ノモンハン 責任なき戦い (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065168578

作品紹介・あらすじ

真珠湾攻撃、太平洋戦争開戦の2年前の1939年、満州国とソビエト連邦の国境地帯で発生した「ノモンハン事件」。
見渡す限りの草原地帯で、関東軍とソビエト軍が大規模な軍事衝突に発展、双方あわせて4万5000人以上の犠牲を出した。
関東軍を率いたのは、弱冠37歳の青年参謀・辻政信と、その上司・服部卓四郎。
大本営や昭和天皇が無謀な挑発を厳しく戒めるのをよそに、「寄らば斬る」と大見得を切った辻によって、日本軍は想定外の「戦争」へと突入していった――。
事件から80年、いまも装甲車や塹壕が放置され、人骨が散在するノモンハンの現場を徹底調査、さらにアメリカに残る旧軍人らのインタビューテープを発掘して、事件の深層を立体的に浮かび上がらせた同名番組を書籍化。

感想・レビュー・書評

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  • ノモンハン関連の本は結構読んでるつもりなので、内容はほぼ理解していたが、テレビの力かNHKの力か、新たな一次証言を拾えているのは素晴らしい。
    辻正信の言動やまわりの証言を読んでいるといつも思うのは、頭の良いこと・自分を律する力があること・滅私奉公の精神が横溢していること、イコール、リーダーの資質とは全く違う、ということ。人間性は素晴らしい方だったのかもしれないが、絶対にリーダーにすべき人物ではない。

  • 偏に第一次世界大戦、第二次世界大戦といっても両手で数えきれないほどの戦いがある。その中の一つの戦争、ノモンハン戦争の理由や舞台裏が書かれている本。
    恥ずかしながら聞いたことはあるが、詳しい内容まではこの本を読むまでよく知らなかった。なので、今回知る機会を与えてくれた本書には深く感謝したい。
    辻政信という人物がカギとなって起こした戦争。もしこの戦争の教訓を得ていたら、ガダルカナル島の戦争も真珠湾攻撃もなかったのではないだろうか?家族や村の人たちが知る辻政信と軍関係者が知る辻政信、どちらを信じていいかは戦争書物が焼かれたり、保身を守るために嘘をつく国や軍関係者のためにどちらもわからない。でも、数人の軍関係者の名誉のため評価のためだけに何万人という日本軍やロシア軍、敵軍が戦死、死亡したのは事実である。今は亡き私の祖父(満州、ビルマの戦い)に、もう少し突っ込んで戦争の話を聞いておけばよかったと後悔するばかりだ。彼は、戦争の話はしたくなさそうだったが、戦争の悲劇を次に繋ぐためにももっと話が聞きたかった。
    とにかく、もっともっとノモンハン戦争やガダルカナル島の戦い、戦争に関しての書物をもっと読みたいと思わせてくれた本。

  • ノモンハン事件に高所と末端の両面から迫ったルポタージュです。

    指示に従い善戦したうえでやむを得ず撤退したにも関わらず責任を問われて自決を強要された井置栄一氏のような人物や、生存した兵隊たちが辛い記憶から重い口をなかなか開かないのに対して、多くの犠牲者を出して責任を取るべきだった軍の上層部たちの多くがのうのうと生き延びて、その罪への意識も低く責任転嫁に汲々としていた事実に暗澹としました。

    筆者が述べるように、この戦争には後の太平洋戦争での敗因が凝縮されているだけでなく、現在の政府や会社や家庭など、あらゆる組織で起こりうる悲劇が内包されており、戦争の有無にかかわらず社会に生きる誰にとっても、ひとごとで済まされるものではないでしょう。

    「ノモンハン事件」という呼称はこの出来事を矮小化しているようにも感じます。

  • ノモンハン事件という、まるで1日2日に起きたことのような響きに惑わされていたけれども、これはそんな軽い物じゃない。

    司馬遼太郎が坂の上の雲で描いた戦争が、ほとんどそのまま展開されている。日露戦争から30年以上が過ぎているというのに、圧倒的に足りない火力で、昼は塹壕にこもり、日が暮れてから白兵で夜襲をかけるという戦法も、日露戦争そのものである。この戦争のことを調べていたから、あのような描き方になったんだろうか。

    辻政信という人物を、どう評価したものか、この一冊では判断がつかない。

  • これはやばい本
    みずほの本読んだ後にこれ読んだらくらっとくる

  • 丁寧な取材に基づいた内容と思う。現場に丸投げし、現場も暴走したのがノモンハン事件。何故当時の軍人は極端に視野が狭いのか。戦術レベルの思考しか出来ず、戦略レベル、政略レベルでものを考えられないのは教育や社会レベルに起因するのか。現代でもそれは当てはまるように感じる。

  • 上層部の無責任ぶり、部局の利益調整を優先して大局を見失う癖、臭いものに蓋をする慣習etc、ノモンハンの事例には日本型組織の欠陥が凝縮されているが、そのDNAは今日に脈々と受け継がれてもいる。歴史から学ぶのが苦手な日本人だからこそ、特番であったり、一般向けとして手に取りやすい新書といった形での啓発は、意義ある仕事と思う。類書との差異としては、辻政信の(遺族への取材を通した)人間としての側面の紹介が特徴的。フラットな取材姿勢や、客観的な検証自体こそが、本質に迫る最適な手段という主張が感じられ、読んでいて安心感があった。作家半藤一利からの引用として絶対悪(辻を指す)という言葉が出てくるが、個人的にその言葉を用いるとしたら、ノモンハンの教訓を活かせない事、と思っている。

  • ノモンハン事件の実相をえぐる、とまでは行かないが、日本軍の様々なレベルの人がどう関与して紛争がどう推移していったのかが分かる。元々がNHKの番組のための取材ということで、当事者の音声記録に重きを置いているところが目新しい。こうしてみると、軍幹部には太平洋戦争で戦死することなく戦後も結構生きた人が多いなと思う。

  • 読み進めていくと、呆れちゃうし絶望的な気持ちしか起こらない。誰も責任を取ろうとせず、必死に戦った現場の人間だけが詰め腹を切らされていく。上は我関せずだし、逃げ出す人間までいる。これが巨大組織ってものなんだろうか。現在の政治状況もまるで同じだ。教育改革の頓挫も「誰のせいでもない」ときたもんだ。
    軍事的には、近代戦というものが理解できていなかったわけで、これは第一次大戦に参加しなかったのが原因なんだろうね。近代戦は装備の質と物量がモノを言う。信念では大砲は防げないんだ。

  • 父はノモンハンの生き残りだった。一気に読んだ。特に始めの現地取材やロシアのアーカイブの部分は興味深く読んだ。未だに言い訳がましい主張や本が出る。父も含め兵士は一銭五厘で集められた。替えはいくらでもいると頻繁に鉄拳制裁を受けるなど酷い軍隊生活を語っていた。辻政信など家族に取材したのはいいが、敗戦後逃げまわり、国会議員にまでなったのはどうにも納得できない。

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著者プロフィール

1979年生まれ、大阪府出身。2005年、ディレクターとしてNHK入局。釧路放送局、報道局社会番組部、国際番組部、大型企画開発センターを経て、2018年から大阪放送局報道部所属。NHKスペシャル「北方領土 解決の道はあるのか」、ウクライナ紛争をテーマにした「そしてテレビは”戦争”を煽った」など、ロシア関連の番組を多数制作。
2017年よりNHKスペシャル「731部隊の真実」「樺太地上戦」など戦争関連の番組にも携わる。とくに731部隊の取材ではロシアに残されたハバロフスク裁判の音声記録を独自に発掘、入手した。

「2019年 『ノモンハン 責任なき戦い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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