白い衝動 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065170601

作品紹介・あらすじ

小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早のもとに現れた高校1年の生徒・野津秋成は、ごく普通の悩みを打ち明けるように、こう語りだす。

「ぼくは人を殺してみたい。できるなら、殺すべき人間を殺したい」

千早の住む町に、連続一家監禁事件を起こした入壱要が暮らしていることがわかる。入壱は、複数の女子高生を強姦のうえ執拗に暴行。それでも死に至らなかったことで、懲役15年の刑となり刑期を終えていた。

「悪はある。悪としか呼びようのないものが」

殺人衝動を抱える少年、犯罪加害者、職場の仲間、地域住民、家族……そして、夫婦。
はたして人間は、どこまで「他人」を受け入れられるのか。

社会が抱える悪を問う、祈りに溢れた渾身の書き下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、難しかったな、というのが一番の感想です。
    精神科領域、心理学とかやっぱり目に見えたり検査の数値に表れたりしないものを評価したり診断したりするのは難しいとわかりました。
    それとは別に読み物としては、主人公と恩師の会話はお互い核心をつかずに探り合っていて、読んでいても何なのかわからないところがあって、ちょっと飛ばしてしまった。秋成との会話も頭の良い人同士のやり取りでピンとこないことも多くて。
    それで結局結末はスッキリしなかった。
    心理学の本を読んだような読後感でした。

  • 『爆弾』も面白かったし、こちらもやっぱり面白かった!

    作品のテーマである「犯罪加害者をどう受け入れるか」という問い。
    刑期を終えて更生した、といっても犯罪加害者が自分の隣にいたらと思うとやっぱり怖いし、そんな犯罪加害者が生きやすい社会にするためにこっちが我慢するのはなんだか違うとも思う。
    それでも、犯罪加害者が生きていくためには、誰かが受け入れなければいけない。難しい問いだ・・・
    この問いに対する答えは見つからなかったけれど、「衝動」についてはちょっとなるほどと思った。

    「生きたいという衝動、死にたいという衝動、殺したいという衝動。たくさんの矛盾した衝動があって、わたしたちは、その全部を持っている」
    「色が違うだけなのよ。暗い色は気にならないし、明るい色はよく目立つ。塗りつぶすことはできても、なくなりはしない。矛盾した衝動たちと、付き合い続けていくしかない」
    タイトルにもある「衝動」とは、殺人の衝動だけでなくて、人間は誰しも多かれ少なかれ持っているであろういろいろな「衝動」のことかな。


    「自分の衝動にふさわしい方法を誤った。我々との差は、実はその程度だ」

  • 呉さんの著書はまだ3作品目ですが、スタイルは違えど共通して社会コミュニティの問題を取り扱われているのかなと。

    他作品も読ませて頂く予定なので変わるかもしれませんが、『爆弾』『道徳の時間』『白い衝動』に限っては一般人と呼ばれる人間と、そこからはみ出したと言われてしまう人間との格差問題に対する提議を感じました。

    殺人衝動に悩む少年と、殺人未遂を犯して出所してきた男。自身も過去に悩みながら彼らを救おうとする心理学者のお話です。
    なので、心理学用語と治療法がばんばん出てきて苦手な方は疲れてしまうかも知れません。

    ですが、素人でも分かりやすく、性善説と性悪説の曖昧さに確かに難しいよな…と考えさせられ、では犯罪者を社会コミュニティに戻すにはどうすれば良いのかと、夢中になって主人公が出すであろう答えを求めて一緒に走った感覚です。

    「精神科医は『言葉が通じぬ者のための言葉』を求める」
    「私を受け入れないあなたを、私は受け入れる」
    印象に残った台詞ですが、精神疾患というものの世間からの誤解が見事に描かれた作品でした。

    呉さんの作品の感想を書く度に言ってるのでそろそろお金貰ってステマしてんのかと思われそうですが、(そもそもそんなコネクションなんて無い人間なんですが)デビュー作からの進化に読む度に驚かされます。どこまで行くんだろう…

  • 心理学や精神分析など、興味のあるテーマだったが、なかなか入り込めず残念。

    何を持って「正常」とするか、
    「異常」と見なす明確な境界線は何処にあるのか、
    責任能力がないと判断されれば罪にはならないのか、
    倫理観を持ちながらも己の衝動には抗えないのか。
    そんな事をぐるぐると考えさせられた一冊だった。

    受け入れてほしいから受け入れる。
    愛されたいから愛する。
    許されたいから許す。
    それらは全て、自分がそうしてもらい願望の裏返し。

    ただ、道徳だとか理性だとか、頭では散々理解している事が吹っ飛んでしまう程の衝動を持ち得ないとは限らない。誰にも。
    立場が変われば価値観なんて簡単に変わってしまう。
    私達は常に紙一重で、ある人から見れば私も異常者なのかもしれない。

  • めちゃくちゃおもしろかった。
    この作家を今まで知らなくて損したと思うくらい。
    他の作品も読んでみよう。

  • 千早と寺兼先生のやり取りで、学生時代に受けた精神分析の授業を思い出した。
    理解できないものはやっぱり恐怖でしかない。
    受け入れたいと思っても、どうにもならないこともある。
    そういう意味では、入壱や秋成の抱える衝動を受け入れるのは至難の業だろう。
    だけど、もし自分がその立場だったら。
    受け入れて欲しいと思うのか、仕方ないと諦めるのか。
    なんだかいろいろと考えてしまった。
    共生って意外と簡単じゃないんだよな。

  • どうしようもないから「衝動」なんだな
    静かな怒りが満ちたとでもいうか、衝動が爆発してしまう人と手前で踏みとどまる人は何が違うんだろう

  • 人間の割り切れない部分と矛盾しながらも両方を抱えることで葛藤するところがよく書かれていたと思う。

    社会という人間が生きていく上で必要な環境や道徳にも必ずしも割り切れない部分がたくさんあり、折り合いや挫折を繰り返しながらもある形に収まり、また変化していくことを読後にふと考えた。

    疾走感があって読みやすく、かなり残酷なシーンを思わせる文もあるが、読書の時間をかなり楽しめた本でした♪

  • 爆弾 が面白かったので、この作家の本を読もうと思っていたらclashの曲名みたいな表題やったので購入。
    伏線ってわけじゃないけど、読み進めて何処かの段階で冒頭に戻るけど、どの段階で冒頭に戻るかは人によって違うと思う。
    読んだ人が居るならそれを訪ねてみたくなる。
    読み終わって、めちゃくちゃ面白いな、と思いAmazonのレビュー見たらまぁまぁ辛辣...。
    この作家は心の流れが上手に表現されていて、おそらく人が本能的に考えないでおこうとしている部分を書く。
    ここら辺で受け入れられない人が多いのかな、と思う。
    まだ2冊しか読んでないけど。

  • 呉勝浩『白い衝動』講談社文庫。

    第20回大藪賞受賞作のサイコサスペンス。やはり、この作家とは相性が悪いようだ。こね繰り回した挙げ句のつまらない展開と、つまらない結末。どこまでもつまらない。

    小中高一貫校でスクールカウンセラーを勤める奥貫千早のもとにカウンセリングを受けに来た高校1年の生徒・野津秋成は強い殺人衝動を抱いていることを告白する。そして、連続強姦事件を起こした鬼畜・入壱要……

    本体価格860円
    ★★

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著者プロフィール

1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪府大阪市在住。2015年、『道徳の時間』で、第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった。21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補。他に『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』などがある。

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