夜 は お し ま い

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065171486

作品紹介・あらすじ

2019年10月Twitterで話題!
性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。
深い闇の果てに光を掴もうとする女性たちの、闘いと解放。直木賞作家の真骨頂!

とにかく、私たちは生き残った。闇夜に潜む蛙に怯えていた子供時代から。
ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私――。
秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。

感想・レビュー・書評

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  • 初めての作家さん、女性目線だけど、年齢高めの私でも共感できた。
    表現や内容がハードな箇所もチラチラありますが嫌悪すぎるレベルではないかな。依存に悩んでいる人に読んで欲しい。

  • ・夜のまっただなか 自称タレント事務所マネージャーの男に流されるままに付き合う女子大生・琴子。
    ・サテライトの女たち 複数の男性と愛人契約をしている結衣。一方で、ホストに金を注ぎ込む。ある愛人に屈辱的な性行為を求められる。
    ・雪ト逃ゲル 夫と幼い子供がいる小説家は不倫している。女は妻になり母になり…。受動的な女を考える。
    ・静寂 カウンセラーの更紗。患者のある女性に心を寄せる。
    の四話。欲望と罪悪感。すべての話に神父・金井が登場し助言する。
    読んでて心が苦しく、悲しくなった。それぞれの女性の苦しみ、女性であることの苦しみ、が描かれる。親子、家族でのこと、信仰による悩み、登場人物たちが感じる寂しさ辛さに共感する読者もいるのではね。激しい内容だったな、特に「サテライト〜」は。宗教に染まらないまでも自分自身で考え続けるのか救いになるのかな。全体的にも重いというか難しい内容。

  • 人に勧めるには大分慎重になる小説。
    ぬるい毒が身体をゆっくりとまわり、気づかなかった傷みに気づいて泣き出したくなる。辛い余韻。

    ちょうどNNNドキュメント「なかったことに、したかった」(性被害にあった女性特集)を最近見て色々考えるところがあったので、それを思い出して本当に辛くなった。

    上記の番組によると、性被害にあった女性は性を拒絶するか性に奔放になるという。そして後者は周囲に理解されにくい。だから誤解されて更に傷を負い続けることになる。奔放になる理由は、自分を傷つけた事柄が「大したことではない」と思いこませるため、そしてその事柄でしか自分の価値を確かめられなくなってしまったため、あともう1つなんだったかな。

    でも島本作品って、その「後者」が描かれることが多い。雑に扱われることが安心する、みたいな不健康な状態。本作でも、もはや「傷つくために」行為をしているシーンがある。そこを丁寧に救いとってる。この感覚は、多分、男性…とは一括りにいえないけど、性別関係なく鈍感なひとは全くわからないのだと思う。
    人の性趣向は多種多様、とはいえあのプレイは読んでいて心底ぞっとした。怖い。


    島本理生ガチ勢なんで、もちろんサインandトークショーの整理券も入手済み。

  • 精神科医にして司祭の金井を狂言回しにした女性たちの性に纏わるお話4編。奥手の女性の性体験、母の宗教上の教えに逆らって自分の性を糧にする女性、夫がいながら人工授精で子供を作り恋人との逢瀬を楽しむ女性、精神科医でありながら自分の性に疑問を持つ女性、そして金井自身の妹に対する悔い、そこにイエスの教えが関わってくる。キリスト教の文学としては遠藤周作以来の気がしないではないが、そこにはやはりイエスの救いはない。

  • 深く傷つけられた女性たちの生き方がこんなにも物悲しいものなのかと思う。強く生きているように見えて結局男性に虐げられているような存在。「女」としての性が切なく哀しい。正直、宗教云々は多少伝わりづらかったけど、女性達を見ていると透明な水に墨を一滴落としたようなふわりとそして静かに落ちてゆっくりと黒くなっていくような感覚が最後まであった。そして透明な水には決して戻らないのだろうなと。

  • 圧倒的な何か。
    頭がくらくらするほどのチカラで身体中を締め付けられるような圧倒的な何かが生まれてしまった。
    キリスト教の罪と罰と赦しは、蛙におびえる女の前では無力である。そうであってもなおキリスト教に救いを求める女、そして男。
    自分を傷付け、流れる血と感じる痛みによってしか生きていくことができないのなら、私たちは何のために生きているのだろう。
    家族神話を完全に否定する世界。
    足元が揺れる。立っていることができなくてしゃがみこむ。自分自身を、自分の性と生を否定したくなる。確かなものなんてあるのだろうか。
    島本理生が解き放った圧倒的な何かに私の全てが押しつぶされそうだ。

    神はなんのために存在するのか。もし神によって救われるとしたならば、なぜ救う前にそうならない力を与えてくれなかったのか。
    神によって救われるために罪を与え、罰を受けさせているのか。
    誰も彼もが自分自身を傷付けている。金井先生も、4人の女たちも、作者自身も、そしてそれを読む私も。

  • 島本先生らしきなくあまり共感ができなかった。
    人間関係や立ち位置がわかりづらくて、何度も前を見返したが理解出来なかった。
    それでも、金井先生の痛みとかたくさんの人たちの過去の苦しみとか分からなくはない。
    次回の本に期待したい。

  • 性にとらわれて生きる女性たちの短編集のようなお話、神父の金井と精神科医の更紗を軸にすべての話はゆるくつながっている。

    可もなく不可もなく、さらさらっと読了。悲しい性虐待の過去を持つ女性や、金井神父の過去の話は読んでいても心が痛むけれど、書き方のせいなのかサラッと進んでしまう。

    私は苦手に感じることも多い文中の性描写が驚くほどキレイ。

  • お腹の底にずしんと来るような感覚が、
    ずっと残っています。

    終わったようで、何度もまた来る。
    まるで夜のようにそれはずっと続いていくようで。

    あの夜はもう抜け出したのだ、と安堵しながらも、
    胸を撫で下ろしている時点でまだ逃れ切れていないのだと感じずにはいられない。

    女は女である時点で傷口のような空洞を抱えていて、
    満ちたり抉られたりする。

    女として生まれ、女として生きる、
    そこに逃れられない何かを感じずにはいられないような作品です。

  • ごめんなさい、全く意味が分からなかった‥

    共感もなく‥

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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