偶然の聖地

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 108
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065153345

作品紹介・あらすじ

小説という、旅に出る。

国、ジェンダー、SNS――ボーダーなき時代に、鬼才・宮内悠介が届ける世界地図。本文に300を超える「註」がついた、最新長編小説。

秋のあとに訪れる短い春、旅春。それは、時空がかかる病である――。人間ではなく世界の不具合を治す“世界医”。密室で発見されたミイラ化遺体。カトマンズの日本食店のカツ丼の味。宇宙エレベーターを奏でる巨人。世界一つまらない街はどこか・・・・・・。オーディオ・コメンタリーのように親密な325個の注釈にガイドされながら楽しく巡る、宮内版“すばらしい世界旅行”。“偶然の旅行者”たちはイシュクト山を目指す。合い言葉は、「迷ったら右」!――大森望(書評家)

この小説を体感していると、混沌と秩序って、向こう岸にあるのではなく、隣にあるのではないかと思えてくる。生きる上で生じたバグに体を浸し、誰かと誰かのハブになる。バグとハブもまた、隣にあるのではないか。1ページごとに困惑がやってくる。困惑がやがて快楽に変わる。困惑と快楽、これもまた隣にある。一体どういうことだろう。――武田砂鉄(ライター)

感想・レビュー・書評

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  • SF。世界医と呼ばれる人たちがいる。時空がかかる病、それは秋の後に春がくるという。世界医はありとあらゆる世の中の歪み(バグ)を治してゆく。失踪した祖父、手がかりは滅多にたどり着けない神秘の山・イシュクト。孫が、世界医が刑事が、それぞれの目的を持ってイシュクトを目指す。註盛りだくさんのSF+紀行文。
    註もやたら多いし、読めないかもしれないと思ったけれど、世界観に魅了されてか、読めた。宮内さんの面白さにぴったり合う人やプログラミングに詳しい人は、より楽しめるのではないでしょうか。世界の不具合を治す世界医、面白い考え方だし、この世界の困ったことも世界医に治してってもらいたいものだなあ。面白おかしい世界を上手く描いておりました。

  • 思ったより読みやすい。
    山ほどつけられた脚注は、作者の地口。その語り口の軽やかさと、物語のホラ話めいた風呂敷の広げ具合が、妙にスコンと抜けて明るい印象。
    ロジックを真剣に追わなくてもメタフィクションの面白さは堪能できる。
    世界医たちが懸命にバグを修正していくさまがアメコミのヒーローっぽい。結構ヒーローの仕事環境ってブラック。おつかれさまといいたい。

  • 幻の山イシュクト山と世界の「バグ」をめぐる物語。オフビートな旅行記の体裁を取りつつ、世界をシステムに見立てた深遠な?議論や、ホラ話が交錯する。本書の由来は半ば随筆のような長期連載であったとのこと。日常を表す随筆的な要素(著者の経験、脚注)が、神話的な世界へ越境する瞬間がスリリング。

  • 7月2日読了。図書館。

  • 例えば、パソコンのビックデータ解析で 世の中の過ちをバグ修正出来たらみたいな・・  山は良いですよね。 ヒマラヤ山脈なんぞ理解できないが やっぱり運のよい人は花畑に遭遇するのか

  • エッセイのような小説だが根幹はSFという奇妙な作品。
    辿り着くのが困難な山イシュクトを目指して旅する人々。世界のバグを治す世界医。
    プログラミングの知識がないのでいまいちわからないところもあったが、紀行文+SFとして面白かった。
    著者のメタ註も楽しい。

  • 脳汁が発するままに書かれた、筒井康隆正統派部分の後継。コーディングネタにはニヤリとせざるを得ないし、文章の疾走感は軽くトリップ出来る。

  • 「なにこのクッ◯おもしろい小説」

    たまたまよく行く近所の図書館の新刊本コーナーに装丁がきになる本書が並んでいたのを何気なく借りてきた自分の見る目を褒めてあげたい.

    著者の宮内さんのことはまったく名前も作品も存じ上げていなかったが,ギーク度と国際感覚というバックグラウンドが身近だったこともあって,急所を鷲掴みにされました.

    本書のテーマをひとことで言い表すなら「世界のデバッグ」

    ありそうで,なさそうで,ありそうなテーマをかくも軽快に,アニメーションのように,ギークに,コミカルに表現しちゃうところが魅力.プログラミングネタ(符号付き整数のラップアラウンドとか,どんだけついてこれるねん)のさじ加減が絶妙.

    最後に,本書の個人的なクライマックス:

    「ああ。それも、ここにいる全員でた。さしあたり、皆にゲスト権限を附与しておいた」

  • 間違いなくここしばらくでいちばん楽しい読書時間を満喫することができたと言える。

    バックパッカーとして一定時間を過ごし、今も人生の根っこにそれが残っている人には特に刺さるでしょう。

    プログラミング?の部分はさっぱりわからなかったけれど。

  • 宮内悠介氏の世界観全開の不思議な物語だ。
    「IN POCKET」というニッチな冊子に三年以上にわたって連載されていたものを、今回書籍にまとめたらしい。

    「世界が精神疾患に罹り」、「旅春というバグが発生する」のを、「世界医と呼ばれるプログラマーがデバッグすることでバグを排除し世界を正常にする」という壮大かつ奇妙な物語で、カリフォルニアからパキスタン、イシュクトという奇想の山へと舞台は移り変わり、複数の登場人物の視点も入れ替わり、小さな物語が交錯することで不思議な世界が織り成される。

    そもそもが小説のようなエッセイのようなもの、というオーダーではじまったらしく、それが回りまわってよくこういう決着で物語を閉じたな、と読み終えてほーっと感心した。
    無茶苦茶に広がりまくった話のようでいて、最終的にはなんだかうまく畳まれて落ち着いている。

    本作の面白いところは、著者自身による註が多数入っていること。
    本来だったら連載を単行本化する際に加筆修正して、誤りがあった場合は直すと思うのだけれど、あえて直さずに註で「間違い」と記載したり、「言ってみたかっただけ」とあったり、宮内氏自身の個人的な経験や思い出が綴られていたり、と脱線極まりない註が面白かったりして読んでいて楽しい。

    この人の脳内ってどうなっているんだろう、と読んでいてよく思う作家の一人が宮内氏なんだけれど、その脳内の一端をほんの少しだけ見せてもらった気分になった。

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著者プロフィール

宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部英文科卒業。2010年囲碁を題材とした短編『盤上の夜』で第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞、各種盤上ゲームの連作短編として2012年『盤上の夜』で単行本デビュー。第33回日本SF大賞受賞、第147回直木賞候補。2013年『ヨハネスブルグの天使たち』で第149回直木賞候補、第34回日本SF大賞特別賞受賞。2016年『アメリカ最後の実験』で第29回山本周五郎賞候補。「カブールの園」で第156回芥川賞候補。同作で2018年第30回三島由紀夫賞受賞。『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞受賞。『あとは野となれ大和撫子』で第157回直木賞候補。2017年「ディレイ・エフェクト」(『文学ムック たべるのがおそい』 vol.4)で第158回芥川賞候補。

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