彗星図書館

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065168165

作品紹介・あらすじ

生まれ変わっても、本に埋もれていたい。

女王の図書館は、天体をめぐりめぐってあなたのもとへ。

《この彗星図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(彗星図書館・司書)》

小説の女王・皆川博子が耽溺した、永遠に残したい本の数々。
『辺境図書館』に続く、完全保存版ブックガイド。(短編も一本収蔵)

感想・レビュー・書評

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  • 恥ずかしながら著者が紹介している本をほとんど読んでいない。けれども内容は興味深かった。書評にとどまらず、著者の人生論、物語論がおもしろく、諸事情に対する自由闊達な意見が心地よい。戦争経験者としての、戦争反対を貫く姿勢は説得力がある。次はこの「彗星図書館」の蔵書を読もう。

  • ・皆川博子の本と、皆川博子に影響を与えた本だけで、一生生きていける。
    それが叶わないから、回り道しているのが、私の読書遍歴。
    ・ただのブック・ガイド・ブックではない。
    ブッキッシュな作家にとっては、読書遍歴を語ることが自分を語ることだ。
    チャーミングな含羞の人にとっては、本を語ることで自分を語りやすくなるのだろう。
    それが短編小説にまで洗練された例もあり。
    ・学生運動に参加するにせよしないにせよ、何らかの形で影響を受けた作家は、「強い」。
    むしろ運動の真ん中にいた人よりは、傍流にいて物思いを熟成させた人において。
    高畑勲にせよ宮崎駿にせよ、大江にせよ中上にせよ龍にせよ春樹にせよ。
    なんとATGを介して皆川博子もその系列に加わってくるのだ。
    という驚きを齎してくれた、重要な一篇。

    レメディオス・バロ イバン・レピラ フリオ・リャマサーレス ハンス・エーリヒ・ノサック ミハル・アイヴァス イジー・クラトフヴィル プロスペル・メリメ エーリヒ・ケストナー 宇月原晴明 ジョルジュ・ペレック フリードリヒ・デュレンマット 根本茂男 塚本邦雄 ウラジーミル・ソローキン 田宮虎彦 ショーン・タン ブアレム・サンサル 大濱普美子 デルフィーヌ・ド・ヴィガン 福田善之 桐山襲 モーリス・メーテルリンク マリ=クレール・ブレ 真継伸彦 坂本一亀 田邊園子 矢川澄子 ゲオルク・トラークル 東雅夫 清水邦夫 皆川博子

  • 『辺境図書館』に続く、皆川博子館長による読書案内の第二弾。未読の本はもちろん既に読んだものでも、皆川氏の引き出しから取り出された数々の記憶とあわせて語られる物語は実に魅惑的。国も時代も異なる『黄色い雨』(J・リャマサーレス)と『不穏の書』(F・ペソアに響き合うものを感じる、という指摘に改めて読み返したくなる。たおやかな語り口の中にある鋭い切れ味、時おり飛び出す茶目っ気も素敵で、ソローキンの『テルリア』を「くそ面白い本」と紹介しているのを読んだ時には何やら嬉しくて声が出てしまった。造本と装丁に前回同様ほれぼれする。(初出2017~2019)

    <メモ>大濱普美子『十四番線上のハレルヤ』(国書刊行会)

  • 辺境とか彗星とか好きさ、、、

    講談社のPR(版元ドットコム)
    生まれ変わっても、本に埋もれていたい。

    女王の図書館は、天体をめぐりめぐってあなたのもとへ。

    《この彗星図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
    そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(彗星図書館・司書)》

    小説の女王・皆川博子が耽溺した、永遠に残したい本の数々。
    『辺境図書館』に続く、完全保存版ブックガイド。(短編も一本収蔵)
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065168165

  • 『辺境図書館』の続編。今回も読みたい本満載すぎて、このあとどこから手をつけていいかわからない(笑)辺境~はのっけからドノソで始まったけど、今回はバロ!レメディオス・バロはずいぶん昔に(調べたら1999年だった…)伊勢丹美術館でバロ展を見て以来大好きで、かなりの断捨離をしたこの1年でもバロの図録はどうしても手放せませんでした。だって画集とか日本で出てないんですよ。画集ではなくこの『夢魔のレシピ』が出ていることは知ってたのだけど、欲しいのは画集!と思って読んでいませんでしたが、改めてやっぱり読んでみたくなりました。

    あと今回これは是非とも読まねばと思ったのはなんといってもソローキン!『青い脂』だけでもお腹いっぱいだったけど、なんかまだまだすごいもの書いてそう。

    『デルフィーヌの友情』という本、読んでないはずなのになぜかあらすじを知っていて「???」となったのだけど、あれでした、映画化されたのを見ていたのでした。ロマン・ポランスキーの『告白小説、その結末』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B07HQWDYPD

    つい最近のことでも私はこうして忘れがちなのでブクログはほんと備忘録なんですけど、皆川さんの記憶力の良さには脱帽。矢川澄子の章で『唐版 風の又三郎』の歌の歌詞が矢川さんの作詞だとあったのは知らなかったので驚きました。

    文中皆川さんが忘れてしまったと書かれていた部分は「ふる里すてて巷に住めば あの子も恋し この子も恋し あの子の胸に この子の胸に~」でした(戯曲引っ張り出して調べた)「一かけ二かけ三かけて 四かけて五かけて色仕掛け 駆け落ちしかけてちょい待った はるか向うを眺むれば 十七八のねえさんが 髪ふり乱して駆けてくる」

    本についてとは別に、「ねえや」が現代では差別語になっていることなどに憤られているのは共感。最近自分も、ふつうに使っている言葉がパソコンで変換できず、なにかと思えばどうやら差別語指定だとわかりビックリしたことが何度かあり。皆川さんも憤られているように、そんな言葉狩りで差別自体がなくなるわけでもないし、差別のあった過去自体を隠蔽できるわけもない。その時代の空気を伝えるためには、その言葉がやはり必要な場合がある。文部省のとんちきさについてもお怒りになられており、日本語教育のありかたを問われています。


    ※収録(★既読)
    026『夢魔のレシピ』とレメディオス・バロ
    027『深い穴に落ちてしまった』とイバン・レピラ
    028『黄色い雨』とフリオ・リャマサーレス★
    029『死神とのインタビュー』とハンス・エーリヒ・ノサック★
    030『もうひとつの街』とミハル・アイヴァス
    031『約束』とイジー・クラトフヴィル
    032「マテオ・ファルコーネ」とプロスペル・メリメ 『ファービアン』とエーリヒ・ケストナー
    033『安徳天皇漂海記』と宇月原晴明
    034『傭兵隊長』『美術愛好家の陳列室』とジョルジュ・ペレック
    035「故障」とフリードリヒ・デュレンマット★
    036『柾它希家の人々』と根本茂男
    037『詞華美術館』と塚本邦雄
    038『テルリア』とウラジミール・ソローキン
    039「足摺岬」と田宮虎彦
    040『The ARRIVAL』とショーン・タン 『2084 世界の終わり』とブアレム・サンサル
    041『十四番線上のハレルヤ』と大濱普美子
    042『デルフィーヌの友情』とデルフィーヌ・ド・ヴィガン
    043「真田風雲録」と福田善之 「スターバト・マーテル」と桐山襲
    044「群盲」「モンナ・ヴァンナ」とモーリス・メーテルリンク
    045『ある受難の終り』とマリ=クレール・ブレ
    046『鮫』と真継伸彦
    047『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』と田邊園子
    048『架空の庭』『いづくへか』と矢川澄子
    049『トラークル全集』とゲオルク・トラークル
    050『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション』と東雅夫
    111「新宿薔薇戦争 清水邦夫『ぼくらが非情の大河をくだる時――新宿薔薇戦争――』を再読しつつ」皆川博子

  • 内容とあんまり関係ないですが「デスノート」「新⭐︎感線」とかがサラッと出てくる1930年生まれって格好良いなぁと思いました。そんな大人になりたいです。
    あとこの本は装丁が素敵なので是非紙で手元に置くべき一冊。

  • ま〜〜〜〜本当に多くの書物を読んでいらっしゃる…
    それも今となっては手に入りにくい古書ばかりかと思いきや、現代の最先々端をゆくような近著も読んでいらっしゃる…
    そりゃあスラムダンクも出てくるて

  • 26の単元から構成された書評集だと思って読み始めたが、異色の内容で驚いた.それにしても著者は多くの本を読んで、その内容をかなり覚えている.凄いことだ.取り上げられている本は読んだことがあるものは全くなかったが、書評に入る前段階での呟きが面白くて、あれ? 何の書評だったかなと振り返ること頻り.最後の部分で自分のこれまでの経歴を振り返っているが、ある意味 波瀾万丈の生き方だろう.尊敬する!

  • 『辺境図書館』に比べると、セレクトが更にマニアックで皆川さんのエッセイ要素が濃くなっている。
    しかしこのお年でこの文体……『開かせていただき光栄です』を読んだ時も思ったけれど、本当にすごい。読みやすく美しく、軽妙なのに慎ましく、知的。さすがです。
    好みとしては前作に軍配が上がるものの、この本を読まなければ絶対に出会わなかったであろう作者や作品に興味を持ち、楽しませてもらったのは前作同様。
    容易に手に入ったり、読了できたりする読書案内ではないので気分に合わせて読み返し、新しい本に出会っていきたい。
    本書で知って無性に気になり取り寄せた『深い穴に落ちてしまった』、すごく良かった……。

  • 皆川さんの著作を初めて読んだのが、約二年前の前作『辺境図書館』。それから随分と追いかけてきたつもりだけど、まだまだ未読があるのは、幸せなんだろう。
    そして今回、著者が薦める幾つもの本も未読リストに加えられた。さぁ何作読めるかなぁ。
    それにしても、ところどころに記された砕けた文体にすごく驚いた。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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