源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 69
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065161623

作品紹介・あらすじ

1160年、平治の乱の後、源頼朝は平清盛によって助命される。後に大納言・時忠が、「此一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし」とまで言い放ち、知行国三十余国、荘園五百ヵ所、田園その数を知らずと言われるまでに栄華を誇った平家一門の命運は、この瞬間に窮まった。
後に平氏を滅ぼすことになる頼朝を清盛はなぜ救ったのか? 

平氏を滅亡に追い込んだ天才武将・源義経は数々の戦果を挙げたにもかかわらず、兄の不興を買って非業の死を遂げる。その義経が怨霊として祀られていないのはなぜなのか? 

二つの謎が解けるとき、源氏と平氏の真の姿が現れる。

感想・レビュー・書評

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  •  平安時代末期に起きた治承・寿永の乱に関する謎に、新説を提示する歴史ミステリ小説。
     平治の乱ののち、源頼朝が平清盛によって助命された理由を、平家一門の力関係や人物相関図を重ね合わせることで解き明かしている。
     「源平争乱」の構図の真相を暴く試みは面白みがあるし、その見地の信憑性は、角田文衛氏の『平家後抄 落日後の平家』でも同様の観点から触れられているため、全くの荒唐無稽な珍説というわけでもないだろう。
     単純な哀感だけでは語りきれない、『平家物語』の背後にある権謀術数の絡み合いに、運命の流転を感じたい。

  • 面白く読んだ。史実と伝聞を都合よく重ね合わせて作られたお話とされるのだろうが、実際にはこのようなこともあったのかなと思いながら楽しく読めた。
    ただ、QEDシリーズの桑原崇と小余綾俊輔はうんちくの語り方や酒へのこだわりなど、どうみても同一人物にしか思えず、むりな殺人事件をはさまず歴史探偵に絞った本作は好感が持てたが、主人公の設定は少し変えたほうがなじみやすかったかな

  •  重厚で多岐にわたる内容ながら、トラベルミステリー仕立てでなかなか楽しく読める。
     源平合戦から鎌倉幕府の滅亡までを、平家物語や能、歌舞伎、和歌集、寺社縁起等の資料を縦横に駆使して描き出す。
     これを歴史小説仕立てとすれば、また趣きも違ってくるのだろうが、現代の大学教授が若手教員、学生を相手に分かりやすく指南する体裁としているのが妙味。遠い昔によく読んだ学研か小学館の子ども向けの学習マンガの設えだ。先生や博士が、男子生徒、女子生徒を相手をフィールドワークに付き合わせながら、物事の本質を分からせていくという懐かしい構成。
     先生(小余綾俊輔俊輔助教授)の教えに従い、教え子の二人(誠也、橙子)が京都や鎌倉へと日帰り旅行で飛び回る。

     先生の教えは、大きく2つ;
    ①史学のみならず、文学も民俗学も、地方史を彩る言い伝えも「全てで一つの「歴史」なのだから。学問的な分野など関係ない」。
    ②神社仏閣の神徳、御利益は、御神体が生前「自分の叶わなかった望みや、自分たちを襲った不幸が我々に降りかからないようにしてくれる」もの。

     に加え、日本は古来怨霊(慰撫)信仰が根底にあるというあたりか。
     そして、体制側が残した資料に頼らず、ありとあらゆる痕跡を辿り、歴史の闇に埋もれた事実を暴き出そうとする。本書の中にも紫式部が『源氏物語』の中に残している、
    『日本書紀などは、ただかたそばぞかし。これらにこそ道々しくくはしきことあはあらめ』
     を引用し、「官撰の歴史書などは、世の中の出来事のほんの一部を記した物であるに過ぎず、むしろ物語(フィクション)の中にこそ真実がある」と教える。

     はたして、この物語(=本書)の中に真実があるのかどうかは読者の判断に委ねられるところではあるが、平清盛の義母(池禅尼)が、なぜ敵方源氏の嫡子頼朝、義経らの助命嘆願したのか、果たして義経は稀代の英雄であったか否か、なぜ鎌倉幕府は僅か三代で終焉を迎えたのかを、通常語られる史実の、その裏に流れる大きな陰謀ともいえる歴史絵巻を最終的に描いてみせる。読後感は「お見事」と膝を打てるレベルであり、満足満足。

     もちろん、その「陰謀」を、さもありなんと立証するために都合の良い資料、見解、解釈を採用しており、ある意味「とんでも本」の類ではある。カッパかワニの出版社が出しても良さそうなお安い話もテンコ盛りだ(既にその手の類書は存在していそう)。
     使える資料は大いに使う一方で、本書の趣旨に反するエピソードに対しては「それは騙りだね」と軽くいなすお手軽さはある(否定はしない。そう騙ることで何か真実を隠そうとしている、と含みは持たせるが)。
     まさに歴史は然様に作られていくものだということを図らずも本書が証明しているとも言える。

     なにが真実ということよりも、時空を超えて人の思いは面白いということなのかもしれない。
     その情念は歴史をも変えるほどに強いと、そんなことにも思いを馳せて読むなら、平安末期から鎌倉時代までを楽しく俯瞰できる良い歴史入門書になっている。

  • 面白かった。読みごたえもあった。
    小余綾さんは准教授ではなくて助教授なんですね。是非ともシリーズになってほしいと思いました。現代での登場人物が3人(4人かな)で現代に事件がない分、すっきりとしていて歴史ミステリに没頭できました。
    謎の解明についても、なるほどなるほど、と納得しながら読み進めました。
    それにしても、歴史に関する考察を語る人は、みな酒豪なのですね。あの薬剤師と助教授が蕎麦屋で一緒に酒を飲み、バーに移動してカクテルを飲みつつ、歴史を誰かに語るところを見てみたい、でも、ちょっと怖い。
    内容に納得しながら読んだものの、源平ですから登場人物が多く、中でも頼○とか義○とか、○盛とか、似た人名がたくさん出てきて、途中で系図を出してくれているので、そのページに付箋を貼ってことあるごとにそこを開きながら読みました。系図がもっと開きやすいところにあったらちょっと楽になったかな。
    もうちょっと経ったら、復習の意味でもう一回読み直そうと思います。そうしたら人名(源平の系図・人間関係)が頭の中で整理されてスッキリするような気がします。
    助教授と薬剤師の邂逅を切に願います。(神社の境内ですれ違うだけでも満足です)

  •  うまくなったって言うのも変だけど、無理にサスペンスにしない方が。
     歴史の謎解きは、とてもすっきり。

  • 非常に面白かった、大満足。個人的にこの数年、鎌倉や京都福原屋島など源平の古戦場などを巡ったりして色々と考えてたのをほぼまとめてくれている感じ。ところどころ、違う感想や感情もあるが、おおよそ言わんとしていたモヤモヤもうまく表現してくれていてスッキリ爽やかな読了感。平家物語だけでなく、保元の乱、崇徳天皇のごちゃごちゃから鎌倉時代終焉まで効果的でわかりやすい系図と年表、箇条書きなどもあり誰でも簡単に理解できる仕掛けになっている。読み応えのある上質の歴史ミステリ。2019年私的ベスト3にランクイン必至であろう。

  • 2019/07/01読了

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治薬科大学卒業。『QED 百人一首の呪』で第9回メフィスト賞を受賞し、デビュー。歴史ミステリを精力的に書きつづけている。講談社ノベルス最長の人気シリーズQEDシリーズをはじめ、著作多数。近著に『源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義』『QED 憂曇華の時』『古事記異聞 鬼統べる国、大和出雲』など。

「2021年 『オロチの郷、奥出雲 古事記異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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