「私」は脳ではない 21世紀のための精神の哲学 (講談社選書メチエ)

  • 講談社
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本棚登録 : 458
感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065170793

作品紹介・あらすじ

今、世界で最も注目を浴びる哲学者マルクス・ガブリエル。大ヒット作『なぜ世界は存在しないのか』の続編にして、一般向け哲学書「三部作」の第2巻をなす注目の書が日本語で登場です。
前作と同様に目を惹きつけられる書名が伝えているように、本書が取り上げるのは昨今ますます進歩を遂げる脳研究などの神経科学です。それは人間の思考や意識、そして精神は空間や時間の中に存在する物と同一視できると考え、その場所を特定しようと努めています。その結果は何かといえば、思考も意識も精神も、すべて脳という物に還元される、ということにほかなりません。でも、そんな考えは「イデオロギー」であり、「誤った空想の産物」にすぎない、というのがガブリエルの主張です。
「神経中心主義」と呼ばれるこのイデオロギーは、次のように主張します。「「私」、「意識」、「自己」、「意志」、「自由」、あるいは「精神」などの概念を理解したいのなら、哲学や宗教、あるいは良識などに尋ねても無駄だ、脳を神経科学の手法で―─進化生物学の手法と組み合わせれば最高だが―─調べなければならないのだ」と。本書の目的は、この考えを否定し、「「私」は脳ではない」と宣言することにあります。その拠り所となるのは、人間は思い違いをしたり非合理的なことをしたりするという事実であり、しかもそれがどんな事態なのかを探究する力をもっているという事実です。これこそが「精神の自由」という概念が指し示すことであり、「神経中心主義」から完全に抜け落ちているものだとガブリエルは言います。
したがって、人工知能が人間の脳を超える「シンギュラリティ」に到達すると説くAI研究も、科学技術を使って人間の能力を進化させることで人間がもつ限界を超えた知的生命を実現しようとする「トランスヒューマニズム」も、「神経中心主義」を奉じている点では変わりなく、どれだけ前進しても決して「精神の自由」には到達できない、と本書は力強く主張するのです。
矢継ぎ早に新しい技術が登場してはメディアを席捲し、全体像が見えないまま、人間だけがもつ能力など存在しないのではないか、人間は何ら特権的な存在ではないのではないか……といった疑念を突きつけられる機会が増している今、哲学にのみ可能な思考こそが「精神の自由」を擁護できるのかもしれません。前作と同様、日常的な場面や、テレビ番組、映画作品など、分かりやすい具体例を豊富に織り交ぜながら展開される本書は、哲学者が私たちに贈ってくれた「希望」にほかならないでしょう。

[本書の内容]
序 論
I 精神哲学では何をテーマにするのか?
II 意 識
III 自己意識
IV 実のところ「私」とは誰あるいは何なのか?
V 自 由

感想・レビュー・書評

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  • 論理的で、バランスの取れた著作。
    様々な論者の思想を暴き、批判し、人間の生、そして、哲学をあるべきものにする取り組みだ。
    特に最終章が素晴らしい。上への野蛮化が現代では神ではなく、テクノロジーに結びつき、下への野蛮化は進化論万能に結びつく。

  • 『なぜ世界は存在しないのか』に続く第二弾。前作もそうだが、挑発的とも感じられるタイトルが与えるインパクトは強い。
    それにしても、哲学者ってのは、いっつもこんなことを考えているのか……色々と凄いな(そして、その思考と、やたらと頻出する食べ物の例えのギャップがやけに面白い)。

  • 哲学系の勉強をしている友人が
    神経科学を専攻している人にこの本はどう写るか気になる、と言われて読んでみた。

    作者は神経科学の中でもすごく極端な立場の人をあげていないか?と思ってしまった。筆者の主張はもちろん分かるのだけど、批判の対象が神経科学なのが全然納得できない〜

    最初の導入部分で自然主義と反自然主義の議論を、
    精神と神経活動の議論にすり替えているように思えてしまって
    ずーっとひっかかってしまった。
    筆者が批判すべきは方法論的自然主義なのでは。

    別に脳の働きで人間の営みが全て説明できるだなんて思っていないし、
    神経科学と精神哲学は排他的なものじゃない
    本文で例に出されている友情とか、美や幸福とか、
    現時点で科学の土台にのせられていないものはたくさんあるし
    科学やその領域について議論していないよと思う
    少なくとも神経科学を専攻した私も、
    私を指導してくださった先生もそういう立場

    あんまり冷静に読めなかったので
    落ち着いたらもう一度読もうかな、でも少し心が挫けそう...

  • 2019I294 114/G
    配架場所:47(講談社選書メチエ 710)

  • タイトル見て興味持って読んでみた。
    最後のほうは説教くさく、哲学なんだか神学なんだかかと思った。
    ただ、硬い因果論と柔らかい「条件」の比較は面白い。
    今の自分の存在(「私」)は、過去の因果かただの条件が揃ってしまったのでこうなっているだけなのか。

  • なんとなくしか読めてないけど。

    人間としての実態ってなに?
    脳が死んだら死んだと言えるの?
    種の保存の法則の延長線上に意志とか欲求とかあるの?

    我々は自由であるって言い切れへんねんな。

    奪いされないもの尊厳、経験、意志そんなんを持ってるって言い切れるよな。
    それは、宇宙とか物理とかエネルギーとかそんな冷たい連中に関係あるかい!ってゆうてんねんな。

  • ◆5/24 シンポジウム「自由に生きるための知性とはなにか?」と並行開催した「【立命館大学×丸善ジュンク堂書店】わたしをアップグレードする“教養知”発見フェア」でご紹介しました。
    http://www.ritsumei.ac.jp/liberalarts/symposium/
    本の詳細
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000315307

  • 様々な哲学者の思想を簡略に書いてあるので、非常にわかりやすい本である。脳と意識の関係がとても分かりやすく書かれている。

  • 20/03/06。

  • 人間は、科学的に説明し得るのか。自然科学的探究を思考するときの「私」は、迫るシンギュラリティに備えようとし、それは説明可能性を受け入れている。一方で、答えのない未来を探究する思考に耽るときの「私」は、自然科学では構築しえないものであることを疑うことすらしない。だから、脳が単に神経回路で、内外の入出力を媒介するだけなら、「私」は脳ではない。生物的存在と社会的存在、そして、「私」にとっての世界によって、「私」が在る。ような気がする、所で一先ず。

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著者プロフィール

1980年生まれ。哲学者。29歳で、史上最年少のボン大学哲学科教授に就任。
「意味の場」をキーワードに自身の新しい実在論を展開するほか、シェリングやヴィトゲンシュタイン、ハイデガー等、ドイツ哲学を中心に著作を執筆し、世界的な注目を浴びている。本書のほか、『神話・狂気・哄笑』(堀之内出版、2015年)や、『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018年)等の訳書多数。

「2023年 『アートの力 美的実在論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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