お江戸けもの医 毛玉堂

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 198
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065164648

作品紹介・あらすじ

谷中感応寺の境内に居を構える、けもの専門の養生所<毛玉堂>。しっかりもののお美津と、腕は確かだが不愛想な凌雲のもとには、問題を抱えた動物たちが運ばれてくる。初夏のある日、お美津の友人であるお仙に押し切られるようにして、八歳の男児・善次の面倒を任されることになり――。

人も獣も、心を通わせるには、寄り添うことをあきらめちゃいけない。
思いやる人の温もりを描いた、江戸版“ドリトル先生”物語!

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代にも獣医がいたのか、とちょっと驚き。農業に欠かせない牛馬などの家畜を診る医師はいただろうが、この〈毛玉堂〉はペット専門。

    犬、馬、猫、兎…と様々な動物たちの困った行動や症状を医師の凌雲とその妻・美津が解いていく。
    動物は物が言えない分、様々なサインを出している。人にとっては困った状況でも動物たちも困っている。
    獣医師に取材をしただけに一見意外な繋がりのようでもなるほどと納得出来た。

    計算が出来る動物…この種明かしは聞いたことがあるが、改めて動物は人を見ているのだなと思う。
    動物たちが人を懸命に観察し訴えているのだから、人も動物と向き合わなければ。

    一方、凌雲と美津夫婦は医師とその助手としてはともかく、夫婦としてはぎこちない。美津は凌雲を慕っているようだが、何故か凌雲は一線を引いている感じ。
    そこに美津の友人・お仙にたのまれ預かった少年・善次が加わり家庭は更に複雑に…と思いきや、この善次が良いかすがいになってくれて家族のようになりかける。
    しかし今度は凌雲の小石川療養所時代の揉め事やら当時良い感じと噂されていた女助手の話やらが出て来て美津の胸をざわつかせる。

    この部分については凌雲がきちんと美津に話をすれば良かっただけのことではないのか?と拍子抜けするが、その方が盛り上がると思ったのかな。
    お仙のキャラクターも捌けているんだか、恋に振り回されているんだか良く分からないが賑やかで良い。
    絵師の鈴木春信も登場してお仙の恋を盛り立ててくれた。

    ちょっと物足りないところもあるが、サラッと読めて楽しめた。善次に幸あれ。

  • 江戸時代の動物病院…設定は面白い!
    今までそんな作品読んだことないし、動物…ワンコ飼ってるし、大好きだし…

    でもちょっとバタバタしてて、先生のキャラが今一つわかりにくかった(*_*)
    第二弾あるみたいですがどうしましょ…


  • 今は空前のペットブームですが、江戸時代の人も動物を思う気持ちは同じだったんだなと、心がほっこりするお話でした。
    ただ単に、動物の病気や怪我を治すお話なのかと思いきや、同じ病気でも、環境の変化によるものだったり、その原因を突き止めていくエピソードがとても興味深く、話に入っていきます。それに加えて、お美津や凌雪といった登場人物達の物語も凄く気になって面白かった。ただ、この作品は続編があるという前提で描かれたものだろうか?それなら問題ないのですが、続編がないのなら、凌雪の小石川養生所時代のエピソード、特にお絹とは一体どんな間柄だったのか、中途半端に終わったように思い、疑問が残ります。

  • 【収録作品】捨て子/そろばん馬/婿さま猫/禿げ兎/手放す
     ヒロイン美津の一途さと前向きな姿勢が好もしい。一方で凌雲は医師としての覚悟や自覚が足りていない、頭でっかちの優等生だったんだろうな。やっと地に足が着いたようで何より。

  • 江戸時代の動物病院「毛玉堂」
    もふもふかわいい動物達が出てくるミステリ系の一冊でした。

  • 時は江戸、そして舞台は動物の病院・毛玉堂。
    もともとは人間のお医者さんだった凌雲が、動物のお医者さんとして夫婦で毛玉堂を営む。
    奥さんの美津やその友人のお仙、そしてひょんなことから一緒に暮らし始めた善次。毛玉堂を訪れる動物の飼い主たちもみんないい人たちで読んでいてほんわかする。
    動物の可愛らしさも目に浮かぶ。
    凌雲夫婦と善次はこのまま一緒に暮らすもんだと思っていたから、最後はまさかの離れ離れになって驚いたけど、さて、続きはどうなるのだろう?
    初めて読んだ作家さんだったけどおもしろかった。

  • 江戸で夫婦で営むペット専門の動物病院の物語。獣医師である夫が変わった獣医師なため、動物にまつわる日常の謎や、動物だけでなく人間の子供まで預かる事態になる物語。
    動物は人間の言葉を話さないが、動物の行動や身体の様子で異常を感じることが大切だと改めて思った。
    動物は、人間の赤ちゃんが生まれて家に来ただけでも動物にとってはストレスになることを初めて知った。

  • 江戸の町の片隅で「けもの医」を開業する夫妻と動物と人との物語。獣医師への取材に基づいた動物の特性が物語のカギになっている仕掛け。凌雲先生のセリフに込められた思いはペットの飼い主にとって大切な言葉ばかりである。
    主人公の美津はやや出来すぎだが幼馴染仙のキャラクターが魅力的。それに比べて塩過ぎる凌雲先生の人物像が・・・さすがにもうちょっと魅力があってもいいのではないか。男性はみんなちょっと型通りかなぁ・・・と思ったら、てっきり男性だと思っていた著者が奥付で見たらまだ若い女性とわかり、なるほど・・・と思った。

    P31 極楽往生できる薬なんて、そんな都合の良い話はどこにもありゃしないさ。いかさまのほら話だよ。死ぬときはみんな、死ぬほど苦しんで死ぬものって決まっているんだ。

    P118 賢いはずの人間様だって、いくら叱られても同じことを繰り返すやつがごまんといるだろう。己が苛立った時だけ動物の脳味噌を買いかぶるなんて、人の勝手だ。

    P145 驚いて心が乱れたときに、全く関係のない別のものを攻撃するのは、猫にはよくある話だ。

    P228 何より動物の攻撃に気をつけなくてはならないのは、押さえつけていた手を話す時だ。家をしっかり閉じ切ってから、動物の真正面に、一番目立つ逃げ道を空けてやる。手を離すと同時に分かりやすい逃げ道を作ってやる。そうすれば、どれほど痛い手技をした後でも、動物が仕返しのように襲い掛かってくることはまずない。

  • お江戸の獣医さん「毛玉堂」を舞台にした物語。
    タイムラインで見かけて気になっていた本です。表紙がもふもふでかわいい。作中出てくる白太郎、黒太郎、茶太郎の子犬の頃かな?
    動物の起こす不可思議な行動は必ず何か理由があってのことで、獣医の観点からそれを解明していくという、ミステリでもありました。
    凌雲先生の妻のお美津さんが底抜けにいい子だった。動物たちや小さい子供に向ける視線が優しくて温かい気持ちになります。凌雲先生も不愛想ながら、時々見せる優しさにきゅんとくる。しかし、トラブルメーカーで押しの強いお仙は友達になりたくないタイプだな。

  • お江戸の獣医さんのお話。
    無愛想な獣医さん綾雲と、妻のお美津、訳ありの子供善次、患畜の短編集。
    正直、表紙のワンコのかわいさに惹かれて衝動的に読んだけれど、すごくいいお話!
    いつの時代でもペットはとても大切な家族だし、失えばペットロスになる。

    すごくよかっただけに、綾雲とお絹の小石川時代の詳細とか、善次の生い立ちとか、もうちょっと突っ込んだエピソードがほしかった…!
    もっと彼らのことを知りたいくらいにいい本だったとおもいます!

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『幽霊長屋、お貸しします(一)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泉ゆたかの作品

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