- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065168578
作品紹介・あらすじ
真珠湾攻撃、太平洋戦争開戦の2年前の1939年、満州国とソビエト連邦の国境地帯で発生した「ノモンハン事件」。
見渡す限りの草原地帯で、関東軍とソビエト軍が大規模な軍事衝突に発展、双方あわせて4万5000人以上の犠牲を出した。
関東軍を率いたのは、弱冠37歳の青年参謀・辻政信と、その上司・服部卓四郎。
大本営や昭和天皇が無謀な挑発を厳しく戒めるのをよそに、「寄らば斬る」と大見得を切った辻によって、日本軍は想定外の「戦争」へと突入していった――。
事件から80年、いまも装甲車や塹壕が放置され、人骨が散在するノモンハンの現場を徹底調査、さらにアメリカに残る旧軍人らのインタビューテープを発掘して、事件の深層を立体的に浮かび上がらせた同名番組を書籍化。
感想・レビュー・書評
-
ノモンハン事件という、まるで1日2日に起きたことのような響きに惑わされていたけれども、これはそんな軽い物じゃない。
司馬遼太郎が坂の上の雲で描いた戦争が、ほとんどそのまま展開されている。日露戦争から30年以上が過ぎているというのに、圧倒的に足りない火力で、昼は塹壕にこもり、日が暮れてから白兵で夜襲をかけるという戦法も、日露戦争そのものである。この戦争のことを調べていたから、あのような描き方になったんだろうか。
辻政信という人物を、どう評価したものか、この一冊では判断がつかない。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノモンハン関連の本は結構読んでるつもりなので、内容はほぼ理解していたが、テレビの力かNHKの力か、新たな一次証言を拾えているのは素晴らしい。
辻正信の言動やまわりの証言を読んでいるといつも思うのは、頭の良いこと・自分を律する力があること・滅私奉公の精神が横溢していること、イコール、リーダーの資質とは全く違う、ということ。人間性は素晴らしい方だったのかもしれないが、絶対にリーダーにすべき人物ではない。 -
日本企業の問題点をそのまま映し出しているかのようであり、非常に興味深い。
-
ノモンハン事件っていまいち掴みづらい。
もはや、事件レベルではない。
さらにいうと、紛争こえてるし。
ルポを、見てさらにそれを認識した。
張鼓峰事件とのつながりとかがもっと有れば、わかりやすいのか?
んー、勉強不足である。 -
太平洋戦争とノモンハン事件の結びつきがよく分かった。つまるところ、敵情の過信と戦力の逐次投入が、権力者によって実施されたことが不幸の始まり。絶対悪がたくさんいると思う一方、そうさせた空気は、当該者だけでは作れないだろう。マスコミなどの論調は、果たして正しかったのか、疑問に思う。
命令に従い、命を落とした人々は、本当に気の毒に思う。しかもそれが、天皇でなく一部の参謀の自己保身から出た命令なら尚更。そして、近畿財務局の自殺の件に触れていることで、形は変われど現代でも似たようなことが起きてると実感させられた。 -
偏に第一次世界大戦、第二次世界大戦といっても両手で数えきれないほどの戦いがある。その中の一つの戦争、ノモンハン戦争の理由や舞台裏が書かれている本。
恥ずかしながら聞いたことはあるが、詳しい内容まではこの本を読むまでよく知らなかった。なので、今回知る機会を与えてくれた本書には深く感謝したい。
辻政信という人物がカギとなって起こした戦争。もしこの戦争の教訓を得ていたら、ガダルカナル島の戦争も真珠湾攻撃もなかったのではないだろうか?家族や村の人たちが知る辻政信と軍関係者が知る辻政信、どちらを信じていいかは戦争書物が焼かれたり、保身を守るために嘘をつく国や軍関係者のためにどちらもわからない。でも、数人の軍関係者の名誉のため評価のためだけに何万人という日本軍やロシア軍、敵軍が戦死、死亡したのは事実である。今は亡き私の祖父(満州、ビルマの戦い)に、もう少し突っ込んで戦争の話を聞いておけばよかったと後悔するばかりだ。彼は、戦争の話はしたくなさそうだったが、戦争の悲劇を次に繋ぐためにももっと話が聞きたかった。
とにかく、もっともっとノモンハン戦争やガダルカナル島の戦い、戦争に関しての書物をもっと読みたいと思わせてくれた本。 -
ノモンハン事件に高所と末端の両面から迫ったルポタージュです。
指示に従い善戦したうえでやむを得ず撤退したにも関わらず責任を問われて自決を強要された井置栄一氏のような人物や、生存した兵隊たちが辛い記憶から重い口をなかなか開かないのに対して、多くの犠牲者を出して責任を取るべきだった軍の上層部たちの多くがのうのうと生き延びて、その罪への意識も低く責任転嫁に汲々としていた事実に暗澹としました。
筆者が述べるように、この戦争には後の太平洋戦争での敗因が凝縮されているだけでなく、現在の政府や会社や家庭など、あらゆる組織で起こりうる悲劇が内包されており、戦争の有無にかかわらず社会に生きる誰にとっても、ひとごとで済まされるものではないでしょう。
「ノモンハン事件」という呼称はこの出来事を矮小化しているようにも感じます。 -
これはやばい本
みずほの本読んだ後にこれ読んだらくらっとくる -
丁寧な取材に基づいた内容と思う。現場に丸投げし、現場も暴走したのがノモンハン事件。何故当時の軍人は極端に視野が狭いのか。戦術レベルの思考しか出来ず、戦略レベル、政略レベルでものを考えられないのは教育や社会レベルに起因するのか。現代でもそれは当てはまるように感じる。
-
上層部の無責任ぶり、部局の利益調整を優先して大局を見失う癖、臭いものに蓋をする慣習etc、ノモンハンの事例には日本型組織の欠陥が凝縮されているが、そのDNAは今日に脈々と受け継がれてもいる。歴史から学ぶのが苦手な日本人だからこそ、特番であったり、一般向けとして手に取りやすい新書といった形での啓発は、意義ある仕事と思う。類書との差異としては、辻政信の(遺族への取材を通した)人間としての側面の紹介が特徴的。フラットな取材姿勢や、客観的な検証自体こそが、本質に迫る最適な手段という主張が感じられ、読んでいて安心感があった。作家半藤一利からの引用として絶対悪(辻を指す)という言葉が出てくるが、個人的にその言葉を用いるとしたら、ノモンハンの教訓を活かせない事、と思っている。
著者プロフィール
田中雄一の作品





