紙の城 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 141
感想 : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065165355

作品紹介・あらすじ

新聞、本当になくなってもいいですか?

躍進著しいIT企業インアクティブによる、東洋新聞買収宣告。マスコミの寵児となった会長の驫木は、世論を味方に、役員会を切り崩しにかかる。“ウェブファースト“を掲げ、新聞の価値を根底から揺ぶる彼らが、本当に買おうとしているものは何か? 社会部デスク安芸と部下たちの、記者魂を賭けた死闘が始まる。

『傍流の記者』で直木賞候補となった著者だから描けた、メディアの裏側の熱き攻防!

情報化社会? 何を言ってやがんだ。本当の情報は
クリックすれば出てくるもんじゃないんだ。
本城の作品には、「情報」というものの深みを教えられる。
本作は「新聞社は生き残れるか」を人間ドラマに広げた秀作だ。
                      ――佐高 信

「朝日新聞」「産経新聞」「日経ビジネスオンライン」「サンデー毎日」「週刊朝日」「アサヒ芸能」「J-novel」ほか新聞25紙で紹介された話題沸騰の話題作!!

感想・レビュー・書評

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  • 読後、紙の城というタイトルの秀逸さがよくわかる小説。新聞の紙媒体はネット媒体から牙城を守れるかの攻防戦を描いている。

    私も新聞は数年前からネット派だが、どの媒体で読むかではなく、何を読むか(求めているか)が重要だと感じている。新聞には取材に基づいた事実の掲示と社会への発信を求めているのであって、素人の意見やまとめサイトのような記事は必要ないと思う。

    媒体を守るのではなく、優秀な記者を守りたいという思いからの守戦としたのは非常に共感でき、清々しい読後感となり得た。

  • スマホで何でも観れる世の中「紙の新聞」はこの世に必要ですか?

    私は必要と思っていますが新聞は取っていません。。

    大元は新聞記者が汗水流した情報がスマホに反映されるから。。
    全てがすべて利益になる「ネタ」はあり得ないが、新聞記者の「目」と「足」に
    勝てるものはないかなぁ~

    地方の新聞社がIT企業に買収される話が出回ったとき新聞記者がそれを阻止した
    方法とは?

    新聞記者の意地とプライドを掛けた戦いが始まった

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  • 新聞製作の裏側が見られた感じです。
    物語は、ネット対紙の新聞みたいな構図でしたが、時代は図らずも、ゴードンが目指した?ようにネットと新聞の融合になってきている気がします。(個人的には紙の新聞が好きですが)

  • 実際にありそうな 買収騒動

    「ありそうだなぁ」
    でも その先は極上のエンタメ

    キャラクターが みんな魅力的で ポジションは敵方でも イヤな気にさせない
    それはきっと 真剣に仕事に向かう人の姿は 観ていて気持ちがいいから

    熱さも クールさも それぞれで良い

    読後感も気持ち良く 満足 満足

  • 「情報とは何か」をキーに新聞は生き残れるかまでテーマを拡大したドラマになっている。ここで描かれる新聞の生き残り策が的を射ているとは思えない。けど、一次情報を収集するのには手間と時間が必要だよなぁ。これからの社会でそれを担うのはどこになるのだろう。

  •  紙ベースのニュース情報の必要性。これは出版業界にとっての紙ベース書籍の必要性以上に新聞社を左右する論点になっている。

     電子機器の中でもスマホが必須アイテムになった現代。書籍では紙ベースを支持する人はまだ一定数いるようだが、ニュース情報については……。

     作者は塩田武士と同じく新聞社勤務を経て作家に転身しているだけに、強い主張が見て取れた。
     塩田作品ほどエンタメ性は高くないが、本城作品のこの硬派な感じは好もしく思う。(2人の年齢の違いも大きな要因かも知れないが。)

  • 躍進著しいIT企業インアクティブによる、東洋新聞買収宣告。
    マスコミの寵児となった会長の驫木は、世論を味方に、役員会を切り崩しにかかる。
    “ウェブファースト“を掲げ、新聞の価値を根底から揺ぶる彼らが、本当に買おうとしているものは何か?
    社会部デスク安芸と部下たちの、記者魂を賭けた死闘が始まる。
    「傍流の記者」で直木賞候補となった著者だから描けた、メディアの裏側の熱き攻防!



    東洋新聞を手に入れようとするプロジェクトの中心になっているのは、元東洋新聞社社員で、苦学生だったころには販売店で新聞配達のアルバイトもしていた権藤。

    権藤は速報性という点において、朝夕に配られる紙媒体が敵うわけはないと考えており、現在の販売店や記者の数もかなりカットする計画を立てていた。
    そうやってコストをカットした上でウェブでの新しい紙面づくりをし客を集め、本業であるゲームサイト等に誘導するというビジネスモデルを考えてるのだ。

    それに対し、現場叩き上げのデスクである安芸を中心に、東洋新聞では「新聞」を守るために奔走するわけだが……、どう読んでも僕、乗っ取る側の考えの方が正しいとしか思えないんだよなあ。

    どんな業界であってもいつかは時代遅れになる。そこに例外はない。
    時代に合わせて変化していける業界が残っていくのであって、それ以外は自然に淘汰される。
    逆に、そうでなくては健全な社会とは言えない。

    僕は本屋だけれど、最近では紙の本よりも電子書籍を多く読んでいるし購入している。
    保管場所に困らないし、何百冊でも持ち歩けるということは、紙の本に対する圧倒的なアドバンテージだと思う。
    僕はこどものころからずっと親しんできた紙の本を愛しているけれど、それでも電子書籍の利便性には敵わない。
    プラットフォームが完全に整備されておらず、アイテム数においても紙の本に負けているから今一つ流行らないけれど、出版業界の優秀な人間(そんな人がいれば、だが)が本腰を入れて電子書籍市場を広げたいと考えたら、おそらく紙の本は簡単に駆逐される。
    少なくとも、紙の本は「嗜好品」として扱われ、書店は趣味の店になるだろう。
    でも、それでいいのだと思う。

    しかし本作の主人公たちにはそれがわからない。
    自分自身の生活(収入)を守りたいというわけでもなさそうなのに(もちろんそれもあるだろうけれど)、なぜか紙の新聞を守ろうと必死になっている。
    なんだろうね? 新聞は「文化」であってそれは未来に残さなければいけない、とか思っているのかな?
    それとも自分たちの仕事に対する誇りとか矜持を守りたいのかな?

    でも、ウェブ上の新聞だって半世紀続ければ文化になるし、どこで何の仕事をしたって誇りも矜持も持てると思うけどね。

    しかも、その乗っ取りに対して真っ当な方法で反撃するのではなく、相手の過去のスキャンダルをスクープして何とかしようという……姑息すぎるだろ。
    で、結局相手の自爆(インサイダーがバレる)で解決するという。マジか。

    ストーリー的にはかなり面白かったのだけれど、主人公側に感情移入しきれなかったのが残念でした。

  • 買収劇の決着までの話。これをきっかけに何かが変わっていくのかと思いきや、あんまり変わってないような。ニュースメディアと思わせてただのキュレーションメディアばっかりの昨今、ちゃんと自ら取材する記者をかかえているってのは重要だなぁと。

  • この本城という作家には、初めて手を出した、と思う。産経新聞の出身で野球に取材した小説で出てきた・・らしい。
    本作は、新聞社を飲み込もうとするIT経営者に対抗する記者たちの奮闘や意気地を疾走感をもって描いたもの。安芸という主人公語り手の社会部ボスなのだが、難しい陰影はつけず、カラっとしているところが現代風の小説だ。

  • デジタル化の恩恵は計り知れないが、紙の役割に改めて気づかされる。新聞、書籍、手帳、Paperは人の思考を深める助けとなる大きな役割を果たしている、と改めて認識。

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著者プロフィール

1965年、神奈川県生まれ。明治学院大学卒業。産経新聞社入社後、スポーツ紙記者として活躍。2009年『ノーバディノウズ』が松本清張賞候補となりデビュー。2017年『ミッドナイト・ジャーナル』で吉川英治文学新人賞を受賞。2018年『傍流の記者』で直木三十五賞候補。著書に『四十過ぎたら出世が仕事』(祥伝社刊)『友を待つ』(祥伝社文庫)など多数。

「2023年 『あかり野牧場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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