45° ここだけの話 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 189
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065156117

作品紹介・あらすじ

カフェで、ファストフードで、教室で、ケアホームで、一見普通の人物が語りはじめる不可思議な物語。一卵性双生児、夢の暗示、記憶の改竄、自殺志願者など、ちりばめられた不穏なモチーフが導く衝撃の結末。読んでいるうちに物語に取り込まれ、世界は曖昧で確かなことなど何もないと気づかされる戦慄の9篇。

感想・レビュー・書評

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  • ゆっくり読む人にオススメ。

    「読むエッシャー」というキャッチコピーが付けられていて、なるほど、各話の末尾には、自分の読みがガラリと変わるような「体験」が待っている。

    表題作「45°」は、アドバルーンを上げる係の人が、誤って落下してしまい、記憶を失うお話。
    そういえば、小さい時、アドバルーン上がってたわあ。でも、なぜか、間近で見た記憶がない。
    小説中では風が吹いて45°になると、危険だから降ろすとあったのだけど、想像するとやっぱり不思議な感じがする。

    私は割とズンズン読んでいく方なので、話の切り替えには気付くものの、「えっ!?つまりどういうこと!?」と、ひとり恐慌をきたしたオバチャンになってしまった。
    一番ありがたかったのは、かなり丁寧に「どういうこと」かを説明してくれている解説なのだけど、いやむしろ、それが必要ってことは、案外私の恐慌も的外れではない、と思いたい。

  • 最近の長野まゆみ、作風が変わってきてるけどこれめちゃくちゃ面白いやないか。今までは何となくクセが強くてお勧めとかしたことなかったけど、これなら人にも勧められる気がする。

    ストンとおちてたり、いろんな人が出てきたり、不思議なことがあったりっていうのは江戸川乱歩とか夢野久作ぽい感じがするようなせんような…モチーフが似とるんやろなあ。
    おちてない話もあるし、ややこしくなっただけの話もあるし、おちるとこそこかい!て突っ込みたくなる話もあるけどどれも面白いよ。
    双子とか、異性装とか、多重人格とか、そういうのが出てくるのよ。めっちゃ面白いやろ。
    あとWCの冒頭はわろた。

  • どのお話も少しずつ違和感があって座り後ごちの悪さを感じながらも読んでいくと、ん、え、どういうこと?と、理解できない展開になって、最後はぞわっとする。
    私の思い込みからなのか、想像、想定の状況とは全く違う、もう世界線が変わってしまったような展開がいきなり飛び込んでくる。

    印象に残ったのは、双子の話と、郊外に家を買った若い夫婦の話。どちらもぞわっとする感覚がよかったです。

    長野まゆみさんの初期作品はほぼ読んでいるのですが、幻想的な初期作品の舞台が現実になるとこんな感じになるのかなと思いました。

  • 反転、シンメトリーのイメージと
    さまざまな語りの試みがなされていて楽しい。
    例えるならバッハを聞いてるよう。
    ただ、ある種の実験臭がしないでも無い。

  • 少年アリスの頃から幻想系だけ読んでいたので、こういう話も書くようになったんだなあとしみじみ。
    ほのかな毒が前面に出てきた感じ。わりと好き。

  • 現代が舞台の不可思議な話9編。
    タイトルも記号など変わったものばかりで今までの作風とかなり変わっている。

    記憶や性が倒錯しているのは健在で、大体ケムに巻かれて終わるのでふわふわした読後感。
    人の見方が少々意地が悪い(特に女性に対して)

    「●クロボシ」は従来のパターンならナギサとフルサトは双子ではなく同一人物だと思う。

  • 読み始めてから、これはいったい誰の本を読んでいるのか、と思えるほど自分の知っている長野まゆみではなかった。デヴュー以来しばらく追いかけていた作家ではあるけれど、ここ最近読んでいなくて作風が変わってしまったのかと思ったが巻末の解説を読んでみるとどうやらそうではないらしい。
    この人は引き出しをたくさん持っている人なのだ。
    9作からなる短編集でネタバレになるから詳しくは言えないがどの作品も、えーっ、とかそうきたか、とかまさかこんなオチとはとかとか。
    一作目二作目はそういうオチかってサラリと流していたが、途中からどんなラストが待っているのか気になって読むのを止めることができなくなってきて一気に読んでしまった。
    初期の作品も好きだが、こういうのも悪くない。

  • 何というか、とても不思議で感想に困る。
    面白いけれど、言葉でどう表したら良いのかわからない。

  • 熱くなることもなく、淡々と語られる不思議な話。
    見えているものの不確かさを思い知らされる。

  • 意外な作品、短編9作。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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