ロボ・サピエンス前史(下) (ワイドKC)

著者 :
  • 講談社
3.66
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本棚登録 : 206
感想 : 16
  • Amazon.co.jp ・マンガ (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065168875

作品紹介・あらすじ

100年。それは、ヒトにとっては一生、ロボットにとっては一瞬。ヒトの依頼に応え続ける「自由ロボット」が抱える過去、半永久的に稼働し続けられる超長期耐用ロボット「時間航行者」に与えられた秘密の任務、完遂するのに25万年かかるミッションを与えられた独りのロボット……。これは、人類とロボットが、いずれ迎えるかもしれない果ての果ての未来の、一つのカタチ。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年「このマンガがすごい!オトコ編2位」なので紐解いて見た。題名は、「サピエンス全史」をもじっているのは明らか。つまり、長い長い人類・前史の後に急速に人類正史が始まって終わる。そして長い長いロボ・サピエンス前史が始まるのだろう、という作品なのだろう。

    普通のSF小説にあるように、人類VSロボットの歴史は、ここでは描かれない。おそらく、ほとんど最初の数十年間でそれは終わったからだろう。最初から人類とロボットは共存している。人類とロボットの結婚もいつか許されている。それでも、人類は衰退していき、メンテナンスすれば永遠の生命と過酷な環境での生存と情報保持を能力として持つロボットは、生き残る。21世紀に起きた原発事故の後に原子力管理の完遂に25万年かかるロボットの行末、人類の依頼に応え続ける「自由ロボット」の抱え続けた情報の行方。それらはほとんど「死」いや「詩」である。

    「万葉集」はこの作品と関係ないけれども、私は1300年前に歌われた一つの歌を思い出した。こういう「想い」が、おそらく25万年先までの射程を持っている、と確信できた。そういう作品である。


    父母が 頭かきなで 幸あれて 言ひし言葉ぜ 忘れかねつる(防人の歌)

  • アンドロイドは人間の生の有限性からは解き放たれた存在。老いもしないし、死にもしない。では彼らにとっての幸せとは何か。

    放射能が安全値になるまでオンカロの管理を任せられた恩田カロ子。調査旅行中に宇宙船が隕石と衝突し、宇宙空間に投げ出されたトビーとクロエ。持ち主と永遠に愛し合うアンドロイド。

    元来感情のない彼らの、ドライな世界が、デザイン的というかシャープなタッチで淡々と描かれている。しかしふれあうこと、見つめあうこと、抱き合うこと、そうしたアンドロイドとしては単なる動作に過ぎない行為の中から、次第に何か感情の芽生えのようなものが現れてくる。

    この感情の芽生えこそが、作者が「前史」と名付けたものだったのではなかろうか。不思議なポエジーが漂う作品である。

  • 【あらすじ】
    100年。それは、ヒトにとっては一生、ロボットにとっては一瞬。ヒトの依頼に応え続ける「自由ロボット」が抱える過去、半永久的に稼働し続けられる超長期耐用ロボット「時間航行者」に与えられた秘密の任務、完遂するのに25万年かかるミッションを与えられた独りのロボット……。これは、人類とロボットが、いずれ迎えるかもしれない果ての果ての未来の、一つのカタチ。

    数十万年、数百万年という単位で物事を考えると、今自分がやっている仕事って何の意味があるんだろうと思ってしまいます。一方で、自分が今積み重ねていることがどこかの未来に繋がっていくことも事実。足元の数年と数百万年後を2つ並べて比較すると全く繋がってないように感じますが、実は繋がってる。不思議ですよね〜。
    その長い時間の過程をずっと観察できる存在になる可能性があるのがロボットで、本作品はそのような長期間稼働可能なロボットが主人公?です。人類が変わっていってもずっと変わらずに任務を全うするロボットたちが少し悲しいです。

  • ⒊11の後、どこでだったか、原子力発電所の廃棄物を処理するための対策はどうすればいいかという話を読んだことがある。
    埋めるとか、宇宙に廃棄するとかいうのに並んで、
    宗教を作って、司祭に守らせるというのがあって、すごいと思ったことがある。何世代もの間、それを(廃棄物)を守っていくには、組織が必要で、しかも信心レベルの必ずやる意志が必要という話。同じものを読んだのかな、それとも別々に発想したんだろうか。ちょっと気になる。

  •  壮大な時が過ぎてとうとう人類は猿同然にまで退化してしまい、ロボットが未来を担うようになる。安倍総理やトランプ大統領が幅を利かせている現在そうなっても全く不思議ではない。そんな静寂に包まれた未来に感傷的な気持ちになる。

  • 人間にとって途方もない時間の経過はこうも空虚なものなのか…

    ロボットにとって時間とはなんだろうか…

    手塚治虫の火の鳥を読んだときの読後感を味わいました。

  • 非常にいい。いろんなものを想起させられる。ロビタ、稲垣足穂…

  • 現在の自分達とは全く異なる時間の感覚が流れている世界観がおもしろかった。上巻では近未来だったキャラクターたちでさえみんな古くなっていく描写がさえてた。

  • 味のあるイラストでシンギュラリティの世界を描いた作品。
    上巻で繋がっていないように見えて繋がっていたストーリーから、時を経て人類が居なくなった後のディストピアを描いた下巻。

    サピエンス全史をまだ読んでいないので内容的にリンクしているのかどうかはわからないが、博士の言った「ごらんなさい5万年の進化の果てを」はこの作品の終末を物語っているようにも思える。時代は繰り返し、人間が無くなった後に新人類のような生物がオンカロに来て終わる。

    ロボットにとっての人権や幸せとは、死とは何か、そういった人情的な一面がよく出てくる。各々がプログラムで動く中、最期に近付いたロボット達の選択に人間味を感じる。

  • 人間が進化したロボットたちに見限られてしまったのが切なかったです。
    人間が作った自分たちを生かし続けることは、人類の存続として広い意味では合理的な行動ですが、戦争で退化してしまった人間をこうもあっさり切り捨ててしまうのか…。人間も自分たちがこうなることを予想してプログラムしないでしょうし、人間の弱さをどうAIに教えていったらいいのでしょう?とてもむずかしい問題ですね。
    こうした問題を感じたお話でしたが、私もロボットには幸せになってほしいです。彼らにそのように感じる心は存在しないはず(遥か昔に学習した価値基準で善いと判断しただけ)なのですが、なぜかそう思います。

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著者プロフィール

1961年生まれ。2000年「エンリケ小林のエルドラド」(青林工藝舎)でアックスマンガ新人賞佳作を受賞しデビュー。2008年、『トロイメライ』(青林工藝舎)で手塚治虫文化賞新生賞を受賞。著書に『九月十月』(小学館)『ロボ・サピエンス全史』(講談社)など。

「2019年 『片岡義男COMIC SHOW』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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