記憶の盆をどり

著者 :
  • 講談社
3.24
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本棚登録 : 177
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065170892

作品紹介・あらすじ

Machida Kou Variety Show!!!
著者8年ぶりの短篇作品集。

犯人当てミステリー
背筋も凍るホラーサスペンス
異世界ファンタジー
お伽話の現代語訳
果ては美少年BLまで――

名手が演じる小説一人九役!


冴えない生活を送る男の部屋にやって来た謎の可愛い生き物。
それからみるみる人生が好転して……「エゲバムヤジ」

蠱惑的な女に人捜しを頼まれた親分は、
張り切って捜査を始めるが……「文久二年閏八月の怪異」

突然自宅に訊ねて来た女は、かつて弄んで棄てた女と同一人物なのか。
記憶が曖昧なまま女と街へ出て思い出したことは……「記憶の盆おどり」

ミュージシャンを夢見る少年の目を覚まさせるため、
男は少年をうらぶれたRockな町へ連れ出すが……「少年の改良」

他全9編収録

・収録作品
エゲバムヤジ
山羊経
文久二年閏八月の怪異
百万円もらった男
付喪神
ずぶ濡れの邦彦
記憶の盆おどり
狭虫と芳信
少年の改良

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。なかなかバラエティに富んでいた。面白かったのは「付喪神」100年経って意識の芽生えた物たちはしかし人間に捨てられ復讐心を募らせる。ついに変なパワーを得て化け物となり百鬼夜行、人間を食い散らかして復讐するも、仲間同士で意見が分かれて同士討ち。物なのに妙に人間臭い、しかも俗物なのがおかしい。

    「エゲバムヤジ」はなんだかよくわからない謎の生き物で、カフカの「オドラデク」を思い出した。「文久二年閏八月の怪異」はレイモンド・チャンドラーの文体で半七捕物帳。「百万円もらった男」は、百万円で自分の才能を売ってしまった男の話で、なんというか笑うセールスマンとかにありそうな。

    表題作と「少年の改良」は、どちらも悪夢系で、途中から記憶が混濁、何をしてるかわからなくなってゆくのが滑稽でもあり恐ろしくもあり。

    ※収録
    エゲバムヤジ/山羊経/文久二年閏八月の怪異/百万円もらった男/付喪神/ずぶ濡れの邦彦/記憶の盆おどり/狭虫と芳信/少年の改良

  • 町田康8年ぶりの短編集。

    収録作9編はそれぞれタイプが異なるが、どれも唯一無二の町田康ワールドに染め上げられ、全体には不思議な統一感がある。

    私が気に入ったのは、「山羊経」「百万円もらった男」「付喪神」「狭虫と芳信」「少年の改良」の5編。

    「山羊経」は前半がややかったるいが、後半、主人公の亡き父が大日如来になって(!)登場するあたりから、俄然面白くなる。
    「ひとつだけ気になることがあってなあ、大日如来を完全にエンジョイできないんだよ」などという父の言葉が、いちいちおかしい。

    「百万円もらった男」は、金に窮した売れないギタリストが、謎の男に百万円で自分の才能を売り渡す……という寓話。まるで教訓的な昔話のような物語。
    「少年の改良」は、ロック・ミュージシャンを夢見る少年の目を覚まさせるため、ロックにくわしい中年男がうらぶれたロックな町へ連れ出す……という話。

    以上の2編は、町田康のロックに対する深い造詣が隠し味になっていて、読者がロック好きであるほど笑える。

    たとえば、後者に登場する3つのロックバンドの名が「ギターシェイシェイ」「面と向かってテオドール」「ビューティ古ピープル」であるだけで、もうおかしい。

    ほかの作品でも、「狭虫と芳信」の主人公の名が「従二位六頓」(ジョニー・ロットン=ジョン・ライドンのもじり)であるなど、随所に町田康のロック魂が感じられる。

    その「狭虫と芳信」は、最後のオチの決まり具合など、短編としての完成度が高い。
    そして笑える。
    「顔なんて大きい方がいいに決まっているだろう。小顔がいいなんて言うのはユダヤの陰謀だよ」「最近のロマンス小説には巨顔物って分野があると人から聞いたような気がする」などという突飛な会話の端々がおかしい。

    「付喪神」は、「現代版 絵本御伽草子」シリーズの一冊として、2015年に刊行された絵本(絵は石黒亜矢子)の、文章だけを抜き出したもの。
    つまり、古典「御伽草子」の一編の現代語訳である。

    町田康の古典現代語訳といえば、池澤夏樹個人編集『日本文学全集』の第8巻に収録された『宇治拾遺物語』が、メチャメチャ面白かった。

    この「付喪神」も、町田康のぶっ飛んだ言語感覚、文体のグルーヴ感がそのまま活かされた「超訳」になっていて、大変面白い。
    「町田康の訳した古典がもっと読みたい」と思わせる。

  • 細くしなやかだった腰や腕にはたっぷりと肉がつき、額には皺が刻まれている。顔は脂ぎり、キラキラ輝いていた瞳は濁り澱んでいる。手入れの悪い汚れた髪。たるんだ頬。加えて二十年前の印象に可能な限り近づけようとした努力の痕跡は痛々しく惨めを誘う。かつて自分が愛したものは、その変わり果てた姿によって過去を汚し、現在を腐らす。茫漠としていた記憶。覚えているところと覚えていないところの境目が勃然と蘇り、もはや逃げるより他はないのだが、もう行くところはない。記憶はめくるめくループをえがく。

  • 怖い。
    深酒をすると記憶が飛ぶ私によってはホラー小説だった。

  • 不可視の現象について考えさせられる。コメディなのかホラーなのか、狂気なのか。時々背筋が寒くなる場面も。

  • これは落語のように音声で聴きたい本でもある。今のお伽噺短編集。記憶が様々な情景と混ざり合う主役たち。いつの間にか読み手の記憶も混乱して前の頁を見返してしまいそうな、そうせずに巻き込まれていきたいような、何とも不思議な感覚になり、笑いながら読み進めていくと結末はどれも哀しい。

  • 日経の読書欄で興味がわいて、初めての町田康先生。
    どなたがおっしゃってたが、まさに、落語を聞いてるみたい。
    もっと、いろいろ読もう。

  • 最後突然終わるんだけど、結局よく分からんけど、なんか凄い怖い!!

  • Audibleで記憶の盆をどりだけききました。
    不思議な世界観に引き込まれました。面白かったです。

  • 途中、クスッと笑ってしまう場面はいくつかあり、どんな展開になるのか楽しみだったけど、よく分からなかった。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田康の作品

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