ロス男

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 86
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065170342

作品紹介・あらすじ

生まれたときからロス(損)している世代と言われているけれど、
そろそろ本当の自分の人生を起動したいーー。

40歳、フリーランスのライター、正規雇用経験なし、未婚。
たった一人の肉親である母を亡くしてから、漠然とした喪失感を抱えていた。
ある日、偶然再会した元同僚の「死ぬまでにやりたい10のこと」リストの作成を手伝ってから、
少しずつ世界が変わり始める。
--「ロスジェネ世代」と言われた自分たちは、いったい何を「ロス」してしまったのだろうか。

すべての人生を肯定する、注目若手作家の最新書き下ろし!

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りた本。ロスジェネ世代の主人公の吉井君は40歳。本当の自分を探し求めているが今はライターの請負業。新卒就職も出版社の契約社員しかなれず、現在の年収200万で婚活パーティーに行っても肩身が狭いまま。アスペルガーの漫画家との共同作業で彼女に恋するが振られてしまうが、吉井君の周りには気が良い人物がたくさん居て皆、悩みを抱えていながら元気に暮らしている
    。世界の名言集やSNSの話題や街コンなども頼って本当の自分探しをやり続けながら、最後は身近な人達から気づかされる本当に自分がやりたい事。それは…という話で、読みやすい本でした。

  • 6話収録の連作短編集。

    会話が多いのでサクサク読める。

    主人公はフリーランスのライター・吉井。40歳、独身。
    母を亡くし、一人漠然とした喪失感の中で過ごしている吉井だが、本人は『そろそろ本当の自分の人生を起動したい』と思いながら日々を送っている。

    そんな吉井の前に現れた元同僚のカンタロー。
    通称カンちゃんの「死ぬまでにしたいこと」リストの作成を手伝ったり、アスペルガーの女性と接してみたり、婚活パーティーに参加したり、年齢も性別も全く異なる人達に関わる事で少しずつ変わっていく吉井の姿が微笑ましい。

    優しくて温かな物語。

  •  ロスジェネ世代で現在フリーライターの40男が主人公。短編6話からなる。

     文筆業と言っても請負仕事ばかりで固定給のないフリーランス。自宅住まいで住居費が安くつくとは言え、ワーキングプアに近い生活。独身。恋人なし。

     描き方によっては暗く重い作品になりそうだが、本作は軽く淡々とした空気を醸し出している。主人公の吉井もあまり悲観的にならず前向きに日々を送っていて、その日常のスケッチのような描写で物語が進む。

     小野寺文宜氏の作風に少し似ていて、とても好もしい。平岡氏はこんなタイプの作品も書くのかとうれしくなった。

     また、テーマに関わるポイントは太字になっていて、主人公が「本当の人生を起動したい」と思って行動していることがわかる。
     特に最終話で日本酒の醸造に喩えた表現が秀逸だったと思う。就職氷河期に遭遇した若者が永遠に続くかに見えるモラトリアム期から抜け出そうと足掻く姿が、絶妙に描けていた。

     「希望を抱かぬ者は失望することもない」というバーナード・ショーの言葉に感銘を受けながらも、吉井が1度は振られてしまったアスパーガール・名美にメールを送るラストシーン。印象に強く残った。

     気になったのは、最終話の銘酒の扱いだ。

     取り上げられた銘酒は基本的に生酒で要冷蔵のはず。ワンルームに収まる冷蔵庫に収納可能とは思えない。キッチンや部屋の隅に直置きでは発酵が進み味が壊れてしまう。
     ましてや抜栓後の飲み残しを数日後に飲むシーンがあったが、その頃には酸化が進んですでに腐敗しているだろう。

     平岡氏にしては取材不足でリアリティに欠けると言わざるを得ない。残念だ。

  •  平岡陽明「ロス男」、2019.10発行。連作短編6話。40歳のフリーライター、年収200万の吉井和人が主人公。第2話、アスペルガー・ガール、朝井名美に恋する話が良かったです。第5話の別居11年でありながら互いを思いやる夫婦、カンタロー73歳とお美代70歳の話もじんと来ました。

  • 編集の人のお話。お酒楽しいなぁ。

  • ロスジェネ世代の40代独身の契約社員で母子家庭で母はすでに亡くなる。

    人生の負け組レールを生まれながらに乗るしかなかった吉井。

    昔の上司だったカンちゃんと再会して
    彼のポジティブでのんきな性格に触れていくことで
    自分の人生を受け入れて、見つめていく様子。

    カッコ悪くても惨めでも、
    色んなものにすがりながら日々生きていく。

    慣れない婚活に心を擦り減らし
    最愛の奥さんを亡くして意気消沈するカンちゃんと一緒に
    お酒に付き合いいつの間にか仲間が増えていく様子。

    吉井さんは正直何も持っていないも同然だけど
    唯一仲間がいる。

    仲間がいるって大切なんだなと。
    私には仲間はいませんので、吉井さんとは別の意味で老後は心配だなあ。

  • 就職氷河期真っただ中の時代に社会に出た、フリーランスライターが主人公の作品。希望を抱けぬ彼は、失望することもない。作品には虚無感が漂う。それでも読まされてしまう。最後にちょっと希望の光が見え隠れする。

  • ロスジェネ世代の主人公は42歳で独身。
    昨年母を亡くして独りで暮らしている。

    非正規で出版社の下請けフリーライターで糊口をしのぐ。
    そんな主人公が事あるごとに呟く、本当の人生を起動させる、というフレーズ。

    明るい基調の物語だが、本当に気の毒な世代。
    時代の所為にしたところで幸せを掴む事は出来ないが不遇感から逃れられないのも事実。

  • 40歳、フリーランスのライター、正規雇用経験なし、未婚の、「ロスジェネ世代」を主人公とした、全6話。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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