱却せよ

第二章 老後の孤独と家族とお金
・「老後の孤独」の本質はゆがんだ労働慣行
・死んだら星のかけらに戻るだけ、恐れても仕方ない
・次の世代のために、自分の範囲でできることをする
・運をつかむカギは「適応」にあり
・人とのつながりは「自分」というコンテンツ次第
・人生は愛情の獲得競争
・子孫に美田を遺さず、必要なら生前贈与を

第三章 自分への投資と、学び続けるということ
・80歳でもチアリーダーになれる、DJになれる
・「昔取った杵柄、新たな物事への「感染」
・英語で一番難しいのは日常会話
・成果の出る学習の秘訣は「仕組みづくり」
・「物事の見方」をどう磨くか
・学びが還暦後の底力をパワーアップする

第四章 世界の見方を歴史に学ぶ
・日本が鎖国できたのは「世界商品」がなかったから
・スペインの没落を招いた「血の純潔規定」
・ダイバーシティで栄えた国、反ダイバーシティで没落した国
・日本の敗戦はおごり高ぶって開国をしてた結果
・世の中を理解するために必読の古典とは
第5章 持続可能性の高い社会を残すために
・男女差別が日本を衰退させている
・男性が子育てをすると家族愛が高まる科学的理由
・赤ちゃんを産んでも女性が経済的に困らない仕組み
・社会保障と税の一体改革は必要不可欠
・よいリーダーとよい政府は市民がつくる

感想・レビュー・書評

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  • 図書館が少しずつ動き出して、
    今月は出口さんの本をこれで3冊も読みました。
    だから同じ話を繰り返し聞くことになる…。

    でも歴史の話がすごく面白かったです。
    出口さんの真骨頂ですね。
    知ってる話でも、出口さんに語ってもらうとまた味わい深くなります。
    またいつか出口さんの歴史本を楽しめるかと考えるとワクワクします。

  • 第一章 社会とどう向き合うか
    第二章 老後の孤独と家族とお金
    第三章 自分への投資と、学び続けるということ
    第四章 世界の見方を歴史に学ぶ
    第五章 持続可能性の高い社会を残すために

    「還暦からの底力」を発揮するためのヒントとなる情報が満載。上から「こうすべき」と書かれたものではなく、「俺はこう考える、俺はこうやってきた」という出口流生き方のヒントの書である。

    タイトルは「還暦から」となっているが、底力を発揮するのはいつからでもよく、著者は「思い立ったら今すぐ」という精神だ。つまり還暦からでも全く遅くないとの主張である。

    最初の部分で、底力を発揮する上での重要なポイント2つが明示されていた。
    ①色眼鏡を外してフラットに物事を見ること(数字、ファクト、ロジック/エピソードでなくエビデンスで)。
    ②健康寿命を延ばすこと。

    ①は出口氏の基本ポリシーだ。

    ②について、健康寿命を延ばす最善策は「定年をなくせ(=年齢フリー)」である。その中での「敬老の日を廃止せよ」は大胆かつ同意できる提案である。「ヤング・サポーティング・オールド」から「オール・サポーティング・オール」への転換。

    特に儒教的発想で「老人を敬え」と老人側から主張するような「敬老の日」は全く不要だ。そんなことを考えているヒマがあったら、どんどん働け(自分のためにも、そして次世代のためにも)と。あるいは好きなことに打ち込めと。そうして健康寿命が延びて、経済効率もよくなり、年金制度の破綻なんか心配に及ばないと。

    2018年6月の日経新聞電子版「経団連、この恐るべき同質集団」という記事を取り上げていた。この記事は、小熊英二氏が「日本社会のしくみ」の中でも取り上げていた。経団連の特徴は次の通りと指摘。
    ・全員男性で女性がゼロ人
    ・全員に日本人で外国人はゼロ人
    ・一番若い副会長で62歳、50代以下はいない
    ・起業家もプロ経営者もない
    ・転職経験がない
    男女平等の意識、ダイバシティの考え方、若い世代を尊重する年齢フリーの発想、そして自分の頭で考える体質の欠如の実態を指摘し、この体質が日本でGAFAやユニコーン企業が生まれにく体質そのものだと指摘している。

    日本人は年間2000時間も働いて経済成長1%という超効率の悪い働き方をしているとも指摘。

    つまり、出口氏はこれらとは反対の発想を社会活動にも自らの人生にも重視する。つまらない仕事をして、飯食って、風呂入って、寝ることを繰り返すだけの生き方を卒業せよと。

    次の出口さんの発想は好きだ。
    ・人生はYes/Noゲームだが常にYesで行動する
    ・人生は愛情や友情の獲得競争
    ・「悔いなし・貯金なし」がモットー
    ・自己投資のススメ(投資先は人・本・旅)

    「第四章 世界の見方を歴史に学ぶ」では、歴史から学べということと、その際に「日本の歴史」は「世界の歴史」と切り離すことなくつながりで見よと言われる。

    この章でも、日本の明治維新までの流れを世界の中の日本という視点でダイジェスト的に紹介しながら、日本の盛衰は世界へのオープンな視点の有無がキーであること(明治維新での岩倉使節団の意義、第二次世界大戦時の日本の孤立など)を指摘し、スペイン没落の流れの中にダイバシティ視点の欠如があったこと(レコンキスタ、血の純潔規定など)などを指摘しつつ述べられる。

    「世の中を理解するために必読の古典」として著者が紹介された署は次の6冊。
    ベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」
    ウォーラー・ステイン「近代世界システム」
    アダム・スミス「国富論」「道徳感情論」
    ジョン・ロック「統治二論
    ダーウィン「種の起源」

    「第5章 持続可能性の高い社会を残すために」では少子化対策や社会保障改革についての著者の考えを述べられていた。

    唐の第二代皇帝太宗の「貞観政要」の「三鏡」を紹介。リーダー論かな。
    ・銅の鏡:自己チェック
    ・歴史の鏡:過去から未来を学ぶ
    ・人の鏡:直言、諫言に耳を傾ける

    「生涯学び(知は力)」だよ。そのために「人・本・旅」はいいよ。そしていいと思ったことは「迷わず始めよう」というのが著者のアドバイスである。

  • この本はまだ読んでいないが、近いうちに読む予定。

    最大の理由は、私自身が59歳で、来年の年明けに還暦になるため。
    人によって、もう60歳、まだ60歳、と考え方は180度違うのだろう。
    私の場合は、もう60歳。歳をとったなあ、と思うのである。
    が、これではいかん!という気も、けっこうある。

    この本を読むことで、まだまだこれからだという気持ちになれるものと思う。
    そんなことを、期待しています。


    この本の中ではなく、『私の大往生』の中で、出口治明さんが書かれていたこと。

    ---地球の生命の歴史は40億年前に始まり、あと10億年で終わることがもう確定しています。それは太陽が大きくなって地球の水分がなくなるからですね。地球の生命の歴史が終わる以前に人間の歴史は終わり、たぶん最後は細菌が生き残るのだと思います。---

    これは、何となく安心させられる。
    人間の歴史にも終わりがあるということ、億年単位の話だとさすがに現実感はないが、永遠ということはない、ということだ。


    ●2022年2月11日、追記。

    61歳になり、ようやく読んだ。
    と言っても、通読はせずに、ところどころ読んだ。

    気になった箇所を引用すると、

    p29~p30

    以前、僕が50人ほどの医師に、「健康寿命を延ばすにはどうすればいいですか」と聞いて回ったところ、一人の例外もなく皆さんが「働くことが一番」と話していました。健康寿命を延ばすのにもっともいい方法は、働くことなのです。
    そうであるならば、日本がやるべき政策は定年を即刻廃止することです。定年の廃止には一石五鳥のメリットがあります。

    定年廃止は飛躍しすぎのように思うが、働くことが良いというのは同感です。

    p76

    年齢を重ねるほど親しい人を喪う回数が増え、寂しさを感じる回数も増えるのは間違いありません。でも、それもよく考えてみれば友人が高齢者の場合だけの話であって、「人・本・旅」の生活で年齢にかかわらず友人を増やしていけば、それほど喪失感は感じないでしょう。動物は年を取れば年齢が上のほうからだんだん死んでいくものです。そんなことは誰でも知っています。親や兄弟、パートナー、親しい友人が亡くなって心が病んでいくという現象があることは理解できますが、結局、死というファクトに対しリアルに向き合えば、人間の死は自然現象として受け入れるしかありません。

    著者は、「人・本・旅」という表現を繰り返し、この本に書かれている。生きていく上で、大切なことという意味で。

    ●2022年7月27日、追記。

    著者、病気療養中のようです。
    72歳で脳卒中になって右半身麻痺と失語症が残り。身体の右側が動かず言葉を発することもできないそうです。
    それでも、このたび、本を書いたようです。
    そのタイトルは、『復活への底力運命を受け入れ、前向きに生きる』。

  • 著者も言っているように、どう生きるかは自分次第であるが、私も著者のようにパワフルに楽しんで生きたいと思った。出世できなかったことを嘆くのは不勉強であるという項目が一番印象的でした。

  • 『教える』ということを読み引き続きこの本を読んだ。
    前書にも同様のことが記載されていたが、人生100年にゴールはなく常に進化を繰り返さなければならないと再認識した。
    『人・本・旅』による自己投資を繰り返し、一生勉強しチャレンジし続ける人生を歩みたいと思う。
    『考えることができるじじい』になりたいと思う。

    ポイント
    『エピソードよりエビデンス』
    『転勤は非グローバル』

  • 還暦に備えて読んだ本。
    若い頃から病気を抱えているせいもあり、健康ならもっとばりばり働けたのに、楽しめたのに・・・と思うことも多かった。しかも、加齢とともに年相応の診療も増えて来た。
    とはいうものの、いくつになっても生き方や考え方、学ぶ気持ちは忘れてはいけないと背を押された。

    『人・本・旅』で自己投資をすること。さしずめ一番自己投資しやすいのは、『本』だ。

    著者の奥深い文面には、世界、日本の動きを総合的に見ておられると感じる。人生で積み上げて来たデータが、フル回転していることがわかる。

  • 還暦にはまだまだあるけど、手にしてみた1冊。さすが、出口さん、ハズレがない。還暦でなくミドル世代にも十分役に立つ、というか、氏の幅広い教養に裏打ちされた、多面的な見方から物ごと見られる、いわゆるコスパのいい1冊。広大な植民地と西欧最強の無敵艦隊を持つスペインがなぜ没落したのか?自身が学長を勤めるAPUではどういう教育を実践しているか…。などなど、非常に興味深く腹落ちする話ばかり。フロ、メシ、寝るからの脱却を。

  • 説得力のある「人・本・旅・歴史」に学ぶ生き方。
    勇気をもらえる還暦からの底力でした。
    印象に残った文章
    ⒈ 大事なことは何が起こっても自分の頭で物事を根底から考え、自分の言葉で意見をいえる能力なのです。
    ⒉ 60歳は人生100年の折り返し地点と考えれば、もっと楽しくいろんなことにチェレンジができるでしょう。
    ⒊ 自分がいいと思ったことに全力で取り組めばいいのです。
    ⒋ 自然科学では人間は星のかけらからきて星のかけらに戻ると説明しています
    ⒌ 72のルール
    ⒍ 教養=知識×考える力
    ⒎ 人間観には、人間はしっかり勉強すれば賢人になれるという人間観と、人間は勉強したところで所詮はアホな存在である、という人間観の2種類がある。
    ⒏ 人間の頭はたいしたことがないので、長く続いた伝統や慣習はできるだけ大事にしたほうがいいでしょう。
    ⒐ きちんと市民にご飯を食べさせてくれる人が良いリーダーです。
    10. 人間は一生懸命自分の好きなことをするのが一番幸せだ。

  • 老人ホームの仕組みに
    漠然と違和感を感じていたが
    この本を読んでスッキリした。

    なるほど人は元来
    働いてこそ社会の役に立つんだ。

    家族にも読んで欲しかったので
    電子版でなく、紙版で買った笑

  • 高齢者は次世代のために働くことに意味がある。
    定年を廃止し健康寿命を延ばす。
    ドイツのシュレーダーは、パートアルバイトも社会保険に入れるようにして、企業の負担をより重くした。これによりドイツで強靭な経済システムが出来上がった。

    日本では企業の採用基準に成績が入っていない。
    正社員は勉強する時間がない。製造業の工場モデルにはぴったりだった。素直で我慢強く協調性があって上司の言うことを聞く人材。
    企業が転勤を命じるのは、地域の結びつきを考慮していない証拠。
    経団連の同質性。GAFAとは真逆の性質。

    人生で大切なのは好きなことをする時間。何が好きなことか、よく考える。それ以外はカットする。

    人生観は、勉強すればそこそこ賢くなれる、人生観と、チョボチョボの人間観の2種類ある。
    北欧の老人ホームでは、部屋に鍵をかけ締め出す。外で頭も体も使うように仕向けられる。

    工場モデルでは、日本の画一的な方法が成功した。マネジメントがなっていない。頭を使う仕事には向いていない。

    勉強はある程度時間をかけて一生懸命取り組むしかない。英語の読み書き、ヒアリング、スピーキングも継続と時間をかけることが大事。毎日2時間、勉強する時間を決めて継続する。

    世界の大学は、過去からの寄付金の積み上げをもとに資金運用しているので豊かになっている。今寄付金を集めているのではない。

    江戸時代は移動を禁止したので、痛婚する範囲が狭い。血が濃くなってからだが小さくなった。
    アメリカが開国させたのは、中国に近づきたかったから。

    スペインのハプスブルグ家はスペインとオーストリアの同族結婚を繰り返した。
    ベネディクトアンダーソン『創造の共同体』
    ウォーラーステイン『近代世界システム』

    人間それほど賢くない、というのが保守主義の人間観。理想の社会よりはそのままがいい、という世界観。
    フランス革命は、全世界を再設計しようとした。

    人間の意識は社会構造がつくる、クロードレヴィ=ストレース

    人生の楽しみは喜怒哀楽の総量である。怒りも悲しみもあったほうが人生は豊かになる。

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著者プロフィール

出口 治明(でぐち・はるあき):立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命株式会社に変更。2012年上場。2018年より現職。著書に『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『歴史を活かす力』『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『一気読み世界史』(日経BP)、『ぼくは古典を読み続ける』(光文社)等多数。

「2023年 『人類5000年史Ⅴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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