院政 天皇と上皇の日本史 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065160879

作品紹介・あらすじ

125代にわたって続く天皇制。その「天皇」の運用において、最も画期的だったのが「院政」の開始だった「万世一系」とうたわれる血統の再生産は、いかにして維持されてきたのか、それを支えてきた組織や財政の仕組み、社会の構造がどのようなものだったのか。「天皇制」の変遷から、日本の歴史を読み解く。


本年4月30日、江戸時代の光格上皇以来、約200年振りに天皇が退位し、「上皇」の名称が復活することになりました。これは憲政史上、および一世一元の制が定められた明治以降初めてのことになります。
神話時代は除くとしても、日本の天皇家は少なくとも千数百年にわたって、125代という皇位継承を実現してきました。これが可能だったのは、「天皇」の運用が非常に柔軟だったからでした。天皇不在で皇太子が政務をとった時期もありましたし、女性天皇や幼帝が位につく場合もありました。また天皇は終身の地位ではなく、譲位も頻繁に行われていました。天皇の地位が日本の頂点に置かれていたことは間違いないとしても、時代の政治状況に応じてかなり大きな幅をもって運用することができていたのです。いえむしろその運用のさまは、ほとんど場当たり的といってもよいほどです。
その「天皇」の運用において、最も画期的だったのが、おそらく「院政」の開始でした。古代以来の制度である太政官制を保持したまま、速やかな政治的判断と断固たる政治的決断を可能とする回路を作り出し、新しい時代を開いたのが、この院政という方式だったのです。天皇の父であることを根拠に権力を掌握した「院」=上皇のもとに、日本のさまざまな場所で胎動していたエネルギーが引き寄せられ、大きなうねりとなったなり、中世という、新しい時代を開いたのです。
本書では、「院政」という政治方式をを通して、「万世一系」とうたわれる血統の再生産がいかにして維持されてきたのか、またそれを支えてきた組織や財政の仕組み、社会の構造がどのようなものであったかを考えていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 院政の前段階である天皇の譲位と太上天皇について考え、中世に始まった院政と皇位継承の柔軟なシステムについて論じる。

    2022年3月・4月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00544639

  • 授業の予習のために読みました。美川圭『院政』も読みたいと思います。

  • 南北朝時代の足利氏の執事高師直「都に王という人があって、内裏・院の御所などというところを設けているために、その前を通る際に下馬しなければならないのは厄介だ。どうしても王が必要な理由があるのなら、木で造るか、銅で鋳るかして、生きている院や国王は、どこへなりと流して捨ててしまえばいい」
    10代将軍足利義材を廃して11代将軍足利義澄を樹立するという明応の政変を起こした細川政元が、後柏原天皇が財政難のために即位礼を行えないでいることついて述べたこと「即位大礼御儀は無益である。そのような儀礼を行っても、実体がない者は王とは認められない。このまま儀礼がなくとも、私は国王と認めている。末代に大げさな儀礼はふさわしくなく、無用である。」
    自力救済や分権的統治を旨とする中世社会において国王の権威は相対化されても王家は維持された。
    歴史的にも柔軟に運営されてきた王家であればこそ、時代に合わせて女系宮家、女系天皇も可能であるように思う。

  • 第1章 院政以前―譲位と太上天皇
    第2章 摂関政治と後三条天皇
    第3章 中世の開始と院政への道
    第4章 白河院の時代
    第5章 院政の構造
    第6章 内乱の時代
    第7章 公武政権の並立
    第8章 院政と公武関係
    第9章 中世後期の皇位継承

    著者:本郷恵子(1960-、東京都、日本史)

  • 話が行ったり来たりでやや読みにくい。一般向けにしては難しい。学術的な話や具体的な資料の解説などもあり、オタクっぽい。院政と直接関係ない、中世の特徴などの解説が多いが、そういうバックグラウンド的な話が面白いこともある。院政について深く考えるというよりは、中世の天皇と上皇、摂関家などの人間関係が分かって面白い。

  • 天皇制の転換点なんて言い方もしてるけど、それも後世から見ればでしかない。転換したのではなく結果がそうなっただけであり、誰かの意思でそうなったわけでもない。
    欲望の行き着く先が、一族それも直系による権力と富の独占を願うということらしい。これに事なかれの前例主義が重なると院政も制度になるわけだ。

  • <目次>
    はじめに
    第1章   院政以前~譲位と太上天皇
    第2章   摂関政治と後三条天皇
    第3章   中世の開始と院政の道
    第4章   白河院の時代
    第5章   院政の構造
    第6章   内乱の時代
    第7章   公武政権の並立
    第8章   院政と公武関係
    第9章   中世後期の皇位継承
    おわりに

    <内容>
    分析というか、事実の羅列が多かった気がする。もうちょっと自分の意見を盛り込んでもいいかも…。旦那ほどサービスはいらないと思うが。
    古文書をバンと出すのは斬新かも…。

  • 東2法経図・6F開架:B1/2/2523/K

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著者プロフィール

東京大学史料編纂所教授。
一九六〇年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
著書『買い物の日本史』 (角川ソフィア文庫、二〇一三)、『怪しいものたちの中世』(角川選書、二〇一五)ほか。

「2016年 『近衞家名宝からたどる宮廷文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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